新規登録台数は過去最高、補助金主導でEV市場拡大(ポーランド)
2026年7月10日
ポーランドの自動車市場は、「生産縮小」と「市場拡大」が同時進行する大きな転換期を迎えている。
2025年は乗用車生産台数が前年比52.6%減と大幅に落ち込んだ一方、新車登録台数は過去最高を記録した。背景には、国内需要の底堅さに加え、法人需要の拡大やEV市場の急成長がある。
特に注目されるのは電動化の加速だ。政府の購入補助金を追い風にBEV登録台数は前年比2.6倍となり、中国メーカーのMGやジャクーが急伸するなど、市場構造にも変化が生じている。一方で、充電インフラ整備や欧州基準への対応には依然として課題が残る。
生産面では欧州自動車産業の逆風を受けるものの、フォルクスワーゲンやトヨタ、フォックスコンによるEV・デジタル分野への投資は拡大しており、ポーランドは製造拠点から開発・サービス機能を含む中東欧の自動車ハブへと進化しつつある。
自動車産業の再編と電動化の行方を占う上で、今後の動向が注目される。
国内乗用車生産台数は半減するも新規登録台数は過去最高
ポーランド国内の2025年の乗用車生産台数は10万2,400台となり、前年比で52.6%減少した。人件費やエネルギー価格の上昇、乗用車需要の減少、米国関税の影響など、欧州全域に広がる複数の要因により、乗用車生産台数は欧州全体で減少傾向が続いている。国内の乗用車生産の大半を占めるステランティスは、2026年1月、ティヒ工場の縮小と人員削減を発表している。
一方、ポーランド自動車工業会(PZPM)によると、ポーランド国内の2025年の新車乗用車の新規登録台数は59万7,435台で、前年比8.3%増となり、過去最高だった2019年の55万5,598台を超えた。乗用車新規登録台数の内訳を見ると、法人向けが41万1,333台(前年比9.3%増)で全体の68.8%を占めている。これに対し、個人向けは18万6,102台(6.3%増)で全体の31.2%だった。
なお、ポーランドでは新車と中古車の価格差が大きいため、中古自動車の人気が根強い。2025年の中古乗用車新規登録台数は85万7,561台だった。車齢の内訳を見ると、10年超が53.9%(前年比0.5ポイント減)を占め、4年超10年以下が35.1%(前年比横ばい)、4年以下が10.9%(前年比0.5ポイント増)となっており、車齢の高い乗用車が多いことが特徴だ。
メーカー別シェア首位はトヨタが維持するも前年比減、中国系メーカーが急伸
乗用車新規登録台数におけるメーカー別シェア上位は、1位がトヨタ、2位がシュコダ、3位がフォルクスワーゲンと、基本的な顔ぶれは変わらないものの、トヨタの台数は前年比11.3%減となった(表1参照)。注目は13位の中国メーカーMGで、前年比2.3倍となり、上位20位以内にランクインした。これは、後述する電気自動車(EV)市場の急伸の影響が大きいと考えられ、ポーランドのEV市場の今後の動向が注目される。
| 順位 | メーカー・ブランド |
2024年 台数 |
2025年 | ||
|---|---|---|---|---|---|
| 台数 | シェア | 前年比 | |||
| 1 | トヨタ | 103,835 | 92,128 | 15.42 | △ 11.3 |
| 2 | シュコダ | 60,136 | 65,513 | 10.97 | 8.9 |
| 3 | フォルクスワーゲン(VW) | 38,403 | 42,932 | 7.19 | 11.8 |
| 4 | BMW | 27,123 | 31,306 | 5.24 | 15.4 |
| 5 | 起亜 | 33,350 | 30,743 | 5.15 | △ 7.8 |
| 6 | アウディ | 29,160 | 30,623 | 5.13 | 5.0 |
| 7 | メルセデス・ベンツ | 28,785 | 30,272 | 5.07 | 5.2 |
| 8 | 現代 | 31,007 | 29,228 | 4.89 | △ 5.7 |
| 9 | ダチア | 19,992 | 22,420 | 3.75 | 12.1 |
| 10 | ルノー | 21,629 | 22,199 | 3.72 | 2.6 |
| 11 | ボルボ | 14,950 | 15,710 | 2.63 | 5.1 |
| 12 | フォード | 14,111 | 15,522 | 2.60 | 10.0 |
| 13 | MG | 6,763 | 15,230 | 2.55 | 125.2 |
| 14 | レクサス | 14,681 | 15,034 | 2.52 | 2.4 |
| 15 | クプラ | 11,554 | 13,792 | 2.31 | 19.4 |
| 16 | 日産 | 9,386 | 10,309 | 1.73 | 9.8 |
| 17 | プジョー | 9,654 | 9,656 | 1.62 | 0.0 |
