プラスチック規制の現状と先取権法
米国包装材規制の今(4)

2026年6月4日

本稿では、米国における包装材へのプラスチック使用に関する規制の現状と、それを巡る制度的対立の構造について整理する。2010年代に入り海洋汚染問題などを背景にプラスチック規制への関心が高まり、州、地方自治体を中心に規制の導入が進んだが、それと並行して地方自治体による規制を禁止する「先取権法(Preemption law)」が多くの州で導入され、規制導入を抑制する役割を果たした。近年、規制の在り方を巡って対立が顕在化し、プラスチック規制から米国の民主主義への問いへと変化しつつある。

EPAによる連邦レベルの取り組み

連邦環境保護庁(EPA)の発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによれば、米国のプラスチック廃棄量(2018年、都市廃棄物のみ)は約3,570万トン(総廃棄物の12.2%)に達した。リサイクル率は8.7%、エネルギー回収を伴う燃焼も15.8%にとどまり、残る75.6%が埋め立て処分された(図1参照)。

図1:米国の都市廃棄物中のプラスチック廃棄量(単位:1,000トン)
1960年の39万トン(全て埋め立て処分)から年々拡大し、2018年には合計、3,568万トンが廃棄された。2018年の処分内訳をみると、2,697万トンが埋め立て処分、562万トンがエネルギー回収を伴う燃焼処分され、リサイクルされたのは309万トンだけだった。

注:都市で自治体が回収したプラスチックゴミ。
出所:EPA(2026年3月13日時点のデータ)

都市ごみベースでのプラスチック廃棄量は世界最大規模であり、1人当たり年間廃棄量は130キログラムと突出している(2021年12月8日付ビジネス短信参照)。これを踏まえEPAは2024年11月、「プラスチック汚染防止のための国家戦略外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表した。その内容は、製造段階から廃棄物管理、回収まで、(1)製造段階の汚染低減、(2)素材設計革新、(3)廃棄抑制、(4)廃棄物管理改善、(5)自然環境での回収、(6)河川・海洋への流出抑制の六つの目標を掲げ、2034年から2040年までにプラスチック廃棄物の実質的な削減、流出抑制を目指している。

第2次トランプ政権発足以降、国際的な気候変動枠組みである「パリ協定」からの離脱、補助金の撤回など環境政策全体では見直しの動きがみられるが、2026年5月時点では、プラスチック汚染防止のための国家戦略に対する明確な撤回や修正は確認されていない。国連が主導するプラスチック汚染防止条約交渉にも参加を継続している。とはいえ、連邦レベルでの新規施策は限定的とみられ、実際の規制導入の主体は州および地方自治体となっている。

地方自治体から広がったプラスチック規制

米国におけるプラスチック規制はカリフォルニア州の地方自治体から導入が始まった。1988年にバークレー市が全米に先駆けて発泡ポリスチレン(EPS)容器の使用を禁じ、2007年にはサンフランシスコ市が使い捨てプラスチック袋(ポリ袋)の全面禁止を導入した。2008年にはサンタクルーズ市が、「要求があった場合」に限定して使い捨てストローを提供してもよいとする制度を全米で初めて導入し、この方式はその後全米に広がった。

州外にもプラスチック規制の動きは広がり、2026年5月現在、使い捨てプラスチック袋を州法で禁止している州は12州とワシントンDC、EPS容器を禁止している州は13州とワシントンDCとなっている(表1参照)。

また、これまで州法による規制のなかったアラスカ州、イリノイ州、マサチューセッツ州、ニューメキシコ州などでも規制法案が議会に提出されている。さらに、州法がない州でも禁止や制限、有料化が広く導入されている。

表1:米国各州の有害プラスチック規制状況(2026年5月現在)
項目 州名
州法で使い捨てプラスチックを規制している州 カリフォルニア、コロラド、コネティカット、デラウェア、メーン、ネバダ、ニュージャージー、ニューヨーク、オレゴン、ロードアイランド、バーモント、ワシントン、ワシントンDC
州法で使い捨てポリスチレン(EPS)容器を規制している州 カリフォルニア、コロラド、コネティカット、デラウェア、メーン、メリーランド、ニュージャージー、ニューヨーク、オレゴン、ロードアイランド、バーモント、バージニア、ワシントン、ワシントンDC
一部の自治体が使い捨てプラスチックを規制している州 アラスカ、ハワイ、イリノイ、カンザス、マサチューセッツ、メリーランド、ニューハンプシャー、ニューメキシコ、ペンシルベニア、サウスカロライナ、ユタ、ワイオミング
一部の自治体が使い捨てポリスチレン(EPS)を規制している州 アラスカ、ハワイ、イリノイ、マサチューセッツ、ネバダ、ニューハンプシャー、サウスカロライナ

