税制
最終更新日:2018年09月28日
法人税
法人税率は、原則として20%。年次申告だけでなく、毎月の月次申告も必要である。
概要
カンボジアの現行税制は、2003年「税法改正に関する法律」によって規定されている。現在、すべての課税事業者は、申告納税制度(実態課税制度)に登録することが義務付けられている(推定課税制度は2015年末に廃止された)。
法人税は、事業所得税(Tax on Income、旧称Tax on Profit)とミニマム税(Minimum Tax)の2つから構成されており、毎年の所得に対する20%、または売上高の1%のうち、いずれか金額の大きい方が要納税額となる。また、毎月の売上高の1%を月次で申告納付しなければならない前払い制度を定めている。12カ月分の前払い総額は、年度末に算出する要納税額から差し引かれるため、最終的には前払い分だけ年度末に納付する税額が少なくなる。一方で、前払い総額が年度末に算出する要納税額を超える場合であっても、還付されることはなく、翌年度以降に繰り越しされる。
年に1回の法人税の年次申告に加え、毎月の月次申告がある。原則として月次申告の期限は翌月の20日、年次申告の期限は決算日後3カ月以内となる。
月次申告の対象となる主な税金は、次のとおり。
- 前払事業所得税(Prepayment of Tax on Income)
- 給与税(Tax on Salary)および付加給付税(Tax on Fringe Benefit)
- 付加価値税(Value Added Tax:VAT)
- 源泉徴収税(Withholding Tax)
また、年次申告の対象となる法人税は、次のとおり。
- 事業所得税(Tax on Income)
- ミニマム税(Minimum Tax)
なお、税務登録をしていない中小零細企業が多いことが問題となっており、税務登録を促進する必要から、2017~2018年に自主的に税務登録を行った中小企業については、事業所得税を2年間免税とする特例を実施中である。
事業所得税(Tax on Income)
- 課税の範囲
法人所得に対して課税する事業所得税は、原則としてすべての事業者が対象となり、申告納税を行う義務がある。
関連規定:
- 税法第4条(納税者の種類)
- 2016年度財政法
外国法人の支店(branch office)についても、カンボジア法人と同様に税務申告の義務がある。
- 居住者と収入の源泉
居住納税者は、世界中のどこで発生した所得であれ、課税の対象とされる。一方、非居住納税者は、所得の源泉がカンボジアにある所得のみに課税が限定される。国外所得に対する納税を現地(日本等)で行っている場合、カンボジアでの申告においては、外国で納付した税金を控除することができる。なお、ここでの居住納税者とは、カンボジアで設立されたか運営されている会社や、カンボジアに事業拠点の住所を持っている納税者を意味する。
個人の場合には、外国人であってもカンボジアに居住地がある場合、または任意の連続する12カ月間のうち累積して182日超カンボジアに滞在した場合は、居住納税者とみなされる。また、非居住者の恒久的施設(Permanent Establishment)でも、カンボジアからの収入がある場合には課税対象となるとされている。関連規定:税法第2条(課税の対象)および第3条(定義)
- 税率
事業所得税の税率は「所得に対して20%」であるが、次の場合は例外的な取り扱いがなされている。
- カンボジア開発協議会(CDC)で適格投資プロジェクト(QIP)の認可を受けた場合、免税期間中は0%
- 石油、ガス、特定の天然資源開発事業は30%
- 財産またはリスクに関する保険または再保険事業は5%(総保険料収入ベース)
なお、個人事業主等については、課税所得に応じた累進税率(0~20%)が、別途規定されている。
また、税務登録をしていない中小零細企業が多いことが問題となっており、税務登録を促進する必要があることから、2017~2018年に自主的に税務登録を行った中小企業については、事業所得税を2年間免税とする特例が実施されている。関連規定:
- 税法第20条(課税額の決定)、第21条(保険会社の所得に対する税)、第22条(その他の所得税)
- 保険会社の税務に関する経済財政省省令第490号(2018年4月30日)
- 自主的に税務登録を行った中小企業に対する免税インセンティブに関する政令第17号(2017年2月7日)
- 前払事業所得税
事業所得税の前払いとは、VATを除くすべての税金を含む毎月の売上高について、1%相当を翌月20日までに申告納付する制度である。前払事業所得税は、年度末に算出する事業所得税の要納税額から差し引かれるため、最終的には前払い分だけ年度末に納付する税額が少なくなる。これは、年に一度の申告納付とすることで徴収未納となることを防止するために設けられた制度でもあり、後述するミニマム税とも関連する。
