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特集:中南米進出日系企業の今コロナ禍でデジタル化進展、働き方も柔軟化(ブラジル)

2021年2月5日

ジェトロは「2020年度海外進出日系企業実態調査(中南米編)」を実施。ブラジルからは121社の回答を得た。本記事では、その結果を基に新型コロナ禍にともなうブラジルでのビジネス環境の変化を追い、在ブラジル日系企業のビジネス回復を予想する。

緩やかな制限措置などで、半数が「黒字」と回答

2020年の営業利益見込みが前年に比べどうなるかを尋ねたところ、「改善する」と回答した企業はわずか19.2%。それに対し、「悪化する」との回答は49.2%に上った。2019年は国内の景気が比較的良かった。その反動もあって、新型コロナの影響を受けた2020年は多くの企業が業況悪化を見込まざるを得ない結果になった。もっとも、他の調査対象国と比べると、「悪化する」との回答割合はどちらかといえば低い。「横ばい」との回答も31.7%ある(図1参照)。

2020年の営業利益見込みについて「黒字」「均衡」「赤字」のいずれを見込むかとの問いには、51.7%が「黒字」と回答した。この割合は調査対象国の中では最も高かった(図2参照)。ブラジルでは、新型コロナ対策としてGDP比10%を超える財政支出が実施された。また感染者数が増加した中でも、活動制限措置が比較的緩やかだった。景気後退は免れないにせよ、悪化幅は最小限に抑えられそうとの見込みを反映した結果であると言えるだろう。

2020年と比べた2021年の営業利益見通しについても、58.0%が「改善する」と回答。「横ばい」の回答は34.5%で、「悪化」回答は7.6%だけだった(図3参照)。

図1:前年と比べた2020年の営業利益見込み
総数529回答のうち、18.7%が改善、27.8%が横ばい、53.5%が悪化と回答。メキシコの回答企業261社のうち、19.5%が改善、23%が横ばい、57.5%が悪化と回答。ベネズエラの回答企業13社のうち、46.2%が横ばい、53.8%が悪化と回答。コロンビアの回答企業26社のうち、3.8%が改善、38.5%が横ばい、57.7.%が悪化と回答。ペルーの回答企業33社のうち、6.1%が改善、36.4%が横ばい、57.6%が悪化と回答。チリの回答企業37社のうち、32.4%が改善、24.3%が横ばい、43.2%が悪化と回答。ブラジルの回答企業120社のうち19.2%が改善、31.7%が横ばい、49.2%が悪化と回答。アルゼンチンの回答企業39社のうち、25.6%が改善、30.8%が横ばい、43.6%が悪化と回答した。

出所:ジェトロ「2020年度 海外進出日系企業実態調査(中南米編)」

図2:2020年の営業利益見込み(2020年度調査)
中南米全体の回答企業529社のうち、43.1%が黒字、22.5%が均衡、34.4%が赤字と回答。メキシコの回答企業261社のうち、40.2%が 黒字、19.5%が均衡、40.2%が赤字と回答。ベネズエラの回答企業13社のうち7.7%が黒字、30.8%が均衡、61.5%が赤字と回答。コロンビアの回答企業26のうち、30.8%が黒字、46.2%が均衡、23.1%が赤字と回答。ペルーの回答企業33社のうち、42.4%が黒字、24.2%が均衡、33.3%が赤字と回答。チリの回答企業37社のうち、51.4%が黒字、27.0%が均衡、21.6%が赤字と回答。ブラジルの回答企業120社のうち、51.7%が黒字、17.5%が均衡、30.8%が赤字と回答。アルゼンチンの回答企業39社のうち、48.7%が黒字、33.3%が均衡、17.9%が赤字と回答した。

出所:ジェトロ「2020年度 海外進出日系企業実態調査(中南米編)」

図3:2020年と比べた2021年の営業利益見通し
中南米全体の回答企業527社のうち、54.4%が改善、35.1%が横ばい、10.4%が悪化と回答。メキシコの回答企業260社のうち、60%が改善、29.6%が横ばい、10.4%が悪化と回答。ベネズエラの回答企業13社のうち、7.7%が改善、53.8%が横ばい、38.5%が悪化と回答。コロンビアの回答企業26社のうち、61.5%が改善、30.8%が横ばい、7.7%が悪化と回答。ペルーの回答企業33社のうち、45.5%が改善、48.5%が横ばい、6.1%が悪化と回答。チリの回答企業37社のうち、35.1%が改善、51.4%が横ばい、13.5%が悪化と回答。ブラジルの回答企業119社のうち、58.0%が改善、34.5%が横ばい、7.6%が悪化と回答。アルゼンチンの回答企業39社のうち、43.6%が改善、43.6%が横ばい、12.8%が悪化と回答した。

