電力制約、制度変化と立地選択
米国データセンター最新事情(1)
2026年7月2日
データセンターは、デジタル経済を支える基盤インフラとして、その重要性を一段と高めている。クラウドサービスや生成人工知能(AI)の急速な普及を背景に、世界各国・地域で建設投資が拡大している。こうした中、米国は施設数と投資規模の両面で圧倒的な存在感を示している。
世界各地のデータセンターの立地・運営情報を集約するデータベースData Center Map
によれば、2026年6月時点で米国に所在するデータセンター数は4,300件を超え、世界全体の約4割を占めると推計されている。また、複数の調査データを基にした統計サービスのStatistaの推計
でも、2026年4月時点で約4,200件と、ほぼ同水準となっている。いずれの推計でも、米国の件数は、国・地域別立地数で次ぐ英国やドイツ(いずれも500件強)と比べて約8倍に達しており、世界のデータセンター立地における米国の突出ぶりが示されている。
データセンターに依存する米国経済
米国経済においても、データセンターを中核とするAI関連投資がマクロ経済成長を主導する構図が鮮明になっている。商務省経済分析局(BEA)によれば、2026年第1四半期(1~3月)の設備投資は前期比年率10.1%増と2桁の伸びを示したが、この伸びはほぼAI・データセンター関連分野によるものとされる。内訳を見ると、データセンター関連構築物、情報処理機器、ソフトウエアの寄与度の合計は13.3ポイントに達する。一方で、これらを除いた構築物や一般機器の寄与度はマイナスであり、投資の偏在が明らかとなっている(図参照)。
出所:商務省経済分析局(2026年5月28日更新データ)からジェトロ作成
S&Pグローバルの分析によれば、データセンターおよびAI関連投資(データセンター建設、電力インフラ、情報処理機器、ソフトウエア、研究開発などを含む)は、2025年前半の米国の民間最終需要増加分の約8割を占め、マクロ経済の需要構造そのものを大きく変化させている(注1)。中でも、主要テック企業5社(アマゾン、グーグル、メタ、マイクロソフト、オラクル)によるAI関連インフラを中心とする資本支出は、2025年に4,120億ドル(GDP比1.31%)に達し、マクロ経済指標に一定の影響を与える水準まで拡大している(連邦準備制度理事会報告、2026年4月)(注2)。
さらに、リッチモンド連銀の分析によれば、2025年前半のGDP成長の92%がAI関連投資による寄与であり、それ以外の部門の寄与は限定的であった(注3)。これらを踏まえると、2025年から2026年前半にかけて、米国経済は実質的にデータセンターを中心とするAI拡張に依存する構造となっている。
税制優遇を軸とする誘致競争に見直しの動きも
AI・データセンター関連投資の急速な拡大を背景に、政策対応も本格化している。従来、米国ではデータセンター整備は主にクラウド大手や、データセンター内のスペースを共有するコロケーション事業者を中心に、民間主導で進められてきた。しかし、AIを巡る国際競争の激化を受け、連邦政府および州政府による支援が強化されている。
「データセンターインフラに対する連邦許認可の促進」と銘打った2025年7月の大統領令(Executive Order 14318)
(192KB)では、一定規模以上のAI向けデータセンターおよび関連インフラを「適格プロジェクト」と位置付けている。これにより、連邦許認可手続きの迅速化や環境審査の簡素化、審査の可視化などが打ち出された。さらに、連邦所有地や軍用地の活用、融資・補助金、税制優遇などを含む包括的な財政支援も提示されている(2026年3月30日付地域・分析レポート参照)。同令は、国家安全保障および国際競争の観点から、AIデータセンターを重要インフラとして明確に位置付けるものだ。電力設備、送電網、半導体を含む関連基盤の一体的な整備を志向している。
連邦政府による後押しを背景に、州政府も競うように誘致政策を強化してきた。主要州による施策は、設備投資に対する売上税の控除や固定資産税の減免を軸に、インフラ整備支援や人材雇用支援にも及んでいる。州レベルのインセンティブ制度を横断的に整理した全米州議会会議(NCSL)の報告
によれば、2026年4月時点で全50州のうち少なくとも38州が、データセンター建設に対する何らかの税制優遇措置を導入している。
表では、前出のData Center Mapのカウントに基づくデータセンター立地数上位7州(注4)について、各州の主な税制インセンティブをまとめている。例えば、米国最大のデータセンター立地先であるバージニア州では、サーバーや電源設備などに対する売上税・利用税の免除が認められている。要件を満たす大型案件については、これらのインセンティブが最長2050年まで延長可能であり、長期的な投資回収を後押ししている。また、バージニア州に次ぐ立地数を誇るテキサス州でも、設備や電力に対する売上税とリース利用税の免除(最大15年間)に加え、地方自治体レベルでも、特定区域への立地に際して固定資産税の減免などの恩典が提供されている。一部の戦略投資案件では、州の補助金(Texas Enterprise Fund)を組み合わせた包括的な支援も行われており、州間競争の中で立地選択を大きく後押ししている。