なお、事業所得税の免除を受けているQIP認可事業者の場合、事業所得税の税率での優遇と併せ、この前払事業所得税も免税期間中は免除される。
また、一定の要件を満たした縫製・製靴業は、QIPの免税期間終了後も2022年までこの前払事業所得税を免除される。関連規定:
- 税法第28条(前払事業所得税)
- 繊維・縫製業の前払事業所得税免除に関する経済財政省省令第1130号(2017年10月27日)
- 免税(Tax holidays)
CDCに登録されて承認されたQIPは、免税の恩恵を受ける。
事業所得税の免税期間は、3~9年間である。関連規定:
- 投資法(Law on Investment)第14条(投資インセンティブ)
- 投資法施行令(Sub-Decree)第14条(一般原則)、第15条(事業所得税)、第16条(関税免除)、第17条(報告の義務)、第18条(履行証明)
免税の恩恵は事業所得税と関税、輸入時VATの一部または全額免除を意味し、その他の税目に関しては毎月の申告納付が必要である。
- 課税所得の計算
カンボジア法人の事業所得税は、会計上の利益±申告調整として計算される課税所得(taxable profit)に対して課税される。
関連規定:税法第7条(課税可能な所得)および第8条(課税可能な所得の決定)
事業所得税の課税対象には、土地などの固定資産を売却することによって得られる資産譲渡損益(capital gain)も含まれる。
- 損金算入・不算入の基準
カンボジアの税法では、会計上の利益をそのまま課税所得として扱うのではなく、一定基準に従い、控除可能な費用の基準を明示している。次のような点は、損金算入の際に注意が必要となる。
- 支給が適切と認められる範囲内で会社の役員に支給した費用は、損金算入される。
- 工場や建物に関連して発生した利息および諸税は、建設や資産の取得をする間に発生した経費の範囲内で資産の建設価額または取得価額に含めることが認められており、他の減価償却資産と同様に減価償却することが認められている。
- 支払利息は、利息控除前調整利益の50%と受取利息との合算額の範囲内でのみ、損金への算入が認められている。また損金算入されなかった超過支払利息額は、次年度に繰り越すことが認められている。
- 有形固定資産への支出額は、資産の種類ごとに定められた償却率と償却方法に応じ、減価償却費として損金算入することが認められている。
有形固定資産への支出に関する減価償却費は、資産の種類によって次のとおり算出される。
- 建物・構築物:5%(定額法)
- コンピュータ、電子情報機器、ソフトウェア等:50%(定率法)
- 乗用車、トラック、オフィス家具・その他備品:25%(定率法)
- その他の有形資産:20%(定率法)
一方、無形固定資産への支出に関する減価償却費は、次のとおり算出される。
- 耐用年数が決定可能な無形資産:資産の耐用年数に基づく定額法
- それ以外の無形資産:10%(定額法)
探査と開発の支出を含む天然資源に関連する支出は、生産量に応じた費用化が認められる。
- 寄付金は、調整後の利益に寄付金を加えた金額の5%を超えない範囲内で、控除が認められている。
- 娯楽、レクリエーションや接待性の支出は、控除対象にできない。
- 税の対象とならない個人的な支出(たとえば自家消費や個人的な資産の購入など)は、損金に算入できない。
- 他人のために支出した税金や納税者の事業所得税は、損金として認められない。
関連規定:税法第11条(損金算入)、第12条(支払利息)、第13条(有形資産の減価償却)、第14条(無形資産の減価償却)、第15条(天然資源の償却)、第16条(寄付)、第19条(損金不算入)
- 特別償却(Special Depreciation)
QIPの場合には、資産を取得した年または取得資産を初めて使用する年に40%を特別償却する制度を選択できる。しかしこの特別償却は、製造などの事業目的に使用する資産のみが対象となり、また事業所得税免税の恩恵を受けないと決めた場合のみ適用される。
関連規定:
- 税法第13条(有形資産の減価償却)
- 投資法第14条(投資インセンティブ)
- 繰越欠損金(Losses carry forward)
納税者の欠損金は、5年間繰り越しができるが、将来の予想赤字を当該年度に適用すること(carry-back)はできない。また関係会社の赤字と関連するような、いわゆる連結納税などの税務調整に関する規定はない。
納税者は、欠損金の繰越を認めさせるために、事業活動の内容の変更や株主の変更を行ってはならない。税務当局からの一方的な追徴課税処分を受けた場合、納税者は翌年度以降、欠損金を繰り越すことができなくなるので注意を要する。関連規定:
