米中間選挙の上院選、共和党優勢州でも議席奪還の可能性を探る民主党
2026年7月3日
連邦議会上院の各党議席数は、共和党53議席、民主党47議席と僅差だ。民主党が2026年11月の中間選挙で多数派となるには、現有議席を守るだけでなく、共和党が保有する4議席を奪還しなければならない。民主党はミシガン州、ジョージア州などの議席を守りつつ、やや優勢に傾くノースカロライナ州に加え、共和党が優勢とされるテキサス州やオハイオ州などでも議席獲得を目指す。(表1、表2参照)。
本稿の勝敗予想格付けは、選挙情報サイトのクック・ポリティカル・レポート(CPR)の7月1日付発表に基づく。格付けは、(当選)確実、かなり優勢、やや優勢、接戦の順となる。
ノースカロライナ州:民主党の期待がかかるクーパー元知事
ノースカロライナ(NC)州とメーン州は共和党議席だが、民主党にとっては議席奪還の機会とみられている。
NC州では、減税・歳出法案「大きく美しい1つの法案」の審議を巡ってドナルド・トランプ大統領と対立した現職のトム・ティリス上院議員が再選を目指さないと表明した。3月に予備選挙が行われ、民主党のロイ・クーパー前知事、共和党はトランプ氏が支持する共和党全国委員会のマイケル・ワトリー前委員長がそれぞれ勝利し、各党の候補者となった(2026年3月5日付ビジネス短信参照)。
激戦州の同州で、トランプ氏は大統領選で3回(2016年、2020年、2024年)とも勝利している。一方で、民主党はクーパー氏の人気や勝利実績、医療保険制度といった重要課題を背景に、優位になると期待している。
CPRは4月に勝敗予想を「接戦」から、民主党にとって「やや優勢」に変更した。
メーン州:進歩派民主党候補が躍進
メーン州では6月に予備選が行われ、共和党の現職スーザン・コリンズ氏が再選を目指す。民主党の候補者はグラハム・プラトナー氏(カキ養殖業者、元海兵隊員)だ(2026年6月11日付ビジネス短信参照)。州知事のジャネット・ミルズ氏は、民主党予備選を想定した世論調査ではプラトナー氏が優位な状況が続いたことから、4月に選挙戦からの撤退を表明した(2026年2月25日付、2026年5月1日付ビジネス短信参照)。
プラトナー氏の予備選での勝利には、進歩派として著名なバーニー・サンダース連邦上院議員(バーモント州)の支持が大きく貢献したとみられる。民主党指導部はミルズ氏を支持していたため、党内ではプラトナー氏への支持を巡って意見が分かれている。
| 州名 | 現職議員 |
CPRの選挙予想格付け (7月1日) |
予備選日程 | 民主党候補 | 共和党候補 | トランプ氏が支持する候補者 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| アラバマ | トミー・ターバビル氏* | 確実 | 5月19日 | エベレット・ウェス氏 | バリー・ムーア氏 | 〇 |
| アラスカ | ダン・サリバン氏 | 接戦 | 8月18日 | 未定 | 未定 | 現職 |
| アーカンソー | トム・コットン氏 | 確実 | 3月3日 | ハリー・ショフナー氏 | 現職 | 〇 |
| フロリダ | アシュレー・ムーディー氏 | 確実 | 8月18日 | 未定 | 未定 | — |
| アイダホ | ジム・リッシュ氏 | 確実 | 5月19日 | デビッド・ロス氏 | 現職 | 〇 |
| アイオワ | ジョニ・アーンスト氏* | やや優勢 | 6月2日 | ジョシュ・トゥレク氏 | アシュレー・ヒンソン氏 | 〇 |
| カンザス | ロジャー・マーシャル氏 | 確実 | 8月4日 | 未定 | 未定 | 現職 |
| ケンタッキー | ミッチ・マコネル氏* | 確実 | 5月19日 | チャールズ・ブッカー氏 | アンディ・バー氏 | 〇 |
| ルイジアナ | ビル・キャシディ氏 | 確実 | 5月16日 | ジェイミー・デービス氏 | ジュリア・レトロ―氏 | 〇 |
| メーン | スーザン・コリンズ氏 | 接戦 | 6月9日 | グラハム・プラトナー氏 | 現職 | — |
