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電子化の推進で事業を拡大
「コロナ禍」での事業拡大事例を見る(その4)

2020年8月6日

今回は、人との接触機会低減対策に取り組む企業について紹介する。新型コロナ禍の下では人との接触機会低減対策が数多くみられる。具体的には、(1)電子商取引(eコマース:EC)や宅配等サービス、(2)オンラインでの診療、教育、娯楽サービスの提供、(3)リモートワーク(在宅勤務)対応、(4)自宅での巣ごもり対応、(5)自動化対応、(6)遠隔業務対応などである。その中から、まずは、電子商取引を取り上げる。

電子商取引(eコマース)や宅配等サービス

コロナ禍で、電子商取引や宅配などのサービスが大きく伸長している。料理の宅配サービスや、配達員との接触機会のない配送サービスの増加が顕著となっている。ただし、インドのように厳格な外出禁止により、料理宅配企業の売り上げが減少し、人員削減を迫られたケースも散見された(注1)。

(1)電子商取引

米国では、アマゾン・ドット・コムなどECサイト運営テクノロジー企業はもとより、店舗受け取りの実店舗を構える小売チェーンでもオンライン販売が伸びている。小売り大手ターゲットは2020年4月にオンライン注文の売り上げが前年同月比で急増。小売り大手ウォルマートやホーム・デポも同様の傾向にある(注2)。また、同国ではオンラインで注文した商品を店舗で受け取るカーブサイドピックアップがみられるが、ドイツ系小売り大手アルディ米国は7月9日、カーブサイドピックアップの試験運用が米国の選定地域で成功したことから、7月末までに米国内35州約600店で展開することを発表している(注3)。

スウェーデンの家具大手イケアのインド現地法人イケアインディアは2020年5月下旬、インド南部ハイデラバードの店舗で営業を再開。対面販売ではなく、消費者がインターネットで注文し、店舗駐車場で商品を受け取る「非接触」販売を導入(注4)。カンボジアでも、大手オンラインスーパーマーケットDelishop.Asiaは、新型コロナ感染リスクに鑑み、非接触型の配達とオンライン決済のサービスを開始している(注5) 。

コロナ禍以前からオンラインショッピングが進んでいた中国でも、コロナ禍を機に一段とネット利用が増加した。ジェトロ広州事務所によれば、コロナ禍に起因する自宅でのネット利用の増加などから、中国ECプラットフォームの業績を押し上げた。テンセント(深圳市)の2020年5月13日発表の2020年第1四半期決算によれば、純利益は前年同期比6%増の288億9,600万元(約4,334億円、1元=約15円)、売上高は26%増の1,080億6,500万元となった、という。同様に、ジェトロ上海事務所からの5月中旬の報告によると、中国ECプラットフォームのタオバオでは、新規に入居するテナントが1日当たり4万店にのぼる。コロナ感染拡大期にタオバオに加入した店舗は、前年同期の約3倍に増加したほか、中国の内販市場向け販売を目的にタオバオに入居した輸出入企業も大幅に増加した、という。

また、ベトナムでは新型コロナの影響で、電子商取引の売れ筋に変化がみられ、衣類などは売り上げを落とした一方、ヘルスケア用品や食品、さらには外出自粛を背景にトレーニング用品、コンピュータ機器、ビタミン剤などが売り上げを伸ばしたとされる(注6)。ロシアのオンラインショッピングでも、家庭用のレジャー製品、修理道具(電動ドリル、ドライバー)、フィットネス製品(トレーニング用フロアマットまど)の販売が好調であった(注7)。ルーマニアでも、コロナ禍による人の移動制限や店舗一時休業の影響でオンライン販売が拡大し、電気・ITや自宅装飾関連のオンライン販売業者の売り上げが大幅な増加を示した(注8)。

一方、メキシコでは、実店舗を持たずオンライン販売に特化したスーパーマーケットサイト運営のスタートアップ企業のフストが売り上げを拡大。店舗運営コストがないため販売価格を抑えることができ、配達業を兼ね備えていることからECサイトで注文された商品を指定箇所まで配達することができる(注9)。

また、コロナ禍による急激な売り上げ落ち込みにもかかわらず、ZARAやMassimo Duttiなどのブランドを有するスペインの衣料卸大手インディテックスは、2020年6月10日、今後3年間で27億ユーロ(約30億ドル)をかけ、完全に統合された店舗とオンラインモデルを発展させる旨を公表。2021年までに最大1,200店舗を閉鎖する一方で、好立地な場所に、より高品質で広い450のアウトレットを開くとしている。また、コロナ禍はオンラインショッピングを加速させ、同社の2020年4月のオンラインでの売り上げは前年同月比95%増(2020年2~4月期では前年同期比50%増)であったと、している(注10)。

