EU、整備加速の起爆剤と期待される代替燃料インフラ規則案が成立

(EU)

ブリュッセル発

2023年08月02日

EU理事会(閣僚理事会)は7月25日、代替燃料インフラ規則案を採択した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。同規則は、加盟国に道路、港湾、空港における代替燃料インフラ整備の目標を課し、EU域内での整備の加速を目指すもの(2021年7月16日記事参照、注1)。EU理事会と欧州議会は3月28日に政治合意し、欧州議会は7月11日に採択していた。EU官報掲載20日後に発効、6カ月後に適用開始となる。

道路の充電インフラは、(1)毎年末時点、普通自動車のバッテリー式電気自動車(BEV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)の登録台数に応じ目標を設定し整備〔1台当たりにつき求められる充電設備の最低出力はそれぞれ1.3キロワット(kW)と0.8 kWに設定〕、(2)高速接続性を確保し、持続可能でスマートな交通システムを備えた「汎欧州運輸ネットワーク(TEN-T)」沿いなどに出力数や間隔などを定め整備(添付資料表参照)、の2方式を採る。

水素の充填(じゅうてん)インフラは、2030年末までに水素貯蔵量が1日当たり合計1トン以上で、700バール(注2)以上のディスペンサーを備えた水素ステーションをTEN-Tの中核ネットワーク沿いに200キロ以下の間隔で整備する。また、同年末までに都市結節点に1カ所以上、水素ステーションを設置する(2023年6月9日付地域・分析レポート参照)。

充電ポイントは欧州委案よりやや高い目標設定となったが、EVの普及状況や民間投資への影響、交通量などに応じ、加盟国の目標の修正などを可能とした。また、利用者の利便性向上のため、充電・充填施設の事業者に対し電子決済への対応、1キロワット時(kWh)または1キロ単位での電力と水素価格の表示に加え、電子的手段による施設の利用状況や料金などの情報提供を義務付けた。

一定数以上の大型客船やコンテナ船が停泊するTEN-Tの港湾では、2030年までに船舶の電力需要の90%以上を陸側から供給可能にし、TEN-Tの中核および包括的ネットワーク上の内陸水路の港湾ではそれぞれ2025年、2030年までに陸側からの電力供給を実現する。

TEN-T上の全ての空港で、(1)2025年までにターミナルに駐機中の商用便、(2)2030年までに、小規模空港を除き、ターミナルから離れた沖止めスポットに駐機中の商用便への電力供給を義務付けた。なお、欧州委案では2030年以降の電力源として再生可能エネルギーの活用も目指していたが、最終テキストでは「化石燃料を使用せず生産する電力」の活用に修正された。

各加盟国は、欧州委に対し2025年までに各分野の整備計画案を提出、承認を受け実施し、2027年からは2年ごとに進捗状況を報告する。新規則により、特に電気自動車の普及スピードに後れを取る充電ポイントの整備などが進展するか注目だ。

(注1)調査レポート「『欧州グリーン・ディール』の最新動向(第3回)モビリティ政策の動向PDFファイル(1.2MB)」(2022年2月)も参照。

(注2)圧力の単位の1つで、1バールは1,000ヘクトパスカル。

(滝澤祥子)

(EU)

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