| ミシシッピー | シンディ・ハイド・スミス氏 | 確実 | 3月10日 | スコット・コロン氏 | 現職 | 〇 |
| モンタナ | スティーブ・デーンズ氏 | 確実 | 6月2日 | アラニ・バンクヘッド氏 | カート・アルム氏 | 〇 |
| ネブラスカ | ピート・リケッツ氏 | かなり優勢 | 5月12日 | シンディー・バーバンク氏 | 現職 | 〇 |
| ノースカロライナ | トム・ティリス氏* | (民主党にとって)やや優勢 | 3月3日 | ロイ・クーパー氏 | マイケル・ワトリー氏 | 〇 |
| オハイオ | ジョン・ハステッド氏 | 接戦 | 5月5日 | シェロッド・ブラウン氏 | 現職 | 〇 |
| オクラホマ | アラン・アームストロング氏* | 確実 | 6月16日 | 決選投票(8月25日) | ケビン・ハーン氏 | 〇 |
| サウスカロライナ | リンゼー・グラハム氏 | 確実 | 6月9日 | アニー・アンドリュース氏 | 現職 | 〇 |
| サウスダコタ | マイク・ラウンズ氏 | 確実 | 6月2日 | ジュリアン・ボーディオン氏 | 現職 | 〇 |
| テネシー | ビル・ハガティ氏 | 確実 | 8月6日 | 未定 | 未定 | 現職 |
| テキサス | ジョン・コーニン氏 | やや優勢 | 3月3日 | ジェームズ・タラリコ氏 | ケン・パクストン氏 | 〇 |
| ウエストバージニア | シェリー・ムーア・カピート氏 | 確実 | 5月12日 | レイチェル・アンダーソン氏 | 現職 | 〇 |
| ワイオミング | シンシア・ラミス氏* | 確実 | 8月18日 | 未定 | 未定 | ー |
注1:*印は2026年中間選挙に立候補しない現職議員。
注2:選挙予想格付けはノースカロライナ州を除き、共和党にとっての優劣で、(当選)確実、かなり優勢、やや優勢、接戦の順となる。
注3:フロリダ州はマルコ・ルビオ氏、オハイオ州はJ.D.バンス氏がトランプ政権に閣僚入りしたことに伴う特別選挙が実施される。
注4:トランプ氏は、ワイオミング州で共和党候補ハリエット・ヘージマン氏を支持する。
出所:各種報道、クック・ポリティカル・レポート(CPR)、バロットペディアを基にジェトロ作成
ジョージア州:民主党にとってやや優勢に変更
ジョージア州の民主党現職ジョン・オソフ氏は、トランプ氏が2024年の大統領選で勝利した州で、再選を目指す唯一の民主党上院議員となる。オソフ氏は共和党の最大のターゲットとされ、CPRの勝敗予想は「接戦」とされていたが、4月に民主党にとって「やや優勢」に変更された。
5月の予備選挙で、オソフ氏が民主党候補となった。決着がつかなかった共和党は、6月に決選投票を行い、直前にトランプ氏が支持を表明したマイク・コリンズ連邦下院議員が、ブライアン・ケンプ州知事が支持するデレク・ドゥーリー氏(フットボールコーチ)を破り、本選に進んだ。
オハイオ州:民主党候補ブラウン氏が接戦に持ち込む
オハイオ州では、5月に予備選が実施され、副大統領就任に伴い辞任したJ.D.バンス氏の後任として就任した共和党のジョン・ハステッド上院議員と、民主党のシェロッド・ブラウン前上院議員が本選で対戦する。
ブラウン氏はこれまで労働者階級の擁護者としてアピールしており、民主党から離反しつつある労働者階級の有権者をいかに獲得できるかがカギとなる。また、イラン戦争による経済的影響、特にガソリン価格の高騰を重点的に争点としてきた。
CPRは4月に勝敗予想を、共和党にとって「やや優勢」から「接戦」に変更した。
ミシガン州:進歩派民主党候補が本選に進めるか
ミシガン州では、民主党の現職ゲイリー・ピーターズ氏が再選を目指さないと表明した。
民主党の主要候補は、連邦下院議員のヘイリー・スティーブンス氏、州議会上院議員のマロリー・マクモロー氏、元ウェイン郡保健局長のアブドゥル・エルサイード氏だ。スティーブンス氏は穏健派、エルサイード氏は進歩派、マクモロー氏はその中間とみられている。
