特集:コロナ禍の中南米進出日系企業は今日系企業、新型コロナ禍から順調に回復(メキシコ)
USMCAと米中摩擦でプラスの影響も

2022年2月9日

ジェトロは2021年8~9月に「2021年度海外進出日系企業実態調査(中南米編)」を実施した。本レポートでは、メキシコ進出日系企業249社(製造業143社、非製造業106社)から得た回答を基に報告する。在メキシコ日系企業の今後のビジネス展開に加え、2020年7月1日に発効した米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)や、米中貿易摩擦による影響などについて分析する。

6割超の企業がコロナ禍前の営業利益水準に回復

2021年の営業利益見込みについて聞いたところ、「黒字」と回答した企業は54.8%に上った。前回調査(2020年度調査)で設定した同種の質問への回答(40.2%)から、14.6ポイント増加した。一方、「赤字」と回答した企業の割合は前回調査の40.2%から27.2%へ大幅に低下した(図1、2参照)。2021年の営業利益見込みが前年に比べどうなるかとの問いに対しても、回答企業の約半数(48.7%)が「改善する」と回答。新型コロナウイルス禍で落ち込んだ2020年から回復している企業の姿が全体像として浮かび上がった(図3参照)。

さらに、新型コロナ禍以前の水準に戻りつつあることも、調査結果から明らかになった。新型コロナ感染拡大前の2019年と比べて2021年の営業利益見込みはどうかとの問いに、「改善」が37.9%、「横ばい」が27.2%となり、両回答を合わせると65.1%に上った。

図1:2020年の営業利益見込み
(2020年度調査)
「黒字」の回答は40.2%、「均衡」の回答は19.5%、「赤字」の回答は40.2%。

出所:ジェトロ「2021年度海外進出日系企業実態調査(中南米編)」から作成

図2:2021年の営業利益見込み
(2021年度調査)
「黒字」の回答は54.8%、「均衡」の回答は18.0%、「赤字」の回答は27.2%。

出所:ジェトロ「2021年度海外進出日系企業実態調査(中南米編)」から作成

図3:前年と比べた2021年の営業利益見込み
「改善」の回答は48.7%、「横ばい」の回答は33.0%、「悪化」の回答は19.7%。

出所:ジェトロ「2021年度海外進出日系企業実態調査(中南米編)」から作成

2022年の営業利益見通しについても、前年に比べ「改善する」との回答が63.7%に上った。改善する理由として最も多く挙げられたのは「現地市場での売り上げ増加」(78.5%)だった。

ただし、この結果をもってメキシコの景気が上向いていると判断するのはやや早計だ。なぜなら、この理由を挙げた企業の約6割は自動車産業に関連する製造業のためだ。日系完成車メーカーは数社なので、大半は自動車産業関連のサプライヤー企業ということになる。メキシコ国内で製造した各種部品は完成車など最終製品に組み込まれ、その大半が米国に輸出される。そのため、先述の回答のうち6割程度は、米国の需要増を見通した結果と解釈した方がより実態に近いだろう。

一方、2022年の営業利益見通しが「悪化する」とした企業は8.9%、企業数にして21社と少なかった。悪化の理由として最も多かったのは、「現地市場での売り上げ減少」。11社(52.4%)が選択した。このうち製造業は4社、非製造業は7だった。次いで多かったのが「調達コストの上昇」で6社(28.6%)が選択した。「その他」(6社、28.6%)を選んだ企業の自由記述を見ると、「日系企業の現地調達促進による輸入の減少」「法人税低税率国にあるグループ会社からの輸入金額が損金算入できなくなったため」などが挙げられていた。

現地調達推進の理由は「通商問題」より「コスト低減」

今後の事業展開の方向性を聞いたところ、全回答249社の24.1%に当たる60社が「(何らかのかたちで)調達を見直す」と回答した。見直す内容については(複数回答可)、56社(全回答の22.5%)が「現調達先を見直す(注1)」、29社(同11.6%)が「調達先を複数化する(複数調達化)」と回答した。