- 税法第17条(繰越欠損金)
- 事業所得税に関する省令第1059号(2003年12月12日)第9.5節
- 移転価格税制(Transfer Pricing)
2017年に経済開発協力機構(OECD)移転価格ガイドラインに基づく制度が導入された。関連者間取引のある企業は、移転価格文書(ローカルファイル)を作成し、税務当局から要請があった場合に提出しなければならない。また、事業所得税の年次申告の際には、指定フォームである関連者取引リストを提出する必要がある。
関連者とは、親族および支配関係にある企業を指す。支配関係は20%以上の取締役会議決権もしくは出資持分を保有していることで判定する。
また、関連者間ローンについては、独立企業間金利の適用を求められる。関連規定:
- 関連者の収入および費用の配分に関する経済財政省省令第986号(2017年10月10日)
- 関連者間ローンの金利に関する租税総局通達第11946号(2018年8月21日)
- 申告納付
事業所得税の年次申告は、毎年事業年度終了後、3カ月以内に完了しなければならない。事業年度は通常1~12月だが、特別な場合(外国親会社の決算に合わせる等)には、申請によって別の事業年度(4~3月等)に設定することも可能。前払事業所得税1%は、毎月の月次申告により、翌月20日までに納付しなければならない。
関連規定:税法第29条(一般課税あるいは簡易課税事業者の一般的な義務)、第32条(所得税納税者の義務)、第38条(納付税額の決定または課税年度の税額控除)
申告が遅延した場合の罰金は200万リエル(約500米ドル)であり、未納税金の10%の加算税を追加納付するとともに、延滞税として月ごとの利子2%が別途徴収される。申告納付額がない場合でも、申告は行わなければならない。一定期間申告がない場合には、税務当局の職権により、法人登録を抹消されることもあり得るため、必ず申告をする必要がある。
ミニマム税(Minimum Tax)
- 概要
納税義務者は、事業所得税とは別に、ミニマム税を納付する義務がある。ミニマム税とは、VATを除くすべての税金を含む年間総売上高の1%相当額を納付する税制である。事業所得税とは別に、納税者の利益または損失に関係なく、最低限の税負担を義務付ける制度と言える。
なお、QIPの場合は、免税期間中に事業所得税が免除されるだけでなく、免税期間終了後もミニマム税を免除される。
また2017年より、適切な会計記録を保持する規則に従っている等の条件を満たす特定の納税者については、ミニマム税の納税を免除する制度が導入されている。 - 申告納付
ミニマム税は事業所得税と同様、課税年度終了の日から3カ月以内に納付しなければならない。
関連規定:
- 税法第24条(ミニマム税)、第28条(前払事業所得税)、第38条(納付税額の決定または課税年度の税額控除)、第39条(ミニマム税の決定と課税年度の確定税額または控除の決定)
- 2017年度財政法
- ミニマム税の明確化に関する省令第638号(2017年7月24日)
配当追加税(Additional Tax on Dividend Distribution)
QIPの場合、一定期間の事業所得税は免除されているが、その間に出た課税所得を配当する場合は、次のような基準に従い、配当に関する追加所得税を納付しなければならない。
関連規定:税法第23条(配当追加税)
適用された事業所得税率 | 追加所得税の計算 |
---|---|
0% | 配当額の20% |
20% | 配当額の0% |
30% | 配当額の0% |
二国間租税条約
カンボジアは、二国間の二重課税防止協定(租税条約)締結を始めたところであり、5カ国と調印を完了している。日本との二重課税防止協定は、未締結である。
またカンボジアは、OECDの税務情報交換フォーラムにも2017年9月に加盟し、国際的な税の透明性向上、国際的な租税回避行為の防止等への取り組みも開始した。
カンボジアは、シンガポール、中国、ブルネイ、タイ、ベトナムの5カ国との間で、二重課税防止協定を締結済みであるが、日本とは現時点では未締結である。5カ国のうち、シンガポールおよびタイとの協定は既に発効している。
2017年9月5日、カンボジアは、OECDが主導する「税の透明性及び税務目的の情報交換に関するグローバル・フォーラム」に加盟した。このフォーラムは、国際的な税の透明性向上、国際的な租税回避行為の防止等に取り組むための国際的な組織である。このフォーラムに参加したことにより、要請に基づく情報交換(EOIR)と自動的な情報交換(AEOI)、およびそのための共通報告基準(CRS)等に関する国際基準について、カンボジアもその導入を進めていくこととなり、国際的な課税逃れを防止するための規制を今後順次厳格化していくこととなる。
