形状・材質を巡る安全規制の最新動向
米国包装材規制の今(2)

2026年4月8日

米国の包装材規制は多岐にわたるものの、(1)消費者保護(表示義務)、(2)安全性(形状や材質)、(3)環境保護(再利用と廃棄)の3区分に整理できる。本稿では、(2)の安全性に焦点を当て、形状の安全(誤飲、窒息防止や子供が開けにくい包装)と材質の安全(食品接触材に関する連邦規制と食品以外の包装材に対する州規制)の2本柱で解説する。

子供を窒息から守る規則

包装材の安全性に関する規則は、表示義務同様、連邦と州とで重層的に存在する。連邦規制には、その形状に関する規制がある。代表的なものとして、子供を窒息事故から防止するための規制があり、誤飲・窒息の危険性があるサイズの商品やその包装材に警告表示を義務付ける連邦法(15 U.S. Code § 1278)(注1)と連邦規則(16 CFR § 1500.19)がある。州レベルでは、ポリ袋に「窒息防止警告ラベル(Suffocation Warning Label)」の表示を規則で定めているところがある。規則の内容は州によってまちまちだ(表1参照)。全国販売の場合、最も厳しい基準に合わせるのが一般的だが、州・自治体の規制は頻繁に改正されるため、最新情報の確認が必要だ。さらに、民間でも納入業者に窒息防止警告ラベルの添付を要求している企業もある。例えばアマゾンなど大手プラットフォーム企業は(注2)、独自の警告表示基準を設けている。

表1:窒息防止警告ラベルの添付が必要な州・自治体注:1インチは2.54センチメートル、1平方インチは6.45平方センチメートル、1ポンドは0.453キログラム。
州・市 内容
カリフォルニア州 開口部が25平方インチ超、または容量が125立方インチ超
マサチューセッツ州 開口部直径7インチ以上、かつ縦横の長さの合計が25インチ以上
ニューヨーク州 開口部直径7インチ以上、かつ縦横の長さの合計が25インチ以上
ロードアイランド州 開口部直径5インチ超、ただし容量が5ポンド以下の食品用を除く
バージニア州 縦横の長さの合計が25インチ以上のドライクリーニング用袋
シカゴ市 開口部直径7インチ超、ただし容量が5ポンド以下の食品用を除く

注:1インチは2.54センチメートル、1平方インチは6.45平方センチメートル、1ポンドは0.453キログラム。

出所:各州ウェブサイト

子供の包装材による窒息ではなく、その中身による中毒事故を防止するために包装容器を開けにくくする規制(Child-Resistant Packaging、CRP規制と呼ばれる)としては、連邦毒物予防包装法(Poison Prevention Packaging Act, PPPA)と児童ニコチン中毒防止法(Child Nicotine Poisoning Prevention Act, CNPPA) がある。PPPAは1970年に制定された法律で、特に5歳未満の子供による危険物の誤食・誤飲事故を防ぐために制定され、「子供が開けにくい特殊包装(child-resistant packaging、CR包装)」を義務付けている。PPPAの対象となる「家庭用物質(household substances)」には以下が含まれる(以下は代表例であり、全リストは16CFR1700.14に記載されている)。

  • 有害物質(連邦有害物質法Federal Hazardous Substances Actで定義)
  • 食品、医薬品、化粧品(連邦食品・医薬品・化粧品法Federal Food, Drug, and Cosmetic Actで定義)
  • 家庭用燃料(暖房・調理・冷蔵用)

CNPPAはPPPAの一部として2016年7月に施行され、米国市場に流通する液体ニコチン容器に対し、5歳未満の子供による誤飲・誤食を防止するために「特殊包装(Special Packaging)」となるよう設計を施すことを義務付けている。

PPPAとCNPPAの監督機関は消費者製品安全委員会(CPSC)であり、詳細な規則の制定・施行もCPSCが担う。ただし、CPSCは包装の認証や承認は行わないため、企業は民間の認証機関(例:Intertek, SGS, ULなど)で包装の耐児性・成人使用性試験(注3)を実施し、自社の責任で適合性を確認する必要がある。製品の上市にあたっては、試験結果に基づき、一般適合証明書(General Certificate of Compliance, GCC)を作成・保管する。監督機関は、包装に関する規制はCPSCが、たばこ製品の成分(液体ニコチンなど)の規制についてはFDAが担当している。

中毒事故を起こす可能性のある製品を米国市場で販売する場合、CPSCが定めた「特殊包装」基準に適合する設計・試験を実施し、表示義務や例外規定を正確に理解・運用することが必要となる。CPSCは「特殊包装に関するガイダンス」や、対応できる包装材製造業者、検査機関、コンサルタントのリストを提供している。過去の事例でいえば、中毒の可能性がさほど高くなさそうなマウスウォッシュでさえ、子供が誤飲すれば危険だとみなされ、対象リストに追加されたことがある。各規制の適用範囲が製品によって異なるため、専門家や現地代理人との連携が実務上欠かせない。

食品包装材の材質規制はFDAの管轄

ここまで包装材や容器の形状に関する規制を説明してきたが、包装材そのものの材質に関する規制も存在する。包装材は大きく食品用包装材とそれ以外に分けられる。米国では、食品用包装材は食品接触材(FCM)とも呼ばれ、連邦法によって「間接的な食品添加物」と定義されている。また、連邦規則(CFR)第21条の規定に基づき食品医薬品局(FDA)によって管理されている。詳細はジェトロ「食品輸出にかかる食品接触材規則と留意点:米国」で解説している。

包装材はその成分ごとに試験方法や規格が異なるが、CFR第21条175~177項に適合(189項で禁止されているものを除く)するものが食品用包装材として使用可能だ(表2)。これに該当しない場合、食品接触物質上市前届け出制度(FCN制度)に従い、FDAに届け出が必要だ。

