外国人就業規制・在留許可、現地人の雇用

最終更新日:2023年08月31日

最近の制度変更 

外国人就業規制

外国人労働者の就業も幅広く受け入れているが、就業には労働許可証の取得が必要である。

  1. 概要
    労働者を雇用する企業にはカンボジア人の雇用が奨励されているが、外国人労働者の就業も、要件を満たせば幅広く認めている。
    ジェトロ:ビジネス関連法・法務「カンボシア労働法」(2021年10月)の第263条を参照。
    1. 外国人の雇用
      カンボジア人労働者を雇用する場合には、人数制限などはない。カンボジア人に資格や専門知識を有する者がいないときには、条件を満たす外国人を雇用することができる。
      ジェトロ:ビジネス関連法・法務「投資法」(2021年10月)の第22条を参照。
    2. 外国人就業の要件
      カンボジアで外国人が就業するには、当該外国人が次の要件を満たしていることが必要(労働法第261条)。
      1. 労働省発行の労働許可証の保有
      2. 合法的にカンボジアに入国していること
      3. 有効な在留許可を有していること
      4. 有効なパスポートを保持していること
      5. 適切な評価と規律を有する者
      6. 職を遂行できる健康状態にあり、伝染病を有していないこと
    3. 労働許可(ワーク・パーミット)

      外国人労働者に対する労働許可証(雇用カード)の発行は、労働職業訓練省の管轄となる。労働許可証を所持しない外国人は就業できない(労働法第261条)。労働許可の取得方法については「2.労働許可証」の項を参照。

    4. 雇用することができる外国人の割合
      2014年8月20日付労働省令第196号では、企業はカンボジア人労働者数の10%以下の人数の外国人を雇用できるとされる。内容は次のとおり。
      1. 外国人労働者:10%まで
      2. このうち、専門性を有する肉体労働者:6%まで
      3. 専門性のない肉体労働者:1%まで

      もっとも、外国人労働者数がカンボジア人労働者数の10%を超える場合であっても、従業員割当申請の際に、後述の特例許可手続をとることが可能である。

  2. 労働許可証
    1. 概要

      外国人労働者について労働許可証の発行を受けるためには、まず労働省に対し、事業所開設の申請を行っていること、前年に後述の従業員割当申請が行われていることが前提となる。
      労働許可証の申請および従業員割当申請は、労働省ウェブサイト上のデータ管理システム"The Foreign Worker Centralize Management System(FWCMS)"においてなされることを要する(2016年8月17日電子化による外国人労働のデータの管理システムの実施に関する省令352号)。

      労働省:The Foreign Worker Centralize Management System(FWCMS)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

    2. 従業員割当申請(Quota

      企業が外国人を雇用する場合、前年に、従業員割当申請を行う必要がある。申請すべき期間は労働省により告知されるが、例年、前年の9月から11月までの間が指定されている。

      さらに、外国人労働者の割合がカンボジア人労働者の10%を超える場合は、従業員割当申請の際に合わせて特例許可手続きをとる必要がある。外国人従業員の役割、専門知識、会社にとっての重要性を明確に説明できれば、特例許可を取得することは、2021年度までは比較的容易であった。

      従業員割当申請では、FWCMSにおいて、企業情報、雇用を予定する外国人・カンボジア人の人数などの情報を入力する。なお、2020年8月14日に発布された「外国人の雇用についての労働省令277号(Prakas concerning Special Conditions on the Employment of Foreign Nationals)」は、本手続きについて各外国人労働者の雇用契約書の提出を求めるなど要件の加重が懸念される文言となっているが、2023年9月時点では実務に変更はない。

    3. 労働許可証の申請

      従業員割当申請が完了した後、労働省の職業・手工芸局に対し、外国人労働者の労働許可証の発行を申請しなければならない(2014年8月20日付「外国人の労働許可証及び雇用カードについての省令」第195号第1条)。
      同申請にあたっては、会社情報、パスポート情報(コピー添付)、ビザ情報(コピー添付)、労働契約および学歴、健康診断証明書、連絡先情報、写真(コピー添付)、居住証明書(ただし入手可能な場合のみ、コピー添付)などを、FWCMSを通じて提出する必要がある。