調達先を見直すと回答した企業に見直し対象の調達先(国)を聞いたところ、回答の多い順に、日本(18社)、米国(11社)、中国(9社)だった。見直し後の調達先で多かったのはメキシコ(16社)と米国(10社)だった。つまり、調達先を見直すと回答した企業の多くは、日本、中国、米国からの調達を減らし、メキシコまたは米国からの調達を増やす計画を持っているということだ。米国が調達を減らす対象と増やす対象の双方に挙げられている理由は、裾野産業が脆弱(ぜいじゃく)なメキシコでは必要な部品・材料が現状では十分調達できないケースも多いためだ。一方、メキシコからの調達を見直すとした企業は2社で、うち1社は米国に、1社は中国に変更するとの回答だった。

何らかのかたちで調達を見直すと回答した60社にその理由を聞いたところ(複数回答可、図4参照)、「調達先を見直す」とした56社のうち36社が「生産コストの適正化(低減)」を理由に挙げた。次いで12社が「通商環境の変化」、6社が「新型コロナの感染拡大」を理由に挙げた。調達先を変更する上では、USMCAや米中摩擦に代表される通商環境の変化以上に、生産コストの低減が強い動機になっているとの結果になった。他方、「複数調達化」と回答した29社については、9社が「生産コストの適正化(低減)」、8社が「新型コロナの感染拡大」、6社が「通商環境の変化」を理由に挙げた。これらの結果について別の見方をすると、新型コロナによる調達リスクに対しては、本項目に回答した企業の約6割(14社のうち8社)が「複数調達化」で対応、通商環境の変化に対しては約7割(18社のうち12社)が「調達先を見直す」ことで対応、生産コストの低減に対しても8割(45社のうち36社)が「調達先を見直す」ことで対応すると回答したことになる。

図4:調達の見直し内容とその理由(n=60)
調達の見直しの具体的な内容として「調達先の見直し」を選んだ企業70社のうち、6社が「新型コロナ感染拡大」、12社が「通商環境の変化」、36社が「生産コストの適正化」、6社が「FTAなど通商協定の利用」、10社が「その他」と回答。見直しの具体的な内容として「複数調達化(マルチプル・ソーシング)の実施」を選んだ企業33社のうち、8社が「新型コロナ感染拡大」、6社が「通商環境の変化」、9社が「生産コストの適正化」、2社が「FTAなど通商協定の利用」、8社が「その他」と回答。見直しの具体的な内容として「デジタル化(ECサイトの活用など)の推進」を選んだ企業6社のうち、2社が「新型コロナ感染拡大」、2社が「生産コストの適正化」、1社が「人権問題への配慮」、1社が「その他」と回答。

出所:ジェトロ「2021年度海外進出日系企業実態調査(中南米編)」から作成

製造業の3割近くが新規設備投資増強と回答

今後の生産体制に関する設問に回答した249社(うち製造業143社、非製造業106社)のうち、22.9%にあたる57社が「(何らかのかたちで)生産を見直す(注2)」と回答した。57社のうち52社が製造業、5社が非製造業だった。52社の製造業について見直し内容を見ると(複数回答可)、39社(製造業143社の27.3%)が「新規投資/設備投資を増強する」と回答。理由として、16社が「生産コストの適正化(低減)」、15社が「新モデルや新規受注への対応」を挙げた。このほか、米中貿易摩擦を受けて「米国向けの生産のための設備投資」を行うと回答した企業もあった。

また、14社が「生産地を見直す」と回答した。うち4社がメキシコを見直し対象地に挙げた。このうち、メキシコから撤退するのは1社だけ。3社はメキシコ国内での見直しを行うとの回答だった。

変更後の生産地をメキシコとした企業は3社で、日本あるいは米国から生産を移管すると回答した。その他は、メキシコ国外間で生産地を見直すとのものだったため、メキシコの拠点に直接影響を及ぼすものではなかった。なお、非製造業5社のうち4社が「新規投資を実施する」と回答している。

新型コロナの影響で現調率が前回調査比で低下

部品・原材料の調達状況を聞いたところ、製造業各社の部品・原材料の現地調達率(各社回答の平均値)は24.6%と、前回調査の30.8%から低下した。代わりに、日本からの調達割合が前回調査の31.7%から35.8%に上昇した。

