対中直接投資は3年連続の2桁減も、欧米企業の投資意欲は回復の兆し

2026年9月8日

中国経済は、不動産市場の低迷や民間消費の不振、一部産業における内巻と呼ばれる過当競争などの課題に直面している。また、米中貿易摩擦や通商政策を巡る不確実性の高まりのほか、地場企業との競争激化も指摘される中、中国ビジネスを取り巻く環境は大きく変化している。こうした影響を受け、中国への直接投資は2023年以降、2桁減が続いている。一方で、中国は依然として巨大な市場規模を有していることなどから、外資企業にとって引き続き重要な事業展開先となっている側面もある。

本稿では、最新の統計や中国に所在する欧米系企業で構成する各国商工団体などのアンケート結果を基に、欧米企業および日本企業の対中投資の現状と中国ビジネスに対する事業拡大意欲を分析する。

2025年の世界の対中投資実行額は前年比10.0%減、2桁減が続く

中国国家統計局運営のウェブサイト「国家データ」によると、2025年の世界の中国への直接投資実行額は前年比10.0%減の1,046億6,000万ドルとなった。2022年に6年連続の増加で過去最高額を記録した後、2023年以降は2桁減が続いている(図1参照)。

図1:中国への直接投資実行額の推移
2025年の世界の中国への直接投資実行額は前年比10.0%減の1,046億6,000万ドルとなった。2022年に6年連続の増加で過去最高額を記録した後、2023年以降は2桁減が続いている。

出所:国家統計局運営のウェブサイト「国家データ」からジェトロ作成

「国家データ」で2025年の数値が確認できる主要国・地域の状況を見ると、香港(注1)、シンガポール、ケイマン諸島が上位を占め、いずれも前年比2桁減となった。一方、日本は前年の大幅減の反動もあり、41.5%増加した(表1参照)。韓国と米国は前年に続いて減少した。

表1:主要国・地域の中国への直接投資実行額(単位:億ドル)注:2026年7月7日時点で2025年の数値が確認できた主要国・地域を記載。順位は2025年に基づく。
順位 国・地域 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年
1 香港 945.1 899.2 963.0 1,057.9 1,317.6 1,372.4 1,112.0 738.1 639.6
2 シンガポール 47.6 52.1 75.9 76.8 103.3 106.0 98.0 106.9 93.2
3 ケイマン諸島 21.8 40.7 25.6 27.7 24.6 24.2 35.0 55.2 44.2
4 日本 32.6 38.0 37.2 33.7 39.1 46.1 39.0 21.3 30.1
5 韓国 36.7 46.7 55.4 36.1 40.4 66.0 35.0 23.7 22.0
6 米国 26.5 26.9 26.9 23.0 24.7 22.1 34.0 27.4 20.7
7 英国 10.0 24.8 8.6 9.8 12.0 16.0 34.0 13.9 19.7
8 ドイツ 15.4 36.7 16.6 13.5 16.8 25.7 19.0 19.3 15.4
9 フランス 7.9 10.1 7.9 5.1 7.1 7.6 13.0 10.1 7.5
10 台湾 17.7 13.9 15.9 10.0 9.4 6.6 7.0 5.8 5.9
11 オーストラリア 2.8 2.9 4.3 3.4 3.0 4.0 4.0 3.5 2.9
12 カナダ 2.9 2.8 2.3 2.2 2.0 1.7 2.0 2.8 2.7
世界全体 1,363.0 1,383.0 1,412.0 1,493.0 1,809.6 1,891.3 1,633.0 1,162.4 1,046.6

注:2026年7月7日時点で2025年の数値が確認できた主要国・地域を記載。順位は2025年に基づく。

出所:国家統計局運営のウェブサイト「国家データ」からジェトロ作成

なお、中国商務部が2026年6月22日に発表した統計によると、2026年1~5月の世界の中国への直接投資実行額は、前年同期比8.6%減の3,272億9,000万元(約7兆8,550億円、1元=約24円、ドルベースの発表はなし)だった。この統計について、中国商務部の凌激副部長は6月22日の記者会見で、減少幅は前年同期と比べて縮小しており、誘致した外資の構造もさらに最適化されていると指摘した。中国の外資誘致は依然として高い強靭(きょうじん)性を有していると強調した。

