BIS認証制度の運用変化から見るインドの対中政策と産業戦略

2026年6月4日

インド標準規格局(BIS)の前身であるインド規格協会(ISI)が運用を開始したインド認証制度は、もともと消費者の安全・利益を損なわないよう、不良品や欠陥品を排除するための任意認証制度であった。しかし近年では、強制的な認証取得を義務付けられる品目が増加している。この背景には、輸入品の抑制による製造業振興策「メーク・イン・インディア」の促進、長年の課題である貿易赤字の縮小、そして最大の取引相手国である中国に対する輸入依存の改善といった目的がある。

本制度は、日本企業・日系企業にとって、製品や部品・原材料の輸入障壁となる一方、競合となる中国製品が市場に出回りづらいという点で、プラスに働いている面も大きい。そこで本稿では、特に中国製品のBIS認証取得状況や傾向を整理し、今後の見通しを考察する。

BIS強制認証スキームとは

2026年4月現在、BISから展開されている主な強制認証取得スキームは表1のとおりだ。スキームIで認証取得が指定されている品目については、国内外を問わずBIS監査員による製造工場監査が必要となる。さらに、工場監査後にはインド国内の試験場で指定品の再検査も必要であるため、認証取得までに時間を要するのが現状だ。また、明文化はされていないものの、日系企業が製造するものも含め、製造地が中国である製品については、実質的にスキームIによる認証取得は困難な状況となっている。認証マークについては、ISIが採用していたISIマークを踏襲した表示が義務付けられている。一方、スキームIIに指定された品目は、IS規格を満たすことをメーカー自身が宣誓する書類手続きが中心で、監査官による国内外製造工場監査が免除される。そのため、スキームIIはスキームIと比べて短期間・低コストでの認証取得が可能であり、「適合自己宣言に基づく認証スキーム」とも呼ばれている。

表1:主なBIS強制認証スキームと認証マーク
Scheme 項目 認証マーク
Scheme Ⅰ インド規格(IS)に基づく部品・製品へのIS認証取得(ISIマーク)
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Scheme Ⅱ 部品、製品の適合性を自主宣誓に基づく登録(標準マーク)
  • BIS監査員による工場監査/検査を自主宣誓により代替
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出所:2016年インド標準規格局法を基にジェトロ作成

BISは各省庁からの通達に基づき、指定されたスキームで認証制度を執行する機関だ。各省庁の通達とBISの関係を図1に整理する。各省庁が発出する、品質や性能に関してIS規格準拠を義務付ける通達「品質管理令(Quality Control Order:QCO)」はスキームIに該当する。また、所管省庁に対する対象品目の登録を義務付ける通達は「強制登録令(Compulsory Registration Order:CRO)」と呼ばれ、スキームIIによる認証取得が求められる。このほか、安全規則令「Safety Order:SO」に基づくスキームXも存在する。

図1:インド各省庁通達とインド標準規格局(BIS)の関係
インド各省庁から通達される命令や規則は、品質管理命令(QCO)、強制登録(CRO)そして安全規則(SO)がある。通達には、認証該当品目や適応すべきインド規格、施行日などが明記されている。この通達に基づき、消費者・食料公共配給省傘下の機関であるインド標準規格局(BIS)が認証制度を執行する。BISは、通達内容の解説や原文(PDF)の提供、さらに認証手順やFAQの公開を行っている。また、認証取得手続きの際に行われる工場監査も担当する。

出所:BISウェブサイトを基にジェトロ作成

BIS強制認証品目数の推移

BIS強制認証品目は、BISウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 並びに各省庁のウェブサイトで確認が可能だ(2024年3月18日付地域・分析レポート参照)。スキームIの指定品目数は、2025年10月までは増加の一途をたどり、ピーク時には約790品目が対象となった。しかし、2025年11月、中央政府のシンクタンク機能を有するインド改革委員会(NITI Aayog)のメンバーなどで構成される委員会が、「急増する強制認証品目の増加はインド国内のサプライチェーンの混乱、各産業界の負担となっている」と指摘し、見直しを提言した。その結果、QCOの取り下げにより指定品目および今後予定されていた品目数が大幅に減少した(図2、3)(2025年11月21日付ビジネス短信参照)。2026年4月21日現在、スキームIに指定されて既に施行されている品目は639品目だ。

他方で、2026年に入り各省庁から新たなQCOが通達され始めたため、今後施行される予定の品目数は再び増加傾向に転じている。既に施行済みの品目のメーカーは、引き続き認証取得と更新が必要であり、加えて今後施行される品目のメーカーは、施行日前の認証取得が必要となる。指定された認証マークを製品または梱包(こんぽう)材に明示していない場合、通関できないばかりか、インド在庫品の販売も禁止される。違反する場合、罰則が科されるため注意が必要だ。

