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特集:中南米進出日系企業の今業況感大幅悪化も、ポテンシャル市場として期待高く(コロンビア)

2021年1月29日

ジェトロが実施した「2020年度海外進出日系企業実態調査(中南米編)」で、コロンビアでは26社から回答を得た。調査結果の中から、特徴的な結果が表れた業況感、現地市場での競合、インフラ整備状況について分析と解説を加えていく。

新型コロナの影響は甚大も、引き続き事業拡大意欲高く

2020年のコロンビア進出日系企業の営業利益見込みは、前年に比べて大幅に悪化した。黒字見込みと回答した企業は30.8%で、前年と比べ29.2ポイント下落した(図1参照)。この下落幅は調査対象の中南米7カ国の中で最も大きい。また、DI値(2020年の営業利益見込みが前年に比べて「改善」と答えた比率から「悪化」と答えた比率を引いた数値)もマイナス53.9ポイントを記録した。この指標も中南米の中で最もマイナス幅が大きかった(図2参照)。

近年のコロンビア経済は、GDPの約7割を占める民間消費の拡大を基盤に堅調な成長を続けてきた。特に2019年のGDP成長率は3.3%と過去5年で最も高い伸びを記録した。ところが、新型コロナウイルス感染拡大初期の3月から長期間かつ厳格な活動制限措置が取られ、消費は落ち込み、経済は大きな打撃を受けた。その影響が日系企業にも及び、同調査でも営業利益見込みを「悪化」と回答した企業15社中14社が「現地市場での売り上げ減少」が理由と回答。うち12社は「新型コロナウイルスが要因」と答えた。

一方で、2021年に関しては、多くの企業が営業利益見込みの「改善」を期待する。DI値も53.8ポイントと、中南米で最も高い数値となった(図3参照)。営業利益見込みの「改善」を見込む企業16社中12社は「現地市場での売り上げ増加」を理由とする。うち9社は2020年に現地市場での売り上げが減少したと回答しており、2020年の買い控えからの反動増を期待していると考えられる。

図1-1:2020年の営業利益見込み
(2020年度調査)
有効回答は26社で、「黒字」は30.8%、「均衡」は46.2%、「赤字」は23.1%。

出所:「2020年度海外進出日系企業実態調査(中南米編)」

図1-2:2019年の営業利益見込み
(2019年度調査)
有効回答は25社で、「黒字」は60.0%、「均衡」は24.0%、「赤字」は16.0%。

出所:「2020年度海外進出日系企業実態調査(中南米編)」

図2:国別DI値(2020年)
中南米全体は-34.8、メキシコは-38.0、ベネズエラは-53.8、コロンビアは-53.9、ペルーは-51.5、チリは-10.8、ブラジルは-30.0、アルゼンチンは-18.0。

出所:「2020年度海外進出日系企業実態調査(中南米編)」

図3:国別DI値(2021年)
中南米全体は44.1、メキシコは49.6、ベネズエラは-30.8、コロンビアは53.8、ペルーは39.4、チリは21.6、ブラジルは50.4、アルゼンチンは30.8。

出所:「2020年度海外進出日系企業実態調査(中南米編)」

現地市場での売り上げ増加の期待は、今後の事業展開の方向性にも表れている。今後1~2年の事業展開の方向性についての設問で、コロンビアで「拡大」すると回答した企業は46.2%だった(図4参照)。前年に比べると29.8ポイント減と大幅に減少したことにはなる。しかし、中南米の中でその割合は最も大きい。拡大の理由として、75.0%が「現地市場での売り上げ増加」と回答。拡大する機能としては91.7%が「販売機能」とした。人口5,000万を有するコロンビアをポテンシャル市場として捉えている企業は、今なお少なくない。

図4:今後1~2年の事業展開の方向性
中南米全体は有効回答527社で、拡大37.2%、現状維持54.5%、縮小7.4%、第三国(地域)へ移転、撤退0.9%。メキシコは有効回答259社で、拡大40.5%、現状維持53.3%、縮小5.8%、第三国(地域)へ移転、撤退0.4%。ベネズエラは有効回答13社で、拡大0%、現状維持53.8%、縮小46.2%、第三国(地域)へ移転、撤退0%。コロンビアは有効回答26社で、拡大46.2%、現状維持50.0%、縮小3.8%、第三国(地域)へ移転、撤退0%。ペルーは有効回答33社で、拡大24.2%、現状維持69.7%、縮小6.1%、第三国(地域)へ移転、撤退0%。チリは有効回答37社で、拡大27.0%、現状維持59.5%、縮小13.5%、第三国(地域)へ移転、撤退0%。ブラジルは有効回答120社で、拡大42.5%、現状維持49.2%、縮小6.7%、第三国(地域)へ移転、撤退1.7%。アルゼンチンは有効回答39社で、拡大25.6%、現状維持64.1%、縮小5.1%、第三国(地域)へ移転、撤退5.1%。