| 州名 | 内容 |
|---|---|
| バージニア州 |
|
| テキサス州 |
|
| カリフォルニア州 |
|
| イリノイ州 |
※2026年6月5日付の州知事の指示により、イリノイ州商務経済機会局(DCEO)は7月1日以降、以下プログラムの申請処理を停止。 Data Centers Investment Programの下、認定DCに対し、州・地方の売上税・利用税などを最大20年間免除、特定地域における建設労働者賃金の20%税額控除など。 |
| ジョージア州 | サーバーや冷却設備、資材などDC向け設備について、州および地方の売上税・利用税を原則免除。 |
| オハイオ州 |
※2026年5月27日付の州知事発表により、州税額控除委員会は、以下記載の売上税・利用税免除措置への新規申請の受付および承認審査を停止。
|
| アリゾナ州 |
|
注1:法人税の課税ベースを売り上げのみに基づいて配分するSingle Sales Factor方式により、資産や雇用の増加が課税に影響せず、大規模設備投資を伴うデータセンターにとって実質的な税負担軽減となる。
注2:Texas Enterprise Fund(TEF)。データセンターを含む大型投資案件に対し、州間競争において立地決定を後押しするために提供される補助金。
注3:CRA制度は地域再生・投資誘致を目的として、市や郡が指定した区域内の不動産投資に対し、固定資産税を減免する制度。データセンターを含む大型投資案件の誘致に広く活用されている。
出所:各州政府ウェブサイト、州法令などを基にジェトロ作成
他方、一部の州では、こうした優遇措置を見直す動きも顕在化している。イリノイ州では、データセンターに特化した投資インセンティブプログラムとして、最大20年間の売上税・利用税の免除や建設・雇用に係る税額控除などを提供してきたが、J.B.プリツカー知事(民主党)による2026年6月5日付の指示により(J.B.プリツカー知事ウェブサイト参照
)、同プログラムの新規申請受付を停止した。州政府は、これはデータセンター建設がエネルギー価格や電力の安定供給、水資源、そして地域社会に与える影響の拡大に対応した措置だと説明している。
また、オハイオ州においても、データセンター向けサーバー、電源設備、冷却設備などに対する売上税・利用税の免除措置(最大15年間)について、マイク・デワイン知事(共和党)による2026年5月27日付の発表に基づき(マイク・デワイン知事ウェブサイト参照
)、新規申請の受付および承認審査が停止された。州政府によれば、6月時点でも新規案件へのインセンティブ付与は行われていない。
地域社会への影響を考慮した包括的な制度設計へ
コロンビア大学グローバル・エネルギー政策センター(CGEP)の報告(2025年12月)によれば、2025年1月から11月までに、全米の州議会においてデータセンター関連法案が190件以上提出された。このうち約50件は、税制優遇などの立地インセンティブ導入を目的とするものだ。一方、40件以上は電力料金への影響や電力網負担に関する規制(電力料金負担者の保護など)を扱い、さらに約30件は水資源利用や環境影響への対応を論点としている。このほか、エネルギー使用や環境影響の情報開示を求める法案も多数提案されている(注5)。
よりミクロな地方自治体レベルでも、新規建設に対する慎重論が台頭している。実際の立地規制や開発許認可の権限を有する郡・市町村では、土地の用途を制限するゾーニング規制の厳格化や、開発の一時停止(モラトリアム)といった措置が各地で導入されている。コロンビア大学ロースクール(2026年5月)によれば、全米で少なくとも100件以上のデータセンターに対するモラトリアムが導入されている。具体例としては、(1)ミネソタ州イーガン市における1年間の開発停止措置(2026年2月)、(2)カンザス州ハーヴィー郡における2028年までの停止措置(2026年1月)、(3)ミシガン州イプシランティ市における60日間の緊急モラトリアム(2026年3月)、(4)ジョージア州デカルブ郡における100日間の許認可停止(2025年6月)などがある(注6)。これらは、規制枠組みの整備や影響評価のための時間を確保する目的で導入されたものであり、恒常的な制限というより、適切な制度設計へ移行するための過渡的措置と位置付けられている。
こうした動きの背景には、データセンターが投資や雇用創出などを通じて地域経済に大きな利益をもたらす一方、その急速な増加に伴い、電力需要の拡大や送配電インフラの逼迫、水資源の消費といった地域社会への負担が顕在化している事情がある。こうした負担の増大がデータセンターの急増に起因するとの認識や、将来への懸念が住民の間で広がる中、各州や地方自治体の政策対応は、単なる立地促進にとどまらず、負担の適正配分や環境影響の管理を含む包括的な制度設計へとシフトしている。
事業者側の立地戦略に変化
データセンターのサプライチェーンに関わる企業にとって、立地および投資判断の前提条件は大きく変化しつつある。従来は、電力や通信インフラ、税制優遇措置などを主軸とする要素によって立地が決定されてきた。しかし近年では、前述のような事情を背景に、規制の予見可能性や地域社会の受容性といった制度面・社会面の制約条件も、同等に重要な要素として浮上している。