| 18 | オペル | 10,413 | 9,522 | 1.59 | △ 8.6 |
| 19 | シトロエン | 6,628 | 9,166 | 1.53 | 38.3 |
| 20 | スズキ | 9,529 | 7,560 | 1.27 | △ 20.7 |
| — | その他 | 50,478 | 78,570 | 13.15 | 55.7 |
| 計 | 551,567 | 597,435 | 100.0 | 8.3 | |
出所:ポーランド自動車工業会(PZPM)からジェトロ作成
メーカー・モデル別に見ると、トヨタの「カローラ」が販売台数2万3,487台で、昨年に続き首位を維持するも、前年比20.3%減となった(表2参照)。上位20位にランクインしている他のトヨタ車も前年比減となった。メーカー別シェアの順位と同様に、中国車の急伸が目立った。MGの「HS」は前年比95.1%増の8,660台、Jaecoo(ジャクー)の「ジャクー7」は前年比14倍の7,202台となった。
| 順位 | メーカー・モデル |
2024年 台数 |
2025年 | ||
|---|---|---|---|---|---|
| 台数 | シェア | 前年比 | |||
| 1 | トヨタ・カローラ | 29,487 | 23,487 | 3.93 | △ 20.3 |
| 2 | シュコダ・オクタヴィア | 19,268 | 21,121 | 3.54 | 9.6 |
| 3 | トヨタ・C-HR | 14,516 | 14,239 | 2.38 | △ 1.9 |
| 4 | 起亜・スポーテージ | 14,133 | 13,764 | 2.30 | △ 2.6 |
| 5 | トヨタ・ヤリスクロス | 15,608 | 13,435 | 2.25 | △ 13.9 |
| 6 | 現代・ツーソン | 13,179 | 11,644 | 1.95 | △ 11.6 |
| 7 | トヨタ・ヤリス | 14,185 | 10,545 | 1.77 | △ 25.7 |
| 8 | フォルクスワーゲン・T-Roc | 9,217 | 10,032 | 1.68 | 8.8 |
| 9 | トヨタ・RAV4 | 10,390 | 9,466 | 1.58 | △ 8.9 |
| 10 | MG・HS | 4,439 | 8,660 | 1.45 | 95.1 |
| 11 | ダチア・ダスター | 10,394 | 8,527 | 1.43 | △ 18.0 |
| 12 | シュコダ・スペルブ | 8,307 | 7,861 | 1.32 | △ 5.4 |
| 13 | シュコダ・カミック | 8,083 | 7,860 | 1.32 | △ 2.8 |
| 14 | シュコダ・ファビア | 6,978 | 7,766 | 1.30 | 11.3 |
| 15 | シュコダ・コディアック | 6,056 | 7,445 | 1.25 | 22.9 |
| 16 | メルセデス・ベンツ・GLCクラス | 7,094 | 7,412 | 1.24 | 4.5 |
| 17 | ルノー・キャプチャー | 6,294 | 7,337 | 1.23 | 16.6 |
| 18 | ジャクー・ジャクー7 | 505 | 7,202 | 1.21 | 1326.1 |
| 19 | ボルボ・XC60 | 6,173 | 7,191 | 1.20 | 16.5 |
| 20 | クプラ・フォーメンター | 7,850 | 7,040 | 1.18 | △ 10.3 |
| — | その他 | 339,411 | 385,401 | 64.51 | 13.5 |
| 計 | 551,567 | 597,435 | 100.00 | 8.3 | |
出所:ポーランド自動車工業会(PZPM)からジェトロ作成

(ジェトロ撮影)
高級車の登録台数も過去最高を記録するも、市場全体シェアは横ばい
自動車市場調査会社サマルによると、高級車といわれるプレミアムブランドの2025年の登録台数は、前年比7%増の13万4,000台と過去最高を記録した。メーカー・ブランド別に見ると、BMWが首位となり、アウディ、メルセデス・ベンツが続く。市場の3分の2をドイツ勢が占める構図だ。
一方で、プレミアムブランドが乗用車市場全体に占める割合は、前年の22.7%に対し、2025年は22.9%とほぼ横ばいで推移している。中国メーカーの価格競争力が、プレミアムブランドのシェア拡大を抑えたかたちだ。
代替燃料自動車の普及率が急伸、ガソリン車、ディーゼル車は減少
新規登録台数を燃料種別に見ると、ガソリン車とディーゼル車はそれぞれ前年比6.5%減の18万5,299台、前年比11.7%減の4万2,543台となった(表3参照)。これらの市場シェアの合計は38.1%と、昨年に引き続き減少傾向(前年比6.5ポイント減)にあり、代替燃料車に押されるかたちとなった。
