内燃機関車の中長期的な需要が見込まれるブラジルとインド
2026年4月20日
ブラジルとインドは、ともに巨大な内需を抱える自動車生産・販売大国だ。欧米自動車メーカーのシェアが高く、近年中資系自動車メーカーが台頭するブラジル市場と、日系自動車メーカーが圧倒的なシェアを誇り輸出促進にも注力するインド市場という違いはあるが、両国に共通するのは、内燃機関車が中長期的に自動車市場の主流車であり続けるとみられることだ。ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領は自由貿易協定(FTA)網の拡大を推進しており、中でもインドと締結するメルコスール・インド特恵貿易協定の自由化対象品目の拡大に関心を示している。本稿では、両国の自動車市場や自動車に関連する政策を概観しながら、両国間の自動車および同部品分野の貿易拡大の可能性を考える。
対象品目が限定的なメルコスール・インド特恵貿易協定
ルーラ大統領は、アジア諸国とのFTA網の拡大に前向きな姿勢を示している。優先順位の高い交渉相手国の1つとして挙げられているのがインドだ。ブラジルが加盟する関税同盟のメルコスールとインドの間には、2009年に発効した特恵貿易協定がある。ただ、協定の自由化率は高くなく、インド側で450品目、メルコスール側で452品目の関税が10~100%の範囲内で引き下げられているのみだ(注1)。インド側では、対象品目450品目のうち、関税引き下げ率10%(93品目)あるいは20%(336品目)の品目がほとんどだ。引き下げ率100%は21品目にとどまる。すなわち、インドで輸入するブラジル産品の中で、当該特恵貿易協定を活用して関税が無税になるのは、HSコード8桁ベースで21品目しかない。ルーラ大統領は今後、同協定の自由化対象品目を拡大し、インドとの貿易拡大を目指す意向を示している。
ブラジルの対インド輸入をHSコード6桁ベースで見ると、上位20品目のうち、メルコスール・インド特恵貿易協定の対象となっている品目は、7品目のみだ(表1)。具体的には、インドからの輸入額が最も大きい石油精製品(HSコード:2710.19)、医薬品、農薬、化粧品などに含まれる有機化学品である複素環式化合物(HSコード:2933.19、2933.39、2933.99)、核酸及びその塩(HSコード:2934.99)、ガソリンエンジン部品(HSコード8409.91)。29類に分類される化学品が多い。なお、石油は無税で輸入されているが、29類の多くは関税引き下げ率が10~20%であり、引き下げ幅は限定的だ。ガソリンエンジン部品も関税引き下げ率は10%にすぎない。
| 順位 | HSコード | 品目 | 金額 | 割合 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 2710.19 | 石油及び歴青油(原油を除く。) | 1,114,082,346 | 13.4 |
| 2 | 3004.90 | 医薬品 | 383,104,146 | 4.6 |
| 3 | 2933.19 | 複素環式化合物 | 381,975,454 | 4.6 |
| 4 | 2934.99 | 核酸及びその塩 | 381,780,642 | 4.6 |
| 5 | 3808.92 | 殺菌剤 | 237,549,778 | 2.8 |
| 6 | 8714.10 | オートバイ部品 | 198,893,325 | 2.4 |
| 7 | 3808.91 | 殺虫剤 | 191,906,547 | 2.3 |
| 8 | 2933.39 | 複素環式化合物 | 153,889,259 | 1.8 |
| 9 | 2930.90 | 有機硫黄化合物 | 136,511,737 | 1.6 |
| 10 | 7601.20 | アルミニウム合金 | 120,071,249 | 1.4 |
| 11 | 2935.90 | スルホンアミド | 99,091,291 | 1.2 |
| 12 | 2933.99 | 複素環式化合物 | 94,460,640 | 1.1 |
| 13 | 8409.91 | ガソリンエンジン部品 | 88,423,718 | 1.1 |
