特集:アフリカ・スタートアップ:物流・運輸の変革者に聞く発展する宅配ビジネスで、サービス拡大を目指す(エチオピア)

2019年11月8日

エチオピアの宅配ビジネスはいまだ発展段階にある。特に参入者の少ないドア・トゥ・ドア輸送に挑戦している「イシ・エクスプレス(Eshi Express)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」の創業者で社長のティガブ・ハイレ(Tigabu Haile)氏に、ビジネスモデルや現状、今後の展望について話を聞いた(10月24日)。


ティガブ・ハイレ氏(イシ・エクスプレス提供)
質問:
会社の概要は。
答え:
2017年に首都アディスアベバで設立した。現在の従業員は14人、うち10人が配送員だ。手紙・新聞・雑誌・書類、贈答品、eコマースに関連する小包などの配送を行う。契約先は約200社で、1日当たりの配送数は約160件だ。アディスアベバでの配送が中心だが、メケレやハワッサなど地方都市でもサービスを提供しており、エチオピア全土での配送網確立を目指している。
質問:
起業に至った経緯は。
答え:
メケレ大学で法律を学び、卒業後は国内外のNGOの活動を支援するNGOで勤務していたため、社会課題の解決に関心があった。エチオピアの宅配ビジネスは未成熟で、集荷・配達に時間がかかる。住居表示は多くの人に認知されていないため、荷物の受け取りには何度も配送員に電話をかけ、建物の目印を伝えて受取先を見つけさせる必要もある。また、配送員も十分な訓練を受けておらず、土地勘がなかったり、約束の時間に現れないこともよくある。荷物の発送者も迅速かつ正確な配送を望んでおり、参入の余地があると考えた。
質問:
ビジネスモデルは。
答え:
現在のところ、自社保有の自動二輪車10台とミニバン1台で配送している。配送員には、ビジネスマナーや地名などを教え、迅速で丁寧な対応ができるよう取り組んでいる。収益の8割は法人貨物の配達で、新聞やホテル発行のニュースレターなどだ。法人向けには、貨物量に応じた月決め料金を設定している。また、カスタマーセンターを設置し、トラブルにもすぐに対応できることが強みだ。
さらなる効率化のため、モバイルアプリを開発中だ。2020年1月までの発表を目指し、協力会社とともに開発している。アプリでは、荷物のトラッキングなどが可能になる予定だ。

自社保有車両と配送員(イシ・エクスプレス提供)
質問:
これまでに困難は。
答え:
物を預かり、運ぶビジネスのため、顧客の信頼を得ることが最も大切だ。そのため、配送員の教育には苦労した。信頼を得るには時間を守ることが重要だが、それが社会に根付いていない。遅刻が目立つ配送員を減給処分にすれば、すぐに辞めてしまうことも課題だった。
解決に当たって、「時間前行動」を根付かせるために、始業時間を午前8時ではなく、午前7時58分に設定した。また、厳罰を避けるため、遅刻者には「従業員全員の前で踊る」など、金銭ではなく照れくさい罰を科した。結果として、状況は改善したと考えている。
質問:
日本企業への期待は。
答え:
将来的には、エチオピア全土、アフリカ大陸にビジネスを拡大したい。事業拡大には投資が必要だ。そのためにも、海外企業とのパートナーシップには関心がある。配送センターの設置も検討しているので、関係する管理システムなどの導入にも関心がある。もちろん、事業の拡大に合わせて、車両を増やすことも必要だ。
執筆者紹介
ジェトロ・アディスアベバ事務所
山下 純輝(やました じゅんき)
2016年、ジェトロ入構。東京本部で、農林水産物・食品の輸出業務に従事。2019年2月から現職。