他方で、代替燃料車は前年比21.1%増の36万9,593台で、市場シェアは61.9%となり、市場の過半数を占めるに至った。その内訳を見ると、特にEVの中でも、バッテリー式電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、水素を使用する燃料電池車(FCEV)の伸びが著しい。
BEVは前年比2.6倍の4万3,311台、PHEVは前年比2.2倍の3万3,941台となった。FCEVは、絶対数は少ないが前年比10倍の121台となった。ほか、ハイブリッド車(HEV)は12万8,594台(6.3%増)、マイルドハイブリッド車(MHEV)は14万4,374台(6.6%増)、液化石油ガス(LPG)車は1万9,056台(15%増)となった。
| 燃料種別 | 2024年 | 2025年 | |||
|---|---|---|---|---|---|
| 台数 | シェア | 台数 | シェア | 前年比 | |
| ガソリン車 | 198,209 | 35.9 | 185,299 | 31.0 | △ 6.5 |
| ディーゼル | 48,178 | 8.7 | 42,543 | 7.1 | △ 11.7 |
| 代替燃料 | 305,180 | 55.3 | 369,593 | 61.9 | 21.1 |
| BEV | 16,564 | 3.0 | 43,311 | 7.2 | 161.5 |
| PHEV | 15,491 | 2.8 | 33,941 | 5.7 | 119.1 |
| FCEV | 12 | 0.0 | 121 | 0.0 | 908.3 |
| HEV | 120,983 | 21.9 | 128,594 | 21.5 | 6.3 |
| MHEV | 135,492 | 24.6 | 144,374 | 24.2 | 6.6 |
| LPG | 16,567 | 3.0 | 19,056 | 3.2 | 15.0 |
出所:ポーランド自動車工業会(PZPM)からジェトロ作成
補助金主導でBEV市場が急拡大
2025年のポーランドにおけるEV市場は、BEVを中心に大きく拡大し、過去最高水準の成長を記録した転換点の年となった。ポーランド・ニューモビリティー協会(PSNM)(注)は、2025年2月に導入された購入助成制度「私たちのEV(NaszEauto)」が市場拡大の主因であるとみている。同制度は個人および個人事業主を対象とし、小型乗用車(M1)を中心に補助金を交付する仕組みで、11億8,000万ズロチ(約520億円、1ズロチ=約44円、4月28日付ポーランド中央銀行レート)が国家復興基金から拠出される。2025年中に約3万件の申請が行われ、予算の約8割が年内に消化された。高い利用率を示したことから、制度への需要の大きさが確認された。助成制度が追い風となるかたちで、新規BEV登録台数は4万3,000台に達し、前年比2.6倍超の増加と大幅に増加した。
また、2025年10月には対象者を非営利団体や公的機関に拡大し、同時に車両カテゴリーに小型バス(M2)、商用車(N1)を含めた。新規BEV登録台数のうち、商用車は2,368台(前年比27%増)であったが、第4四半期(10~12月)の登録台数が2025年全体の約5割を占めたことからも、助成制度の効果の高さがうかがえる。
PZPMは、乗用車セグメントにおける効果は非常に高く、欧州レベルでも新たな支援の標準を打ち立てたと評価した。同制度は2026年4月末までの実施となっていることから、市場転換の勢いを維持するためには、補助制度の継続・拡充が不可欠であると強調している。
欧州の2025年の新規登録車におけるBEVのシェアを見ると、ポーランド(7.2%)はEU平均(17.4%)の3分の1と低いものの、EUに加盟する中・東欧諸国の中で、スロベニア、ハンガリー、リトアニアに次いで4番目に位置する。すなわち、同地域では一定の普及度がある一方で、西欧との差は依然として大きい。ポーランド国内でのEV普及には、中長期的に安定した政策支援の継続が望まれる。
インフラ拡大は進展もTEN-T沿いの整備に構造的課題
PSNMによると、EVの普及に伴い、国内の充電インフラは着実に拡大している。2025年から2026年の第1四半期にかけてインフラ容量が大幅に増加し、総出力は600メガワット(MW)を超えた(2026年3月末時点)。2025年末時点の公共充電器数は1万1,762基となり、前年比で3割以上増加した。充電器のうち約63%が交流(AC)普通充電器、37%が直流(DC)急速充電器だった。特にDC急速充電器の増設が顕著で、新たに1,732基が設置された。EVでの長距離走行に不可欠な急速充電の整備が進展している点は重要だ。