出所:「2020年度海外進出日系企業実態調査(中南米編)」

競合としての中国企業の存在感増す

同業種で最も競合関係にある企業についての設問では、「中国系企業」と回答した企業が26.9%を占めた。その割合は中南米で最も大きい(図5参照)。最大の競合として「中国系企業」を選択した企業には、BtoCビジネスを行う企業が多かった。自動車分野でも中国企業を競合先と見なす意見があった。コロンビア自動車協会が公表している2020年の自動車販売台数統計を見ると、フォトン(FOTON)、JAC、JMCなどの中国メーカーが商用車を中心に売り上げを伸ばす。日本企業の競合として台頭してきていることが読み取れる。

図5:同業種企業で、最も競合関係にある企業
中南米全体の有効回答は506社で、日系企業35.0%、米国系企業15.2%、欧州系企業14.4%、中国系企業9.5%、韓国系企業4.0%、その他17.4%、競合なし4.5%。メキシコは有効回答256社で、日系企業49.2%、米国系企業18.4%、欧州系企業8.6%、中国系企業6.3%、韓国系企業3.1%、その他11.4%、競合なし3.1%。コロンビアは有効回答26社で、日系企業19.2%、米国系企業19.2%、欧州系企業7.7%、中国系企業26.9%、韓国系企業3.8%、その他19.1%、競合なし3.8%。ペルーは有効回答数33社で、日系企業18.2%、米国系企業9.1%、欧州系企業15.2%、中国系企業24.2%、韓国系企業6.1%、その他15.2%、競合なし12.1%。チリは有効回答37社で、日系企業32.4%、米国系企業10.8%、欧州系企業13.5%、中国系企業8.1%、韓国系企業0%、その他27.0%、競合なし8.1%。ブラジルは有効回答116社で、日系企業19.8%、米国系企業10.3%、欧州系企業25.9%、中国系企業6.9%、韓国系企業6.0%、その他26.7%、競合なし4.3%。アルゼンチンは有効回答38社で、日系企業13.2%、米国系企業15.8%、欧州系企業23.7%、中国系企業15.8%、韓国系企業5.3%、その他21.1%、競合なし5.3%。

出所:「2020年度海外進出日系企業実態調査(中南米編)」

道路インフラ整備が進展、日系企業の期待も高まる

コロンビアの長年の課題として、道路インフラの未整備が挙げられる。コロンビアは国土の南北を5,000メートル級の山脈3本が貫く。太平洋に面する港から内陸の首都ボゴタに向かうには、その山々を越えていかなければならない。そのため、輸送コストもかかる。ジェトロが2019年度に実施した投資関連コスト調査によると、横浜港から太平洋岸のブエナベントゥーラ港を経由したボゴタ市内までのコンテナ輸送費用全体のうち、約3割がコロンビア国内の陸上輸送費用だ。この点を問題視している日系企業も多く、「進出日系企業実態調査」でも例年4割程度の企業が「インフラの未整備」を投資環境面のリスクとして挙げていた。しかし、今回の調査ではこの回答は26.9%に減少した。

背景には、コロンビア政府の進めるインフラ整備事業の進展がある。まず、ブエナベントゥーラ港とボゴタ間の道路整備として、2020年9月にリネアトンネルが開通した。このトンネルは港とボゴタのほぼ中間地点に当たるトリマ県カハマルカ市とキンディオ県カラルカ市を結ぶものだ。これにより、通行時間短縮と安全性の向上が実現した(2020年10月30日付ビジネス短信参照)。また、政府が2013年から推し進めている総距離7,000キロにも及ぶ「第4世代道路整備計画」も進んでいる。2020年8月末時点で運輸省が発表したところによると、全29あるプロジェクトのうちの9つは70%以上の工事が終了。2021年中に完工予定のプロジェクトも7つある。そのプロジェクトの中には、コロンビア第2の都市メデジン市を含むアンティオキア県内の都市を結ぶアウトピスタ・アル・マール1(Autopista al Mar1)プロジェクトなどがある。

コロンビアのインフラには、いまだ多くの課題がある。しかし、このようにインフラ改善事業が目に見えるかたちで進展していることから、日系企業の間にもインフラ改善の期待感が生まれ、以前ほどの懸念ではなくなったと考えられる。

新型コロナの影響を大きく受けたコロンビア。しかし、ビジネス環境の改善も見られ、ポスト・コロナ時代には日系企業のさらなる事業拡大が期待される。

執筆者紹介
ジェトロ海外調査部米州課中南米班
佐藤 輝美(さとう てるみ)
2012年、ジェトロ入構。進出企業支援・知的財産部知的財産課、ジェトロ・サンティアゴ事務所海外実習などを経て現職。

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