特集:アフリカ・スタートアップ:物流・運輸の変革者に聞くクラウドで輸送を一括管理(南アフリカ共和国)

2019年12月2日

南アフリカ共和国では、道路・鉄道などのインフラが整い、近代的な物流システムも構築されていることを背景に、物流分野においてもユニークなビジネスモデルを武器にするスタートアップが活躍している。ジェトロはこのうち、物流システムソフトウエア開発・販売を行うファスト・バン(FastVan)の創設者で最高経営責任者(CEO)、ダウド・ヌール氏にインタビューした(10月25日)。


創設者で最高経営責任者(CEO)のダウド・ヌール氏(ファスト・バン提供)
質問:
起業の経緯と事業概要は。
答え:
物流業界でのビジネス開発と運営管理に関して、高い専門性を持つと自負している。ファスト・バンを創設する前は、石油精製会社の輸送・流通運営部門の部長を務めていた。米国ソフトウエア大手のオラクル、ブラックボックス、エクストリーム・ネットワークス(旧エンテラシス・ネットワークス)にも従事した経験がある。2015年に、e-クーリエ(宅配サービスのアプリ管理)事業立ち上げのため、ファスト・バンを設立したが、その直後に南アの高い輸送コスト、輸送の遅延、有効活用されていない輸送キャパシティなどのさまざまな問題に直面し、それらを効率的に管理するシステムが必要だと考えた。そこで当社は、顧客企業が貨物運送状や請求書の作成・発行、輸送車両のルート管理、リアルタイムの状況確認などを自動で一括管理できるよう、クラウドベースの輸配送管理システム(TMS)を構築した。
顧客企業がスマートフォンなどのアプリからTMSシステムを用いて注文すると、その情報がウェブアプリであるデポ指令システムに送られ、輸送までの手段やルートの最適化が自動で行われる。その情報が輸送会社の携帯端末に送られ、配達状況までを専用システムで一元的に管理できる仕組みだ。顧客企業のビジネスやターゲットとなる市場に合わせてカスタマイズでき、物流企業だけでなく、製造、小売業にも応用が可能だ。現在、英国に拠点を置いており、12人を雇用している。既に50から100の顧客企業を対象に、ベータ版(試用版)のサービスを提供している。ベータ版の開始から24カ月で、410万ドルの収益拡大を見込んでいる。これまで投資家から35万ドルの資金提供を受けているが、これを100万ドルまで増やしたいと考えている。

同社のビジネスモデルの概要(ファスト・バン提供)
質問:
ビジネスの概要は。
答え:
企業向けに、前述の物流システムソフトウエアを提供している。当社の製品は「グローバル・マルチアプリケーションTMS」と呼ばれており、SaaSのサブスクリプションモデル(注)を採用している。利用料は月間の使用量に応じて変化する仕組み。ベーシックプランであれば、月額599ドルで利用が可能だ。輸送の注文数が月5,000件を超える場合は、月額1,999ドルのプレミアムプラン、またはカスタマイズプランへの加入を促す仕組みとなっている。また、TMSはホワイトラベルの形態を取っているため、顧客企業は当社の製品を自社ブランドとしてリブランディングしたサービス展開することが可能だ。現在のターゲット市場はアフリカ、欧州、北米で、物流、輸送、小売り、製造、製薬企業を主な顧客にしている。
質問:
どのように差別化を図っているか。
答え:
競合として、この分野にはドイツのソフトウエア大手SAPのほか、オラクル、JDAソフトウエア、南アのソロプランなどがひしめいている。当社は、完全に顧客向けにカスタマイズした一括管理システムを提供することにより、差別化を図っている。しかし、当社にとって最も大きな課題は、アフリカ市場の企業の意思決定が遅いことにある。技術は光の速さで変化していくので、アフリカの企業にとってもイノベーションは不可欠である。
質問:
今後の展望、日本企業との協業の可能性は。
答え:
当社のビジネスの成長戦略は、世界中のチャネル・パートナーと連携していくことである。これらのパートナーは物流部門の企業であることが望ましいが、関連する経験や知識を持つ企業との連携の可能性もあり得る。また当社は、アジア、特に日本でのチャネル・パートナーを探しており、すでに日本企業2社から関心の表明を受けている。

注:
一定期間内に提供するサービスに対して、月単位や年単位で利用料を回収するビジネスモデル
執筆者紹介
ジェトロ・ヨハネスブルク事務所
髙橋 史(たかはし ふみと)
2008年、ジェトロ入構後、インフラビジネスの海外展開支援に従事。2012年に実務研修生としてジェトロ・ヤンゴン事務所に赴任し、主にミャンマー・ティラワ経済特別区の開発・入居支援を担当。2015年12月より現職。南アフリカ、モザンビークをはじめとする南部アフリカのビジネス環境全般の調査・情報提供および日系企業の進出支援に従事。
執筆者紹介
ジェトロ・ヨハネスブルク事務所
カイラ・オニール
ダーバン市出身。2015年から、ジェトロ・ヨハネスブルク事務所勤務。主に南部アフリカの経済・産業調査、訪日招聘プロジェクトに従事している。

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