では、実際に外国企業による投資案件の動向はどうなっているのだろうか。まずは欧米企業を中心に見てみる。

在中欧米企業の投資意欲は上向き、「In China, for the world」の動きも

fDi Markets(注2)によると、2025年に発表された中国向けの新規直接投資案件数は、欧州(EU27カ国および英国)が146件、米国が43件と、いずれも前年から5件減少した。一方で、金額上位の投資案件を見ると(表2参照)、2024年には欧州企業でドイツ自動車大手BMW(約28億ドル)、ルクセンブルクの鉄鋼企業アルセロール・ミッタル(約13億ドル)など10億ドルを超える大型案件が複数みられた。また、米国企業でも太陽光発電関連企業のエメレン・グループ(旧レネソーラ、約7億ドル)やインテル(約4億ドル)などによる投資があった。これに対し、2025年はこうした大型案件が欧米企業ともに相対的に少なくなっており、対中投資に対してより慎重になっている姿勢がうかがえる。

表2:欧州(EU27カ国および英国)と米国企業の対中グリーンフィールド投資(上位5件、金額ベース)

(単位:100万ドル)
注1:発表ベースあるいは報道ベースでの投資金額順。 注2:公表・報道資料などから投資先所在地(省市)を確認できなかった場合は、「n.a.」としている。
2024年の欧州企業による主な対中投資案件
発表月 企業名 国・地域 投資分野 総投資額
4月 BMW ドイツ 遼寧省 瀋陽市 輸送用機器
(自動車/二輪車)
2,800.0
10月 アルセロール・ミッタル ルクセンブルク 河北省 n.a. 金属製品 1,300.0
3月 トタルエナジーズ フランス n.a. n.a. 石炭/石油/ガス 590.7
3月 ノボ・ノルディスク デンマーク 天津市 医薬品 556.0
4月 ヴァレオ フランス 上海市 輸送用機器部品
(自動車/二輪車)
400.7
2024年の米国企業による主な対中投資案件
発表月 企業名 投資分野 総投資額
1月 エメレン・グループ 江蘇省 塩城市 電気・電子部品 695.0
10月 インテル 四川省 成都市 電気・電子部品 383.4
7月 ポシファ・テクノロジーズ 広東省 深セン市 電気・電子部品 367.7
11月 アップル 広東省 深セン市 情報通信機器/事務機器 225.2
10月 イーライリリー 江蘇省 蘇州市 医薬品 212.0
2025年の欧州企業による主な対中投資案件
発表月 企業名 国・地域 投資分野 総投資額
3月 アストラゼネカ 英国 北京市 医薬品 2500.0
5月 アストラゼネカ 英国 江蘇省 無錫市 医薬品 475.0
9月 ハト・ライティング オランダ n.a. n.a. 電気・電子部品 153.7
8月 エアバス オランダ 天津市 輸送用機器
(鉄道車両/船舶/
航空/運搬車両)
148.0
4月 アルヴァト ドイツ 上海市 運輸/倉庫 144.4
2025年の米国企業による主な対中投資案件
発表月 企業名 投資分野 総投資額
6月 サイティバ 北京市 バイオテクノロジー 129.1
5月 JAS・ワールドワイド・マネジメント 北京市 運輸/倉庫 126.8
9月 サウスコ 広東省 仏山市 金属製品 123.0
11月 デュポン 江蘇省 張家港市 化学品/石油製品 117.6
11月 ライクラ 寧夏回族自治区 銀川市 繊維 112.7

注1:発表ベースあるいは報道ベースでの投資金額順。
注2:公表・報道資料などから投資先所在地(省市)を確認できなかった場合は、「n.a.」としている。

出所:fDi Markets(Financial Times)からジェトロ作成

中国米国商会が2026年1月に発表した「中国ビジネス環境調査レポート2026年版」(注3)によると、米国企業が中国事業における主要な経営課題として最も多く挙げたのは「中国経済の成長鈍化」(64%)であり、「米中関係の緊張の高まり」(58%)、「中国企業との競争激化」(31%)、「産業の過剰生産能力」(30%)、「法令・規制執行の不透明さ」(26%)が続いた。

欧州企業については、2025年12月に発表された中国英国商会の2025~2026年のアンケート(注4)によると、過去1年間で中国での事業環境が悪化したと回答した英国企業のうち、約8割が経済要因を理由として挙げたほか、52%が地政学的要因、34%が規制要因を挙げた。自由記述では、多くの英国企業が中国企業との競争激化に言及している。

また、2026年5月に発表された中国ドイツ商会のアンケート(注5)によると、米中摩擦およびEU・中国の貿易摩擦による影響を受けていると回答した企業は、それぞれ69%、59%に上った。こうした結果から、中国経済の減速や貿易摩擦などの通商環境の変化、地場企業との競争激化などが、欧米企業の投資判断に影響を与えているとみられる。

一方で、これらのアンケート結果から中国事業への投資拡大見通しを見ると、米国企業では翌年(2026年)に投資を拡大する旨の回答が57%だった(図2参照)。前年調査から4ポイント上昇しており、米国企業の過半数が引き続き投資拡大を計画していることから、中国への投資意欲は回復傾向にあることがうかがえる。