| 14 | 3002.41 | 人用のワクチン | 78,237,882 | 0.9 |
| 15 | 8409.99 | ディーゼルエンジン部品 | 78,090,083 | 0.9 |
| 16 | 3808.69 | 殺虫剤、殺鼠(さっそ)剤、殺菌剤、除草剤など | 69,084,806 | 0.8 |
| 17 | 8708.50 | 駆動軸・非駆動軸・同部品 | 65,892,424 | 0.8 |
| 18 | 3003.90 | 医薬品 | 64,481,858 | 0.8 |
| 19 | 8483.10 | クランクシャフト・カムシャフト | 62,459,806 | 0.7 |
| 20 | 4011.20 | バスまたはトラックに使用されるゴム製の新しい空気タイヤ | 58,906,538 | 0.7 |
出所:GTA、メルコスール・インド特恵貿易協定の付属書を基にジェトロにて作成
インドからの主要輸入品には、自動車部品も含まれている。具体的には、ガソリンエンジン部品(HSコード:8409.91)、ディーゼルエンジン部品(HSコード:8409.99)、駆動軸・非駆動軸・同部品(HSコード:8708.50)、クランクシャフト・カムシャフト(HSコード:8483.10)、バスやトラック向けタイヤ(HSコード4011.20)だ(表2)。ただ、ガソリンエンジン部品(HSコード:8409.91)以外は、いずれも協定の対象外品目となっている。
| 順位 | HSコード | 品目 | 金額 | 割合 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 2710.19 | 石油及び歴青油(原油を除く。) | 1,114,082,346 | 13.4 |
| 2 | 3004.90 | 医薬品 | 383,104,146 | 4.6 |
| 3 | 2933.19 | 複素環式化合物 | 381,975,454 | 4.6 |
| 4 | 2934.99 | 核酸及びその塩 | 381,780,642 | 4.6 |
| 5 | 3808.92 | 殺菌剤 | 237,549,778 | 2.8 |
| 6 | 8714.10 | オートバイ部品 | 198,893,325 | 2.4 |
| 7 | 3808.91 | 殺虫剤 | 191,906,547 | 2.3 |
| 8 | 2933.39 | 複素環式化合物 | 153,889,259 | 1.8 |
| 9 | 2930.90 | 有機硫黄化合物 | 136,511,737 | 1.6 |
| 10 | 7601.20 | アルミニウム合金 | 120,071,249 | 1.4 |
| 11 | 2935.90 | スルホンアミド | 99,091,291 | 1.2 |
| 12 | 2933.99 | 複素環式化合物 | 94,460,640 | 1.1 |
| 13 | 8409.91 | ガソリンエンジン部品 | 88,423,718 | 1.1 |
| 14 | 3002.41 | 人用のワクチン | 78,237,882 | 0.9 |
| 15 | 8409.99 | ディーゼルエンジン部品 | 78,090,083 | 0.9 |
| 16 | 3808.69 | 殺虫剤、殺鼠剤、殺菌剤、除草剤など | 69,084,806 | 0.8 |
| 17 | 8708.50 | 駆動軸・非駆動軸・同部品 | 65,892,424 | 0.8 |
| 18 | 3003.90 | 医薬品 | 64,481,858 | 0.8 |
| 19 | 8483.10 | クランクシャフト・カムシャフト | 62,459,806 | 0.7 |
| 20 | 4011.20 | バスまたはトラックに使用されるゴム製の新しい空気タイヤ | 58,906,538 | 0.7 |
出所:GTA、メルコスール・インド特恵貿易協定の付属書を基にジェトロにて作成
欧米メーカーが存在感を示し、中資系メーカーが台頭するブラジル自動車市場