図2:強制認証スキームI_指定品目数推移
強制認証スキームⅠの指定品目数を過去2014年(106件)から2025年10月(773品)、11月(648品)、2026年2月(639品)、4月(639品)時点を示している。2014年から2025年10月は急増し、緑の点線は、インド政府内で見直し提言が行われたことを示しており、その結果、指定品目数は減少している事を示している。

出所:インド商工省の発表(2025年10月)、BISウェブサイトを基にジェトロ作成

図3:強制認証スキームI_予告品目数推移
強制認証スキームⅠにおいて、今後施行される予告数について、2025年9月(117品)、11月(63品)、2026年2月(24品)、4月(31品)時点の品目数を示している。緑の点線は、インド政府内で見直し提言が行われた時期を示しており、その結果、2025年9月から2025年11月、2026年2月の指定品目数は減少した。2026年4月は増加しており、傾向が変わっていることを示している。

出所:BISウェブサイトを基にジェトロ作成

また、スキームIIの対象品は74品目(電子・情報技術省管轄65品目、新・再生可能エネルギー省管轄5品目、化学・肥料省管轄3品目、繊維省管轄1品目)だ。電子・情報技術省管轄の電気機器関連製品が約9割を占めており、これらは、他国での販売ではそれぞれの規格やグローバル・スタンダードの取得が求められる品目が多い(図4)。

図4:スキームII省庁別のCRO対象製品割合(2026年4月21日時点)
2026年4月21日時点のインド所管省庁別強制認証スキームⅡの対象製品数の割合を円グラフで示している。電子・情報技術省からは全体の88%、新・再生可能エネルギー省は同7%、化学・肥料省は同4%、繊維省は1%である。

出所:BISウェブサイトを基にジェトロ作成

製造国別のスキームII認証取得状況は、近年大きく変化

インド政府は「メーク・イン・インディア」をスローガンに掲げ、国内製造業の拡大を支援している。公共調達品については、インド国内製造品を優遇する通達外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますも出されており、国内産業を優先的に支援していることは明確だ。このため海外メーカーからは、特にスキームIについて「認証取得に時間がかかる」「認証取得自体ができない」などの懸念の声が散見されている。特に日系メーカーからは、「中国所在工場からの認証取得ができない」という声も多い(2026年2月19日付地域・分析レポート参照)。

スキームIの認証発給状況は公開されていないが、スキームIIについてはBISウェブサイトで確認することができる。2015年以降のスキームIIの累計認証数の上位10品目(2026年4月21日時点)は、表2のとおりだ。このうち、上位3品目に関して、認証取得企業名(国籍)、認証発給日などの基本情報をもとに、日本など第三国企業の中国子会社を含む中国製造拠点の認証取得状況を整理した(図5-1、5-2、6-1、6-2、7-1、7-2)。

表2:BIS強制認証スキームII 累計認証数上位10品目(2026年4月21日時点)注:認証数は新規登録数のみで更新登録数は含まない。
順位 品目名 認証数
1 Sealed Secondary Cells/Batteries containing Alkaline or other non-acid Electrolytes for use in portable applications (バッテリー関係) 7,494
2 Power Adaptors for IT Equipments、Power Adaptors for Audio, Video & Similar Electronic Apparatus(アダプター関係) 4,864
3 Automatic Data Processing Machine(自動データ処理機) 4,102
4 Fixed General Purpose LED Luminaries(固定式LED照明器具) 3,981
5 DC or AC Supplied Electronic Control gear for LED Modules(LED用電子制御機器) 3,388
6 Power Banks for use in portable applications(携帯用バッテリー) 2,120
7 Self-Ballasted LED Lamps for General Lighting Services(安定器内蔵型LED照明器具) 2,050
8 LED Flood Lights(LED投影機) 1,777
9 LED Luminaires for Road and Street lighting(道路・街路照明用LED照明器具) 1,752
10 Visual Display Units, Video Monitors of screen size 32″ & above(映像表示装置、画面サイズ32インチ以上のビデオモニター) 1,722

注:認証数は新規登録数のみで更新登録数は含まない。

出所:BISウェブサイトを基にジェトロ作成

図5-1:バッテリー関係_国別IS認証取得推移
強制認証スキームⅡで指定されたバッテリー関係について、認証ライセンスを発給されたメーカー数を2015年から暦年別に示している。2020年には約1000社のメーカーが認証取得していたが、その後減少しており、2025年は約400社に減少している。各年の国別構成として、中国メーカーを水色、インドメーカーをオレンジ色、その他は灰色で表示している。