EUの代替燃料インフラ規則(AFIR、2023年8月2日付ビジネス短信参照)で定められている最低充電インフラ総容量の達成率(2026年3月末時点)は、2025年末の目標に対して約230%と大幅に上回っており、2027年末の目標に対しても117%と前倒しで達成している。ただし、これは目標容量を算出する上で用いるBEVとPHEVの登録台数がまだ限定的であることも一因であり、単純評価には留意が必要だ。
一方、AFIRで定められている「汎(はん)欧州運輸ネットワーク(TEN-T)」(2023年12月25日付ビジネス短信参照)沿いの整備に関する目標の達成状況は依然として不十分だ。加盟国の重要な都市圏をつなぐ「中核ネットワーク」における充電インフラ整備の達成率(2025年目標)は、出力要件ベースでは62%に達するが、ネットワークカバー率では31%にとどまる。2027年目標に対してはそれぞれ54%、21%と、進展はみられるものの、依然として大きなギャップが残る。また、中核ネットワークに接続することで域内のあらゆる地域をつなぐ「包括的ネットワーク」に至っては、カバー率が2025年時点で約5.5%と、著しく低水準にとどまる。
大型車用インフラの整備状況はさらに遅れており、中核ネットワークでのカバー率は2025年時点で約1.6%、2027年目標に対しては1.5%に過ぎない。充電スポットは国内でわずか7カ所にとどまり、AFIRが求める設置間隔を満たしておらず、商用EV普及のボトルネックとなっている。
PSNMは、これらの要因として、AFIRの要件が非常に野心的である点に加え、ポーランドのTEN-Tネットワークが極めて長大であることを挙げている。また、大型EV向けインフラについては、需要不足と高コストのミスマッチが民間投資の障壁になっていると指摘する。充電インフラ設置に係る補助金制度の迅速な実施と継続的な支援が、市場の発展を左右する重要な要素となる。
電動化を軸にした投資拡大と産業基盤の強化
フォルクスワーゲン・ポズナンは2025年10月に、ポーランド西部ヴジェシニャ工場の拡張に投資し、次世代のEV商用車「クラフター」の生産を開始すると発表した。新たに車体組み立て工場とバッテリー倉庫を建設し、2027年中の完成を予定している。同工場は「クラフター」および「MAN TGE」の唯一の生産拠点であり、本投資は同社の電動化戦略およびポーランドにおける商用車生産の中長期的な強化を示すものとなる。同工場ではEV生産に対応するため、自動化・デジタル化への投資も加速している。車体製造や塗装工程、最終組み立てにおけるロボット化が進展し(組み立て工程での自動化率は18.5%)、工場内物流では無人搬送車(AGV)を活用している。さらに、太陽光発電を中心とした再生可能エネルギーによる電力の自給体制を構築しており、EV商用車の生産拡大と合わせ、環境負荷低減と国際競争力の強化を同時に進めている点が特徴だ。
トヨタの欧州統括会社トヨタモーターヨーロッパは2026年4月、ポーランド南部のブロツワフにIT分野の研究開発拠点「Toyota Digital Hub」を設立すると発表した(トヨタモーターヨーロッパウェブサイト参照
)。約200人規模でアプリ、クラウドインフラ、サイバーセキュリティー関連の開発を行う。同社はポーランドの高度IT人材の質を高く評価しており、本投資を欧州市場での事業強化の一環と位置付けている。ポーランドでは既に生産拠点(南部バウブジフおよびイェルチ=ラスコヴィツェ)や、中・東欧地域を管轄する販売会社、欧州全域の経理・税務業務を集約したシェアードサービスセンターが稼働しており、本件は同国における投資拡大の流れの1つとみられる。
そのほか、ポーランド政府系のエレクトロモビリティー・ポーランド(EMP)は5月、国内におけるEV生産・開発基盤の構築に向け、台湾の電子機器受託製造大手フォックスコン(鴻海精密工業)と戦略的提携で合意した。フォックスコンがEV生産技術を提供し、ポーランド側が事業運営を主導するかたちで、南部ヤボジュノに電動モビリティ・ハブを建設する。単一ブランドの量産ではなく、製造・開発機能を集約した産業拠点の形成を目指す点が特徴で、2029年の量産開始、国内調達比率70%を見込むなど、同国EV産業の基盤強化につながる動きとして注目される(2026年5月11日付ビジネス短信参照)。
以上のような投資動向は、ポーランドでは賃金上昇が進む中でも、依然として高度人材の供給力や技術基盤が評価されていることを示している。加えて、中・東欧地域全体を俯瞰(ふかん)した際の生産・開発・サービス機能の集積拠点としての役割も一段と高まっており、同国は地域ハブとしての地位を強化しつつある。
- 執筆者紹介
-
ジェトロ・ワルシャワ事務所
金杉 知紀(かなすぎ ともき) - 2024年からジェトロ・ワルシャワ事務所で勤務。ポーランドの政治・経済・産業動向に関する調査を担当。
- 執筆者紹介
-
ジェトロ・ワルシャワ事務所
遠山 宗督(とおやま そうすけ) - 2023年、ジェトロ入構。本部海外ビジネスサポートセンターを経て現職。





閉じる





