特集:半導体グローバルサプライチェーンはどう変わる?米中対立の狭間に立つ韓国半導体産業の現状と戦略
韓国政府、サムスン電子、SKハイニックスの半導体戦略とは

2024年1月11日

世界の半導体市場は2015年以降、増加傾向にある。2022年半ばごろに需要にブレーキがかかっていたものの、2023年後半からは緩やかな業績回復が見られ、世界の主要半導体メーカーは先端半導体の製造工場の新増設のための設備投資を行っている。このような中、米国調査会社のガートナーによる2022年の世界半導体売上高ランキングをみると、1位は韓国サムスン電子、2位は米国インテル、3位は韓国SKハイニックスと、上位3位のうち韓国企業2社がランクインしている。このように世界半導体市場で多大な影響力を持つ韓国半導体企業は、輸出の対中国依存、米国の対中国輸出管理による中国での生産の制約といった問題を抱えている。本稿では、韓国の半導体市場の現状を紹介し、半導体における米中対立の狭間にいる韓国の立ち位置を考察する。さらに、韓国政府の半導体政策・韓国企業の半導体戦略についてレポートする。

韓国の半導体産業の現状および中国への依存度

大韓貿易投資振興公社(KOTRA)内に設立された国家投資誘致機関のインベスト・コリア(Invest KOREA)によると、2022年の世界の半導体市場(6,040億ドル)における韓国企業のシェアは17.7%で、2013年以降10年間、世界2位を維持してきた。半導体の種類別にみると、韓国企業はメモリ半導体全体の60.5%を占め、うちDRAMは70.5%、NAND型フラッシュメモリは52.6%を占めた。同機関は、韓国企業はメモリ半導体において世界水準の先端の微細加工技術などを有しており、競争優位性を維持し続けるために、持続的な研究開発と投資を行っていると述べた。また、台湾の調査会社トレンドフォースが2023年12月4日に発表した内容によると、2023年第3四半期時点の世界のメモリ半導体市場における韓国企業のシェアは、DRAMが73.2%、NAND型フラッシュメモリは51.6%と、好調さを維持している(売上高ベース)。韓国の半導体業界を牽引しているのは、サムスン電子とSKハイニックスだ。DRAMではサムスン電子が1位、SKハイニックスが2位、NAND型フラッシュメモリではサムスン電子が1位、SKグループ(SKハイニックス、SKハイニックスの子会社ソリダイム)が2位となっている(図参照)。

図:2023年第3四半期メモリ半導体世界シェア率(売上高ベース)

DRAM
サムスン電子(韓国)38.9%、SKハイニックス(韓国)34.3%、マイクロンテクノロジー(米国)22.8%、その他3.9%。
NAND型フラッシュメモリ
サムスン電子(韓国)31.4%、SKグループ(SKハイニックス・ソリダイム)(韓国)20.2%、ウエスタン・デジタル(米国)16.9%、キオクシア(日本)14.5%、マイクロン・テクノロジー(米国)12.5%、その他4.6%。

出所:台湾の調査会社トレンドフォースの発表を基にジェトロ作成

韓国が半導体産業に強みを持つ理由として、サムスン電子やSKハイニックスといった大手半導体企業が、メモリ半導体製造に注力したことが挙げられる。メモリ半導体は、複雑な計算や工程を要するCPU(中央処理装置)に比べて、比較的容易に設計することができる。韓国企業は、巨額の設備投資を実施し、メモリ半導体の生産能力を拡大し、技術開発を行っている。NAND型フラッシュメモリにおいては、米国アップルがサムスン電子の技術力を採用するなど、韓国のメモリ半導体は世界シェアで存在感を見せている。

半導体は、輸出においても主要品目として大きな地位を占める。2022年の韓国の輸出総額は前年比6.1%増の6,836億ドルと過去最高を記録したが、そのうち半導体の輸出額は過去最高の1,292億ドル、輸出総額に占める割合は19%となった。国別でみると、中国が輸出先としてカギを握る。2022年の対中国半導体輸出は521億ドルで、半導体輸出全体の40%を占めた。