出所:BISウェブサイトを基にジェトロ作成

図5-2:バッテリー関係_国別IS認証取得比率
強制認証スキームⅡで指定されたバッテリー関係について、認証ライセンスを発給されたメーカーの国別認証取得比率を2015年から暦年別に示している。2026年は4月21日までのデータである。2015年から2023年までは、中国メーカーの比率が70%以上を占めていたが、2024年に中国メーカーの認証比率が減少し約65%、インドメーカー比率が拡大。2025年は中国メーカーの割合が約35%に減少拡大、一方、インドメーカーの取得割合が増大し約40%になっている。2026年も2025年と同じ傾向で推移している事がわかる。

出所:BISウェブサイトを基にジェトロ作成

図6-1:アダプター_国別IS認証取得数推移
強制認証スキームⅡで指定されたアダプター関係について、認証ライセンスを発給されたメーカーの国別認証取得比率を2015年から暦年別に示している。2026年は4月21日までのデータである。2015年から2023年までは、中国メーカーの比率が50%以上を占めていたが、2024年に中国メーカーの認証比率が減少し約45%、一方インドメーカー比率が拡大した。2025年は大きく中国メーカーの割合が減少し約10%、インドメーカーの取得割合が増大し約75%となっている。2026年も2025年と同じ傾向で推移している事がわかる。

出所:BISウェブサイトを基にジェトロ作成

図6-2:アダプター_国別IS認証取得比率
強制認証スキームⅡで指定されたアダプター関係について、認証ライセンスを発給されたメーカーの国別認証取得比率を2015年から暦年別に示している。2026年は4月21日までのデータである。2015年から2023年までは、中国メーカーの比率が50%以上を占めていたが、2024年に中国メーカーの認証比率が減少し約45%、一方インドメーカー比率が拡大した。2025年は大きく中国メーカーの割合が減少し約10%、インドメーカーの取得割合が増大し約75%となっている。2026年も2025年と同じ傾向で推移している事がわかる。

出所:BISウェブサイトを基にジェトロ作成

図7-1:自動データ処理機_国別IS認証取得推移
強制認証スキームⅡで指定された自動データ処理機関係について、認証ライセンスを発給されたメーカー数を2015年から暦年別に示している。2024年まで毎年認証メーカー数が増加し、約570社のメーカーが認証取得している。2025年は2024年とほぼ同レベルで推移している。各年の国別構成として、中国メーカーを青色、インドメーカーをオレンジ色、その他は灰色で表示している。

出所:BISウェブサイトを基にジェトロ作成

図7-2:自動データ処理機_国別IS認証取得比率
強制認証スキームⅡで指定された自動データ処理機関係について、認証ライセンスを発給されたメーカーの国別認証取得比率を2015年から暦年別に示している。2026年は4月21日までのデータである。2019年から2020年までは、中国メーカーが40%以上の比率を占めていたが、2021年から中国メーカーの認証比率が減少し2024年は約23%となっている。一方インドメーカーの認証比率が約50%に拡大。2025年は中国メーカーの割合が更に大きく減少し約5%になっている。インドメーカーの取得割合は大きく拡大し約60%になっている。2026年も2025年と同じ傾向で推移している事がわかる。

出所:BISウェブサイトを基にジェトロ作成

上位3品目に共通して、2015年から中国メーカーが新規認証取得数の多数を占めていたが、その割合は徐々に減少し、2024年、2025年には大幅にシェアが縮小した。一方、インドメーカーの新規認証取得比率は2025年以降明らかに拡大しており、変化点として認められる。ただし、本データは認証発給数であり新規申請数は不明であるため、申請件数のうちどれだけが認証取得に結び付いているのかは確認できないものの、インドメーカーからの申請数が急激に増加したことは考えづらく、BISがインドメーカーの認証取得を優先している可能性も否定できない。

情報監視機器および記録装置には、ER認証が求められる

日本で監視カメラや防犯カメラと呼ばれている情報監視機器(Closed circuit television:CCTV)および記録装置も、電子・情報技術省の通達(CRO)によりスキームIIの対象品目となっている。CCTVおよび記録装置の認証手続きは、2025年4月より、電子・情報技術省の付属機関である標準化・試験・品質認証総局(Standardization Testing and Quality Certification:STQC)のインド国内研究所によるセキュリティに関する必須認証(Essential Requirements for Security of CCTV Cameras:ER認証)の取得が義務化された(「Guidelines for implementation of “Essential Requirement(s) for Security of CCTV”PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(99.2KB)」参照)。ER認証手続きはSTQC職員により行われ、国内外の製造工場監査も含まれる。従来、自己宣誓のみで登録可能であったスキームIIだが、実務的にはCCTV本体および記録装置に関するER認証を事前に取得しないと「登録できない」ということだ。