ブラジルとインドはともに、自動車の生産・販売大国だ。国際自動車工業連合会(OICA)によれば、2024年の自動車生産台数は、インドは601万5,000台で世界第4位、ブラジルは255万台で第8位だった(表3)。新車販売(登録)台数では、インドが522万7,000台で世界第3位、ブラジルは263万5,000台で第6位だった(表4)。インドは人口14億3,651万人、ブラジルは2億1,258万人を抱えともに内需が大きい。また、自動車および同部品の関税率が高いことから、現地生産する自動車への関税メリットが大きいという特徴も似ている。
| 順位 | 生産国 | 生産台数 |
|---|---|---|
| 1 | 中国 | 31,282 |
| 2 | 米国 | 10,562 |
| 3 | 日本 | 8,235 |
| 4 | インド | 6,015 |
| 5 | メキシコ | 4,203 |
| 6 | 韓国 | 4,127 |
| 7 | ドイツ | 4,069 |
| 8 | ブラジル | 2,550 |
| 9 | スペイン | 2,377 |
| 10 | タイ | 1,469 |
注:データは2024年のもの。
出所:OICA(国際自動車工業連合会)
| 順位 | 生産国 | 生産台数 |
|---|---|---|
| 1 | 中国 | 31,436 |
| 2 | 米国 | 16,340 |
| 3 | インド | 5,227 |
| 4 | 日本 | 4,421 |
| 5 | ドイツ | 3,192 |
| 6 | ブラジル | 2,635 |
| 7 | 英国 | 2,369 |
| 8 | フランス | 2,155 |
| 9 | カナダ | 1,907 |
| 10 | ロシア | 1,834 |
注:データは2024年のもの。
出所:OICA(国際自動車工業連合会)
ブラジルの自動車市場では、欧米メーカーのシェアが大きい。ブラジルの全国自動車製造業者協会(Anfavea)が公開している2024年の新車販売(登録)台数をメーカー別に見ると、フィアット・クライスラーが新車販売(登録)台数全体の25.5%を占め最大で、次いでフォルクスワーゲン(新車販売(登録)台数に占めるシェア15.2%)、ゼネラルモーターズ(12.0%)と続く。これらの3社だけで全体の5割以上を占めている(表5)。トヨタ(7.8%)、ホンダ(3.5%)、日産(3.3%)、HPE(注2)(0.9%)の日系自動車メーカーを合わせると、シェアは15.5%。10年前の2014年の新車販売(登録)台数に占める日系自動車メーカーの割合が13%だったことを考えると、フィアット・クライスラー、フォルクスワーゲン、ゼネラルモーターズのいわゆるBIG3のシェアは10年前と変わらないが、日系自動車メーカーは、わずかながらシェアを拡大していることが分かる(図1)。
| 順位 | メーカー | 販売台数 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 1 | フィアット・クライスラー | 672,287 | 25.5 |
| 2 | フォルクスワーゲン | 400,457 | 15.2 |
| 3 | ゼネラルモーターズ | 315,117 | 12.0 |
| 4 | トヨタ | 204,942 | 7.8 |
| 5 | 現代 | 203,742 | 7.7 |
| 6 | ルノー | 139,216 | 5.3 |
| 7 | ホンダ | 91,468 | 3.5 |
| 8 | 日産 | 87,460 | 3.3 |
| 9 | CAOA | 63,543 | 2.4 |
| 10 | プジョー・シトロエン | 61,972 | 2.4 |
| 11 | フォード | 48,499 | 1.8 |
| 12 | HPE | 23,533 | 0.9 |
| 13 | BMW | 17,737 | 0.7 |
| 14 | メルセデス・ベンツ | 14,503 | 0.6 |
| 15 | その他 | 290,427 | 11.0 |
| 合計 | 2,634,903 | 100 | |
出所:Anfavea
図1:ブラジル新車販売(登録)台数のメーカー別シェア(2014年と2024年比較)
出所:Anfavea