出所:ジェトロ「2020年度 海外進出日系企業実態調査(中南米編)」

コロナ禍で進んだビジネスのオンライン化

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、「販売戦略を具体的にどのように見直すか」との問いについてはどうか。ブラジルで上位2項目だったのは「バーチャル展示会・オンライン商談会などの活用の推進」と「デジタルマーケティング・AI(人工知能)利用などデジタル化の推進」だ。このうち「バーチャル展示会」と回答した34社のうち、22社が当地で製造を行っていない。それだけにバーチャル展示会への対応がしやすい企業が多かったことが、このような回答につながった一因だろう。企業が具体的に取る対策の多くは、「SNSでの広告拡大」や「オンラインセミナーの実施」だった。他方、「デジタル化の推進」と選択した企業の中には「新システムの導入」や「新たにSNSを開設した」と回答した企業も見られた。

ブラジルでは、デジタル化に向けた動きが進む。政府はその戦略として、「デジタル政府戦略2020-2022」(注)を政令10.332号で公布。2020年4月29日に施行した。2022年までの具体的な目標には、(1) 全ての公共サービスを電子化する、(2) 身分証明書を導入・発行する(約4,000万件)、(3) 企業設立や移転手続きなどを即日行えるようにする、(4) 一度のログインで約1,000通りの公共サービス利用を可能にする、(5) 連邦政府によるブロックチェーン・ネットワーク導入に向けリソースを実装する、ことなど、が挙げられた。

民間企業の動きもある。例えばブラジル発のスタートアップ企業のジムパスは、新型コロナ禍を受けて、2020年5月6日には自宅で利用可能なライブ配信フィットネスサービスを2020年4月に開始した。その中で最も人気のあるのは、同社が提携する5,000以上のジムのライブ映像を映し出すものだ。これには、10万人以上が視聴している。ライブ配信中、利用者はジムでのエクササイズを見るだけでない。自らのエクササイズを撮影することにより、トレーナーから指導を受けることも可能だ。このように、新たなビジネスの形としてオンライン化・デジタル化が次々と進められている。

さらに、ブラジルの調査会社のインスチテュート・ロコモチーバは、ブラジル国内72都市の1万1,131人を対象に、新型コロナウイルスの感染拡大によるブラジル人の消費行動の変化について調査を実施した(調査実施期間:2020年4月14~15日)。その結果によると、外出自粛が始まった2020年3月24日以前と比べて、スマートフォンアプリなどを介したインターネットショッピングが30%増加。「特に50歳以上の年配者や中間層・低所得者層で、大きく増加した」という(2020年4月23日付現地紙「バロール・エコノミコ」)。特に中間層・低所得者層については、インターネットを介して新型コロナ感染拡大に伴う経済的支援が提供されているのが利用増加要因の1つだろう。例えば、政府は2020年4月2日、新型コロナ感染拡大の影響により職を失うなど諸条件を満たすインフォーマルセクターの労働者、個人零細事業主などを対象に、3カ月間にわたり1人当たり月額600レアル(約1万2,000円、1レアル=約20円)を支給する救済策を即日施行した(法令13.982号)。その支給はスマートフォン決済アプリPicPayにチャージされるなどのかたちをとった。これまで、インターネットを利用しなかった層の利用を促す結果につながったと考えられる。

統一労働法の柔軟化がテレワークを後押し

新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、統一労働法(MP927/20)の一部が柔軟化された。これがテレワークの普及を後押しすることになった。テレワークの実施には従前なら事前の契約書締結が必要だった。しかし統一労働法の改正により、雇用主側からの文書やメールによる通知でも導入可能になった。この法改正の影響もあり、「新型コロナウイルス感染拡大の影響による管理・経営体制の見直し」に関する設問で「感染拡大後に在宅勤務やテレワークの活用拡大」と回答した企業は50社に上った。そのうち31社は非製造業で、在宅勤務やテレワークに比較的対応しやすい環境にあると考えられる。ただし、その回答企業には製造業19社も含まれている。

ビジネス活動正常化見込みは2021年が最多

今回調査では、「新型コロナウイルス感染拡大後のビジネス活動正常化見込み時期」についても質問している。他の調査対象国では「2021年後半」を見込むとの回答が多かったのに対し、ブラジルでは「2021年前半」を見込むとの回答が最も多かった(図4参照)。中南米諸国の中ではブラジルが最速で景気回復を果たし得ることを、この回答結果は示唆している。

