第3四半期のGDPは前期比0.43%のマイナス成長、ビジネス支援サービスが大きく後退

(メキシコ)

メキシコ発

2021年12月01日

メキシコ国立統計地理情報院(INEGI)は11月25日、2021年第3四半期(7~9月)の実質GDP成長率を発表した。前期比(季節調整済み)では0.43%のマイナスとなり、5四半期ぶりのマイナス成長を記録した。前年同期比では4.5%とプラスを維持したが、第2四半期(4~6月)の同19.9%と比べると大きく減速している。

前年同期比の成長率を産業別にみると(添付資料表1参照)、農牧・林・水産業は0.6%、鉱工業は5.0%、サービス業は4.2%と、いずれもプラスだが、第2四半期と比較すると伸び率が鈍化した。鉱工業のうち、製造業は4.5%だが、輸送機器製造業は9.9%のマイナスとなり、GDP全体を0.34ポイント押し下げた。自動車産業の半導体不足の影響は第3四半期も継続し、複数の完成車工場が操業休止に追い込まれた。メキシコ自動車部品工業会(INA)が11月23日に公表した調査会社IHS マークイットの見通しによると、2021年のメキシコの自動車(大型バス・トラックを除く)生産台数は300万台まで落ち込み、「新型コロナ禍」で約2カ月の操業停止に追い込まれた2020年(304万台)よりもさらに少なくなることが見込まれる。建設業は前年の不振の反動で10.4%の2桁成長を維持した。

サービス業では、7~8月の新型コロナウイルス感染第3波の影響が懸念されたが、卸売業、小売業は前年同期比、前期比ともプラス成長を維持した〔添付資料「表1産業別実質GDP成長率(前年同期比・季節調整前)」、「表2産業別実質GDP成長率(季節調整済み前期比)」参照〕。第3四半期に不振だったのは、ビジネス支援サービスで、前年同期比で46.2%減、前期比で50.79%減と記録的な落ち込みを見せた。専門サービスも前期比でマイナス2.22%と不振だった。この背景には、人材派遣を原則禁止する連邦労働法の施行(2021年4月27日2021年8月2日記事参照)と、専門サービス・工事のための人材派遣業者登録(REPSE)の義務化(2021年5月25日記事参照)をめぐる混乱により、企業向けビジネス支援サービスの提供が一時的に困難な状況に陥ったことがある。

2021年通年では6.0%に達しない見通し

2021年1~9月の実質GDP成長率は前年同期比6.1%となった。農牧・林・水産業が2.1%、鉱工業が8.3%、サービス業が5.4%となっている。鉱工業のうち、製造業は10.9%、うち輸送機器製造業は同16.4%と前年同期の反動で高い成長率となっているものの、第4四半期(10~12月)も自動車産業の半導体不足の影響が続いており、通年の成長率は低くなる見通し。

アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領は、2021年の経済成長率が6%を超えるという見通しを変えていないが、シンクタンクや金融機関などの見通しは徐々に引き下げられており、大手商業銀行のシティバナメックス(Citibanamex)が11月22日に発表した32の内外金融機関に対するアンケートによると、2021年のメキシコの実質GDP成長率の見通し平均値は5.9%となり、前回調査(11月5日)に引き続き6%以下となった(添付資料図参照)。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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