キャラクター文具が好調
タイの日用品・ライフスタイル市場(2)

2023年1月25日

タイでは、日本製文具の人気が高い。最近では、特にキャラクター文具の販売が好調。こうした商品は、単に子供向けという域を超えている。中でも、日本のキャラクターの存在感が大きい。シリーズ第2回の本稿では、そうしたキャラクター文具の販売事情をレポートする。

日本製キャラクター文具などの市場は拡大

タイで文具雑貨専門店と言えば、B2S(タイ語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますBeTrend(タイ語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます が著名だ。その店舗をのぞいてみると、キャラクター文具の売り場が広いことに気がつく。 例えば、ディズニーでは、「ミッキーマウス」「アナと雪の女王」。マーヴェルでは、「アイアンマン」「スパイダーマン」。ピクサーでは、「モンスターズインク」「トイストーリー」「カーズ」「ミニオンズ」などの人気映画のキャラクターが目に付く。「ケアベア」や「エスターバニー」なども人気だ。

日本のキャラクターとしては、「鬼滅の刃」「ワンピース」「ポケットモンスター」「スーパーマリオ」「ドラえもん」「ハローキティ」「すみっコぐらし」などが並ぶ。そのほか、「くまモン」や「バリィさん」といった日本各地のご当地キャラまで、幅広くキャラクター文具が販売されている。


ディズニーやピクサーのキャラクター文具(ジェトロ撮影)

ユーロモニターによると、2020年のタイの文具市場規模は約143億バーツ(約558億円、1バーツ=約3.9円)。前年の約159億バーツから縮小したかたちだ。タイ・ステーショナリー協会によると、新型コロナウィルス禍で、同市場の20~30%を占めるホテルやオフィス向けの売り上げ減少が激しかった。これにあわせて、高級文具やファンシー文具(キャラクター文具を含む)なども販売が鈍化した。それ以前に、生産活動も打撃を受けていた。例えば、タイで一般的に普及している価格帯のボールペン「Lancer」を製造するDTCインダストリーズ(DTCI)は、2020年4月から7月まで生産ラインを停止した。このように、新型コロナが文具市場に及ぼした影響は顕著だった。

しかし、日本のキャラクター文具に限ってみると、少し様子が違う。こうした商品を扱う商社によると、2022年は新型コロナ前の販売実績を上回り、販売好調という。また、最近ではSweet Summer外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます など、タイ人デザイナーによるキャラクターの人気も高い。前述の文具雑貨専門店BeTrendでは、これらのキャラクター関連製品が売り場面積の多くを占め、人気のほどがうかがえる。文具市場でのキャラクター商品の売り場は年々拡大していて、特にクリスマス商戦(12月)やタイの新学期前(4~5月)には、販売が急増する傾向があるという。


タイのデザイナーによるキャラクター文具(ジェトロ撮影)

キャラクター文具には、ギフト商品としての一面も

タイでこのようなキャラクター文具を購入する年齢層は、意外に広い。日本では小学生などの学生層に限られるイメージがあるのに対し、当地ではより高い年齢層もターゲットになりうる。また、キャラクター文具には、幅広い購買層に支持されるもの(ディズニーなど)と、限定されたファン向けの商品がある。後者は、キャラクターの訴求ポイントがはっきりしている場合にあてはまる。この場合、当該アニメ作品を視聴したファンなどがターゲットになる。タイで人気のあるアニメ(鬼滅の刃や呪術廻戦を含む)の文具などを輸入販売するKA BRANDの担当者によると、その主要購買層は女子高校生または女子大学生だ。ただし、社会人が購入する例も決して少なくないという。

キャラクター文具は、一般的な文具よりも割高に価格設定されるのが通例だ。そのため、KA BRANDには「ユーザーから『価格が高すぎる』というコメントが多く寄せられる」。それでもユーザーに購入してもらえるのは、「単なる道具ではなく、付加価値を持ったギフトとして購入するから」という(同社担当者)。キャラクター文具は単に文具として売るのではなく、ギフト商品として訴求する必要性が見えてくる。


鬼滅の刃やご当地キャラの日本製文具(ジェトロ撮影)

一見して判断できる付加価値追求を

多くのタイ人は、文具を消耗品と捉えている。すなわち、安いものを頻繁に買い換えて使う傾向が強い。その中でタイの消費者に手に取ってもらうためには、キャラクターこそが消費者に訴求する付加価値の1つになる。

もっとも、付加価値を追求するという考え方の必要性は、キャラクター文具に限ったことではない。選ばれる商品を追求するには、アイデア、デザイン、機能など、すぐに違いが分かる特性が求められているとも言える。仮に、長さを測れて線が引けるだけの定規なら、最大限に安価なタイ国産や中国製で十分と感じる消費者が大部分だろう。何らかの点で品質が高いことは事実だとしても、(1)デザイン性に劣る商品、(2)特徴がない商品、(3)中国製よりも高品質なことを訴えているだけの商品は、見た目で価値を判断できない。そうなってくると、「日本製である必要性を感じない」という声をタイの文具バイヤーから聞くことが多い。 そうした中で、差別化をはかる要素として、キャラクター文具の存在感は高いといえよう。

執筆者紹介
ジェトロ・バンコク事務所