前出のとおり、州レベルでは電力料金負担や環境影響に関する規制が急増している。一方、地方自治体レベルではゾーニング規制の厳格化やモラトリアムの導入が広がっており、許認可手続きに要する期間は長期化する傾向にある。例えば、バージニア州ラウドン郡では、自動承認(by-right)とされていたデータセンター立地について、2025年3月以降は個別審査や公聴会を要する制度へと変更されている(注7)。このような制度変更は、許認可取得のリードタイムを延ばすだけでなく、案件ごとに審査内容や判断プロセスに差異が生じやすくなり、スケジュール管理の不確実性を高める要因となっている。
また、電力コスト負担の面でも重要な変化がみられる。トランプ政権は2025年以降、AI・データセンター関連インフラについて、「民間主導」「自己負担」を基本とする方針を強化している。特に電源や送電網の整備費用については、大口需要家であるデータセンター事業者が負担すべきとの立場を明確にしている(2026年3月10日付ビジネス短信参照)。この方針は、家庭向け電力料金へのコスト転嫁を回避するという政策目的に基づくものであり、前述の州レベルの制度設計とも整合している。
今日の米国では、電気料金の抑制が住宅政策や税制と並ぶ最優先課題の1つと位置付けられている。2026年2月の全米知事会議などにおいても、各州知事が家計負担の軽減を実感できる施策の提示を競っている(2026年4月13日付地域・分析レポート参照)。2026年11月の中間選挙を控える中、アフォーダビリティ(注8)の観点から「家計の保護」を軸とする政策は今後さらに強化される可能性が高く、事業者側のコスト負担増加というかたちで具体化していくことが見込まれる。
- 注1:
-
S&P Global「S&P Global Research Reveals Data Center Investments Moving The U.S. Macro Needle
」プレスリリース(2025年11月5日)。 - 注2:
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米連邦準備制度理事会(FRB)「FEDS Notes: Monitoring AI Adoption in the U.S. Economy
」(2026年4月3日)。データは、Amazon、Google、Meta、Microsoft、Oracleの四半期ベースの設備投資(CAPEX)の合計に基づく。 - 注3:
-
リッチモンド連銀(Richmond Fed)「Econ Focus, First/Second Quarter 2026
」。 - 注4:
-
2026年6月15日(ウェブサイト閲覧)時点の州別データセンター立地数集計に基づく。表は立地数の多い順に記載。
- 注5:
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コロンビア大学グローバル・エネルギー政策センター(CGEP)「Data Centers and Their Energy Use: Trends in State Capitals
」(2025年12月15日)。 - 注6:
-
コロンビア大学ロースクール(サビン気候変動法センター)「Local Moratoria Against Data Center Construction: Considerations for Municipal Governments
」(2026年5月27日)。 - 注7:
-
バージニア州ラウドン郡(Loudoun County, Virginia)「Data Center Standards & Locations
」(2025年3月18日改正)。 - 注8:
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住宅、エネルギー、医療、通信など、生活に不可欠なサービスについて、世帯所得の範囲内で無理なく支払える状態を指す概念。
- 執筆者紹介
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ジェトロ・ニューヨーク事務所 次長
伊藤 博敏(いとう ひろとし) - 1998年、ジェトロ入構。ジェトロ・ニューデリー事務所、ジェトロ・バンコク事務所、企画部海外地域戦略主幹・東南アジア、調査部国際経済課長などを経て現職。主な著書:『ジェトロ世界貿易投資報告』2021年版~2025年版(編著、ジェトロ)、『FTAの基礎と実践:賢く活用するための手引き』(編著、白水社)、『タイ・プラスワンの企業戦略』(共著、勁草書房)、『アジア主要国のビジネス環境比較』『アジア新興国のビジネス環境比較』(編著、ジェトロ)、『インドVS中国:二大新興国の実力比較』(共著、日本経済新聞出版社)、『インド成長ビジネス地図』(共著、日本経済新聞出版社)、『インド税務ガイド:間接税のすべてがわかる』(単著、ジェトロ)など。





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