特集:変わりゆく世界の勤務環境―アフターコロナを見据えた働き方とは日系企業はオフィス部門を中心に新型コロナ収束後もリモートワークが定着(メキシコ)
雇用主の義務や労働安全規格など法整備も進む

2022年9月8日

新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から多くの企業が導入したリモートワークは、非製造業などのオフィス部門を中心に、メキシコでも定着傾向にある。大手求人サイトに掲載された2022年7月中旬の求人のうち、14%が完全リモートワーク、もしくは一部リモートワークを認める求人だった。進出日系企業でも、オフィス部門を中心にリモートワークの採用が進んでいる。同年6月末に実施した進出日系企業向けのアンケート調査によると、約4割がテレワークを採用しており、また、新型コロナ収束後も何らかのかたちでリモートワークの実施を想定している。

メキシコ政府は2021年1月11日付官報で連邦労働法(LFT)の改正を公布し、テレワークの定義や条件、雇用主の義務などを法制化した。2022年7月15日には、労働社会保障省(STPS)がテレワークに関する労働安全規格の公式規格の草案(PROY-NOM-037-STPS)を官報公示するなど、関連法整備も進みつつある。

リモートワーク導入が優秀な人材確保の一手段に

メキシコの大手求人ポータルサイトOCCムンディアル(スペイン語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます によると、メキシコ全国で7月16~22日に同サイトを通じて募集された9万5,392人の求人のうち、86%が事業所で働く求人、5%がリモートワークの求人、9%が事業所とリモートワークのハイブリッドの求人となっている。メキシコでは5月以降に新型コロナ感染第5波が到来しており、首都メキシコ市を中心に7月には再びリモートワークの需要が高まったが、感染が落ち着いていた4月上旬の7日間(1~7日)のデータをみても、4%が完全リモートワーク、10%が一部リモートワークと7月中旬と大差ない。双方とも全体の14%が何らかのかたちでリモートワークを取り入れた求人となっており、リモートワーク導入がある程度定着してきた感がみられる。

OCCムンディアルが4月上旬に、企業で働く労働者に実施したアンケート調査によると、55%が新型コロナ収束後もハイブリッドや完全リモートワークなどの就労形態を現在の職場が導入しない場合、他に仕事が見つかることを条件に、現在の職場を退職すると回答している。24%は現状で他の仕事を見つけるのは困難と認めるが、リモートワークを導入している企業に機会があれば転職したいと回答しており、残りの21%は現在の職場で働き続けるとしている。同じアンケート調査で、フレキシブルな就業時間の設定やリモートワーク導入など就労環境が改善された場合、逆に今の職場に残るかという質問に対し、61%がそれらの就労環境の改善があれば残ると回答、31%がそれだけでは不十分で、自身のキャリアアップや能力向上につながる研修プログラムなどが必要と回答、残りの3%はそれだけでは全く不十分で、給与や福利厚生自体の改善が不可欠と回答している。企業にとっては、リモートワークの導入も優秀な人材の引きとめに必要な要素になりつつあることがうかがえる。

ポストコロナでも進出日系企業の4割、リモートワーク継続視野に

ジェトロ・メキシコ事務所が6月末にメキシコ日本商工会議所と共同で進出日系企業に行ったアンケートによると、回答した184社のうち60.9%(112社)の企業が「従業員が毎日出勤しての操業を実施している」とした一方、35.3%(65社)が通勤とリモートワークを並行実施、7社(3.8%)は原則としてリモートワークのみで操業していると回答した(図1)。新型コロナ感染症拡大前の出勤率100%に戻している企業が全体の6割強を占めたが、同設問について非製造業(95社)のみに絞ってみると、その割合は41.1%まで低下する。非製造業では、通勤とリモートワークを並行実施している割合が51.6%と過半を占める。また、全従業員のうちどれくらいを事業所に出勤させているかを示す出勤率を問う設問では、製造業のオフィス部門の出勤率については「100%出勤」が70.5%を占めるが、非製造業では39.8%にとどまる。非製造業のオフィス部門の出勤率の内訳をみてみると、「100%出勤」が最も多い(39.8%)が、次に多いのは「50%出勤」18.2%、「60%出勤」12.5%と続き、「80%出勤」6.8%となっている(図2)。