また、現地調達の内訳を見ると、現地日系企業からの調達割合が前回調査の46.0%から53.2%に上昇した。一方で、地場企業からの調達割合は前回調査の41.5%から37.4%に低下した(図5、6参照)。前回調査では現地調達の割合が増える中で、地場企業からの調達も一定程度進展しているとの兆候が見られた。しかし、2021年度調査ではほぼ逆の現象が起きたことになる。この背景には、コロナ禍からの回復局面を迎え、輸出先の米国で需要が急増したことがあったと考えられる。片やメキシコの現地サプライヤーでは、減産や回復遅れなどがなおも続いており、国内供給態勢が追い付かなかった。その結果として、日本や他の進出日系企業からの調達を一時的に増やす、あるいは複数購買(調達先の複数化)を進めた、ことなどが要因になったと考えられる。

図5:原材料・部品の調達先の内訳(製造業)
2019年は147社のうち36.1%が日本から調達。24.5%が現地から調達、16.7%が米国から調達、9.9%が中国から調達、5.8%がASEANから調達、7.0%がその他から調達。2020年は136社のうち、31.7%が日本から調達、30.8%が現地から調達、17.7%が米国から調達、8.6%が中国から調達、5.2%がASEANから調達、6.0%がその他から調達。2021年は124社のうち、35.8%が日本から調達、24.6%が現地から調達、16.8%が米国から調達、9.7%が中国から調達、6.0%がASEANから調達、7.1%がその他から調達。

出所:ジェトロ「2021年度海外進出日系企業実態調査(中南米編)」から作成

図6:原材料・部品の調達先の内訳【現地】(製造業)
2019年は97社のうち、46.2%が現地進出日系企業から調達、41,7%が地場企業から調達、12.1%がその他外資企業から調達。2020年は102社のうち46.0%が現地進出日系企業から調達、41.5%が地場企業から調達、12.5%がその他外資企業から調達。2021年は93社のうち、53.2%が現地進出日系企業から調達、37.4%が地場企業から調達、9.5%がその他外資企業から調達。

出所:ジェトロ「2021年度海外進出日系企業実態調査(中南米編)」から作成

人件費と労働力をリスクと見なす声増加

投資環境面のメリットとリスクに関する設問への回答では、人件費と労働力に関する評価で、前回調査とは少し異なる結果が見て取れた。

「人件費の安さ」をメリットと回答した割合は47.6%あった。「市場規模/成長性」(63.7%)に次いで多い回答だ。もっとも、前回調査でメリットと回答した割合は52.7%に上っていた。一方、「人件費の高騰」をリスクと回答した割合は32.3%。前回調査の26.2%から上昇した。また、「労働力不足・人材採用難(一般ワーカー等)」をリスクとした割合も7.8%から10.1%に上昇した。2019年以降毎年実施されている最低賃金の引き上げや、2021年から法制化された人材派遣の原則禁止などがこの背景にあるとみられる(注1)。

「税制・税務手続きの煩雑さ」や「法制度の未整備・不透明な運用」をリスクとする回答も前回調査比で増加した。前者については、現政権が進める公務員給与削減が離職などを誘発し、その結果、行政機関で現場人員不足が生じた影響が考えられる。また、後者については人材派遣の原則禁止のほか、石油・電力分野の法改正などが影響したものとみられる。いずれにしろ、現政権による方針や制度の大幅な変更がこの回答結果の背景にあると言えるだろう。

USMCAの原産地規則について、プラス効果がマイナスを上回る

調査では、引き続きUSMCAの利用率に関して問いを設けた。米国またはカナダに輸出していると回答した83社の67.5%(56社)がUSMCAを「利用している」と回答。前回調査では同78社の74.4%(58社)が利用していると回答していた。他方、「利用検討中」との割合が前回調査の16.7%から今回調査では7.2%に減少した。代わって、「利用していない(予定なし)」が前回の9.0%(7社)から25.3%(21社)に増加した。USMCAは2020年7月1日に発効したため、前回調査(2020年9月実施)では前身の北米自由貿易協定(NAFTA)を前提に回答した企業が多かったと思われる。今回調査からは、USMCAが実際発効した結果が反映されたかたちだ。この間、原産地規則の大幅な変更などの問題が指摘されていた。だとしても、NAFTAを利用していた企業は引き続きUSMCAを利用しているだろうことがうかがえる。一方で、前回調査時は検討中としていた企業では、結局、利用を断念したケースも多かったとみられる。

