インド政府、複数品目でインド標準規格局(BIS)の品質管理令(QCO)の取り消し・延期を相次ぎ発表
(インド)
ニューデリー発
2025年11月21日
インド標準規格局(BIS)が定める強制認証を義務付ける品質管理令(QCO、注)に関して、2025年11月に入り、取り消しや施行日延期の発表が相次いでいる。これまでの主要な動きは、次のとおり。
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11月6日:重工業省(MHI)が、電気機器に対するQCOの次期フェーズ施行延期を発表
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11月12日:化学・肥料省が、すでに施行済みの化学品14品目(テレフタ―ル酸、エチレングリコール、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)など)に対するQCOの取り消しを発表
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11月13日:MHIが、「設備・電気機器安全規則(OTR)」の施行延期を発表
(2025年11月18日記事参照)。 - 11月13日:鉱山省が、鉱物7品目(アルミニウム、ニッケル、銅など)に対するQCOの取り消しを発表。
- 11月18日:繊維省が、ビスコースステープルファイバーに対するQCOの撤回を発表。
現地報道によると、上記の措置は、ナレンドラ・モディ首相直轄の政策提言機関であるインド改革委員会(NITI Aayog)が11月上旬に発表した政府内部向けのレポート(非公開)で、200以上の品目に対するQCOの見直しを求めたことが影響している(「マネー・コントロール」11月14日など)。同レポートは、OTRによる設備機器に対するBIS認証取得義務化が、特に中小企業のコンプライアンス対応負担を増大させ、設備投資を鈍化させるリスクがあると指摘したという。
また、原材料や中間製品に対するBIS認証取得義務化は、インド政府が推進する製造業振興策「メーク・イン・インディア」に負の影響を与えているとし、消費者の安全や環境リスクに直結する最終製品に限定すべきとの勧告もなされたとされる。この流れを受けて、今後も複数の品目でQCOの取消や延期が発表される見込みだと報じられている。
BIS認証は、中国製品に対する同認証取得手続きが実質的に停止されているとされ、中国製品のインドへの輸入抑制につながっていた面がある。今回の一部のQCO廃止や施行延期の背景には、印中関係が改善傾向にあること(2025年9月10日記事参照)も影響しているとみられている。
現地の日系企業の間では、特に影響範囲の大きいOTRの施行延期に関して、おおむね安堵(あんど)の声が広がっている。一方、すでにBIS認証を取得済みの品目を扱う日系企業からは、BISの取得に多大なコストを投じてきた経緯もあり、唐突な制度変更に対する戸惑いの声も出ている。また、中国製品が競合となる品目を扱う日系企業からは、今後の中国製品の流入による市場の競争激化に対する懸念の声も挙がっている。
(注)品質管理令(QCO)は当該品目を管轄するインド省庁から発出される通達で、その対象となった品目は、国産品・輸入品を問わず、インドへの輸入、販売に際して、インド標準規格局(BIS)が定めるインド標準規格(IS、通称BIS)の認証取得が義務化される。
(丸山春花)
(インド)
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