なお、輸入車の販売台数は引き続き限定的だ。2024年の新車販売(登録)台数における輸入車の割合は17.7%で、これは10年前の2014年(17.6%)から大きく変わっていない(図2)。ブラジルにおける乗用車の一般関税率〔最恵国待遇(MFN)税率〕は35%と税率が高いこともあり、ブラジルで現地生産する乗用車に関税メリットがある。
図2:ブラジル新車販売(登録)台数における輸入車の割合
出所:Anfavea
また、ブラジルでは2003年以降、ガソリンとバイオエタノールを混合・燃焼して走行するフレックス燃料車が市場に投入されており、現在ではブラジル市場における主流車となっている。2024年時点で、新車販売(登録)台数の7割以上が、サトウキビ由来のバイオエタノールを混合して走行するフレックス燃料車だ(表6)。
| 燃料の種類 | ガソリン | エタノール | フレックス燃料 | xEV | ガス | ディーゼル | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 台数 | 102,484 | 20 | 1,967,275 | 178,183 | 291 | 386,651 | 2,634,904 |
| シェア | 3.89 | 0.001 | 74.66 | 6.76 | 0.0011 | 14.67 | 100 |
注:データは2024年。
出所:Anfavea
ブラジル政府は、今後もガソリンへのバイオ燃料混合率を上昇させる方針を明らかにしており、フレックス車の普及を後押ししている。2024年10月9日に官報公示された、持続可能な低炭素モビリティーを促進するための法律第14,993号(通称:未来の燃料法)(ポルトガル語)では、ガソリンへのエタノールの混合率義務値を最大35%まで拡大できるよう変更した。さらに、国家エネルギー政策評議会(CNPE)は2025年8月、ガソリンのエタノール混合率を27%から30%に引き上げた。ブラジルサトウキビ産業協会(UNICA)のエバンドロ・グッシ会長によれば、将来的に混合率を35%まで引き上げることを検討しているという(注3)。
なお、昨今ブラジルの新車販売市場で存在感を増しているのが中資系自動車メーカーだ。2024年の輸入車販売(登録)台数における中国製の割合は25.8%と4分の1以上を占めた(図3)。2023年が11.9%だったことを考えると、2023年比で13.9ポイント増加している。
図3:ブラジル新車販売(登録)台数に占める中国からの輸入車の割合
出所:Anfavea,ABVE
最も販売台数が多かったのは比亜迪(BYD)で、7万6,863台だった。中資系自動車メーカーはいずれもブラジルに自社の製造拠点がなかったが、2025年8月に長城汽車(GWM)が、2025年10月にBYDが、それぞれ南米初の生産拠点を設立した(注4)。中資系メーカーはこれまで、ブラジル政府が付与する、電動車〔バッテリー式電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、ハイブリッド車(HEV)〕の完成車や、これらのコンプリートノックダウン(CKD)およびセミノックダウン(SKD)用輸入部品に対する関税減免措置を活用し、価格競争力などによって販売台数を伸ばしてきた。しかし、同措置が2026年7月および12月に段階的に廃止されることを踏まえ、現地生産にかじを切ったとみられる(注5)。今後は、ブラジル市場における中資系メーカーの存在感がこれまで以上に増す可能性があり、日系メーカーを含めた既進出自動車メーカー間の競争激化が予想される。こうした環境変化の中で、日系メーカーは自社の強みを生かした新たなビジネス戦略が求められている。
日系自動車メーカーが牽引するインド自動車市場、政府は自国生産と輸出促進を目指す
インドでは、2024年に初めて自動車生産台数が500万台を超えた(図4)。インド自動車工業会(SIAM)は、世界最大の人口を有するインドでは、人口ボーナス期の継続や今後見込まれる中間層の拡大を背景に、自動車市場が中長期的に成長を続けるとの見方を示している(注6)。インドにおける自動車の関税率は最大110%と高率であるため、現地生産車が圧倒的な価格優位性を持つ。