図1:メキシコ進出日系企業の操業状況
回答企業(184社)全体では、(新型コロナ前と同様に)労働者の毎日の出勤による操業を実施(ただし感染時の自宅待機は行う)が60.9%、事業所(工場・オフィス)における労働者の通勤を伴う操業とテレワークを平行実施が35.3%、原則テレワークのみ(代表者1名のみが出社などを含む)が3.8%。製造業(在メキシコ現地法人・支店が製造を行っている企業)89社の回答率は、(新型コロナ前と同様に)労働者の毎日の出勤による操業を実施(ただし感染時の自宅待機は行う)が82.0%、事業所(工場・オフィス)における労働者の通勤を伴う操業とテレワークを平行実施が18.0%。非製造業(メキシコで製造を行っていない企業)95社の回答率は、(新型コロナ前と同様に)労働者の毎日の出勤による操業を実施(ただし感染時の自宅待機は行う)が41.1%、事業所(工場・オフィス)における労働者の通勤を伴う操業とテレワークを平行実施が51.6%、原則テレワークのみ(代表者1名のみが出社などを含む)が7.4%。

出所:メキシコ日本商工会議所、ジェトロ・メキシコ「第12回新型コロナウイルス感染症対策に関するアンケート調査結果」

図2:出勤率(オフィス部門)
全体(176社)では、20%が2.8%、30%が2.8%、40%が2.8%、50%が11.4%、60%が7.4%、70%が4.5%、80%が5.1%、90%が8.0%、100%が55.1%。製造業(88社)では、20%が2.3%、30%が1.1%、40%が2.3%、50%が4.5%、60%が2.3%、70%が3.4%、80%が3.4%、90%が10.2%、100%が70.5%。非製造業(88社)では、20%が3.4%、30%が4.5%、40%が3.4%、50%が18.2%、60%が12.5%、70%が5.7%、80%が6.8%、90%が5.7%、100%が39.8%。

出所:メキシコ日本商工会議所、ジェトロ・メキシコ「第12回新型コロナウイルス感染症対策に関するアンケート調査結果」

同アンケートの実施時期は新型コロナ感染拡大の第5波のただ中だったが、ビジネス上の会食や外国出張については(図3)、進出日系企業内の自主規制が2021年調査時と比較して大きく緩和され、ほとんどの企業で再開している状況が同アンケートからうかがえる。一方で、主に非製造業部門の事業所出勤の再開は出張などの企業活動の再開と比較してやや鈍い回復となっていることから、「感染予防」目的以外の観点からもリモートワークが実施されている可能性があるとも考えられる。実際に、新型コロナ感染の第5波が収束し、重症化傾向が低い変異株によるわずかな感染が継続する状態になった場合に想定する勤務体制を問う設問でも、全体の40.1%が何らかのかたちでリモートワークの実施を見込んでいる。非製造業では、その割合は56.9%に達し、半数以上の企業がリモートワークを恒常的に取り入れることを想定している。

非製造業で想定されるリモートワークの実施形態をみてみると、「主に事業所に出勤し、リモートワークも一部実施」が21.1%、「事業所への出勤とリモートワークを同程度の割合で実施」が18.9%、「主にリモートワークとし、事業所への出勤も一部実施」が9.5%、「従業員の権利として特定の割合でリモートワークを認める」が6.3%で、「原則として全従業員がリモートワークを実施」は1社のみ(1.1%)だった。

同アンケートでリモートワークの本格導入を計画している企業にその理由を聞いてみると、「通勤などが不要になることで業務効率が向上するため」という回答が9件、「オフィス賃料などのコスト削減のため」が3件、「出勤の必要性がなくなった」が2件あったが、「従業員のワークライフバランス改善などにつながり、優秀な人材の確保に役立つ」という回答も6件あった。「リモートワークが従業員にとって既得権益化しており、推進せざるを得ない」との声もあり、業務効率化や優秀な人材の引きとめなどを狙いとして、今後も主に非製造業でリモートワークの定着が進むものとみられる(図4)。