出所:各州ウェブサイトからジェトロ作成

規制導入を制限する「先取権法」

しかし、規制導入の動きが始まるとこれに対する反発も生じた。プラスチックは、有機フッ素化合物(PFAS)と比べると直接的な健康被害が明確に示されていない一方で、生活の隅々に入り込んだインフラの一部だ。また、生産者側である石油・プラスチック業界は政治への強い影響力を持つ。こうした背景のもと、プラスチック規制に対する強力なロビー活動が展開された。規制反対派は最大かつ最も有効な手段として各州で「先取権法(Preemption law)」の立法を行った。先取権法とは、州議会の頭越しに市町村など地方自治体が独自に規制を導入することを禁止する趣旨の州法だ。業界側の働きかけにより同法の導入(注1)が進み、2026年5月現在、州内の自治体が使い捨てプラスチックやEPS容器を禁止対象とする立法を禁止する先取権法が存在する州は20州に上っている(表2、図2参照)。

反対派の主張は、規制の地域差が企業活動に与える影響への懸念を挙げ、州単位で統一的に規制した方が効率的であるというもので、使い捨てプラスチックやEPS容器を州レベルで規制することに反対するとは言っていない。とはいえ、先取権法導入州では導入していない州に比べて規制導入が遅れており、結果として規制導入を抑制する効果を持っている(注2)

先取権法の内容を見ると、これも州ごとに対象と内容がまちまちだ。導入当初は使い捨てプラスチック袋に限定されていたものが、採用する州が広がるにつれ、より広範囲な「補助容器(Auxiliary container)(注3)に対する規制」が禁止対象とされるようになった。

表2:先取権法が施行されている州(2026年5月現在)注1:オハイオ州は「補助容器」の定義を明示せず、「補助容器を使用できる」という法文により黙示的に規制を禁じている。 注2:テキサス州は、容器・包装材という概念と判例により規制対象を規定。
州名 成立年 先取権法の禁止対象
アリゾナ 2016年 「補助容器」の使用・販売・課税・禁止
アーカンソー 2021年 「補助容器」の使用・販売・処分の禁止・課税・規制
フロリダ 2008年 「補助容器」、プラスチック袋、ラップ類の規制・課税
アイダホ 2016年 「補助容器」の製造・販売・使用・処分の規制・課税
インディアナ 2016年 「補助容器」の製造・販売・使用・処分の規制・課税
アイオワ 2017年 袋・カップなどの補助的な容器の禁止・規制・課税
ミシガン 2017年 「補助容器」の禁止・規制・課税
ミネソタ 2017年 紙・プラスチック製レジ袋の禁止
ミシシッピ 2018年 プラスチック容器・ボトルの禁止・課税
ミズーリ 2015年 レジ袋の禁止・課税・料金設定
モンタナ 2021年 「補助容器」への規制を禁止
ネブラスカ 2020年 容器(袋・カップなど)の規制・基準・料金
ノースカロライナ 2017年 「補助容器」の規制・禁止・課税
ノースダコタ 2019年 「補助容器」(袋・ストローなど)の規制
オハイオ 2021年 「補助容器(注1)」の規制全般
オクラホマ 2019年 「補助容器」の使用・販売・処分の規制・課税
サウスダコタ 2020年 「補助容器」・包装材などの商業的使用制限
テネシー 2019年 「補助容器」の使用・販売・課税・禁止
テキサス 2016年 容器・包装材(注2)の禁止・制限・課税
ウィスコンシン 2016年 「補助容器」の禁止・規制・課税

注1:オハイオ州は「補助容器」の定義を明示せず、「補助容器を使用できる」という法文により黙示的に規制を禁じている。
注2:テキサス州は、容器・包装材という概念と判例により規制対象を規定。