USMCAの影響については、有効回答(241社)の65.2%が「影響はない」または「分からない」と回答した。また、「プラスの影響あり」との回答が「マイナスの影響あり」を4.6ポイント上回った(図7参照)。何らかの影響ありと回答した企業に対応策を聞いたところ、6社が調達先を変更する、3社が生産地を変更すると回答。前者では日本、アジア、米国からメキシコに変更する、後者は3社とも日本からメキシコに変更するというものだった。

図7:USMCAの発効が2021年の経営に与える影響(n=241)
「全体としてマイナスの影響がある」と回答したのは9.5%、「全体としてプラスの影響がある」と回答したのは14.1.%、「マイナスとプラスの影響が同程度」と回答したのは10.4%、「影響はない」と回答したのは34.9%、「分からない」と回答したのは30.3%、「その他」の回答したのは0.8%。

出所:ジェトロ「2021年度海外進出日系企業実態調査(中南米編)」から作成

USMCAの新原産地規則が与える影響については、マイナスと回答した企業が36社あった。一方、プラスと回答した企業も32社あった。

原産地規則、とりわけ自動車分野の規則はNAFTAから大幅に変更され、かつ域内付加価値の要求水準が著しく引き上げられた。さらに詳細を聞いたところ、新原産地規則によって「調達先の変更を余儀なくされた」とする企業が25社あった。一方、逆に「引き合いや供給先が増加した」とする企業が30社あり、プラス効果がマイナス効果を上回った。新原産地規則(注2)の1つを構成する「鉄鋼・アルミニウムの域内調達比率70%の達成義務」と「賃金条項への対応」はマイナス効果が高いため、新原産地規則全体に対する評価としてはマイナスがプラスを上回ったが、新原産地規則の施行によって域内調達へのインセンティブが働くことで、部品・材料メーカーを中心にプラス効果を得たとする企業が多かったとみられる。実際、本レポートの冒頭で解説した2022年の営業利益見通しについての設問で「改善」と回答した企業の中には「USMCAの原産地規則が追い風になるため」と回答した企業もあった。特に、自動車部品を扱う企業の中には「完成車メーカーからのUSMCA対応を考慮に入れた域内生産拡大要望」などを受け、今後1~2年の事業展開を「拡大」させると回答した企業もあった。また、米国通商拡大法232条の適用除外(注3)など、米国による関税引上げリスクの回避がUSMCAによって担保されていることを評価する回答も多かった。

米中摩擦で思わぬ商機も

米中摩擦の影響については、有効回答226社のうち68.7%が「影響はない」または「分からない」、30.5%が「影響あり」と回答した。影響ありの中では「マイナスの影響あり」が12.8%、「プラスの影響あり」が10.7%でマイナスがプラスを2.1ポイント上回った。(プラス、マイナスを問わず)「影響あり」と回答した企業に具体的な影響を聞いたところ、「引き合いが増加した」との回答が最も多かった(有効回答の15.0%)。引き合い増加の具体例として、「北米の顧客が調達部材を中国からメキシコに切り替えた」「顧客が中国から北米(米・メキシコ)に生産拠点を移管した」「対米輸出向け生産が増加した」「中国企業がメキシコに新規進出した」などが挙げられた。また「引き合いが増加した一方で、中国の競合他社がメキシコ市場に積極参入してきたことは自社にとってマイナスだ」とする回答や、「競合他社が製品の対米供給を優先させた結果、メキシコおよび中南米市場での競合状況が緩和された(自社に有利になった)」とのコメントもあった。後者のコメントは、在米企業が中国から他国に調達先を変更するという流れの中で、回答企業の競合他社が米国向け輸出を優先したことでメキシコや中南米市場に「隙間」が生まれ、回答企業にとってメキシコや中南米市場での商機が増したということだ。