一方、目立った動きとしては、中国大手家電メーカー珠海格力電器の董明珠董事長が2020年5月10日、自らライブ配信を行い、取引額は3時間で3億1,000万元(約46億5,000万円)となった。同社のオンライン店舗の2019年の売上高が3億5,000万元だったことから、3時間のライブ配信がオンライン店舗の年間売上高に迫る勢いとなった。国内代理店が新型コロナで大きな打撃を受けており、オンライン販売で業績回復を狙う(注11)。

また、ジェトロ上海事務所からの報告では、中国自動車ディーラーは店頭販売に加え、新たな営業ツールとして、アプリ、ソーシャルメディア、ライブ動画配信などを活用。テスラはじめ、多くの自動車メーカーがアリババ系ECサイト・タオバオでのライブ動画配信を行い、顧客開拓に取り組んでいる(注12)。加えて、GMも中南米EC最大手メルカドリブレの仮想店舗で新車販売予約を2020年5月後半から開始している(注13)。

(2)宅配サービス

米国配車サービス大手ウーバーテクノロジーズは2020年7月7日、中南米(ブラジル、チリ、コロンビア、ペルー)やカナダで同社の料理宅配サービス「ウーバーイーツ」のアプリを通じた生鮮食品の宅配サービスを開始する旨を発表した。米国でも、同月内にサービスに乗り出す。新型コロナで配車事業が圧迫される中、需要が急増する生鮮食品の宅配サービス事業を拡充する。新型コロナ感染拡大の2020年2月以降、ウーバーのアプリを通じた食料品の注文は急拡大している、とされる(注14)。また、台湾でも、現地メディアによれば、2020年6月末から香港系ドラッグストアチェーンのワトソンズが、ウーバーイーツと提携し、化粧品や日用品の宅配サービスを始めるという。

一方、米国食品配送ドア・ダッシュは2020年7月16日、薬局大手Walgreens Boots Allianceと提携し、市販薬を中心に2,300品目超の宅配を行う旨を発表。まずはシカゴとアトランタ、デンバー地区でサービスを開始し、夏中に他地域にも拡大する(注15)。英国でも、国際宅配会社DPDや、DIY(日曜大工)チェーンのB&QとScrewfixを傘下に持つキングフィッシャーが、コロナ禍下での宅配の需要拡大を受け、雇用者数を拡大する考えを明らかにしている(注16)。ドイツ宅配大手ヘルメスは、ロックダウン中の英国でのオンライン購入の増加を受け、1万500人の増員など英国での事業拡大を計画している(注17)。トルコでも、コロナ禍の影響を受け、さまざまなスーパーマーケットがオンラインショッピングによる配達サービスを開始。現地最大手のヘプィスブラダは2020年末までに新たに5,000人、大手スーパーマーケットのミグロスもオンライン販売拡充のためコロナ発生後に5,000人を採用し、さらに1,000人雇用する計画がある旨が、2020年4月に報じられていた、とのことだ(注18)。

また、米国では、レストランの営業時間が大幅に制限される中、通常では消費者への直接販売を行わない日系食品卸売業者が、消費者の自宅へ直接商品を届けるサービスを実施する事例が出てきた。新型コロナが収まっていない現状下、外食機会が減った消費者が直接食材などを購入する需要の増加が背景にある。ニューヨークおよび周辺州で主にレストラン向けに食品や食品関連商品を卸している日系のニューヨーク・ミューチュアル・トレーディング社は2020年4月から消費者へのデリバリーサービスを開始し、日本食材はもとより、食器やレストランでの業務用調理道具(厨房用品)などを販売し始めている(注19)。

一方、ロシアでは、デリバリーサービス請負業者への飲食店からの新規利用申し込みが大きく増加。大手料理デリバリーサービスのヤンデックス・エダは新規申し込みからデリバリーサービス開始までの期間を従来の7日から1日に短縮し、迅速に対応しているという(注20)。また、ウズベキスタンのジェトロ・タシケント事務所からの報告でも、タクシーアプリ大手「マイタクシー」およびレストラン・商品宅配アプリ大手「エクスプレス24」の創設者アクマリ・パイジエフ氏がタシケント市での食品注文数は5倍に増え、野菜、衛生用品、燕麦(えんばく)、マカロニの注文が増加していることを、さらに、医薬品宅配アプリ「GOアプテカ」のムスタフォ・ドスト氏も顧客数が大幅に増加した旨を、地元ポータルサイトにコメントを寄せている、としている(注21)。

