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中小零細企業事業向けコロナ対策事業で、企業活動を支援
「コロナ禍」での事業拡大事例を見る(その7)

2020年8月6日

コロナ禍を受け、政府や地方自治体が、新型コロナ感染拡大の影響を受けた中小零細企業支援のため、商品PRやビジネスマッチングのためのライブコマースなどを開催している。また、民間企業が、コロナ終息後に利用可能な中小零細企業の商品券販売のためのプラットフォームづくりに取り組むなどの動きも見られた。最終回となる今回は、これら政府・自治体などによる対策についてまず言及し、その後に、7回にわたる本稿の全体を通じたまとめを記載したい。

ジェトロ青島事務所からの報告では、中国の山東省商務庁は2020年5月22日、国外の感染拡大で影響を受けている省内輸出企業の国内販売への転換を支援すべく、済南市と臨沂市でイベントを開始。参加企業は約100社、衣類、食品、家具、工芸品など消費者向けの商品が対象。期間中は、淘宝Liveや快手アプリを使ったライブコマースで約300の商品のPRを行う、とされた。

また、中国では、ライブコマース発展に向け、ライブ動画配信プラットフォーム専業企業やライブコマース産業の技術的な支援を行う関連企業を重点的に誘致するライブコマース産業園区を建設する動きが見られる。一例として、浙江省杭州市の杭州高新区(濱江)ハイテク産業園区は2020年6月9日、ライブコマース産業園区建設に関する記者会見を開催。同産業園区では、ライブ動画配信プラットフォームを専業としている企業、MCN(マルチチャンネルネットワーク)機構、インフルエンサーが起業した企業、デジタルコンテンツ制作および運営企業、ライブコマース産業の発展に対して技術サポートなどを提供する関連企業を重点的に誘致および育成するとのこと(注1)。

一方、ブラジル企業コンプリ・ドス・ピケノスは、中小零細企業の事業継続と雇用維持の問題に着目し、B to Cプラットフォームを通じ、新型コロナ終息後に利用できる中小企業の製品やサービスの商品券を販売するプラットフォーマーである。サイトに登録した中小企業は、自社製品の商品券を販売することで得た収入を通じて、従業員給与、家賃など固定支払いが維持できる仕組みである。同社はまた、登録企業に対して、政府支援策の利用方法やeコマースの販売・宅配方法に関するコンテンツを供給。登録企業数は2,000社となり、同社の既存顧客数だった120社を大きく上回っている(注2)。

また、新型コロナの消費喚起対策として、中国では、地方政府による商品券の配布措置が各地で講じられ、上海市では総額130億元(約2,000億円、1元=約15円)の商品券(電子マネー)が配布された、と報じられている(注3)。日本でも、新型コロナ禍の下での需要喚起策としてプレミアム付き商品券を発行する自治体が増えている。筑邦銀行は同商品券を電子化するサービスに乗り出し、2020年9月には福岡県うきは市商工会が発行するプレミアム商品券の電子化サービスに取り組む予定である(注4)。

ジェトロ・ボゴタ事務所からの報告では、コロンビア小売り流通業のFalabella、Homecenter、 Linioは、新型コロナの影響を受けた零細企業が商品を販売できるよう、それぞれの通販サイトで手数料なしでの販売を可能にする、とのこと。Falabellaによれば、3社のプラットフォームで計100社が新たに通販市場に参入する見込みだ。

また、ジェトロ・イスタンブール事務所からの報告では、トルコ貿易省は、2020年5月18日、アマゾントルコ、トルコ商工会議所連合会(TOBB)、ボアジチ大学と協力し、中小企業のデジタル化(e コマース活用)支援を目的としたオンライン・トレーニング・サービスを実施する旨を発表した。

おわりに(まとめ)

新型コロナの感染力や現在の感染規模を踏まえれば、感染の終息が見えない状況にあり、先行き不確実な時期が当面続ものと思われる。

本稿で取り上げた事例はあくまでも限られた一部の企業の動きに過ぎないが、前述の通り、分野別にコロナ禍を機にした事業拡大の動きをみてきた。個人防護具生産分野などにおける異業種からの参入、参入希望業種の企業への出資や事業連携、自動車販売に向けたライブ動画配信を含めオンライン販売のさらなる増加や手法・取扱品目の広がり、医療関連分野でのITやデジタル技術、いわゆる「コロナテック」の活用を通じたオンライン診療サービスの普及など「効率性」や「便宜性」を追求した企業側のさまざまな取り組みや工夫が各地でみられる。ドライバーなしでの自動運転による処方箋の宅配サービスや、ドローンを活用した配送の試みなど、驚くべき新たな取り組みも見られた。こうした動きは、感染拡大が及ぼす負の影響が広がる中で、企業にとっての新たなビジネスチャンスとなる。また、そうした企業の動きを促すかのごとく、例えば、医療関連分野でのITサービスを提供するスタートアップなどへのベンチャーキャピタル投資の加速もみられる。

