アニサママレーシアが初開催、主催者に聞く音楽市場の可能性

2026年10月19日

世界最大級のアニメソングライブイベント「Animelo Summer Live外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(通称アニサマ)」が2026年9月12日、マレーシアの首都クアラルンプールのライブホールZepp Kuala Lumpurで開催された。「ANISAMA Malaysia2026 -Gateway-」と題し、マレーシアを「日本のアニソンカルチャーとアジアをつなぐゲートウェイ」と位置付け、同国で初めての開催となった。当日は約1,000名が来場し、公演や関連イベント、SNSでの発信を通して、日本のアニメソングに対する関心の高さがうかがえるイベントとなった。本イベントを企画したドワンゴの齋藤光二総合プロデューサーと、イベント主催者のエボリューション・エンターテインメント・グループのサム・チェンCEO(最高経営責任者)にマレーシアの音楽市場の可能性について聞いた(取材日:2026年9月11日)。


左:チェン氏、右:齋藤氏(本人提供)

多文化、多言語環境が海外展開のトライアルの場に

質問:
マレーシアで開催したきっかけは。
答え:
昨年のアニサマ20周年イベントを見たチェン氏が感動してクアラルンプール開催のオファーを受けたのがきっかけだ。海外では過去に上海、台湾、マニラで開催し、現地で受け入れられている手応えがあった。マレーシアは多民族、多言語のファンがいるため、今後のアニサマの海外展開を見据えたトライアルの場としても面白いと思った。また、現地で日本の音楽文化を発信するKLP48(注1)や中華圏との接点を持つ上海のTSH48との連携など、マレーシアならではの取り組みができると感じ、開催に至った。
質問:
どのようなコンテンツや企画を予定しているのか。
答え:
人気アニメの楽曲を歌うアーティストに加え、その楽曲をきっかけにアニメ作品そのものにも関心を持ってもらえるような実力派アーティストを招いている。また、KLP48、TSH48と人気アニソンアーティストがコラボし、日本語、英語、マレー語、中国語で歌を披露する。日本ではみられない、マレーシアならではのコラボレーションとして期待している。

日本のアーティストとコラボするKLP48、TSH48の様子(主催者提供)

イベント前からエンゲージメントを高める取り組みが好評

質問:
マレーシアのファンの反応は。
答え:
イベント前にSNSでセットリスト(注2)やコラボする曲に関するクイズを出して、本番に向けてファンのエンゲージメントを高める工夫をしてきた。マレーシアのファンからの反応が予想以上に良かった。これまで各国・地域でアニサマを開催してきて、日本ではコールアンドレスポンス、中華系はバラードを好む、マニラではみんなで大合唱するなど、国・地域ごとに異なる傾向がある。マレーシアでも現地のファンと盛り上がれるかたちを目指している。

日本企業との連携にも期待

質問:
音楽を通した日本企業とのビジネス連携の可能性は。
答え:
今回、マレーシアで人気のコンテンツイベント「COS-MIC」(注3)の主催団体でもあるエボリューション・エンターテイメント・グループと連携してアニサママレーシアを開催した。アニサマが持つ知名度を生かしながらCOS-MICの幅広いファン層にリーチすることができた。また両イベントを同時期に開催することで相乗効果を図った。
アニサママレーシアという音楽イベントを通じて、日本とアジアの交流の場が広がれば良いと思っている。音楽産業は関連する業界も広いため、イベントやマーチャンダイジング(注4)などを通じて、熱意のある日本企業との連携を拡大していきたい。

イベントの様子(主催者提供)

アニメをきっかけに拡大する日本の音楽市場

2025年に日本の外務省が実施した「ASEANにおける対日世論調査外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」によると、「日本に対して抱いているイメージ」(複数回答)では、マレーシア人の39%が「アニメ、ファッション、料理など新しい文化を発信する国」と回答した。また、「日本に関してもっと知りたいと思う分野」(複数回答)では、53%が「文化(伝統文化、ポップカルチャー、和食など含む)」と回答した。マレーシアでは東方政策(ルックイースト政策)などを背景に親日派も多く、日本のポップカルチャーへの関心の高さがうかがえる。

一方、「文化(伝統文化、ポップカルチャー、和食などを含む)」と回答した人に、具体的にどの項目に関心があるか(複数回答)尋ねたところ、「ポップ音楽(J-POP)」が27%だったのに対し、「アニメ、漫画、ゲーム、コスプレ」は62%に上った。

この調査結果からも、マレーシアでは日本の音楽そのものより、アニメ、ゲームなどのコンテンツへの関心が高く、アニメやアニメソングは、日本の音楽に触れる入り口として、今後も重要な役割を果たす可能性がある。


注1:

日本のアイドルグループAKB48の海外姉妹グループで、クアラルンプールを拠点に活動するKLP48(2024年8月6日付ビジネス短信参照)と、上海を拠点に活動するTSH48。 本文に戻る

注2:
ライブやコンサートなどで演奏する楽曲の順番を一覧にまとめたもの。 本文に戻る
注3:
アニメ、ゲーム、コスプレ、日本の音楽などのポップカルチャーイベント(2025年10月9日付地域・分析レポート参照)。 本文に戻る
注4:
音楽、アニメ、ゲームなどのコンテンツを軸にして、グッズやコラボ商品、飲食店などのサービスと連携した企画、ビジネスを展開すること。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ・クアラルンプール事務所
都築 佑樹(つづき ゆうき)
2016年、ジェトロ入構。サービス産業部、岡山事務所、デジタルマーケティング部を経て、2023年11月から現職。