特集:アフリカ・スタートアップ:物流・運輸の変革者に聞くトラック輸送を効率化、マグレブからアフリカ全土へ(チュニジア)

2019年11月8日

チュニジアのスタートアップ企業、オプティマロジスティック(Optimalogistic外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます )は、輸送トラックの空きスペースを減らし効率化を図るため、製造業者やフォワーダーと運送会社をつなぐオンライン・プラットフォームを開発した。国内を皮切りに、マグレブ3カ国(チュニジア、アルジェリア、モロッコ)の主要港をハブとして、アフリカ内陸諸国への陸上輸送のネットワークを構築する構想だ。同社は、スイスで毎年開催され、新興市場対象のイベントとして最大級と言われる「シードスターズ・コンペティション」の2019年チュニジア代表に選出された。マヘール・シャクルーン最高経営責任者(CEO)に、ビジネスモデルや今後の展望などについて話を聞いた(10月16日)。


創業者でCEOのマヘール・シャクルーン氏
(オプティマロジスティック提供)
質問:
貴社のビジネスモデルは。
答え:
運送会社と製造業者やフォワーダーなど、貨物輸送を必要とする企業をつなぐBtoBオンライン・プラットフォームを提供している。当社の視点は、いかにトラック輸送で空荷をなくし、経済的で環境に配慮した配送ネットワークを作るかにある。例えば、A地点からB地点への貨物輸送を行ったトラックが空のままA地点に戻ると、運送会社にとって無駄な走行になる。その上、B地点からA地点に貨物輸送が必要な企業が他のトラックを利用するとなると、2台がそれぞれ空荷での走行を余儀なくされ、環境への負荷や輸送コストは倍になる。この状況を回避するため、戻り便を通常価格の半額で提供するためのオンライン・プラットフォームを開発した。このプラットフォーム上で、当社と契約した顧客企業はイントラネット(共有ネットワーク)にアクセスし、登録されているトラック運送会社の車種や運転手などを選択できる。ライドシェアサービスの商業用トラック版だ。
質問:
起業の経緯は。
答え:
トラック輸送の効率化を図るアイデアを持って2017年に数人で起業した。正式に事業を開始したのは2019年に入ってから。アフリカ市場への広域展開のための資金調達を目指したからだ。現在は情報工学のエンジニアでビジネス・コンサルタントでもある私が研究・開発(R&D)と大型顧客を担当。ロジスティックの専門家であるオマール・ブケディ氏が運送会社を担当し、その他従業員4人と外部のエンジニア12人の協力を得て展開している。北のチュニスと南のスファックスに事務所を構えている。
質問:
アフリカ市場への展開は。
答え:
サブサハラ・アフリカ諸国への貨物輸送は現在、西アフリカのセネガル、コートジボワール、ガーナ、または東アフリカのケニア、モザンビーク、それぞれの港から、陸上輸送によって行われることが多いが、海上輸送の時間とコストのロスが大きい。当社はフランスのマルセイユ港とマグレブ3カ国の主要港(チュニス、アルジェ、タンジェ)を結び、内陸国へのトラック輸送ネットワークを充実させることで、欧州からの貨物輸送の時間とコストを削減させたいと考えている。ニジェールを例にすれば、このルートを利用すると、これまで港に着いてから1~2週間かかっていた陸路を24時間に短縮でき、海上輸送の距離も大幅に短縮できる。トラック輸送には空荷での走行を回避させ、戻り便でアフリカ各国間の輸送も可能となる。
質問:
課題は。
答え:
それぞれの運送会社同士を結ぶネットワークをいかに構築するかが最も難しく、この事業のカギとなる。チュニジアでは国内大手のほとんど、アルジェリアでは10数社と提携している。アフリカ諸国の運送会社は保有トラック数が1~2台といった零細企業が中心となっているそれらの企業を発掘し、オプティマロジスティックのブランドの下にネットワーク化する。質の高いサービスを提供できるかが主要課題で、時間のかかる仕事だ。運送会社自身の意識を高め、プラットフォーム利用のための研修を行うことも当社の役割となる。運送会社にとってもネットワーク化の利点は大きく、他社を積極的に紹介してくれることでネットワークが広がっている。
質問:
資金調達の見通しや日本企業との提携可能性は。
答え:
現在は欧州からアフリカへの貨物輸送のロジスティックを念頭に置き、ネットワークの拡充を図っている。そのため、来年にはフランス・マルセイユに支店を出す予定だ。資金調達の面でも欧州に拠点を持つことは重要だ。われわれの事業に関心を寄せる欧州の投資家は多く、最近では日本のエンジェル投資家からも照会を受けた。将来的には欧州のみならず、アジアからアフリカへのロジスティックの充実も図りたい。

同社のサービスイメージ(オプティマロジスティック提供)

変更履歴
企業名の表記が不正確でしたので、次のとおり訂正しました。(2019年11月18日)
(誤)オプティマ・ロジスティックス(Optima Logistics)
(正)オプティマロジスティック(Optimalogistic)
執筆者紹介
ジェトロ ・パリ事務所
渡辺レスパード智子(わたなべ・レスパード・ともこ)
ジェトロ・パリ事務所に2000年から勤務。アフリカデスク調査担当としてフランス及びフランス語圏アフリカ・マグレブ諸国に関する各種調査・情報発信を行う。