そして、新型コロナ発生前から取り組まれていた事業が、コロナ禍を機にその普及や導入が加速化されたものも少なくない。これは、メドレーのクリニクスなど日本でのオンライン医療の動きや、中国でのオンラインフィットネスに対する関心の高まり、オーストラリアでのme&uに対する引き合いの急増などの事例にみてとれる。 さらには、ウーバーテクノロジーズのように、本業の配車業務が落ち込む中、ウーバーイーツによる出前などコロナ禍で需要が急拡大し、本業の不振を補完している企業も少なからずみられた。

コロナ禍を機とした上記の事業拡大事例は、1.コロナ禍による特需ニーズにかなったもの、2.コスト削減や効率性を高める事業方針(あるいはその結果)として顧客ニーズを捉えたもの、に大まかな分類ができるように思われる。前者については、コロナ禍がいつまで続くかにかかっており、感染終息とともに特需ニーズは以前の状況に戻ってしまう可能性が高いことも想定される。一方、後者は、ポストコロナの時代においても、引き続き一定の確たる需要が見込まれるものと思われる。

もちろん(デリバリーサービスへの切り替えや消費者への直接販売など)業態を変えて行う事業について、必ずしもうまくいっているものばかりではなく、客足が戻らないといった声も各地で聞かれる。厳しい外部事業環境などから業績回復が遅れるケースが多くみられるが、新たな事業やサービスを始める際には、顧客側の立場に配慮した(PRや、価格面など)何らかの工夫が施される必要があるものと思われる。

また、先に中国の事例として紹介したように、コロナ禍が落ち着きを見せ、外出自粛期間中には困難であった大型家電の取り付け作業が可能となり、エアコンなど大型家電・生活電気製品の売り上げが急増した、とのことである。今後、同様の動きが現在コロナ禍に見舞われている各地で見られるものと想像される。

先行き不透明な状況ながらも、ポストコロナの変化を見据えた事業環境変化の把握に努め、ウィズコロナの時代を生き抜くための体制構築を足元整えておくべきであろう。実際、国内市場向けの自社製品を、将来的に輸出用の製品としても出荷できるようにするために、輸出時に必要となる認証申請を今のうちに行っておくとする企業の動きもみられる。まさにコロナ禍で身をかがめている現況下、感染終息後も見据えた事業戦略について、打つべく手立てを用意周到に準備しておくことが肝要であるものと思われる。


注1:
ジェトロビジネス短信、2020年7月3日付「浙江省杭州市にライブコマース産業園区を建設」によれば、新型コロナの影響でライブコマース利用者は5億5,000万人に達するとみられる旨、「中国日報網」(同年6月12日付)が報じている、としている。
注2:
ジェトロ地域分析レポート、2020年4月15日付「新型コロナ危機を逆手に取った新たなスタートアップビジネスが台頭(ブラジル)」
注3:
日本経済新聞社電子版、2020年6月10日付「中国、相次ぎ消費喚起策 上海で2000億円の商品券」
注4:
西日本新聞、2020年6月18日付「プレミアム商品券電子化 筑邦銀行が展開、うきは市導入へ」。筑邦銀行ニュースリリース(2020年6月18日付)「うきは市におけるプレミアム付き電子地域商品券の提供について」によれば、筑邦銀行は九州電力が提供するシステム基盤を利用し、うきは市商工会が発行するプレミアム商品券においてスマホから申込、抽選、購入、利用、精算まで一貫して行う仕組みを提供する。専用アプリでダウンロードし、同商品券の申込・購入をすると購入金額に加え、25%のプレミアム率が付与される。
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部上席主任調査研究員
川田 敦相(かわだ あつすけ)
1988年、ジェトロ入構。海外調査部アジア大洋州課、シンガポール、バンコク、ハノイ事務所などに勤務、海外調査部長を経て2019年4月から現職。主要著書として「シンガポールの挑戦」(ジェトロ、1997年)、「メコン広域経済圏」(勁草書房、2011年)、「ASEANの新輸出大国ベトナム」(共著)(文眞堂、2018年)など。

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