バングラデシュ・ダッカでも、コロナ対応として、eコマースやフードデリバリーが多く利用されている。フードデリバリー運営のハングリーナキーは、地場スーパーマーケットチェーンのショプノと連携し、食料品や日用品、医薬品のデリバリーに従事。地場財閥系ハイパーマーケットのユニマートも2020年4月から、大手フードデリバリーサービスのフードパンダ(本社:ドイツ)と連携し、食料品などのデリバリー業務に取り組んでいる(注22)。

また、興味深いケースとして、米国薬局大手CVSヘルスコープとスタートアップ企業Nuroは2020年5月28日、ドライバーなしでの自動運転による処方箋の宅配サービスを、6月からテキサス州ヒューストンのCVS店舗近くの地区で試験的に開始する旨を発表している(注23)。

(3)その他便利な購入手段・サービス

スターバックスは2020年6月10日、コロナ禍などへの対応として、今後18カ月かけてドライブスルーや、スターバックス・ピックアップといった持ち帰り店形態での運営への移管を加速させる旨を発表(注24)。スマートフォンなどにダウンロードしたスターバックスのアプリで注文や事前支払いを行い、店頭で受け取る効率的な仕組みである。

また、VISAカードは、より迅速で便利な非接触型決済を、カンボジア国内のイオンとイオンマックスバリュで導入した旨を発表。2020年6月18日以降、買い物客はカードを、タップするだけで支払いが可能としている(注25)。

なお、ドイツIT・通信・ニューメディア産業連合会(BITKOM)が2020年7月22日に発表した「消費者によるオンラインデリバリーの利用動向に関する調査結果」によれば、オンラインで注文する割合がコロナ禍前に比べて高まったものの、オンラインではなく電話で注文する人が宅配事業会社では54%、レストランでも46%と、依然としてアナログな方法が多い状況にある、とのこと(注26)。まだまだ、オンラインの比率が高まる余地があるように思われる(表参照)。

表:コロナ禍により電子商取引や宅配等サービスを強化した主な企業事例
項目 企業名 事例の概要
電子商取引 ターゲット(米) コロナ禍の下でのオンライン注文での売り上げが急増。
アルディ米国〔米(ドイツ系)〕 2020年7月末までに米国内35州約600店舗でカーブサイドピックアップを展開。
イケアインディア〔インド(スウェーデン系)〕 2020年5月下旬よりハイデラバード店での営業を再開したが、対面販売ではなく、インターネット注文で店舗駐車場で商品を受け取る非接触販売を導入。
Delishop.Asia(カンボジア) 非接触型の配達とオンライン決済のサービス開始。
テンセント(中) 2020年第1四半期の売上高は前年同期比26%増。
タオバオ(中) コロナ感染拡大期にタオバオに加入した店舗は、前年同期比約3倍に増加。
フスト(メキシコ) オンライン販売に特化したサイト運営の同社は、店舗運営コストが無く、売上を拡大。
インディテックス(スペイン) オンラインショッピングでの衣料品の売り上げが大幅に増加。
珠海格力電器(中) 董事長自らがオンライン販売のライブ配信を行い、大きな売り上げ。
宅配サービス ウーバーテクノロジーズ(米) 2020年7月上旬より、中南米やカナダ等でウーバーイーツのアプリを通じた生鮮食品の宅配サービスを開始。
ワトソンズ〔台湾(香港系)〕 ウーバーイーツと提携し、化粧品や日用品の宅配サービスを開始する。
ドア・ダッシュ(米) 薬局大手Walgreens Boots Allianceと提携し、市販薬の宅配も行う。
キングフィッシャー(英) コロナ禍の下での宅配需要の拡大を受け、雇用者数を拡大。
ヘプィスブラダ(トルコ) オンライン販売による配達サービス開始等から、2020年末までに新たに5,000人を採用。
ミグロス(トルコ) オンライン販売拡充のためコロナ発生後に5,000人を採用し、さらに1,000人雇用する。
ヤンデックス・エダ(ロシア) 飲食店からの同社デリバリーサービス新規利用申し込みが大きく増加。
ハングリーナキー(バングラデシュ) 地場スーパーマーケットチェーンと連携し、食料品や日用品、医薬品のデリバリーに従事。
ユニマート(バングラデシュ) 2020年4月より、フードデリバリーサービス会社と連携し、食料品などのデリバリー業務に取り組み。
CVSヘルスコープ(米)、Nuro(米) ドライバー無しでの自動運転による処方箋の宅配サービスを試験的に開始。
その他 スターバックス(米) ドライブスルーや持ち帰り店形態での運営への移管を加速。
VISAカード(カンボジア) 2020年6月中旬以降、カンボジア国内のイオンとイオンマックスバリュで買い物客はカードをタップするだけで支払い可能に。