CPTPPの活用促進や脱炭素への取り組みが今後の課題

今回の調査結果を見ると、コロナ禍の物流の影響や、新しい制度への対応のためにサプライチェーンを見直す企業が一定数みられるようになったことが分かった。また、原産地規則が厳しくなったことから、デメリットの方が一見大きいようにみられていたUSMCAの影響も、プラスと捉える企業が予想より多かったことは意外な結果だった。

一方で、メキシコが締結しているFTAやEPAを 活用するに当たっての問題点に関する設問(注4)では、「特に問題はない」と回答する企業が38.1%と最も多かった。ただし、「社内に対応できる人材が不足している」との回答も24.7%あった。

さらに、日本からメキシコに輸入している企業にCPTPPの利用状況を聞いた設問では、前回調査に比べ「利用中」との回答が2.3ポイント増加した。しかし、「検討中」が9.3ポイント減、「利用の予定なし」が9.3ポイント増加した。一方、日メキシコEPAの利用状況については、前回調査と大きな違いは見られなかった。CPTPPは日メキシコEPAに比べ、関税削減効果やメキシコの税関手数料(DTA)削減効果など利点が多い。だからと言って、同EPAからCPTPPへの転換が進む可能性すら高いとは言えない現状が浮き彫りになった。

こうしてみると、各社の人材育成を含め、協定利活用の促進に向けた課題は依然として多く残っていると言えるだろう。

また、本調査では、世界的に現在注目されている(1)脱炭素や(2)人権、(3)デジタル関連技術の活用についてもアンケートした。この3つのテーマ全てで、課題として「認識していない」あるいは「取り組む予定はない」などの回答が、その他の中南米5カ国(注5)よりも多かった。特に脱炭素に関しては、アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領の政策が影響している可能性が考えられる(注6)。本調査回答の中には、「大規模な太陽光発電システムの導入を検討したが、政府から認可を取得するのが厳しいという話があり、規模を縮小した」という声もあった。政府の脱炭素化に向けた動きの遅れが影響していることが、垣間見える。

こういった課題に対して、現地日系企業が今後どのように取り組んでいくのかも注目したい。


注1:
2021年、人材派遣を原則禁止する連邦労働法が施行。専門サービス・工事の人材派遣業者登録(REPSE)も義務化された(2021年5月25日付ビジネス短信参照)。これらをめぐる混乱により、企業向けビジネス支援サービスの提供が一時的に困難な状況に陥った(2021年12月1日付ビジネス短信参照)。
注2:
USMCAが規定した原産地規則で、例えば完成車については(1)域内付加価値率(RVC)75%の達成、(2)7種類の特定部品(コアパーツ)の域内調達、(3)鉄・アルミニウムの域内調達率70%の達成、(4)賃金条項(Labor Value Contentと呼ばれ、時給16ドル以上の場所で一定割合の付加価値創造が要求される)の4つで構成される。この4条件全てを達成しなければ、域内産と認められない。
対照的に、他の自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)では、(1)だけが要求される(パーセンテージはまちまち)ケースがほとんどだ。
注3:
米国が通商拡大法232条を発動して自動車・同部品に追加関税を賦課した場合でも、USMCAの原産地規則を満たした完成車ならば年間260万台まで、同じく自動車部品では年間1,080億ドルまで、メキシコに対して追加関税を適用しないとされている。この約束は、USMCAのサイドレターとして米国・メキシコ政府間で取り交わされた。
注4:
この設問に当たっては、USMCAや、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)、日本・メキシコEPAなど利用を想定した。ただしこれらに限られず、メキシコの他FTA・EPAを念頭に置いて回答した企業がある。
注5:
当該調査で対象とした他の中南米5カ国とは、コロンビア、ペルー、チリ、ブラジル、アルゼンチン。
注6:
大統領の強いイニシアチブの下、国営企業のメキシコ石油公社(PEMEX)や電力庁(CFE)を優遇する動きが強まっている。そういった国営企業を優遇する連邦政府の方針が、再エネ産業にとって逆風になっているのが現状だ(2021年7月2日付地域・分析レポート参照
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部米州課中南米班
髙氏 朋佳(たかうじ ともか)
2020年、ジェトロ入構。2020年4月から現職。