欧州企業の状況については、ドイツ企業では、今後2年以内の中国での投資計画について「拡大する」との回答が61%と最多で、前年調査より8ポイント上昇した。英国企業では、翌年の中国事業への投資について「変化なし」が最も多く41%だった(4ポイント低下)。次いで「拡大」とした回答が35%となり、前回調査から4ポイント上昇した(図3参照)。

米国企業、英国企業、ドイツ企業とも、中国事業への投資意欲は2021年の水準には達していないものの、米国企業では3年連続で、ドイツ企業では2年連続で投資の回復がみられた。

図2:在中欧米企業の今後の中国事業への投資計画

在中米国企業の翌年の中国事業への投資拡大見通し
米国企業では、翌年(2026年)に投資を拡大する旨の回答が57%だった。前年調査から4ポイント上昇している。「拡大計画なし」は39%(2ポイント低下)で、「減少予定」は4%(2ポイント低下)にとどまった。
在中英国企業の翌年の中国事業における投資計画
英国企業では、翌年の中国事業への投資について「変化なし」が最も多く41%だった(4ポイント低下)。次いで「拡大」とした回答が35%となり、前回調査から4ポイント上昇した。
在中ドイツ企業の今後2年以内の中国での投資計画
ドイツ企業では、今後2年以内の中国での投資計画について「拡大する」との回答が61%と最多で、前年調査より8ポイント上昇した。

注:経営課題・悪化要因については、米国・英国調査が複数回答、ドイツ調査が単一回答。投資計画はいずれも単一回答。
出所:中国米国商会、中国英国商会、中国ドイツ商会のレポートからジェトロ作成

米国企業が投資を今後拡大する理由としては、「中国市場の戦略的重要性の高まり」を挙げた企業が28%で最も多く、次いで「中国市場の成長期待」で25%だった。また、中国事業における主要なビジネス機会として、50%の米国企業が「国内消費の拡大・中間所得層の増加」と回答したほか、33%が「中国企業のグローバル化と対外投資の拡大」、30%が「継続的な経済・市場改革」を挙げた。

ドイツ企業については、投資拡大の理由は明記されていなかったが、ドイツ政府に期待する中国事業発展の支援として、「中国企業とのパートナーシップを後押しするための環境整備」が51%と最も多く、「中国企業との協業を通じて得られた知見やノウハウを戦略的に活用すること」を求める企業が42%となった。

英国企業については、中国事業への投資を拡大している理由として、「市場の潜在性」が62%で最も多かった。また、「製品・サービス需要の増加(32%)」や「中国市場向け製品・サービス開発(30%)」など、中国市場の成長機会を重視する回答が上位を占めた(注6)

こうした結果から、欧米企業は中国市場の規模や今後の成長余地を引き続き評価しており、中でも、米国企業やドイツ企業の一部は、中国を生産拠点や販売市場としてのみならず、中国企業との協業やサプライチェーンの活用を通じて産業基盤や技術を取り込みながら、グローバル市場での競争力強化を図るための拠点として位置付けていることがうかがえる。実際に、欧米企業でこうした「In China, for the world」を目指す取り組み事例もみられる。例えば、テスラは、100%独資で上海ギガファクトリーを設立し、世界最大の生産・輸出ハブとして、生産量の約3割を欧州やアジア太平洋地域へ輸出している。また、ステランティスは、中国のEV(電気自動車)メーカー零跑汽車(リープモーター)に出資し、合弁会社を設立した。同社の技術力と自社の販売網を組み合わせることで、欧州などへの海外市場への展開を進めている。さらに、ロレアルも、中国のスタートアップ企業が開発したナノチップ技術をランコムブランドの美容デバイスに採用し、グローバルに展開している(2026年6月8日付ビジネス短信参照)。

日本の中国事業拡大意欲は過去最低も、事業継続の姿勢続く

次に、日本企業の今後の対中投資意欲に関連するデータについて見てみる。ジェトロが2025年8~9月に実施した「海外進出日系企業実態調査(中国編)(注7)によると、今後1~2年の事業展開の方向性については、「拡大」と回答した企業が21.3%と、調査開始以降で最低となった。他方、「現状維持」が64.3%で最大であり、「縮小」「第三国・地域への移転・撤退」は計14.4%と限定的であった。「現状維持」と回答した企業の自由記述からは、中国市場を引き続き重要市場と位置付け、今後の回復を見据えながら事業を継続する姿勢を示す企業も多くいることがうかがえた(2026年4月15日付地域・分析レポート参照)。