出所:メディア報道等からジェトロ作成


注1:
日本経済新聞、2020年5月27日付「インド出前ユニコーンが人員削減 過剰封鎖が打撃」
注2:
Bloomberg News, May 21,2020, ”The Biggest Thing in Online Shopping? A Store.”
注3:
Tulsa World Magazine, July 9, 2020,”ALDI expands curbside grocery pickup after pilot program”
注4:
Livemint May 25,2000, “Ikea restarts online service in Hyderabad, buyers to pick furniture from carpark”
注5:
Khmer Times, May 8, 2020,“Cambodia’s largest online supermarket launches contactless delivery service”
注6:
ジェトロビジネス短信、2020年6月4日付、「デジタル経済の促進へ、EC売上高25%成長を目指す」
注7:
ジェトロビジネス短信、2020年4月9日付「日用品消費は半減、家庭用レジャー・スポーツ製品、修理工具の売り上げは急拡大」
注8:
CBRE Research,May,2020,”ROMANIA E-COMMERCE from real estate point of view”
注9:
ジェトロビジネス短信、2020年4月6日付「新型コロナ感染拡大で、完全オンライン型マーケットの需要急拡大」
注10:
CNN Business , June 10, 2020, “The Zara retail empire is spending $3 billion on its post-pandemic future”
注11:
36Kr Japan、2020年5月18日付「家電大手「格力電器」、董事長が自らライブ配信で商品販売 3時間でネット店舗の年間売上高に迫る」
注12:
ジェトロビジネス短信、2020年5月13日付「自動車販売もオンライン化の流れ」
注13:
ジェトロビジネス短信、2020年5月19日付「GM、中南米EC最大手メルカドリブレの仮想店舗を通じて新車販売予約を開始」
注14:
Reuters, July 7,2020, “Uber launches grocery delivery in Latin America, Canada with U.S. to follow”
注15:
CNBC, July 16,2020, “DoorDash partners with Walgreens to deliver over-the-counter drugs and other health products”
注16:
The Guardian ,June 18 2020,“DPD and Kingfisher to hire 7,500 UK staff as online shopping soars”
注17:
BBC NEWS, July 20, 2020,“Delivery giant to hire 10,500 amid UK online shopping surge”
注18:
ジェトロビジネス短信、2020年5月14日付「トルコのeコマース市場、2019年に39%成長」
注19:
ジェトロビジネス短信、2020年6月3日付「新型コロナウイルス感染の影響を受けて食品卸会社が消費者への直接デリバリーを実施」
注20:
ジェトロビジネス短信、2020年3月30日付「外食利用の減少を受け、デリバリーサービスを活用する飲食店が増加」
注21:
ジェトロビジネス短信、2020年4月17日付「外食産業への影響大、宅配への転換にも限界」
注22:
ジェトロビジネス短信、2020年4月17日付「フードデリバリーやEコマースは営業中、駐在員も活用」
注23:
Reuters, May29,2000, “CVS, Nuro to test driverless prescription delivery in Houston area”
注24:
STARBUCKS’ STORIES & NEWS, ”Starbucks to accelerate expansion of drive-thru, pickup and curbside pickup” June 10, 2020
注25:
Khmer Times, June 19,2020,“AEON and AEON MaxValu supermarkets to launch contactless payments”
注26:
BITKOM,”Pizza, Sushi Jeder Zweite bestellt seit Corona ǒfter online Essen nach Hause”
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部上席主任調査研究員
川田 敦相(かわだ あつすけ)
1988年、ジェトロ入構。海外調査部アジア大洋州課、シンガポール、バンコク、ハノイ事務所などに勤務、海外調査部長を経て2019年4月から現職。主要著書として「シンガポールの挑戦」(ジェトロ、1997年)、「メコン広域経済圏」(勁草書房、2011年)、「ASEANの新輸出大国ベトナム」(共著)(文眞堂、2018年)など。

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