カンボジアの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • GDP成長率は5.0%と前年の6.0%から減速
  • 米国の関税措置、タイとの国境紛争、不動産不況、観光業低迷など複数の苦難に直面
  • 輸出は前年比16.9%増、対内直接投資は21.2%増と、いずれも過去最高額を記録
  • コンプライアンスや透明性への懸念などが日本企業の投資判断に影響している可能性あり

公開日:2026年9月8日

マクロ経済

実質GDP成長率は前年から低下、国内経済は足踏み

IMFによると、2025年の実質GDP成長率は5.0%となり、前年の6.0%を下回った。タイとの国境紛争激化による観光業の低迷、国内需要の減退、タイへの出稼ぎ労働者の帰国に伴う失業者の増加や海外送金の減少、長引く不動産不況による金融機関の不良債権率高止まりなどを受け、国内景気が減退したとみられる。

一方で、輸出部門では、当初は米国の追加関税措置による影響が懸念されたものの、年前半の駆け込み需要による輸出増加などに支えられ、通年の輸出額は前年比16.9%増だった。また、対内直接投資は21.2%増と過去最高を達成し、経済成長を下支えした。IMFによると、2025年の消費者物価上昇率は2.5%となり、前年の0.8%を上回った。

カンボジア国立銀行によると、2025年末の外貨準備高は前年比22.3%増の275億6,000万ドルで、輸入額の約8カ月分に相当する水準を維持した。一方、対外債務残高は196億5,300万ドルと、前年から5.3%減少した。カンボジア経済財政省(MEF)によると、カンボジアの対外債務は、世界銀行やアジア開発銀行によるローンや日本の円借款など、複数の資金源を組み合わせた構成となっており、債務管理も安定的とされ、「債務の罠」に陥るリスクは低いとみられている。

隣国タイとは、一部の国境未確定地域における国土領有権をめぐる対立が再燃し、2025年5月に軍事衝突が激化した。これにより、軍人・市民を含む多数の死傷者が発生したほか、両国間のすべての陸上国境通関ゲートが封鎖され、タイとの陸路輸送ルートは全面的に遮断された。国境付近に製造拠点を持ち、タイ企業と取引する企業は、日系企業を含め、輸送経路や輸送モードの変更などサプライチェーンの再編を余儀なくされた。その結果、輸送リードタイムの長期化や輸送コスト上昇などが事業経営を大きく圧迫する事態となった。また、カンボジアの基幹産業の1つである観光サービス業も大きな打撃を受けた。観光省によると、2025年の海外からの観光客は約557万人で、過去最高を記録した2024年の670万人から17%減少した。

第三国の仲介により、2025年10月にはいったん和平合意に至ったものの、その後再び軍事衝突が生じた。同年12月に再度停戦で合意したが、国境付近では依然として不安定な状況が続いており、2026年7月現在も国境ゲートは再開していない。さらに、タイ製品の不買運動がSNSなどを通じて拡散し、カンボジア国内の消費者心理にも大きな影響を与えている。これまで国内市場でプレゼンスを有していたガソリンなどのエネルギー関連や日用品などを中心に、タイ系企業のブランド力が低下し、事業経営への影響が広がっている。

貿易

輸出入、貿易総額ともに過去最高を記録

表1-1カンボジアの主要品目別輸出(FOB)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)〔注〕品目欄のカッコ内数字はHSコード。
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
縫製品(ニット)(61) 6,635 7,766 24.8 17.0
縫製品(非ニット)(62) 3,152 3,638 11.6 15.4
革製品・かばん類(42) 2,055 2,160 6.9 5.1
履物(64) 1,680 2,092 6.7 24.5
ゴム製品(40) 1,508 2,065 6.6 36.9
穀物(10) 1,959 1,586 5.1 △ 19.0
家具類(94) 1,169 1,564 5.0 33.8
電気機器・部品(85) 1,879 1,435 4.6 △ 23.6
真珠・貴金属類等(71) 558 1,211 3.9 117.3
果物類(08) 888 1,181 3.8 33.0
その他 4,377 5,402 17.3 23.4
合計 26,748 31,281 100.0 16.9

