マーケティングに影響する超加工食品基準
米国流通市場を読む(3)

2026年6月18日

超加工食品(UPF:Ultra-processed food)(注1)を巡る政策動向への関心が高まっている。米国カリフォルニア州アナハイムで2026年3月3~6日に開催されたナチュラル・プロダクツ・エキスポ・ウエスト(Natural Products Expo West、以下「Expo West」)(2026年3月16日付ビジネス短信参照)でも、UPFは議論の中心となった。米国では連邦・州レベルでのUPFの定義付けが進みつつあり、制度設計の初期段階にある。企業は、従来の栄養表示に加え、加工プロセスや原材料の質なども含めた新たな評価軸への対応が、不可避になるとみられる。本稿では、UPFを巡る連邦・州政府の政策動向とその背景を解説し、米国の流通市場における実務の示唆を提供する。


多くの来場者でにぎわうExpo Westメイン会場付近(ジェトロ撮影)

超加工食品がメインテーマに

今年で45回目を迎えるExpo Westでは、その年の関心テーマに基づくパネルディスカッションが多数行われた。その中で、「超加工食品(UPF)」について言及するセッションが目立った。UPFは、2009年にブラジル・サンパウロ大学のカルロス・モンテイロ教授らが提唱した食品分類「NOVA」(注2)におけるグループ4に位置付けられる概念だ。加工度合いの高さや添加物の使用によって特徴付けられている。国際的なUPFを巡る議論のみならず、米国における各州および連邦でのUPF定義や制度設計においても参照されている。

UPFをテーマとしたセッションには、医師、消費者データ分析企業、ナチュラル製品業界の食の安全基準や規格策定に関わる専門家などが登壇した。登壇者からは、UPFが加工工程の積み重ねによって定義されるため、ラベル表示や人工知能(AI)分析のみでは判定が難しいと指摘された。このため、加工工程や原材料まで含めて確認する第三者認証の重要性が強調された。また、定義として機械的・熱的・生物学的処理を「許容/条件付き/禁止」に分類する考え方が示され、今後の評価や制度設計の方向性を示唆する内容となった。

登壇したオースティン・パールマター医師は、「UPFが寿命や心疾患、糖尿病、認知症、うつなどと強く関連するという疫学的エビデンスに加え、若年層への影響や添加糖の過剰摂取が課題となっている」と指摘した。また、ナチュラル製品の消費者データ分析を行うスピンズのジェシカ・ライト製品開発部門上級副社長は、同社の分析から、消費者の「健康」の定義自体が変化していると述べた。人工着色料・人工保存料・人工香料などの添加物を完全に抜いたクリーンラベル志向や、プレミアム志向の高まりが背景にあるという。

ひと昔前までは、消費者の関心はカロリーや脂質の低さといった栄養成分表の数値に集中していた。しかし現在は、その食品がどのように作られ、何が含まれているかというプロセスや原材料の質で健康を定義するようになったと述べた。

続けて、食の安全に係るナチュラル製品の業界基準や規格策定をリードしてきた登壇者からは、非UPF食品を認証するための基準として、製品開発や品質管理の現場において、社内ガイドラインを設けることが提案された。例えば、製品全体の重量の少なくとも70%以上を最小限の加工原材料で構成すると「重量70%ルール」の導入が挙げられた。さらに、原材料の調達では合成生物学やナノテクノロジーを用いた原材料を一切使用しない体制の整備、精製糖の制限や非栄養性甘味料の禁止などが示された。科学的根拠を重視しながら、業界が実務面でどう対応していくべきかについても議論された。マーケティング面では、クリーンラベルへのリニューアルが、消費者ニーズへの有効な対応策になるという提言があった。


UPFをテーマにしたセッション(ジェトロ撮影)

連邦・州における制度設計の進展

本展示会における議論は、米国におけるUPFを巡る政策動向の高まりを背景に、産業界にも同様の関心が広がっている状況を反映したものと考えられる。ロバート・F・ケネディ・ジュニア保健福祉長官は、「Make America Healthy Again(MAHA)」(注3)を掲げている。UPFについては、連邦政府が統一定義の策定や表示制度などを検討しており、制度設計に向けた動きが進んでいる。複数の省庁は、2025年7月にUPFの統一定義に関するリクエストフォーム(RFI)を発出した。これ以降、食品医薬品局(FDA)および農務省(USDA)でUPFの統一定義の策定が進められている。これらは、今後の表示規制や食品政策の基盤となる取り組みとして位置付けられている。

既に、米国では、特に学校給食における規制推進の観点から、少なくとも17州でUPFの定義付けに関する法案提出や整備が進められている(表参照)。

表:米国各州法・法案におけるUPFの定義方法 
州 名 類型  定義方法および法律ステータス、法案番号 
マサチューセッツ NOVA準拠  工業的プロセスにより、添加物(香料・乳化剤・着色料など)を用いて製造された高度加工食品(法案審議段階、H4562およびH3959) 
ペンシルベニア NOVA簡略化  NOVAに類似した加工分類を採用(法案審議段階、HB1132) 
カリフォルニア 栄養基準併用型  工業的な添加物を使用し、特定の有害とされる添加物の使用有無を定義(AB1264) 
アリゾナ ネガティブリスト  11の添加物のうちいずれかを含むものはUPF(HB2164) 

出所:State Actions to Define Ultraprocessed Food for Policy—Opportunities and Challenges、JAMA(2026年4月10日)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを基にジェトロ作成

各州のUPF定義は、加工構造に着目するNOVA型と、栄養や特定添加物に着目する規制型に大別される。UPF規制は、加工度の高さを問題視する一方で、精密発酵や機能性原料のように高度に加工されつつも、健康価値を持つ食品との整合性が課題となっている。

UPFの定義については国際的にも統一された基準が存在せず、今後連邦レベルでどのように定義付けがなされるか注目が集まる。Expo Westのセッションにおいても、この政策動向は重要な前提として認識されていた。こうした政策動向は、流通市場における商品選定や業界の縦割り構造、さらにはプライベートブランド(PB)の開発方針にも影響を及ぼす可能性がある。日本企業にとっても、今後の事業展開を検討する上で、念頭に置くべきトピックの1つと言える。

次稿では、Expo Westでの企業のブース展示と流通市場の動向を整理する。併せて現在の米国市場の消費トレンドと、それが商品開発など流通の現場に及ぼす影響、およびその背景要因を探る。


注1:
主に工業用途専用の原料を配合したもので、天然の食品をほとんど使用せずに組み合わせて工業的に製造した食品。 本文に戻る
注2:
グループ1は未加工もしくは最小限に加工された食品、グループ2は加工された調理用原料、グループ3はグループ1の食品に塩や砂糖、またはグループ2の加工された調理用原料を加えた工業製品、グループ4は主に工業用途専用の原料を配合したものであり、天然の食品をほとんど使用せずに組み合わせて製造した食品を指す。 本文に戻る
注3:
トランプ大統領の選挙キャンペーン時のスローガン「米国を再び偉大に(Make America Great Again)」に連動し、「米国を再び健康に(MAHA)」を掲げ、米国で慢性疾患が蔓延(まんえん)する原因を特定し、米国の食、健康、科学システムの改革を目指す方針(2026年2月25日付2026年4月15日付ビジネス短信参照)。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ・サンフランシスコ事務所 ディレクター
芦崎 暢(あしざき とおる)
民間企業にて海外事業立ち上げなどを担当後、2018年ジェトロ入構。ECビジネス課、デジタルマーケティング部、ジェトロ名古屋を経て、2023年8月から現職。