米国プラスチックごみ排出量4,200万トンで世界最多、米報告書

(米国)

ニューヨーク発

2021年12月08日

米国の2016年のプラスチックごみは約4,200万トンで世界最多であることが、12月1日に米国政府に提出された報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで明らかとなった。当該報告書は、2020年12月に成立した米国の海洋プラスチック廃棄物に関する超党派の法律「Save Our Seas 2.0」法に基づき、国立科学アカデミーなどの有識者によって作成された。

報告書によると、世界のプラスチック生産量は年々増加しており、2015年の生産量は3億8,100万トンと1966年(2,000万トン)の約20倍になっている。その結果、廃棄量も増加しており、海洋に流出するプラスチック廃棄物は世界全体で年間800万トンと推定され、これはごみ収集車1台分のプラスチックを毎分、海に投棄する量に等しいとされている。さらに、現在の慣行が改善されなければ2030年までにプラスチック廃棄物の海洋投棄量は年間最大5,300万トンまで拡大し、海洋生態系の破壊や水質汚染といった環境的・社会的危機につながるとして、プラスチック生産削減など対策の必要性を訴えた。

報告書では、米国のプラスチック生産・廃棄に関する数字も示されている。2019年の世界生産量3億6,800万トンのうち、北米地域での生産量は7,000万トンを占めている。また、2016年の米国のプラスチック廃棄物は約4,200万トンと、3位の中国(約2,200万トン)の約2倍に相当し、EU加盟国全てを合わせた量(約3,000万トン)をも上回るとしている。さらに、米国人1人当たりの年間排出量は130キロで、その値は主要国・地域と比べても約2~8倍と突出しており、世界で最もプラスチックを廃棄する国とされている。

プラスチックはその生産と焼却の過程で、多くの温室効果ガス(GHG)を排出することも問題視されている。民間調査会社シエルの推計によると、プラスチックの生産・焼却により生じたGHGは2019年に8億5,000万トン以上と推計され、これは500メガワット規模の石炭火力発電所189カ所分のGHG排出量に相当する。プラスチックごみの廃棄や処分過程に関するこれらの状況を踏まえ、環境保護庁(EPA)は、2030年までにリサイクル率50%達成のための「国家リサイクル戦略」を発表したが、プラスチック生産の削減自体に焦点を当てていないといった観点から、EPAの取り組みは不十分という指摘を受けていた(2021年11月19日記事参照)。同戦略は、利害関係者と今後協議の上、詳細な実装計画が策定される予定だが、今回の報告書を受けて、計画がより厳しいものになるかが注目される。

(宮野慶太)

(米国)

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