生産面において、サムスン電子とSKハイニックスは、中国で大規模な投資を行っている。サムスン電子は陝西省西安市の工場に33兆ウォン(約3兆3,000億円、1ウォン=約0.1円)を投資しており、江蘇省蘇州市には半導体後工程工場を有している。SKハイニックスは、江蘇省無錫市と遼寧省大連市の工場に35兆ウォン以上を投資し、重慶市では2億5,000万ドルで半導体後工程の生産拠点を有している。その結果、サムスン電子はNAND型フラッシュメモリの40%、SKハイニックスはDRAMの40%とNAND型フラッシュメモリの20%をそれぞれの中国工場で製造している。

前述したように、韓国企業にとって、中国市場は世界の半導体市場でのシェアを堅持するために必要不可欠だ。しかし、米中対立による米国の対中半導体輸出規制などで、韓国の半導体業界は少なからず影響を受けている。

米中対立に影響される韓国半導体企業、サムスン電子・SKハイニックス

米中対立は激化している。半導体分野においても、米国は中国に対する輸出や投資の規制を強化し、中国も戦略物資の輸出管理を強化するなど、貿易・投資分野での対立が鮮明になっている。米中対立によって、韓国の大手半導体企業が運営する中国工場にどのような影響があるのだろうか。

2023年9月に米国商務省は、「CHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法)に基づく半導体産業向けの資金支援プログラムについて、受益者が順守すべき安全保障上のガードレール条項に関する最終規則」を発表した。CHIPSプラス法では、米国内で半導体製造を行う施設・設備などに投資する企業に対して、補助金を支給する枠組みが設けられている。同時に、補助金を受領した企業に対し、中国などでの半導体の製造能力拡大を制限するガードレール条項が設けられている。同条項の適用により、米国でファウンドリー工場を建設中のサムスン電子は、中国の生産拠点において先端半導体は5%以上、28ナノメートル(nm)のロジック半導体は10%以上の生産能力拡大を図る場合、米国政府から受けた補助金を返還しなければならない。また、2023年11月21日時点で工場用地を選定中とされるSKハイニックスが今後、米国での工場建設に踏み切り、補助金受給を申請した場合も同様だ。

また、米国商務省産業安全保障局(BIS)は2022年10月に、中国を念頭にした「半導体関連製品(物品・技術・ソフトウェア)の輸出管理規則(EAR)を強化する暫定最終規則(IFR)」(以下、対中国半導体輸出管理、注1)を発表したが(2022年10月11日付ビジネス短信参照)、それから1年が経った2023年10月、バイデン政権は中国向けの同輸出規制を強化する措置を発表し、中国市場で販売する先端半導体の規制対象を拡大した。中国と関係が近いとされる約45の国や世界各地の中国企業子会社を規制対象とし、第三国経由の迂回ルートを取り締まる狙いだ。しかし、米国は同措置において、サムスン電子やSKハイニックスについて例外措置を承認した。既にEAR上の「認定エンドユーザー(VEU、注2)」に認定されているサムスン電子とSKハイニックスの中国拠点向けの製品については、極端紫外線(EUV)露光装置など限られた主要製品を除くほぼ全てのEAR対象製品に対して包括的な許可を与え、個別の許可申請は不要というかたちでEARの一部を改定した。同措置の施行によって、引き続き米国政府の審査を受けずに、中国の半導体製造工場向けに米国産の製造装置を輸出することができることになった。

米国政府の一連の措置の影響について、筆者は政府系シンクタンクの産業研究院(KIET)の研究者にヒアリングした。同研究者は、米中対立により韓国企業が岐路に立たされているという見方(2023年1月24日付地域・分析レポート参照)は変化してきていると強調した。「韓国企業は世界の半導体メモリ市場の60~70%のシェアを持っている。半導体は、対中輸出の割合が高いが、国別エンドユーザーでみると、中国が3割、米国が同じく3割、EUが2割を占めている。ゆえに、米国は韓国企業の生産活動を阻害することはできない。もし、阻害すれば、米国のエンドユーザーに影響が及ぼう」と述べた(2023年7月時点)。ただし、これは短期的な影響についての見方であり、中長期的には影響が及ぶ可能性があろう。同じく政府系シンクタンクの対外経済政策研究院(KIEP)が2023年11月6日に発表した「米国半導体輸出統制拡大措置の影響と示唆点」によると、同措置は韓国半導体企業の中国での生産活動に大きな影響を及ぼすものではないものの、半導体製造装置や人工知能(AI)半導体分野における中国の国産化の進展は、韓国企業の脅威になり得るとしている。実際に、中国大手半導体製造装置のNAURA(北方華創科技集団)などがエッチング、ウェーハ工程の技術力を高め、競争優位性を確立しつつある。このような中国の半導体製造装置の国産化に対し、韓国政府および半導体企業は、今後の動向を注視し、何らかの対策を施す必要があるだろう。