図4:新型コロナウイルス感染拡大後ビジネス活動が正常化する時期
中南米全体の回答企業526社のうち、8.0%が既に正常化している、10.5%が2020年内、36.1%が2021年前半、27.6%が2021年後半、14.3%が2022年以降、3.6%がビジネス活動が正常化する見通しは立たないと回答。メキシコの回答企業259社のうち9.3%が既に正常化している、13.1%が2020年内、36.7%が2021年前半、24.3%が2021年後半、13.9%が2022年以降、2.7%ぁビジネス活動が正常化する見通しは立たないと回答。ベネズエラの回答企業13社のうち38.5%が2021年前半、7.7%が2021年後半、15.4%が2022年以降、38.5%がビジネス活動が正常化する見通しは立たないと回答。コロンビアの回答企業26社のうち、7.7.%が既に正常化している、15.4%が2020年内、23.1%が2021年前半、34.6%が2021年後半、15.4%が2022年以降、3.8%がビジネス活動が正常化する見通しは立たないと回答。ペルーの回答企業33社のうち、3.0%が既に正常化している、15.2%が2020年内、27.3%が2021年前半、39.4%が2021年後半、12.1%が2022年以降、3.0%がビジネス活動が正常化する見通しは立たない。チリの回答企業37社のうち、2.7%がすでに正常化している、2.7%が2022年内、37.8%が2021年前半、43.2%が2021年後半、10.8%が2022年以降、2.7%がビジネス活動が正常化する見通しは立たないと回答している。ブラジルの回答企業119社のうち、10.1%がすでに正常化している、7.6%が2020年内、38.7%が2021年前半、25.2%が2021年後半、16.0%が2022年以降、2.5%がビジネス活動が正常化する見通しは立たないと回答している。アルゼンチンの回答企業39社のうち5.1%が既に正常化している、5.1%が2020年内、38.5%が2021年前半、33.3%が2021年後半、15.4%が2022年以降、2.6%がビジネス活動が正常化する見通しは立たないと回答している。

出所:ジェトロ「2020年度 海外進出日系企業実態調査(中南米編)」

また、「ビジネス活動正常化後の需要環境」についての質問で「正常化後に新型コロナ感染拡大前に比べて製品・サービスの需要が増加する」と回答した企業数が対象国中で最も多かったのが、ブラジルだった(19社)。その回答割合もアルゼンチンに次いで大きい(15.8%、図5参照)。この回答はデジタル化に伴い情報関連サービス分野などの新たな需要を見込む企業に比較的多くみられた。業種別には、63%に当たる12社が非製造業であった(図6参照)。

図5:正常化後の需要環境見込み
ブラジルは120社の回答で、38.3%は新型コロナ感染拡大前の需要環境に戻る、35.8%が正常化後に新型コロナ感染拡大前に比べて製品・サービスの需要がやや減少する、5.8%が正常化後に新型コロナ感染拡大前に比べて製品・サービスの需要が大きく減少する、15.8%は市場化後に新型コロナ感染拡大前に比べて製品・サービスの需要が増加する、5.1%はその他、と回答した。

出所:ジェトロ「2020年度 海外進出日系企業実態調査(中南米編)」

図6:ビジネス活動正常化後の需要環境(n=120)
回答企業120社のうち新型コロナ感染拡大前の需要環境に戻ると回答した企業のうち22社が非製造業、24社が製造業。正常化後に新型コロナ感染拡大前に比べて製品・サービスの需要がやや減少すると回答した企業のうち、31社が非製造業、12社が製造業。正常化後に新型コロナ感染拡大前に比べて製品・サービスの需要が大きく減少すると回答した企業のうち、5社が非製造業、2社が製造業。正常化後に新型コロナ感染拡大前に比べて製品・サービスの需要が増加すると回答した企業のうち12社が非製造業、7社が製造業。その他と回答した企業のうち、3社が非製造業、2社が製造業だった。

出所: ジェトロ「2020年度 海外進出日系企業実態調査(中南米編)」から作成

コロナ禍終息後に在ブラジル進出日系企業のビジネスがどうなっていくか、引き続き注目が集まる。


注:
この法令では、公共サービスの電子化に関して18分野の目標が設定された。連邦政府に加えて州や自治体がデジタル手段により公的サービスを国民に提供し、国民の信頼を確実なものにすることを目指している。
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部米州課中南米班
髙氏 朋佳(たかうじ ともか)
2020年、ジェトロ入構。2020年4月から現職。

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