前述のサンダース氏はエルサイード氏を支持しており、全米自動車労働組合(UAW)もエルサイード氏への支持を表明した。
民主党内では、ガザ地区紛争で強硬な立場を取るエルサイード氏が本選に進出すれば、民主党にとって勝利が難しくなるとの懸念がある。8月に行われる予備選の結果が注視される。
共和党からは、マイク・ロジャース元連邦下院議員が立候補している。
6月の世論調査によれば、ロジャース氏と民主党の主要候補との直接対決を想定した問いでは、ロジャース氏の支持率はスティーブンス氏とマクモロー氏を上回ったが、エルサイード氏はロジャース氏を上回る結果となった(注1)。
| 州名 | 現職議員 |
CPRの選挙予想格付け (7月1日) |
予備選日程 | 民主党候補 | 共和党候補 |
|---|---|---|---|---|---|
| コロラド | ジョン・ヒッケンルーパー氏 | 確実 | 6月30日 | 現職 | マーク・ベイズリー氏 |
| デラウェア | クリストファー・クーンズ氏 | 確実 | 9月15日 | 未定 | 未定 |
| ジョージア | ジョン・オソフ氏 | やや優勢 | 5月19日 | 現職 | マイク・コリンズ氏 |
| イリノイ | ディック・ダービン氏* | 確実 | 3月17日 | ジュリアン・ストラットン氏 | ドン・トレーシー氏 |
| マサチューセッツ | エド・マーキー氏 | 確実 | 9月1日 | 未定 | 未定 |
| ミシガン | ゲーリー・ピーターズ氏* | 接戦 | 8月4日 | 未定 | 未定 |
| ミネソタ | ティナ・スミス氏* | かなり優勢 | 8月11日 | 未定 | 未定 |
| ニューハンプシャー | ジーン・シャヒーン氏* | やや優勢 | 9月8日 | 未定 | 未定 |
| ニュージャージー | コーリー・ブッカー氏 | 確実 | 6月2日 | 現職 | ジャスティン・マーフィー氏 |
| ニューメキシコ | ベン・レイ・ルーハン氏 | 確実 | 6月2日 | 現職 | ラリー・マーカー氏 |
| オレゴン | ジェフ・マークリー氏 | 確実 | 5月19日 | 現職 | デビッド・スミス氏 |
| ロードアイランド | ジャック・リード氏 | 確実 | 9月8日 | 未定 | 未定 |
| バージニア | マーク・ワーナー氏 | 確実 | 8月4日 | 未定 | 未定 |
注1:*は2026年中間選挙に立候補しない現職議員。
注2:選挙予想格付けは民主党にとっての優劣で、(当選)確実、かなり優勢、やや優勢、接戦の順となる。
注3:トランプ氏はジョージア州で共和党候補マイク・コリンズ氏、ニューハンプシャー州でジョン・スヌヌ氏を支持する。
出所:各種報道、クック・ポリティカル・レポート(CPR)、バロットペディアを基にジェトロ作成
テキサス州:民主党注目候補とトランプ氏が支持する共和党候補の対戦
テキサス州、アイオワ州、アラスカ州は共和党の勢力が強いとされるが、有力な民主党候補が擁立されたことで、民主党にとってやや優位な状況になっている。
テキサス州では、3月の民主党予備選でラテン系有権者の票を集めたジェームズ・タラリコ氏が勝利した(2026年3月6日付ビジネス短信参照)。
共和党予備選挙は決着がつかず、現職ジョン・コーニン氏とケン・パクストン氏(州司法長官)による5月の決選投票が行われた。トランプ氏は決選投票の直前にパクストン氏への支持を表明し、パクストン氏が勝利した(2026年6月1日付ビジネス短信参照)。汚職や職権乱用などを巡り問題視されたこともあるパクストン氏が本選に進むことで、民主党のタラリコ氏にとって有利になったとみられ、CPRは5月に予想格付けを共和党にとって「かなり優勢」から「やや優勢」に変更した。
タラリコ氏は現職コーニン氏の州への貢献に感謝し、ともに公共奉仕の重要性を認識しているという共通点を挙げ、敗退したコーニン氏の支持者を取り込もうとしている。