〔注〕品目欄のカッコ内数字はHSコード。

〔出所〕カンボジア関税消費税総局(GDCE)のデータ(2026年4月時点)からジェトロ作成

表1-2カンボジアの主要品目別輸入(CIF)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)〔注〕品目欄のカッコ内数字はHSコード。
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
鉱物性燃料・石油類(27) 3,848 3,565 10.5 △ 7.4
ニット・繊維関連(60) 3,081 3,256 9.6 5.7
電気機器・部品(85) 1,951 2,899 8.5 48.6
機械類・部品(84) 1,733 2,654 7.8 53.2
車両・部品(87) 1,716 2,588 7.6 50.8
プラスチック製品(39) 1,311 1,570 4.6 19.8
人造短繊維・織物(55) 1,349 1,352 4.0 0.2
鉄鋼製品(73) 782 1,202 3.5 53.6
紙・板紙・紙製品類(48) 689 993 2.9 44.2
鉄鋼製品(72) 631 922 2.7 46.0
その他 10,982 12,039 35.4 9.6
合計 28,704 33,962 100.0 18.3

〔注〕品目欄のカッコ内数字はHSコード。

〔出所〕カンボジア関税消費税総局(GDCE)のデータ(2026年4月時点)からジェトロ作成

カンボジア関税消費税総局(GDCE)によると、2025年の輸出額は312億8,100万ドルとなり、前年比16.9%増加した。輸入額は18.3%の339億6,200万ドルだった。貿易総額は17.7%増の652億4,300万ドルとなり、過去最高を記録した。

輸出を品目別にみると、従来の主要品目である繊維品、履物、鞄類などの縫製品が前年比15.8%と堅調に伸びた。また、タイヤ関連製品の輸出拡大を背景に、ゴム製品の輸出は36.9%増と大幅に増加した。一方、輸入では、機械、車両、電気機器およびそれらの関連部品など、工業製品の増加が目立った。

カンボジアの製造業は、縫製関連産業や電子・電機部品などの組立産業を中心とする労働集約型産業が主体となっている。国内産業の裾野が狭いことから、資材や部材、構成部品などの多くを輸入に依存している。輸入した原材料や部品を国内で加工、組み立てた後、縫製品や部品の完成品・半製品として輸出する構造になっている。また、国内には原油の精製機能がないことから、石油製品をはじめとする資源・エネルギー関連製品のほぼ全てを輸入に依存しており、これらは例年、輸入品目の上位を占めている。

米国向け貿易額は増加、タイとの貿易額が減少

表2-1 カンボジアの主要国・地域別輸出(FOB)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)〔注〕品目欄のカッコ内数字はHSコード。
国・地域 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
米国 9,909 12,731 40.7 28.5
ベトナム 3,699 3,729 11.9 0.8
中国 1,750 1,687 5.4 △ 3.6
日本 1,409 1,576 5.0 11.9
カナダ 1,110 1,272 4.1 14.6
スペイン 1,041 1,161 3.7 11.5
英国 959 1,015 3.2 5.8
オランダ 802 967 3.1 20.6
シンガポール 295 920 2.9 212.1
ドイツ 911 903 2.9 △ 0.9
その他 4,864 5,320 17.0 9.4
合計(その他含む) 26,748 31,281 100.0 16.9

〔注〕品目欄のカッコ内数字はHSコード。

〔出所〕カンボジア関税消費税総局(GDCE)のデータ(2026年4月時点)からジェトロ作成

表2-2 カンボジアの主要国・地域別輸入(CIF)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)〔注〕品目欄のカッコ内数字はHSコード。
国・地域 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
中国 13,437 18,045 53.1 34.3
ベトナム 4,168 4,063 12.0 △ 2.5
タイ 3,442 2,924 8.6 △ 15.0
シンガポール 944 1,421 4.2 50.5
インドネシア 1,009 1,022 3.0 1.3
日本 753 956 2.8 27.0
マレーシア 718 935 2.8 30.2
台湾 702 746 2.2 6.3
韓国 521 596 1.8 14.4
米国 264 417 1.2 58.0
その他 2,746 2,837 8.4 3.3
合計(その他含む) 28,704 33,962 100.0 18.3

