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KAMEREO-ベトナムで初めて飲食店の食材調達をDXで最適化
ベトナムDXのキーパーソンに聞く(3)

2021年3月16日

地場大手IT企業幹部や、スタートアップ創業者などのキーパーソンへのインタビューを通じ、ベトナムでのDX(デジタルトランスフォーメーション)の注目分野や、日本企業との協業に向けたヒントを探る本シリーズ。第3回は、飲食店向け食材調達プラットフォームなどを2018年から展開するスタートアップ「KAMEREO」を取り上げる。事業を立ち上げた田中卓氏は、同国で人気のイタリアンレストラン「ピザフォーピース(Pizza 4P’s)」の事業に参画した経験も持つ。最高経営責任者(CEO)の同氏に聞いた(インタビュー日:2021年3月3日)。


KAMEREO CEOの田中卓氏(同社提供)

KAMEREOのロゴマーク(同社提供)
質問:
起業の経緯は。
答え:
2015年にベトナムに来て約3年間、イタリアンレストランの「ピザフォーピース(Pizza 4P’s)」の事業に参画し、店舗数の拡大などの業務に携わった。その際に、日本の飲食業との構造上の違いを痛感したことが起業のきっかけだった。日本で外資系の証券会社で働いていた経験があり、多くの飲食業の企業を見てきた。
日本の飲食業は大規模チェーン店が多く存在し、卸売業者も大企業が多い。食材の流通網がほぼ確立している。一方、ベトナムは中小企業や家族経営の飲食店、サプライヤーがほとんどだ。食材の受発注業務が体系化・効率化されていない。実際に食材を発注する際、1つのサプライヤーが持つ商品群が少ないため、複数のサプライヤーに発注する必要がある。その結果、数多くの発注をする必要がある。また、その連絡手段も電話やメール、Zaloなどのメッセージングアプリなど多岐にわたる。その上、発注内容が異なっていることや時間通りに食材が届かないなどの問題も少なくない。これらの状況を商機と捉えて、飲食店における食材の受発注業務をDXで最適化するプラットフォームを同国で提供しようと考えた。
質問:
事業展開の状況は。
答え:
2018年6月にKAMEREOを設立し、ホーチミン市内の飲食店向けに野菜や果物などの食材を提供するBtoBプラットフォーム「KAMEREO」のシステム開発・運営を開始した。それまでにも、一般消費者向けに食材を提供する同業他社はあった。しかし、飲食店向けに特化したBtoBプラットフォームはベトナム初だ。2019年8月には自社による卸売業務も始め、自社倉庫からの配送業務にも対応している。現在、数百の飲食店がこのシステムを利用。スーパーマーケットなど小売店にも対象を拡大している。
他方で、新型コロナ禍で外食産業が大きな打撃を受け、飲食店からの発注が激減してしまった。そのため、一般消費者向けBtoCプラットフォーム「KameMart」を2020年4月に開始した。スマホのアプリで簡単に食材を購入することができ、新型コロナ禍の巣ごもり需要などと相まって、順調に利用者も増えている。 利用者は、当初こそ約9割が日本人だった。しかし、今では半分以上はベトナム人。現在の売り上げ比率は、BtoB「KAMEREO」が約8割、BtoC「KameMart」が約2割で、ともに売り上げが順調に増加している。
質問:
今後の事業展開は。
答え:
2021年は、自社配送などを含めたオペレーションの最適化を確立させたい。現在は南部のホーチミン市だけで事業展開している。しかし2022年からは、周辺のドンナイ省やビンズオン省、北部のハノイ市などでも事業展開をしたいと考えている。また、将来、新型コロナウイルスのワクチンが世界的に普及し、海外からの旅行者がベトナムに戻るタイミングで、これまでの飲食店や小売店だけでなく、ホテルへの展開も視野に入れている。
ベトナムでは依然として、伝統的市場などトラディショナルトレード(TT)の比率が高い。しかし、大都市部、その中でも特に若い世代は、安心・安全な食材へのニーズが高い。今後はスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどモダントレード(MT)が増えていく傾向が続くだろう。そのため、既に幾つかのスーパーマーケットとは取引している。MTの市場をさらに強化していきたい。

ASEAN諸国の中でもポテンシャル十分

質問:
ベトナムのスタートアップ事情、今後の成長性は。
答え:
ベトナムでのスタートアップの起業家はほぼ全てがベトナム人だ。越僑や留学経験のある人が多い。今後成長が期待できる事業分野は、「食」「医療」「教育」「物流」「金融」「農業」などだ。その中でも特に、「食」「医療」「教育」は一般的に家計の支出割合が今後伸びていくと言われる。ベトナムでいま注目されている分野だ。ベトナムは、経済成長著しいASEANの中でも政治的に安定している。諸外国との貿易環境も良好で、スタートアップとして新規参入するにはポテンシャル十分だ。
ただ、日系企業の中にはベトナム企業との協業がうまくいかずに失敗するケースもある。事前に十分調査をした上で、自らの目でしっかり見極めることが重要だ。
質問:
ベトナムでスタートアップを進めていく上での課題は。
答え:
課題の1つに資金調達がある。ベトナムでは、日本に比べると銀行からの借り入れが難しい環境にある。資金を提供してくれる投資家も、シンガポールやインドネシアに比べると少ない。そのため、ベトナム国外からの資金調達が主流になっている。また、ベトナムは海外送金のハードルが高い。投資回収リスクがあるため、外国の投資家は、ベトナム企業に対する直接投資を回避する傾向にある。
そのため、日系に限らず、多くのスタートアップはシンガポールに本社を設立して同国で資金調達。その子会社としてベトナムに展開するのが一般的だ。 また、ベトナムは、中小企業や家族経営の業態が多い。そのため、市場が複雑かつ取引規模が小さくなりがちだ。しかし、これは逆にチャンスとも言える。デジタル技術などを活用し、最適化できれば、新たなビジネスが生まれる可能性が十分にある。
執筆者紹介
ジェトロ・ホーチミン事務所
小川 士文(おがわ しもん)
2009年、静岡県庁入庁。2018年、ジェトロ・ビジネス展開支援課(出向)、2019年からジェトロ・ホーチミン事務所勤務。

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