    4. 申請費用

      従業員割当および労働許可証の申請者は、雇用契約書の登録費用として4万リエル(約10米ドル)、従業員割当について年間20万リエル(約50米ドル)、労働許可証の発行について年間52万リエル(約130米ドル)を支払わなければならない(共同省令2020年3月27日第335号)。なお、システム関連追加費用として30米ドルが定められているが(労働省令第352号第3条)、前記費用に含まれている。さらに、労働医療局において健康診断を行う場合は健康診断費用として10万リエル(約25米ドル)、労働医療局における健康診断に代わり民間の病院の健康診断証明書の認証とする場合、認証料金2万リエル(約5米ドル)を支払わなければならない。

在留許可

外国人労働者がカンボジアに長期滞在するためには、ビジネスビザで入国し、入国後にビザの延長(1回当たり最長1年間)を行うことが必要である。

  1. ビザの種類

    カンボジアに入国する外国人は、何種類かあるビザのうち、通常は観光ビザ(T)またはビジネスビザ(E)を取得する(この他に、外交ビザ、公用ビザ、学生ビザ、求職者ビザ、退職者ビザなどがある)。
    観光ビザとビジネスビザには、1回のみ入国可能なシングルビザと、期間内は何回でも入国できる数次ビザがある。数次ビザの有効期間は、1年間、2年間、3年間の3種類であるが、入国1回当たりの最長滞在可能期間は30日間である。この数次ビザは、短期間の出張を何度も行う場合に向いている。
    他方、業務でカンボジアに長期滞在する外国人は、ビジネスビザ(シングル)で入国し、入国後に入国管理事務所で延長を行うことが必要である。延長期間は、3カ月(シングル)、6カ月(数次)、1年間(数次)である。

  2. ビザの取得方法
    日本人がカンボジアのビザを取得する方法としては、次のような方法がある。
    1. 在日本カンボジア大使館外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますや名誉領事館の窓口で取得
    2. 郵便で取得
    3. オンライン(evisa外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で取得
    4. 到着時にプノンペン・シェムリアップなどの国際空港で取得

    手数料はそれぞれで若干異なる(到着時に取得する場合、観光ビザは30米ドル、ビジネスビザは35米ドル)。数次ビザは在外カンボジア大使館などの窓口で取得できる。その際に必要なものは、パスポート、申請書、写真である。なおカンボジア到着時でも、ほとんど問題なく数次ビザの取得は可能である。

  3. ビザの延長

    ビザの延長は、本人が直接入国管理事務所の窓口に出向かずとも、プノンペンなどの旅行会社に依頼することで可能である。ビジネスビザの延長は近時やや厳格化しており、必要書類は次のとおりである。

    1. パスポート
    2. 雇用主作成の雇用証明書
    3. 雇用主パテント証明書のコピー(2020年11月から)
    4. 外国人労働許可証(2022年10月から)

    d.の外国人労働許可証がない場合は、初回のみ、6カ月を最大として延長することができる。
    また、前提条件として、2020年7月から、延長を申請する外国人は「カンボジア外国人滞在システム」(Foreign Present in Cambodia System: FPCS)に登録されていることが条件となり、この登録がない場合は延長を認めないものとされた(2020年4月27日入国管理総局通達)。FPCSへの登録は当該外国人本人ではなく、滞在する物件の所有者などが行うものであるため、所有者などの協力を受けることが必須となる。

現地人の雇用義務

現地法人、支店、駐在員事務所において、カンボジア人を少なくとも何人採用しなければならないといった法律上の定めはない。

カンボジア人労働者の採用については、制限はない。カンボジア人に当該職務を遂行するのに必要となる資格や専門知識を有する者がいないときには、そうした条件を満たす外国人を雇用することができるとされる(2021年投資法第22条)。
採用人数に関しても、採用対象がカンボジア人であれば、現地法人、支店、駐在員事務所において少なくとも何人採用しなければならないといった法律上の定めはない(労働法では、カンボジア人労働者の雇用が奨励されてはいる)。ただし、カンボジア人従業員がいない場合、従業員割当申請の際に申請が受理されない可能性がある。
外国人とカンボジア人の労働者数の比率に関する規制については、前述の「従業員割当申請(Quota)」を参照。

その他

特になし。