〔注〕品目欄のカッコ内数字はHSコード。

〔出所〕カンボジア関税消費税総局(GDCE)のデータ(2026年4月時点)からジェトロ作成

国・地域別にみると、輸出では米国向けが前年比28.5%増の127億3100万ドルとなり、100億ドルの大台を突破した。2025年4月に米国政府はカンボジアに対する相互関税率を49%と発表したが、その後の交渉を経て、ASEAN周辺他国とほぼ同水準の19%へ引き下げた。当初は、相互関税による深刻な影響が懸念されたものの、関税発動前の駆け込み輸出の増加などにより、影響は限定的であった。また、米中貿易摩擦の長期化や米国の関税政策、中国国内の製造コストの上昇などにより、中国企業による製造拠点の東南アジアへの移転が続いている。これにより、米国企業の調達先も中国本土から、カンボジアを含む東南アジアにシフトする動きが強まっているとみられる。

また、輸出額に占める割合は小さいものの、シンガポール向け輸出は前年比3.1倍となった。同国向け輸出額の93%を占める真珠、金などの貴金属、宝石類が4.5倍に増加したことが主な要因とみられる。

一方、輸入では、タイとの国境紛争激化の影響を受け、同国との貿易構造が大きく変化した。

紛争激化前は、石油やガスなどのエネルギー製品の大半を同国から輸入していたが、カンボジア政府は2025年7月、野菜などの生鮮品に加え、燃料およびガスの輸入を禁止した。これにより、同国からの輸入額が前年比15.0%減少した。一方、代替調達先となったシンガポール、マレーシアからの輸入は、それぞれ50.5%増、30.2%%増と大きく伸びた。

中国からの輸入は、前年比34.3%増となった。カンボジアは従来から、縫製業向けの部材・資材や建設資材などの多くを中国から輸入していた。しかし、近年は中国国内の景気低迷による需要減退の長期化により、過剰在庫となった製品がカンボジアを含むASEAN各国において廉価な価格で大量に流通する傾向がみられる。2025年は、中国からの鉄鋼関連、機械、電気機器、車両関連の輸入がいずれも60.0%以上増加した。特に、EVを含む車両の輸入額は2倍を超えた。

輸入額全体に占める割合は大きくないものの、米国からの輸入も前年比58.0%増と大きく伸びた。背景には、相互関税を巡る交渉の過程で、カンボジア政府が米国製品に対する関税の引き下げや減税・免税措置を提案したことがあるとみられる。品目別では医薬品関連が46.8%増加したほか、電気関連や車両はいずれも2倍以上の増加であった。

対内直接投資

2025年は中国からの投資が加速

表3 カンボジアの国・地域別対内直接投資〔QIP認可ベース〕(単位:100万ドル、件、%)(△はマイナス値)〔注1〕小数点以下の四捨五入の関係で合計と一致しないことがある。 〔注2〕合弁の場合、投資件数は投資比率が高い国のみカウントする。(例)中国(51%)、オーストラリア(49%)の場合は中国1件となる。 〔注3〕合弁の場合、投資金額は投資比率に応じて換算。 〔注4〕上記表はカンボジア企業の投資件数は含まない。
国・地域 2024年 2025年
件数 金額 件数 金額 構成比 伸び率
中国(香港、他国とのJ/Vを含む) 301 3,394 478 4,595 83.3 35.4
シンガポール 24 263 45 572 10.4 117.6
イギリス領バージン諸島 0 0 5 76 1.4 —
ベトナム 6 557 4 63 1.1 △ 88.8
米国 16 28 4 42 0.8 48.2
英国 0 0 3 36 0.7 —
サモア 5 23 3 20 0.4 △ 13.7
ケイマン諸島 0 0 2 16 0.3 —
台湾 4 30 3 16 0.3 △ 48.1
マレーシア 3 45 1 9 0.2 △ 80.0
その他 47 209 15 72 1.3 △ 65.7
合計 406 4,549 563 5,515 100.0 21.2

〔注1〕小数点以下の四捨五入の関係で合計と一致しないことがある。
〔注2〕合弁の場合、投資件数は投資比率が高い国のみカウントする。(例)中国(51%)、オーストラリア(49%)の場合は中国1件となる。
〔注3〕合弁の場合、投資金額は投資比率に応じて換算。
〔注4〕上記表はカンボジア企業の投資件数は含まない。