韓国政府の半導体政策の動向‐尹政権は国産化と脱中国依存政策に注力‐

前述を踏まえて、韓国政府が対外・対内向けにどのような半導体政策を行っているのか、文在寅(ムン・ジェイン)前政権から尹錫悦(ユン・ソンニョル)現政権までの取り組みを振り返ってみよう。

文政権は2019年8月に、「対外依存型産業構造脱皮のための素材・部品・装備競争力強化対策-素材・部品・装備供給安定および自立化対策-」を発表し、半導体・ディスプレーの材料や二次電池核心素材など20品目を集中的に育成する方針を示した(2023年11月15日付地域・分析レポート参照)。その後、2020年7月に、同対策を補完した「先端産業世界工場跳躍のための素材・部品・装備2.0戦略」を発表し、米中対立といった国際情勢などの変化への対応を試みた。また、2021年5月に「K-半導体戦略」を掲げ、2030年までに世界最高峰の半導体サプライチェーンを構築するとし、インフラへの投資、人的・市場・技術などの半導体成長基盤を強化するとした。さらに、京畿道龍仁市に120兆ウォンを投資し、半導体製造装置および部品に特化した世界最大規模の工業団地を2042年までに建設すると発表した。

2022年3月に行われた大統領選挙で、保守系「国民の力」の尹錫悦候補が、革新系「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)候補を破り、政権交代が行われた。

尹政権は新たな半導体政策をいくつも発表しているが、そのうち、特に重要なのが「半導体超強大国達成戦略」と「国家先端産業育成戦略」であろう。

産業通商資源部は、2022年7月に「半導体超強大国達成戦略」を発表した。半導体産業は、尹政権の経済政策の基本方針を示した「新政権の経済政策方向」で、国家戦略産業として成長を支援するとされている(2022年8月1日付ビジネス短信参照)。同戦略は、「強固な経営基盤を持った企業と優秀な人材が牽引する半導体超強大国の実現」をビジョンとし、以下の4つの取り組みを掲げた。(1)半導体企業への支援のため5年間で340兆ウォン以上の投資を行う、(2)官民一体となって10年間で15万人以上の半導体専門人材を育成する、(3)システム半導体の先端技術の開発を行い、技術競争力を高め、2030年までに世界システム半導体市場シェアの10%を担う、(4)素材、部品、製造装置の強固な基盤を構築し、2030年までに国内調達比率を50%にする。(2)で記載されているように、韓国政府は、質の高い半導体専門人材の確保を重要視している。同月には、教育部が「半導体関連人材育成方案」を発表し、2026年までにデジタル人材100万人、半導体の専門人材15万人を育成するとした。具体的には、半導体分野で優秀な研究成果を上げている大学や大学院を「半導体特化大学」に指定し、政府が破格の財政支援を行うとした。同方案に沿って、2023年6月には12の大学が「半導体特化大学」として指定された。詳細は次のとおり(表参照)。