図3:企業活動の再開状況

ビジネス上の会食(n=184)
ビジネス上の会食(回答社数184社)については、認めているが159社(86.4%)、条件付きで認めているが19社(10.8%)、認めていないが6社(3.3%)。
国外出張(n=183)
国外出張(回答社数183社)については、認めているが147社(80.3%)、条件付きで認めているが32社(17.5%)、認めていないが4社(2.2%)。

出所:メキシコ日本商工会議所、ジェトロ・メキシコ「第12回新型コロナウイルス感染症対策に関するアンケート調査結果」

図4:新型コロナウイルス感染症収束後に予定している勤務体制
全体(184社)では、原則として全従業員が事業所に出勤が53.8%、主に事業所に出勤とし、一部の特定の従業員にリモート(在宅含む)勤務を認めるが20.1%、リモート(在宅含む)勤務と事業所への出勤を同じ程度の頻度や割合で実施が10.3%、従業員の権利として1週間に1度など特定の割合でリモートワークを認めるが3.8%、主にリモート(在宅含む)勤務とし、事業所への出勤を一部実施が5.4%、原則として全従業員がリモート(在宅含む)勤務が0.5%、方針を決めていないが6.0%であった。製造業(89社)では、原則として全従業員が事業所に出勤が73.0%、主に事業所に出勤とし、一部の特定の従業員にリモート(在宅含む)勤務を認めるが19.1%、リモート(在宅含む)勤務と事業所への出勤を同じ程度の頻度や割合で実施が1.1%、従業員の権利として1週間に1度など特定の割合でリモートワークを認めるが1.1%、主にリモート(在宅含む)勤務とし、事業所への出勤を一部実施が1.1%、原則として全従業員がリモート(在宅含む)勤務はゼロ、方針を決めていないが4.5%。非製造業(95社)では、原則として全従業員が事業所に出勤が35.8%、主に事業所に出勤とし、一部の特定の従業員にリモート(在宅含む)勤務を認めるが21.1%、リモート(在宅含む)勤務と事業所への出勤を同じ程度の頻度や割合で実施が18.9%、従業員の権利として1週間に1度など特定の割合でリモートワークを認めるが6.3%、主にリモート(在宅含む)勤務とし、事業所への出勤を一部実施が9.5%、原則として全従業員がリモート(在宅含む)勤務が1.1%、方針を決めていないが7.4%。

出所:メキシコ日本商工会議所、ジェトロ・メキシコ「第12回新型コロナウイルス感染症対策に関するアンケート調査結果」

リモートワークの本格導入に際しての課題としては、「リモートワークによるコミュニケーション不足による問題」が最も多く、全体(151社)の60.3%を占めた。「就業管理が難しい、超過勤務時間の把握が困難」「リモートワークによる労働生産性や効率性の低下」も半数近くの回答者があった。また、全体の33.1%が「社内の機密情報の管理や個人情報保護をめぐる問題」を挙げ、15.9%の企業が「通信費や電気代など適切な補助の額を設定するのが困難」と回答した(図5)。「その他」としては、「公平な人事評価の策定」や「メキシコの電気、インターネット等インフラの脆弱(ぜいじゃく)さ(雨による停電など)」「リモートワークの日数制限を検討、雇用契約を見直しする必要性が生じる」などの声があった。製造業では「工場内での問題発生時、現地現物で即断即決ができない」との回答もあった。

図5:リモートワークの本格導入に向けた課題(n=151)
最も回答率が高かったのは、「リモートワークによるコミュニケーション不足による問題」で60.3%、続いて「就業管理が難しい、超過勤務時間の把握が困難」が47.7%、「リモートワークによる労働生産性や効率性の低下」が46.4%、「社内の機密情報の管理や個人情報保護を巡る問題」が33.1%、「通信費や電気代など適切な補助の額を設定するのが困難」が15.9%、「その他」が11.9%だった。