拡大し続ける自動車生産を牽引するのが、日系メーカーのマルチスズキだ。同社は、1980年代の国産車構想を契機にインドへ進出し、地場に根差した事業運営を積み重ねることで、現在に至るまでマーケットリーダーとしての地位を維持してきた。インド国内に5カ所の生産拠点を有し、合計360万台の生産能力を持つ(注7)。2024年の新車販売台数において、マルチスズキの市場シェアは40%に達しており、他社を大きく引き離すかたちで、圧倒的な首位を維持している(図5)。
出所:SIAM
出所:Federation of Automotive Dealers Association
マルチスズキは、他社と比較して輸出割合が高いことも注目に値する(図6)。同社の2024年の生産台数における輸出割合は14.5%。仕向け地は100カ国以上で、チリやメキシコといった中南米諸国も含まれる。2024年には、前年比121%となる過去最高の約33万台を輸出した。地場の主要自動車メーカーであるタタ・モーターズやマヒンドラ・マヒンドラの輸出割合は、それぞれ0.5%、6%と低く、国内市場に注力している。マルチスズキは、成長を続けるインド市場向け生産拠点としてだけでなく、輸出製造拠点としての位置付けも強めている。また、こうした輸出促進はインドの産業政策にも資するものだ。
出所:各社年間レポート、各社発表
インドの代表的な産業政策「メイク・イン・インディア」は、国内製造業の育成と競争力強化を通じ、輸出拡大や輸入代替を促進することで、貿易収支の改善につなげる狙いがある。近年は、製造業の生産および輸出の一大拠点化を目指し、「メイク・イン・インディア、メイク・フォー・ザ・ワールド」と、そのスローガンを発展させてきている。
こうした産業政策を受け、SIAMも自動車および自動車部品メーカーの現地生産と輸出促進を支援している。例えば、2020年には、部品の輸入依存を低減し、現地調達や現地生産を促進する観点から、インド国内における自動車サプライチェーンの確立を目指した調査がSIAM主導で実施された。調査の結果、インド市場で供給不足とされる部品として、センサーなどの高い技術が求められる電気電子部品、トランスミッションシステムなどがリストアップされた。SIAMはインド政府と連携し、こうした製品の現地生産に向けた投資促進にも取り組んでいる(注8)。SIAMによれば、インド政府はインドを世界の自動車産業の生産および輸出ハブとすることを目指し、同産業の国際競争力強化に注力している。
なお、インドの自動車市場における中資系自動車メーカーの事業拡大は限定的だ。インドと中国は国境の係争問題を抱えており、緊張状態が続いている。こうした背景から、インド政府は名指ししてはいないものの、2020年4月以降、中国を含むインドと国境を接する国からの投資を政府の事前許可制とした。そのため、中国企業がインドで事業を拡大させることは容易でなく、世界のEV市場を牽引する中国企業の多くは、インドでは苦戦を強いられている。ただし、インド政府は2026年3月、インドと国境を接する国(LBC)からの投資に関するガイドラインの変更を閣議で承認した(注9)。これにより、今後、中国などからの投資規制が一部緩和されるとみられる。例えば、資本財、電子資本財、電子部品などの生産に係るLBCからの投資計画については、引き続き政府認可が必要だが、60日以内に投資許可判断が行われることになった(注10)。ただし、投資に当たってはインド国内に拠点を有することが求められ、当該拠点についてはインド人による経営・運営上のコントロールが要件とされている。今回の規制緩和は、これまで中国資本が一部に含まれることを理由に厳格な審査の対象となり、結果として停滞していた国内投資を呼び込む狙いがあるとみられる。
内燃機関車が中長期的な需要を維持するブラジルとインド
ブラジルとインドの自動車市場では、ともに内燃機関車の長期的需要が維持されるとみられる。インドでは、向こう15年を展望しても、内燃機関車が乗用車市場の主流であり続けるとの見方が多数を占める(注11)。SIAMによれば、インド政府はエネルギーの多様化を重視しており、EVに移行する前段階ではPHEVやHEVが乗用車市場で存在感を増すと予想される。EVの普及については、主に二輪車や三輪車、バスなどに限定されるという。乗用車市場におけるEV普及の課題は、価格の高さ、充電インフラの未整備、政府の優遇政策の不足、主要部品の国内調達の難しさなどが挙げられる。