出所:各州ウェブサイトからジェトロ作成

図2:米国のプラスチック規制の現状(2026年5月現在)
2026年5月時点での、米国各州のプラスチック規制の現状を州ごとに色分けした地図。

出所:各州ウェブサイトからジェトロ作成

「先取権法」撤廃の動きも

プラスチック規制を巡る「先取権法」は、依然として多くの州で維持されているが、プラスチック規制推進派が撤廃への動きをあらたに始めている。最初に「先取権法」の撤廃を実現したのはコロラド州だ。同州は2021年に成立した「プラスチック汚染削減法(HB21‑1162)」により、「先取権法(注4)」を撤廃し、2024年7月以降、市・郡が独自に規制を導入したり課金したりできるようになった。

ペンシルベニア州では2019年以降、州予算関連法に地方自治体にプラスチックを規制する立法を禁じる条項(23条)が書き込まれ、事実上の先取権法として機能していたが、2021年末にこの条項は失効した。このほか、フロリダ州(2025年)、アイダホ州(2026年)では「先取権法」撤廃法案が議会に提出された(いずれも不成立)。アリゾナ州では2026年に提出された法案SB1354が審議中だ。

このほか、ミネソタ州では2017年、州議会がレジ袋の禁止措置に関する先取権法を導入し、自治体によるプラスチック袋の禁止を制限した。しかしその後、ミネアポリスに加え、ダルースやエディナなど複数の自治体が、禁止ではなく課金制度を導入することで実質的な規制を進めている。先取権法の存在にもかかわらず、地方自治体が政策余地を模索している例として注目される。

制度的対立から環境問題を超え、民主主義への問いに

「先取権法」を巡って、最も激しい対立がみられたのがモンタナ州だ。同州の先取権法は2021年に導入された。その内容は、地方自治体による立法禁止に加えて、住民投票も禁止対象とする幅広いものである。その結果「民主主義への介入」とする反発が起き、対立が顕在化した。環境団体・市民による提訴を受け、2024年3月にはヘレナ地方裁判所が同法を違憲と判断した。地裁の判決を受け、ボーズマン市民は2024年11月、プラスチック規制条例を制定する住民投票(イニシアチブ)を実施、約3分の2の賛成を得て可決された。しかし、2024年12月、モンタナ州最高裁判所が地裁判決を覆し「先取権法」を有効と判断し、ボーズマン市の条例も無効となった。モンタナ州の事例は、「州による規制統一」と「地域住民の意思」が正面から衝突する構図といえる。

このように、プラスチック規制を巡る制度的対立は、環境問題を超え、地方自治や民主的正統性の問題に変わりつつある。規制の是非そのものではなく「どのレベルで制度を設計するか」が問われている。プラスチック廃棄物は自治体を超えて広域で回収・処理される性質から、自治体単位の規制では十分な効果を発揮しにくい。一方で州による一律規制では、地域の実情や住民の意向を反映しにくくなるという課題もある。

こうした課題への対応として、州レベルで制度を設計しつつ、自治体や事業者を巻き込んで廃棄物管理を行う「拡大生産者責任(EPR)」法が近年、各州で立法化されている。EPR制度は、製品のライフサイクル全体における責任を生産者に求めつつ、州と地方自治体の役割分担を再構築する仕組みだ。その設計・運用においては、従来の先取権法との整合性が論点となることから、同制度の導入が先取権の見直しを促す可能性もある。


注1:
ロビー団体である米国立法交流評議会(ALEC)が、プラスチック規制に関する先取権法の「モデル法案」を2015年に採択、これをもとにALECに所属する各州の保守派州議員が2016年から2020年にかけて、複数州で立法化した。 本文に戻る
注2:
先取権法は、包装材に限らず、(1)労働・経済政策(最低賃金など)、(2)公共安全(銃規制など)、(3)公衆衛生・生活規制(電子たばこ規制など)、(4)産業・インフラ関連(UBER規制など)、(5)社会・政治分野などで広範に立法されている。 本文に戻る
注3:
小売り取引に付随して商品を保持・運搬・保護するために提供される用具の総称。広い範囲をカバーするため、包装材規制導入に消極的な州ほど使用頻度が高い用語。 本文に戻る
注4:
Colorado Revised Statutes §25‑17‑104 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ調査部米州課アドバイザー
岩井 晴美(いわい はるみ)
1984年、ジェトロ入構。海外調査部欧州課、中東アフリカ課、欧州ロシアCIS課、ロンドン事務所勤務の後、オランダにてコンサルティング会社代表を経て現職。