〔出所〕カンボジア開発評議会(CDC)のデータからジェトロ作成

海外からの直接投資を所管するカンボジア開発評議会(CDC)によると、2025年の適格投資案件(QIP: Qualified Investment Project)の認可ベースの対内直接投資額は、前年比21.2%増の55億1,500万ドルで過去最高を記録した。国・地域別では中国が35.4%増の45億9,500万ドルで1位となり、投資額全体の83.3%を占めた。構成比は前年から8.7ポイント増加した。また、中国からの投資件数は478件で、前年から177件増加した。前述のとおり、米中貿易摩擦の長期化、米国の関税政策、中国国内の人件費など製造コスト上昇の影響を受け、中国からカンボジアへの投資が加速したものとみられる。

中国に次いで、シンガポール5億7,200万ドル(構成比10.4%)、英国領バージン諸島7,600万ドル(1.4%)と続く。一方、日本からの投資額は640万ドル(0.1%)であった。投資案件はスポーツ用品製造など3件で、近年と同程度の水準にとどまっている。

分野別では、衣料品、履物、鞄類などの縫製業を中心に、日用品、包装材、家具、家電など労働集約型の軽工業が中心であった。一方、注目すべき投資案件として、中国の大手電動車(EV)メーカー比亜迪(BYD)が同年QIPを取得し、SKD方式による自動車組立工場を立ち上げた。また、中国のタイヤメーカーの進出も相次いでおり、2025年には賽輪集団(Sailun Group)など2件の新規投資がQIPとして認可された。

カンボジアは長期国家成長戦略として2050年までの高所得国入りを目標に掲げ、その実現に向けて海外からの直接投資受け入れを積極的に進めている。投資受け入れの優先分野として機械、電気・電子産業、デジタル、自動車部品、環境管理、グリーンエネルギーなど18分野を指定し、外資系企業の誘致に注力している。しかし、2025年の投資実績をみると、依然として縫製業など労働集約型の軽工業が中心だった。

対日関係

縫製品関連の輸出が大幅増加、対日貿易は黒字が継続

表4-1 カンボジアの対日主要品目別輸出(FOB)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)〔注〕品目欄の括弧内数値はHSコード。
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
衣類・付属品(ニット製品)(61) 468 544 34.5 16.3
衣類・付属品(布帛製品)(62) 436 459 29.1 5.2
電気機器・部品(85) 194 216 13.7 11.3
履物(64) 129 140 8.9 9.1
革製品・かばん類(42) 62 62 3.9 △ 0.3
傘、杖・部品(66) 19 25 1.6 32.0
食用果実・ナッツ類(8) 8 23 1.5 195.2
紡織用繊維・製品(63) 15 17 1.1 12.1
機械・部品(84) 11 16 1.0 42.5
帽子・部品(65) 3 6 0.4 106.5
合計(その他含む) 1,409 1,576 100.0 11.9

〔注〕品目欄の括弧内数値はHSコード。

〔出所〕カンボジア関税消費税総局のデータ(2026年4月時点)からジェトロ作成

表4-2 カンボジアの対日主要品目別輸入(CIF)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)〔注〕品目欄の括弧内数値はHSコード。
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
車両・部品(87) 343 472 49.3 37.4
電気機器・部品(85) 83 111 11.6 33.9
機械・部品(84) 72 99 10.3 37.4
プラスチック製品(39) 47 46 4.9 △ 1.3
陶磁製品(69) 44 45 4.7 3.0
光学機器(90) 15 17 1.8 15.7
家具類(94) 13 14 1.5 10.4
紡織用繊維・製品(63) 12 11 1.2 △ 9.1
人造短繊維・織物(55) 16 11 1.1 △ 35.3
鉄鋼製品(73) 7 8 0.8 11.2
合計(その他含む) 753 956 100.0 27.1

〔注〕品目欄の括弧内数値はHSコード。

〔出所〕カンボジア関税消費税総局のデータ(2026年4月時点)からジェトロ作成

GDCEによると、2025年のカンボジアの対日輸出額は前年比11.9%増、対日輸入額は27.1%増であった。近年、両国間の貿易総額は拡大傾向にあり、2025年は日本は中国、米国、ベトナム、タイに次いで5位であった。対日貿易収支は6億2,000万ドルとなり、前年の6億5,600万ドルから縮小したもののカンボジアが黒字を保っている。輸出では、主要品目である衣料品、履物、鞄類などの縫製品関連が前年比10.0%増となった。日本の財務省貿易統計によると、カンボジアからの繊維製品の輸入シェアは前年から0.5ポイント上昇して4.6%となり、バングラデシュを上回り、中国、ベトナムに次ぐ3位となった。