出所:メキシコ日本商工会議所、ジェトロ・メキシコ「第12回新型コロナウイルス感染症対策に関するアンケート調査結果」

法改正でリモートワークを導入する雇用主の義務を明確化

メキシコ政府は2021年1月11日付の連邦官報で、リモートワークに関する規定を盛り込む連邦労働法(LFT)の改正を公布し、翌12日に施行した。同改正では、連邦労働法にリモートワーク(メキシコでは「Teletrabajo(テレワーク)」)の章(第XII BIS章、第330‐A~K条)を新設し、テレワークを「使用従属関係にある労働者が報酬を伴う活動を雇用主の事業所以外の場所で実施し、物理的な出勤を必要とせず、労働者と雇用主との間の連絡や指揮命令を主に情報通信技術(ICT)を用いて行う労働形態」と定義し、テレワークの要件、雇用主や労働者の義務などを定めている。

連邦労働法のテレワーク規定が適用される労働者は、就労時間の40%超をテレワーク形態で実施する労働者とされ、臨時、あるいは散発的にテレワークをする労働者は対象外となる。テレワーク形態で労働者を雇用する場合は、雇用契約書の中に以下の内容を盛り込む必要がある。事業所に労働組合が存在し、組合との間で労働協約を締結している場合、労働協約の中にテレワークの規定を盛り込む必要がある。

  1. 雇用主と労働者の氏名、国籍、年齢、性別、住所
  2. 労働の性質と特徴
  3. 給与の額と支給日・場所・方法
  4. テレワーク実施のために必要な機器や素材(安全衛生器具を含む)
  5. テレワークに必要となる労働者の経費(通信費・電気代など)の詳細と支給額
  6. 雇用主と労働者の間の連絡・監督手段、就労時間・時間帯
  7. その他、雇用主と労働者の必要に応じて定める事項

また、雇用主はテレワークの労働者に対しても、結社の自由や団体交渉権を保障するため、Eメールなどの手段を通じて、労働協約更改などに関する情報を提供する手段を構築する。労働協約を締結していない事業所(組合がない事業所)の場合は、就業規則の中にテレワーク規定を盛り込み、労働者間の連携や連絡を促進する手段を構築する。

第330-E条は、テレワーク導入に際した雇用主の義務について、以下のとおり規定する。

  1. テレワークに必要な機器(コンピュータ、人間工学に基づく椅子、プリンターなど)の支給・設置・メンテナンス
  2. 労働者から適時に仕事の成果物を受け取り、定められた期日と方法で給与を支払う
  3. テレワークに必要な経費(通信費、仕事のために要した電気代など)の負担
  4. 労働社会保障省(STPS)が定めた安全衛生規格に従い、テレワークのために労働者に支給した機器や資材を記録し、管理する
  5. テレワーク労働者が使用する情報やデータの安全性を確保するメカニズムの構築
  6. 就業時間終了の際のテレワーク・ネットワークからの労働者の接続解除の権利尊重
  7. テレワーク労働者の社会保険登録
  8. 事業所における労働からテレワークへ移行する労働者を中心に、テレワークへの適合や IT 技術の適切な使用に関する研修やアドバイスの実施

雇用主は、テレワークに必要な機材を労働者に支給し、テレワークのために必要となる通信費や追加の電気代も負担しなければならない。また、支給した機材の記録を作成し、管理する必要がある。

人事コンサルティング大手マーサーがLFT改正後にメキシコ企業365社を対象に実施したアンケート調査(スペイン語、2021年3月22日発表)によると、テレワークをめぐる法改正に対応するとした企業のうち、73%が人間工学に基づく椅子とモニター、72%がマウス、70%がキーボードを労働者に支給する予定と回答したが、机を支給すると回答した企業は18%にとどまった。また、テレワークに伴う電気代補助の平均は月額150ペソ(約1,050円、1ペソ=約7円)、インターネット通信料の補助平均は月額192.5ペソだった。なお、テレワークに伴って情報セキュリティーの強化を図ると回答した企業は36%だった。前述の進出日系企業に対するアンケートによると、リモートワークを実施している従業員に対して、リモートワークに係る通信費や電気代などの費用補助を行っているかという問いに対しては、26.9%が何らかの支給を行っているとの回答し、「連邦労働法体系下で『テレワーク』とみなされる従業員(就労時間の4割以上がリモート)にのみ支給」が11.7%、「全てのリモートワーク労働者に対して支給」が8.2%、「社内ルール(連邦労働法に関わらず独自に規定)に基づき、一部の従業員にのみ支給」が7.0%だった。リモートワーク費用補助の具体的な内容については、毎月定額を支給しているとの回答が7件(支給金額は140~600ペソ)、インターネットの定額通信料、携帯電話料金の全額を会社で負担しているケースも2件あった。また、リモートワーク実施時にも従来通りの通勤費用補助を支給して、通信費等に充当させているとの回答が2件あった。