その他税制
月次申告では、源泉徴収税、給与税、付加価値税についても申告する必要がある。
源泉徴収税(Withholding Tax)
サービス等の提供を受けた場合、そのサービスの内容と支払先に応じ、サービス等の提供を受けた対価を支払う者は源泉徴収税を徴収する義務がある。源泉徴収税は、毎月の月次申告により、翌月20日までに対価を支払う者が納付する。
関連規定:
- 税法第25条(源泉徴収税の基本原則) 、第26条(外国人に支払った金額に対する源泉徴収)、第27条(源泉税として納税義務が終結された場合)、第31条(源泉徴収代理人の義務)、第34条(国外源泉所得)、第35条(源泉の決定)、第36条(外国納付税額控除)、第37条(所得税の金額の決定)
- 不動産業の源泉徴収税に関する租税総局令第18410号(2016年11月3日)
- 2017年度財政法
分類 | 税率 |
---|---|
サービス料(登録納税者への支払いで有効なタックス・インボイスがある場合を除く) | 15% |
ロイヤルティー | 15% |
利息(国内の銀行・金融機関に対するものを除く) | 15% |
動産、不動産の賃貸料(一定の不動産サブリースに関するものを除く) | 10% |
国内銀行からの利息(定期預金) | 6% |
国内銀行からの利息(定期預金以外) | 4% |
非居住者に対する支払いについては、以下を含むカンボジア源泉所得に係る支払いについて、源泉徴収税を徴収する義務がある。
分類 | 税率 |
---|---|
利息 | 14% |
配当金 | 14% |
カンボジアで行われたサービスによる収益 | 14% |
経営サービスおよび技術サービスの対価 | 14% |
カンボジアにある動産および不動産からの収益 | 14% |
ロイヤルティー | 14% |
不動産売却益 | 14% |
リスクに関する保険料 | 14% |
カンボジアにおける恒久的施設の事業資産の一部である動産の売却益 | 14% |
恒久的施設を通して非居住者によって行われた事業活動による収入 | 14% |
付加価値税(Value Added Tax:VAT)
- 概要
日本の消費税制度と同様、カンボジアには付加価値税の間接税制度がある。カンボジアの付加価値税制度の下では、売上高に対する付加価値税(Output VAT)は、顧客に請求する金額に付加価値税を加算して顧客から受け取るものであり、仕入高に対する付加価値税(Input VAT)は、仕入業者・納入業者から購入をするときに事業者が支払う付加価値税を意味する。事業者は、Output VATからInput VATを差し引いた残額を、税務当局に納付する。Input VATがOutput VATを超過する場合には、3カ月以上繰り越した上で、税務当局に付加価値税の還付を申請することができるが、還付の実現までには長期間を要する場合もある。なお、一定の輸出事業者は、3カ月以上繰り越すことを待たずして還付請求することも可能である。
関連規定:税法第55条(付加価値税の負担)、第56条(定義)、第66条(税の決定)、第71条(繰越超過の処理)、第72条(輸出事業者への還付)、第73条(3カ月以上繰越超過が続く場合の還付)
- 適用範囲
次の項目については、付加価値税は課せられない。
- 土地の売買
- 貨幣の供給
- 公共郵便サービス
- 病院、医院、医療業、歯科などの営業、および治療に関連した医薬品等の販売
- 国営の旅客専用公共運輸事業
- 保険事業
- 主要金融サービス(primary financial services)
- 関税が免除される個人使用目的の輸入
- 経済財政省が認めた非営利目的の公共事業
- 教育サービス
- 電気、水道
- 未加工農産品
- 廃棄物収集および清掃
関連規定:
- 税法第57条(非課税供給物品)、第58条(外交機関や国際機関の非課税供給)
- 非課税供給に係るVATに関する経済財政省省令第559号(2017年5月25日)
- 主要金融サービスに係るVATの実施遅延に関する租税総局告示第11278号(2017年7月6日)
- 税率
付加価値税の税率は、標準の場合で10%となっており、通常の物品販売、サービスの提供および輸入に対して適用される。
カンボジアから輸出される商品や国外でのサービスには付加価値税0%が適用される。これには乗客・物品・サービスに係る国際輸送も含まれる。輸出指向型の縫製・繊維・製靴産業へ財やサービスを提供する裾野産業や下請け業者にも、付加価値税0%が適用される。関連規定:税法第64条(税率)
給与税(Tax on Salary)
- 概要
カンボジアの給与税は、国際的に採用されている居住地の概念と所得源泉の原則に従っている。カンボジアの居住者は、国内外から獲得するすべての所得に対してカンボジアの給与税が適用されるのに対し、非居住者は、カンボジア源泉の所得に対してのみカンボジアの給与税が適用される。