電気機器・部品については、日系企業がカンボジアで製造する自動車用ワイヤーハーネスの輸出が安定して伸びているとみられる。日本からの輸入では、車両、電気機器、機械および関連する部品など工業製品が大きく伸びた。

前述のとおり、2025年の日本企業の新規進出は3件にとどまった。日本からの大型投資は依然として低調であり、投資や販路開拓に関するジェトロへの相談件数も増加していない。

日本企業の進出を阻害する要因は、カントリーリスク、コンプライアンス、透明性に関する懸念、円安の定着などに加え、昨今のタイとの国境紛争や特殊詐欺拠点に関する事案などが投資判断に影響を及ぼしている可能性がある。

一方、カンボジアには若年層を中心とする豊富な労働力、米ドル流通による為替面での利便性、比較的自由度の高い外資規制、経済特区の整備など、同国ならではの投資環境上の強みもある。足元では課題も多いものの、中長期的なポテンシャルを有する成長市場として、引き続き事業機会を見極めていくことが重要となる。

その他

LDC卒業、中長期的な成長見据え、産業構造の高度化が課題に

前述のとおり、カンボジアは長期国家成長戦略において2050年までの高所得国入りを目指しており、そのための成長エンジンとして海外からの直接投資を積極的に誘致している。また、2029年には国連が定める後発開発途上国(LDC)からの卒業を予定している。これに伴い、縫製関連分野を中心に、これまで享受してきた特恵関税制度の適用が段階的に縮小・終了することが見込まれており、輸出競争力の維持・強化が重要な課題となる。

一方、国内では従来から縫製関連、日用品・雑貨、電気製品などの労働集約型の軽工業が主要産業となっている。しかし、長期的な国家目標の達成や従来の貿易・関税協定の枠組みからの脱却に向けて、付加価値の高い技術・知識集約型企業の誘致は重要な課題である。

また、国内には原油の精製機能がないため、エネルギーの調達は精製済み完成品の輸入に依存している。このため、国際的なエネルギー価格の変動や地政学的リスクの影響を受けやすい経済構造となっており、エネルギー価格の上昇は国内物価高騰や景気の下押し圧力となりやすい。

一方で、カンボジアは農業国であり、コメやキャッサバなどの穀物、トロピカルフルーツやカシューナッツなどの果実、生ゴムなどの農産物生産がさかんに行われている。これらを国内で加工し、高付加価値化を図ることで輸出競争力や生産性向上につながる可能性がある。こうした分野では、日本の栽培技術や食品加工技術、品質管理ノウハウを活用した投資にも期待が寄せられる。例えば、現在、カシューナッツは多くが原料のまま廉価で輸出されているが、その品質や安全性と味わいが世界的にも高く評価されつつあり、加工、販売、輸出事業は成長の余地がある。一部の日本企業も既に関連事業を展開している。

カンボジアが持続的な経済成長を実現するためには、産業構造の高度化と貿易構造の多角化を着実に進めることが重要となる。LDC卒業や国際経済環境の変化を成長の契機へ転換し、外部環境の変化に強い経済基盤を構築できるかが、今後の中長期的な成長を左右する重要なポイントとなろう。

基礎的経済指標

(△はマイナス値) 〔注〕 貿易収支:国際収支ベース(財のみ)
項目 単位 2023年 2024年 2025年
実質GDP成長率 (%) 5.0 6.0 5.0
1人当たりGDP (米ドル) 2,546 2,613 2,762
消費者物価上昇率 (%) 2.1 0.8 2.5
失業率 (%) 0.2 0.3 0.3
貿易収支 (100万米ドル) △ 2,984 △ 4,488 △ 5,575
経常収支 (100万米ドル) △ 439 △ 597 △ 551
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 19,874 18,608 19,881
対外債務残高(グロス) (100万米ドル) 22,855 20,758 19,653
為替レート (1米ドルにつき、リエル、期中平均) 4,111 4,072 4,013

〔注〕
貿易収支:国際収支ベース(財のみ)

〔出所〕
実質GDP成長率、1人当たりGDP、消費者物価上昇率、消費者物価上昇率、外貨準備高(グロス)、為替レート:IMF
失業率:世界銀行
貿易収支、経常収支、対外債務残高(グロス):カンボジア国立銀行(NBC、2026年4月)