FCMについて日本の制度との差異から誤解が生じやすい点が大きく3点挙げられる。(1)米国では、食品と直接接触しないものであっても、輸送中や開封時に食品に触れる可能性がある場合には、「間接的な食品添加物」とみなされFDA規則の適用対象となることがある。(2)印刷インクや接着剤といった副資材も、食品側に成分が移行する懸念がある場合はFCMとして扱われる。(3)日本では、(現在は消費者庁が運用する)ポジティブリスト制度により、合成樹脂はリスト掲載物質のみ使用可能だが、米国には同様のリストはなく、企業が食品接触物質(FCS)ごとに安全性を立証し、必要に応じてFDAへ通知(FCN)する。FDAは包装材そのものを承認せず、適合性判断は企業が行う点が日本と大きく異なる。

表2:CFR第21条175~177項の内容
条項 内容
175条 間接的な食品添加物を対象とし、接着剤、コーティング剤、ポリマーなどの物質について、食品包装への使用条件を定めている。
176条 紙、板紙、関連コーティングなどの材料を含む、食品と安全に接触できる物質。
177条 ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)などのポリマーを含む、さまざまな種類の物質の規格を定めている。

出所:連邦政府

このほか、食品用包装材を日本から米国に輸出する場合、食品用包装材の区分によっては日本の施設であってもFDAの食品施設登録外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます (注4)が求められることもある。登録は無料だが、偶数年ごとに更新が必要になる。詳細は・ジェトロ「米国 FDA 食品施設登録 Q&A ―ジェトロに寄せられた質問から―PDFファイル(566KB)」「米国食品医薬品局 食品施設登録ユーザーガイド:ステップバイステップ操作手順PDFファイル(1.50MB)」を参照。

食品包装材以外の材質規制は州レベルで

一方、食品用包装材以外の包装材に対する規制としては、健康に被害をもたらす重金属(鉛、水銀、カドミウム、6価クロム)の使用規制が挙げられる。これに関する連邦共通規制は存在しない。このため、北東部知事連合(CONEG)(注5)が1989年に「包装法における毒性モデル規制」を発表し、これを基に北東部19州(注6)を中心に「包装材含有化学物質規制法」を導入し、州レベルで規制している。19州では、規制対象物質の意図的な使用を禁止し、意図的でない含有を100 ppm(0.01重量%)以下に定める。また、CONEGモデル法の普及と州法への実装を促進するために包装有害物質情報センター(Toxics in Packaging Clearinghouse、TPCH外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)が設立されている。

TPCHは2021年、健康に被害をもたらす重金属に関するモデル規制を改正した。モデル法の改正であり、各州が採用しないと法的効力はないが、このモデル法改正では、新たに規制対象化学物質としてフタル酸エステル類と有機フッ素化合物(パーフルオロアルキル化合物・ポリフルオロアルキル化合物:PFAS)を追加した。PFASについては、意図的でない混入も含めて使用を全面的に禁止する方向が示された。モデル規制改正に先立ってワシントン州やメーン州が食品包装材におけるPFAS含有の禁止を法制化したほか、モデル規制改正後は、いくつかの州が改正されたモデル規制の一部を採用、あるいは独自立法のかたちでPFAS規制を導入した。次回は、急速に広がるPFASの州別規制について概観する。


注1:
連邦法15 U.S. Code § 1278 では窒息しそうな製品についての警告表示を義務付け、連邦規則16 CFR § 1500.19で「小さなボール」「ビー玉」「ラテックス風船」「小部品」などの定義と警告表示義務、さらに誤表示された場合の罰則などを定めている。 本文に戻る
注2:
2026年2月現在、アマゾンは出店企業に開口部5インチ(12.7センチメートル)以上のポリ袋に袋サイズに比例した大きさの警告ラベル添付を求めている。 本文に戻る
注3:
米国連邦規格ASTM D3475-20「子供が開けにくい特殊包装の標準分類Standard Classification of Child-Resistant Packages」に合致しているかどうかを試験で確認する。試験手順は16CFRPart1700.20 に定められており、「子供試験と大人試験」の通過が要件。 本文に戻る
注4:
食品、飲料、栄養補助食品 FDA施設登録が正式名称。2002年のバイオテロ対策法により導入され、2011年に米国食品安全強化法(FSMA)で強化され2年毎更新となった。米国市場で販売される食品、飲料、栄養補助食品を製造、加工、包装、または保管する全ての国内外の施設、トレーダー、輸入業者、販売業者などの中間業者が対象。保管施設または倉庫内で食品を取り扱う場合は登録し、食品施設登録番号(FFR番号)を取得することが義務付けられている。 本文に戻る
注5:
米国北東部7州(コネティカット、メーン、マサチューセッツ、ニューハンプシャー、ニューヨーク、ロードアイランド、バーモント)の知事が、地域問題の解決に向けて、州政府間の政策協力や連携を進めることを目的に1976年に設立した無党派組織(本部ワシントンDC)。CONEGはCoalition of Northeastern Governorsの略。 本文に戻る
注6:
2021年までにカリフォルニア、コネティカット、フロリダ、ジョージア、イリノイ、アイオワ、メーン、メリーランド、ミネソタ、ミズーリ、ニューハンプシャー、ニュージャージー、ニューヨーク、ペンシルベニア、ロードアイランド、バーモント、バージニア、ワシントン、ウィスコンシンの19州がCONEGモデルを使って規制法を施行済み。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ調査部米州課アドバイザー
岩井 晴美(いわい はるみ)
1984年、ジェトロ入構。海外調査部欧州課、中東アフリカ課、欧州ロシアCIS課、ロンドン事務所勤務の後、オランダにてコンサルティング会社代表を経て現職。