ブラジルでも、内燃機関車が自動車市場の主流であり続けるとの見方が強い。ブラジルではサトウキビ由来のエタノール生産量が拡大の一途を続けており、オフテイカーとして自動車産業が果たす役割は大きい。また、自動車メーカー各社もブラジルの政策に追随するかたちで、新車の研究開発や生産を進めている。ブラジル国内に3つの生産工場を有するトヨタは、2018年、世界初となるフレックス燃料車にハイブリッドシステムを搭載したフレックス・ハイブリッド車の試作車を公開し、ブラジルの特性を生かした自動車を市場に投入した。ブラジル・インド間の自動車・同部品貿易の割合はまだ小さい。ただ、インドの自動車部品メーカーの中には、2026年からインドで生産する部品の一部をブラジル向けに輸出開始する意向を示している企業もある。メルコスール・インド特恵貿易協定の改定が進展すれば、二国間のさらなる貿易拡大も見込まれる(注12)。
- 注1:
-
インド側はHSコード8桁レベルの450品目。メルコスール側はメルコスールの関税分類番号であるNCMコード8桁レベルの452品目が対象。インド側で関税無税の21品目は、41類の「原皮(毛皮を除く。)及び革」(12品目)、84類の「原子炉、ボイラー及び機械類並びにこれらの部分品」(5品目)、85類の「電気機器及びその部分品並びに録音機、音声再生機並びにテレビジョンの映像及び音声の記録用又は再生用の機器並びにこれらの部分品及び附属品」(4品目)に限られている。
- 注2:
-
HPE(HPE Automotores do Brasil)は、ブラジルにおける三菱自動車の公式ライセンシー・製造販売会社で、同社の車両を輸入、現地生産、販売まで一貫して行っている。
- 注3:
-
2025年11月3日にジェトロが行ったインタビューによる。
- 注4:
-
2025年8月21日付ビジネス短信、2025年10月30日付ビジネス短信参照。
- 注5:
-
2025年8月5日付ビジネス短信、2023年12月5日付ビジネス短信参照。
- 注6:
-
2025年9月12日にジェトロが行ったインタビューによる。
- 注7:
-
5拠点のうち4拠点は、ハリヤナ州グルガオン(生産能力は年70万台)、ハリヤナ州マネサール(90万台)、グジャラート州ハンサプール(75万台)、ハリヤナ州カルコダ(25万台)で、既に生産が行われている。5つ目の拠点として、2026年3月24日にグジャラート州に2拠点目となる新工場建設を発表した。新たな拠点における、最大生産能力は年間100万台。
- 注8:
-
2025年9月12日にジェトロが行ったインタビューによる。
- 注9:
-
2026年3月12日付ビジネス短信参照。
- 注10:
-
対象分野については今後変更の可能性がある旨、留意が必要。
- 注11:
-
2025年9月8~13日にかけて、ジェトロがニューデリーおよび近郊で行ったインタビューによる。
- 注12:
-
メルコスールは1991年に設立された関税同盟。正式加盟国は、アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイの4カ国。ボリビアは、2015年に加盟国間で署名された加盟議定書の批准書を2024年7月8日に寄託したことで、2024年8月に正式加盟のステータスを得た。同国は今後、最長4年間の猶予期間を経て実質的な加盟国となる。詳細は、地域・分析レポート「ラテンアメリカ統合連合の今(2)ALADIから生まれたメルコスール」参照。
- 執筆者紹介
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ジェトロ調査部米州課 課長代理(中南米)
辻本 希世(つじもと きよ) - 2006年、ジェトロ入構。ジェトロ北九州、ジェトロ・サンパウロ事務所などを経て、2019年7月から現職。





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