LFT第330-G条によると、労働者を事業所での労働からテレワークに移行させる場合、不可抗力の事態を除き、労働者の意思を尊重しなければならない。また、事業所での労働復帰の権利が保障される。雇用主は、同種の仕事に従事する事業所での労働者とテレワーク労働者を待遇面で差別してはならない(第330-H条)。テレワーク労働者の活動を監督するメカニズムは、プライバシーの権利や個人情報保護を保障した上で導入されなければならない。カメラやマイクは、非常時、あるいは仕事の性質から必要な場合のみ、仕事の監督のために利用することができる(第330-I条)。

STPSは、人間工学的要素やメンタルヘルス、その他のテレワークに伴うリスクを考慮した上で、LFT改正後18カ月以内にテレワークに関する安全衛生基準をメキシコ公式規格(NOM)として作成することがLFT改正で定められた(第330-J条、LFT改正令付則2条)。STPSは2022年7月15日、テレワークに関する労働安全規格であるメキシコ公式規格の草案(PROY-NOM-037-STPS-2022)を官報公示した。草案の公示から60日間は草案に対する変更案の公募が行われ、同見解を考慮した上で最終的なNOMを策定し、官報で公布する。NOMは公布から180日後に発効する。同NOMで規定する主な内容は以下のとおり。

  1. テレワーク導入に際する雇用主の義務(5.1~5.13)
  2. テレワークで働く労働者の義務(6.1~6.9)
  3. 働く場所の安全や健康のための条件(7.1~7.3)
  4. 研修・訓練(8.1)
  5. 履行検証機関と検証方法、監視機関(9.1~9.4、10.1~10.4、11)

1.に関して重要なのは、テレワークで働く労働者のリストの整備や、「テレワーク導入策(Política de Teletrabajo)」の策定、労働者が働く場所を実際に訪問するか、質問票を用意して労働者に回答してもらうことによる「職場環境検証リスト」の作成、労働者がテレワークに用いる情報通信技術(ICT)機器のメンテナンス計画・方法などの文書化、職場での事故(疲労、メンタル障害など)の報告体制の整備と適切な対処などだ。「テレワーク導入策」に盛り込む内容はNOMの「参照ガイド4」として記載されているほか、「職場環境検証リスト」作成に向けた労働者への質問票のひな型が「参照ガイド1」として記載されている。

同NOMの適切な履行について、第三者機関の検証を受ける義務は現時点の草案では想定されていない。雇用主の選択肢として検証機関に検証を依頼することは可能(9.1)だが、基本的にはSTPSが事業所査察を行う際に、事業所が同NOMを順守しているかどうかを検証する。査察の際に検証される内容や方法については、NOMの10.3に詳細に規定されている。査察の結果、NOMを順守していないと判断された場合、罰則が科される可能性がある。

執筆者紹介
ジェトロ・メキシコ事務所長
中畑 貴雄(なかはた たかお)
1998年、ジェトロ入構。貿易開発部、海外調査部中南米課、ジェトロ・メキシコ事務所、海外調査部米州課を経て2018年3月からジェトロ・メキシコ事務所次長、2021年3月から現職。単著『メキシコ経済の基礎知識』、共著『FTAガイドブック2014』、共著『世界の医療機器市場』など。
執筆者紹介
ジェトロ・メキシコ事務所
松本 杏奈(まつもと あんな)
2008年、ジェトロ入構。ビジネス展開支援部ビジネス展開支援課などを経て、2018年9月から現職。