表:半導体特化大学(2023年6月時点)
地域 形態 大学名 特化分野 人材育成方式
首都圏 単独型
(45億ウォン)
ソウル大学 回路/システム、半導体素子/工程 半導体トラック、先端融合学部半導体専攻の新設
成均館大学 次世代半導体 半導体トラック、融合専攻、
半導体融合工学科の新設
パートナー
シップ型
(70億ウォン)
明知大学、湖西大学 素材/部品/製造装置、パッケージング 半導体工学科共通教育課程
非首都圏
(地方)
単独型
(70億ウォン)
慶北大学 回路/システム、半導体素子/工程、
素材/部品/製造装置
半導体トラック、半導体特化
融合専攻の新設
高麗大学(世宗) 先端半導体工程整備、 半導体融合専攻、半導体工学
専攻の新設
釜山大学 パワー半導体 半導体融合専攻、半導体工学
専攻の新設
パートナー
シップ型
(85億ウォン)
全北大学、全南大学 次世代モビリティ半導体 半導体融合専攻の新設
忠北大学、忠南大学、韓国技術教育大学 システム半導体、ファウンドリー 半導体共同融合専攻、半導体
特化トラックの運用

出所:韓国教育部の発表を基にジェトロ作成

2022年8月には、「国家先端戦略産業競争力強化および保護に関する特別措置法(半導体特別法)」を施行した。同法は、国家先端戦略産業の革新サプライチェーンの造成と技術力の強化を通じて、産業の持続可能な成長基盤を構築することにより、国家・経済安全保障と国民経済の発展に資することを目的として制定された。具体的には、「国家先端戦略技術」指定による輸出承認などを行うほか、「戦略産業特化団地」や戦略産業専門人材を育成するための「特化大学」整備による国内の重要技術の保護を図る。

2023年3月には、韓国政府は「国家先端産業育成戦略」を発表した。同戦略では、最先端研究設備を備えた韓国版IMEC(ベルギーの半導体研究機関)の建設、AIなど12大国家戦略技術R&D(研究開発)に5年間で総額25兆ウォンを投入するとしている。そのほか、国家先端戦略産業特化団地の新規指定により、地方でも半導体など先端産業が成長できる基盤を造成すること、世界最大の半導体クラスターを構築するために民間企業に24兆ウォンを投資することなどを挙げている。また、同月に、韓国政府は「国家先端産業ベルト造成計画」を発表した。半導体、ディスプレー、二次電池、バイオ、次世代自動車、ロボットの6大先端産業に、2026年までに550兆ウォン規模の民間主導投資を誘導するという戦略で、半導体には340兆ウォン割り当てられている。2023年6月には、「第1次国家先端戦略産業育成基本計画」を発表し、半導体の支援をより強化するとしている。2023年12月には、産業通商資源部が「グローバル技術協力総合戦略」を発表し、2024年から、韓国国内での単独開発を困難としていた80の超格差技術と、100の産業基礎技術の研究を、国内外の研究機関と共同で迅速に拡大するとした。100の産業基礎技術には半導体が含まれており、国内に「産業技術協力センター」を建設するとともに、2028年までに同戦略に6,870億ウォンを投資するとしている。

上述したように尹政権は、半導体産業において国内での技術力強化および国産化を推進していくとともに、前政権とは異なり、政府主導ではなく、民間主導に転換している。半導体産業に対する規制緩和などを行い、積極的に民間企業が投資できるような基盤を造成し、政権の財政健全化を目指している。まさに市場原理主義的政策といえよう。このように国内の産業競争力を高め、欧米など海外の半導体強国との協力基盤強化に努めることで、脱中国依存を図っている。

韓国大手半導体企業は国内生産拡大に注力

このような政府方案・戦略を受けて、韓国の半導体企業はいかなる事業戦略を立てているのだろうか。以下では、韓国国内の生産計画を中心に、サムスン電子とSKハイニックスの事業戦略を紹介する。