6月の世論調査(注2)では、本選を想定した問いで、タラリコ氏とパクストン氏がほぼ同率だった。
アイオワ州では、現職の共和党ジョニ・アーンスト氏は立候補しない。6月の予備選で、共和党はトランプ氏が支持するアシュレー・ヒンソン氏(連邦下院議員)、民主党はジョシュ・トゥレク氏(州下院議員)がそれぞれ勝利し、各党の候補者となった。パラリンピック選手だったトゥレク氏が本選に進むことを受けて、CPRの選挙予想は共和党にとって「かなり優勢」から「やや優勢」に変更した。
アラスカ州の連邦上院選では、民主党のメアリー・ペルトラ氏が1月に立候補を表明した。同氏は、共和党が優勢な同州で連邦下院議員を務めた実績(2022~2025年)がある。共和党からは現職のダン・サリバン氏が立候補している。8月に予備選(注3)が行われる。
ペルトラ氏が2026年1月に立候補を表明したことを受け、CPRの選挙予想は共和党にとって「かなり優勢」から「やや優勢」に変更したが、7月1日に更に「接戦」に変更した。
ミネソタ州:民主・共和両党とも候補者支持で分裂
ミネソタ州では、民主党の現職ティナ・スミス氏が引退を表明している。
民主党の主要候補者は、ペギー・フラナガン副知事とアンジー・クレイグ州下院議員だ。フラナガン氏は進歩派のサンダース氏の支持を受け、クレイグ氏は民主党主流派から支持を受けている。6月の世論調査(注4)では、民主党予備選を想定した問いで、クレイグ氏(41%)の支持率がフラナガン氏(36%)を上回った。
共和党では、ミネソタ州共和党は、海軍特殊部隊に所属していたアダム・シュワルツ氏を公認の候補者としている。一方で、全米共和党上院委員会(NRSC)はスポーツ・キャスターのミシェル・タフォヤ氏を支持している。共和党予備選を想定した世論調査(注4)で、タフォヤ氏の支持率が36%となり、他候補を大きくリードしている。
これまで実施された予備選では、共和党が上院議席を保有する州の多くで、トランプ氏が支持する候補者が順当に本選に進んでいる。中東情勢次第では経済状況が好転し、トランプ氏の支持率も上昇し、同氏の影響力が本選に向けて増す可能性がある。共和党優勢州で、民主党の期待を背負う候補者がどこまで可能性を広げるのかが注視される。
- 注1:
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ミッチェル・リサーチ・アンド・コミュニケーションが6月11~13日に実施した世論調査。対象者はミシガン州の投票予定者827人。直接対決の結果は、ロジャース氏(42%)対エルサイード氏(47%)、ロジャース氏(47%)対マクモロー氏(41%)、ロジャース氏(45%)対スティーブンス氏(41%)。
- 注2:
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テキサス大学が2026年6月5~12日に実施した世論調査。対象者はテキサス州の登録有権者1,200人。パクストン氏の支持率43%、タラリコ氏42%。
- 注3:
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アラスカ州の予備選では、政党に関係なく全候補者が対象となり、上位4人が本選に進む。
- 注4:
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KSTPとサーベイUSAが2026年6月11~16日に実施した世論調査。対象者はミネソタ州の民主党支持者513人、共和党支持者450人。
- 執筆者紹介
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ジェトロ調査部米州課
松岡 智恵子(まつおか ちえこ) - 展示事業部、海外調査部欧州課などを経て、生活文化関連産業部でファッション関連事業、ものづくり産業課で機械輸出支援事業を担当。2018年4月から現職。





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