- 居住者・非居住者の扱い
カンボジアの居住納税者には、次のような自然人が含まれる。
- カンボジアに住所がある場合
- カンボジアに主要居住地を持っている場合
- 任意の連続する12カ月間のうち、カンボジアにおける累積滞在日数が182日超に達する場合
a.~c.のいずれにも該当しない場合は、非居住者として取り扱われる。
関連規定:税法第42条(定義)
- 課税対象所得
給与等だけでなく、付加給付(Fringe Benefit)も給与税の課税対象となる。
- 給与等
- 給料・賃金
- ボーナス・賞与・一時金
- 時間外勤務手当・その他諸手当
- 補償金
- 雇用者が提供した貸付金および前払金など(返還した際に控除される)
- 付加給付
- 乗用自動車等の個人的な目的で使用する場合の車両費など
- 住居または宿泊支援費(水道光熱費と家政婦費用を含む)
- 低利の貸付金および割引販売
- 教育費の支援(ただし、仕事に直接関連する費用は除く)
- 特定の従業員等に対する保険料の負担
- 過度または不必要な現金支給、一定額を越える社会保険料・年金掛け金
- 接待性や娯楽性のある支給
- 給与税の免税
給与税が免除となる支給内容は、次のとおり。- 業務費用の精算
- 解雇補償金
- ユニフォームの支給
- 定額出張費の支給
関連規定:税法第41条(課税対象)、第44条(給与税の免除)、第46条(月間課税対象給与)
- 給与等
- 所得控除
専業主婦(主夫)となっている配偶者もしくは一定年齢の子供がいる場合は、扶養家族1人当たり15万リエル(約37.5米ドル)の所得控除がある。
関連規定:
- 税法第46条(月間課税対象給与)
- 新たな給与税率に関する経済財政省・租税総局通達第017号(2016年12月27日)
- 税率
給与税の税率には、居住者の給与等に対するもの、非居住者の給与等に対するもの、付加給付に対するものの3種類がある。居住者の給与等に係る税率は累進税率が採用されており、最低賃金の上昇に合わせて、課税対象最低額などがほぼ毎年改定されている。
非居住者給与および付加給付に係る税率は20%である。関連規定:
- 税法第47条(従業員の給与税の決定)、第48条(福利厚生、給与支払の税の決定)
- 新たな給与税率に関する経済財政省・租税総局告示第002号(2018年1月15日)
居住者給与の税率表(2018年1月より) 給与金額(リエル) 給与金額(米ドル概算)
※1米ドル=4,000リエルとして計算税率 0~1,200,000 0~300 0% 1,200,001~2,000,000 300~500 5% 2,000,001~8,500,000 500~2,125 10% 8,500,001~12,500,000 2,125~3,125 15% 12,500,001以上 3,125超 20%
その他の税
主要なその他の税目は、次のとおり。
- 宿泊税(Accommodation Tax)
宿泊費の2%。 - 不動産賃貸税(Tax on Property Rental)
土地、建物、特定の機器や倉庫設備を個人が賃貸して収入を得る場合は、関連総賃貸収入の10%。 - 事業登録税(Patent Tax)
会社規模に応じて、毎年約100米ドル~約1,250米ドル。事業内容や地域ごとに課される。 - 遊休土地税(Tax on Unused Land)
都心部や特定の地域にある土地に建築物がない、または使用していない建築物がある場合等に、課税対象となる。税率は、毎年6月30日に未開発土地評価委員会が決定した土地評価額の2%。 - 資産譲渡税(Registration Tax、またはStamp Duty)
土地や車などの資産を移転する場合は、資産価値の4%。株式を譲渡する場合は、株式価値の0.1%。 - 自動車税(Tax on Means of Transportation)
自動車、トラック、バス、船舶などの輸送手段について毎年課せられる。 - 固定資産税(Property Tax、またはTax on Immovable Property)
農地等を除く、評価額1億リエル以上の不動産が対象。不動産評価委員会評価額の0.1%。 - 特定商品・サービス税(Specific Tax on Certain Merchandises and Services)
ビール、たばこ、ガソリン、自動車等の、特定の財・サービスに課税される特別税。税率は、品目によって異なる。 - 関税
輸出入に関して課税される税。税率は品目によって異なる。ASEAN域内ではASEAN物品貿易協定(ATIGA)により、また日本との間では日ASEAN包括的経済連携(AJCEP)により、税率の引き下げが進んでいる。