サムスン電子は、中国の陝西省西安市と京畿道華城市の17ラインに次いで、ソウルから約80キロ離れた京畿道平沢市に世界最大規模の半導体工場を建設し、国内での生産拡大に取り組んできた。さらに、「国家先端産業育成戦略」「国家先端産業ベルト造成計画」に沿って、2042年までの20年間に300兆ウォン(年平均15兆ウォン)を投資し、次世代半導体製造工場5カ所などの生産施設を京畿道龍仁市に新たに建設する、と2023年3月に発表した。また、同月に「半導体市場の不況下における突破戦略」を発表している。具体的には、メモリ半導体で圧倒的に技術力を高め、顧客に沿った解決策の提示を徹底し、同市場を牽引すると強調した。特にAIを搭載した自動運転車の製造などで、他社との差別化を図るとしている。同年7月には、AI半導体の生態系強化のために「国内半導体生態系強化に向けたファウンドリー戦略」を発表した。AI、高性能コンピューティング、モバイル製品の設計に活用できる先端4nm半導体製造などで活用するMPWサービス(注3)の国内顧客の利用を拡大するとしている。同社の半導体事業は、世界的なメモリ半導体市況の悪化により、直近の2023年第3四半期(7~9月期)は営業赤字を記録しているものの、超高速DRAM「HBM」や「DDR5」などの高付加価値製品の販売拡大と一部製品の販売価格上昇により、前期に比べ赤字額が縮小している。ファウンドリーは、高性能コンピューティングを中心に同年同期において四半期ベースで過去最大の受注を達成している。

SKハイニックスは、半導体成長基盤の確保のため、2022年9月に忠清北道清州市の既存の「M15」工場棟を拡張すると発表した。以降5年間で15兆ウォンを投じて半導体メモリを増産するという。清州工場はNAND型フラッシュメモリの主力工場で、2025年をめどに拡張部分でNAND型フラッシュメモリを量産するとしている。同社は、DRAM、NAND型フラッシュメモリを中心に「HBM」に力を注いでいる。サムスン電子とは異なり、ファウンドリーよりも既存のメモリ半導体生産技術の強化を図っている。さらに、「M17」新工場計画については、半導体市場の景況感や自社の経営状況などを踏まえて、着工時期を決定する見通しだ。同社の半導体メモリ工場は国内の利川工場と清州工場のほか、中国に2カ所あり、先述した米中対立により中国での先端投資が難しくなる中で、中長期的に国内での生産能力拡張を模索していることがうかがえる。また、韓国国内の半導体投資のほかに海外企業への出資にも注力している。グローバル半導体サプライチェーンを構築し、技術競争力を強化するために、投資部門SKスクエアなどと投資法人「TGCスクエア」を設立し、技術力を保持している日本や米国など海外半導体素材・部品・装備企業に1,000億ウォン規模の出資を行うと発表している。

今後の韓国半導体産業への課題提起

世界の半導体市場で韓国半導体産業は、サムスン電子とSKハイニックスを筆頭に世界2位を維持し続け、メモリ半導体で世界シェアの6割を占めているが、2社とも中国で大規模工場を建設・買収するなど、中国依存度が高くなっている。しかし、米中対立に伴う対中国半導体輸出管理の影響を韓国半導体企業も少なからず影響を受けている。現在は例外措置が適応されているため、大きな痛手はないが、半導体製造装置やAI半導体分野における中国の国産化が進み、韓国企業の脅威となりえる。ゆえに、韓国政府や大手半導体企業は、国内への技術投資および国産化の推進、米国や諸外国の半導体企業との協力基盤造成など、脱中国依存につながる取り組みを積極的に行っている。今後の課題として、引き続き半導体輸出において中国市場への依存からの脱却、国内専門人材および技術・設備への投資、米国もしくは第三国での新たな生産拠点の拡充、システム半導体といった非メモリ半導体の競争力強化に向けた取り組みを行うことなどが挙げられる。


注1:
条項には、AI(人工知能)などに使われ、大量破壊兵器の開発や最新の軍事システムなどにも使用可能な先端半導体とその製造装置について中国へ輸出規制を行った、と記載されている。
注2:
民生用途に関連した活動のみを行っており、米国商務省が国家安全保障上の利益を阻害する恐れがないと認定したエンドユーザー。EARで指定した品目をVEU向けに輸出などする場合には、個別の許可を取得せず行うことができる。2023年10月13日、BISはサムスン電子、SKハイニックスをVEUとして承認した。
注3:
多品種少量生産のためのファウンドリー形態で、1枚のウェーハに異なる種類の半導体製品を配置し、同時に製造する方式。
執筆者紹介
ジェトロ調査部中国北アジア課
益森 有祐実(ますもり あゆみ)
2022年、ジェトロ入構。中国北アジア課で中国、韓国関係の調査を担当。