2018年以降の同製品に対する認証取得状況を整理すると、中国メーカーの認証取得比率は年々減少傾向で推移していたが、2025年は中国メーカーに対する認証数はゼロとなり、9割以上がインドメーカーに対する認証という実績となっている(図8-1、8-2)。

図8-1:CCTV_国別IS認証取得推移
強制認証スキームⅡで指定されたCCTV関係について、認証ライセンスを発給されたメーカー数を2018年から2026年4月21日までを示している。2018年には約250社のメーカーが認証取得していたが、その後減少しており、2020年には105社に減少した。2022年から2024年までは増加に転じ、約180社となった。ところが、2025年は認証取得数が激減し、60社のみとなっている事がわかる。60社の内、インド企業が約90%で中国メーカーは認証取得できていない。各年の国別構成として、中国メーカーを青色、インドメーカーをオレンジ色、その他は灰色で表示している。

出所:BISウェブサイトを基にジェトロ作成

図8-2:CCTV_国別IS認証取得比率
強制認証スキームⅡで指定されたCCTV関係について、認証ライセンスを発給されたメーカーの国別認証取得比率を2018年から暦年別に示している。2026年は4月21日までのデータである。中国メーカーの比率は2018年に約70%を占めていたが、その後年々減少している事を示している。2024年に中国メーカーの認証比率は約30%、一方インドメーカー比率は拡大し約50%。2025年には中国メーカーの認証取得メーカーがゼロで、インドメーカーの取得割合が増大し約90%。2026年も2025年と同じ傾向で推移している事がわかる。

出所:BISウェブサイトを基にジェトロ作成

同製品に対するER認証を取得した日系企業からは、カメラ内部や記録装置に使われる回路部品、メモリーチップなどに中国製品が使われていないかについて、STQCラボの担当官から詳細な説明を求められたという声も聞かれている。またインド現地紙では、インド政府はこれらの機器に対するセキュリティ基準を強化しており、その一環として、中国メーカー品が販売停止に向かっている事例も報道されている(4月1日、「インディア・トゥデイ」)。CCTVは、インド政府として情報セキュリティの観点から厳しく管理すべき製品の1つとして認識されており、特に中国へのデータ流出に危機感をもっていることが分かる。さらに、今後データ処理に使うソフトのアップデート時には、その都度ER認証取得が必要となる可能性があるため、モデルの切り替えなどの上市計画に間に合うよう余裕を持った事前準備対応が必要となる。

在インド日系企業の取るべき対応

2025年初頭の第2次トランプ政権発足以降、米国の輸入関税率変更により世界各国・地域が対応を余儀なくされた。インド政府は、米国との貿易摩擦を避ける交渉を重ねつつ、中国とも関係改善に向けて、したたかな外交政策を進めてきた。2025年10月にはインド~中国間の直行便が再開(2025年10月10日付ビジネス短信参照)、2026年2月に開催された自動車部品工業会(ACMA)主催の見本市では、中国パビリオンに135社の中国企業が出展(2026年2月13日付ビジネス短信参照)するなど、両国の関係には明らかな変化がみられる。また、同年3月にはインドと国境を接する国(LBC)からの投資に関するガイドライン変更が閣議で承認され、ファンドや企業などからの投資におけるLBC投資家の出資比率制限の緩和や、特定分野での投資認可手続きの迅速化などが盛り込まれた(2026年3月12日付ビジネス短信参照)。このように、インドと中国の関係は「雪解け感」もある。一方で、これまで見てきたように、中国メーカーのスキームIIの新規認証数は明らかに減少傾向にある。今後、インド政府が、中国製品のみならず海外製品について、インドの経済成長や安全保障に影響があると判断すれば、引き続き認証制度を非関税障壁として活用し、即座に内容を変更/強化する可能性も否めない。在インド日系企業は、今後も最新の情報収集に努めるとともに、国内調達率の向上に向けた動きを加速させていく必要があるだろう。

執筆者紹介
ジェトロ・ニューデリー事務所 海外投資アドバイザー
淺羽 英樹(あさば ひでき)
大手自動車部品メーカーに34年間勤務。商品設計・評価、品質保証、マーケティング、代理店支援・販路拡大など、モノづくりからお客様対応までの全般業務を経験。サウジアラビア、ドイツ、タイ、ブラジルで、通算17年の勤務経験あり。2022年3月から2025年3月までジェトロ・チェンナイ事務所で勤務。2025年4月から現職。