日本企業でも、中国をグローバル市場向けの製品開発・生産・輸出拠点として活用する動きがある。日産(中国)投資は、中国の東風汽車集団と2025年6月に自動車輸出業務を担う合弁会社を設立した。また、日産自動車の中国合弁会社である鄭州日産汽車では、中国で開発・生産したピックアップトラックの輸出イベントを鄭州市で開催した(2026年7月17日付ビジネス短信参照)。

投資促進と対外開放を進める一方、安全保障規制は強化

中国を取り巻く環境が変化する中、中国政府は、対外開放政策を引き続き推進する方針を打ち出している。2026年2月には「外商投資奨励産業目録2025年版」が施行され(注8)、全国版については前回(2022年版)から、先進製造業分野や現代サービス業への外資誘致の強化に向けて新たに奨励対象が追加された(2025年12月26日付ビジネス短信参照)。同年6月には、市場アクセスの拡大や外商投資の利便性の向上、外商投資サービス保障体系の整備などが盛り込まれた15項目のアクションプランが発表された(2026年6月25日付ビジネス短信参照)。同プランには政府調達への外資企業の公平な参与の保障など、日本企業が「中国経済と日本企業2026年白書」などにおいて中国政府に要望していた内容も含まれている。

外資の市場参入規制についても、緩和の動きが続いている。2024年11月には外商投資参入ネガティブリスト(2024年版)が施行され、製造業分野における外資参入制限措置は全面的に撤廃された。一方、2021年から外商投資安全審査弁法(2021年1月14日付ビジネス短信参照)が施行され、軍事産業や国家安全に関わる外商投資には事前申告が求められるようになったほか、2020年9月に施行された「信頼できないエンティティー・リスト」への外国企業・団体の掲載が2025年以降相次ぐなど(注9)安全保障面での規制が強化されている点には注意が必要だ。

対中直接投資は減少しているが、在中国欧米企業を対象としたアンケート結果からは、中国経済の減速や通商環境の変化などに対する懸念が続く中でも、対中投資意欲には回復の兆しがみられた。背景には、中国市場の規模や成長性に加え、中国をグローバル展開に向けた重要な拠点として位置付けていることがあると考えられる。
今後の対中投資は、中国国内市場の開拓のみならず、中国の産業基盤やサプライチェーン、イノベーション力を活用しながらグローバル市場での競争力強化につなげる一方、安全保障規制への対応と自社の技術やノウハウをいかに維持・保護していくかが重要な視点となろう。


注1:
いわゆる「香港企業」がこのように大きな比率を占めているとは考えづらく、世界各地の企業が香港を経由して中国に投資しているとみられる。しかし、香港経由の対中投資を示すデータはなく、中国側の統計のみでは各国・地域からの対中直接投資の実態をつかむことは難しい。 本文に戻る
注2:
Financial Timesが提供。グリーンフィールドFDIプロジェクトを発表ベースに基づいて捕捉。 本文に戻る
注3:
中国米国商会「中国ビジネス環境調査レポート2026年版」。調査実施期間は2025年10月22日~11月20日。有効回答数は368社。 本文に戻る
注4:
中国英国商会「ブリティッシュ・ビジネス・イン・チャイナ:センチメント・サーベイ2025~2026」。2025年10月11日~11月15日に調査実施。有効回答数は303社。 本文に戻る
注5:
中国ドイツ商会「フラッシュ・サーベイ2026年5月」2026年4月15~21日に調査実施。有効回答数は216社。 本文に戻る
注6:
米国企業の投資拡大理由は単一回答。米国企業の事業機会、英国企業の投資拡大理由、ドイツ政府に期待する支援は複数回答。 本文に戻る
注7:
調査は2025年8~9月に実施。有効回答数は791社。 本文に戻る
注8:
一部の有識者からは、同目録は投資促進を掲げつつも、国内産業の高度化に向けた技術獲得などを意図する側面もあるとの見方がある。 本文に戻る
注9:
中国は一貫して「信頼できないエンティティー・リスト」の問題を慎重に処理し、法に基づいて中国の安全に危害を及ぼすごく少数の外国エンティティーのみを対象にしているため、コンプライアンスを順守する外国エンティティーは全く心配する必要はないとしている。さらに、中国政府はこれまでどおり、世界各国の企業が中国に投資を行って事業を展開することを歓迎し、法令を順守する外資系企業の中国での経営に対し、安定・公平・予見性のあるビジネス環境を提供することに力を入れていると述べている。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ調査部中国北アジア課
富永 笑美子(とみなが えみこ)
2019年、ジェトロ入構。対日投資部外国企業支援課を経て、2022年10月から現職。