ポスト・トランプの大統領選を見据えて
注目の米州知事選(1)

2026年4月22日

米国50州の知事の政党別構成は、民主党24州、共和党26州だ。2026年11月3日の本選で改選対象となるのは36州で、民主・共和両党の現職がそれぞれ18州ずつを占める(表1、2参照)。南部5州(ジョージア、アラバマ、フロリダ、サウスカロライナ、テネシー)では、現職共和党知事が任期満了により2026年選挙に立候補しない。6州(アリゾナ、ジョージア、アイオワ、ミシガン、ネバダ、ウィスコンシン)は、クック・ポリティカル・レポート(CPR)の勝敗予想格付けで接戦と予想されている。

(1)では南部5州および特筆すべき州を、(2)ではミシガン州やネバダ州など、ジョージア州以外の接戦とされる州の動向を概観する。

なお、本稿の勝敗予想格付けは、CPRの4月16日付発表に基づく。格付けは、(当選)確実、かなり優勢、やや優勢、接戦の順となる。

ジョージア州:初の黒人知事誕生の可能性も

共和党の保守派基盤の中心である南部5州の動向は、ドナルド・トランプ大統領以降の共和党のリーダー選びにも影響するとみられる。特にジョージア州の選挙結果は、2028年の大統領選挙への流れを変える可能性もあり、注視される。ジョージア州を除く4州は、CPRの評価では共和党にとって当選確実とされている。

ジョージア州では連邦上院議員2人が民主党で、2020年の大統領選挙ではジョー・バイデン氏(民主党)、2024年はトランプ氏(共和党)が勝利したスイングステート(激戦州)だが、州レベルでは共和党が優勢だ。現職の共和党ブライアン・ケンプ知事は任期満了により立候補しない。

民主党では、前アトランタ市長のキーシャ・ランス・ボトムズ氏(注1)と、元州下院議員のジェフ・ダンカン氏が主要候補となっている。ボトムズ氏は黒人女性で、同氏が民主党候補に指名され、知事選で勝利を収めれば、同州初の黒人知事となり、2028年大統領選挙に向けて州内だけでなく民主党全体に影響するだろう。同州の知事選結果は、黒人女性の政治的影響力やMAGA(注2)勢力の趨勢(すうせい)にも影響を及ぼすとみられる。

共和党の主な候補者は、バート・ジョーンズ副知事、クリス・カー州司法長官、ブラッド・ラッフェンスパーガー州務長官など現職閣僚に加え、2026年2月に立候補を表明した実業家のリック・ジャクソン氏だ。共和党の予備選を想定した2月の世論調査(注3)では、ジャクソン氏が支持率33%と、トランプ大統領が支持するジョーンズ氏(17%)を抑え首位に立ち(2026年2月25日付ビジネス短信参照)、候補者争いに一石を投じた。ジャクソン氏が立候補したことで、共和党予備選が決選投票に持ち越される可能性が高まったとみられる。

表1:2026年に選挙が行われる共和党現職知事州注1:勝敗予想格付けは共和党にとっての優劣となる。CPRは、(当選)確実、かなり優勢、やや優勢、接戦の順となる。注2:予備選が既に実施された、アーカンソー州、テキサス州では、共和党現職が順当に勝利し本選に進む。 (現職立候補なしは〇。大統領選挙激戦州は★)(ーは値なし)
州名 現職 現職立候補なし トランプ氏が支持する
共和党候補
CPRによる予想(2026年4月16日) 予備選
日程
大統領選挙激戦州
アラスカ マイク・ダンレビ氏 かなり優勢 8月18日
アラバマ ケイ・アイビー氏 トミー・タバービル氏 確実 5月19日
アーカンソー サラ・ハッカビー・サンダース氏 現職 確実 3月3日
フロリダ ロン・デサンティス氏 バイロン・ドナルズ氏 確実 8月18日
ジョージア ブライアン・ケンプ氏 バート・ジョーンズ氏 接戦 5月19日
アイオワ キム・レイノルズ氏 接戦 6月2日
アイダホ ブラッド・リトル氏 現職 確実 5月19日
ネブラスカ ジム・ピレン氏 現職 確実 5月12日
ネバダ ジョー・ロンバード氏 現職 接戦 6月9日
ニューハンプシャ― ケリー・アヨット氏 かなり優勢 9月8日
オハイオ マイク・デワイン氏 ビベク・ラマスワミ氏 やや優勢 5月5日
オクラホマ ケビン・スティット氏 確実 6月16日
サウスカロライナ ヘンリー・マクマスター氏 確実 6月9日
サウスダコタ ラリー・ローデン氏 確実 6月2日
テネシー ビル・リー氏 確実 8月6日
テキサス グレッグ・アボット氏 現職 確実 3月3日
バーモント フィル・スコット氏 確実 8月11日
ワイオミング マーク・ゴードン氏 ミーガン・デゲンフェルダー氏 確実 8月18日

注1:勝敗予想格付けは共和党にとっての優劣となる。CPRは、(当選)確実、かなり優勢、やや優勢、接戦の順となる。
注2:予備選が既に実施された、アーカンソー州、テキサス州では、共和党現職が順当に勝利し本選に進む。

出所:各種報道、クック・ポリティカル・レポート(CPR)、バロットペディアを基にジェトロ作成

サウスカロライナ州:共和党候補はトランプ大統領の支持を期待

サウスカロライナ(SC)州では、現職のヘンリー・マクマスター知事(共和党)が任期満了により立候補しない。民主党からは、州下院議員のジャーメイン・ジョンソン氏が立候補している。

共和党の有力候補は、ナンシー・メース下院議員とラルフ・ノーマン下院議員、アラン・ウィルソン州司法長官に加え、パメラ・エベット副知事とジョシュ・キンブレル州上院議員などである。しかし、トランプ氏は誰を支持するか表明していない。

マクマスター氏はエベット氏を支持しており、トランプ氏からの支持も期待している。3月の共和党予備選を想定した世論調査(注4)では、エベット氏とメース氏の支持率がそれぞれ19%、18%と競り合い、ウィルソン氏が15%で続いた。

前述以外の南部州では、アラバマ州のトミー・タバービル連邦上院議員、フロリダ州のバイロン・ドナルズ連邦下院議員、テネシー州のマーシャ・ブラックバーン連邦上院議員が、共和党の主要候補とみられる。トランプ氏は、タバービル氏とドナルズ氏への支持を表明している。

フロリダ州では、2025年12月のマイアミ市長選では民主党が支持する候補者が勝利し、2026年3月の州議会の特別選挙でも、トランプ氏の地元で予想を覆し民主党候補が当選した(2026年3月26日付ビジネス短信参照)。民主党は、トランプ政権が対応できていないといわれる経済や医療を争点にする意向だ。

カリフォルニア州:民主党・共和党候補の競り合いが続く

2026年の州知事選挙で現職知事が立候補しないカリフォルニア(CA)州とオハイオ州では、民主・共和両党が勝利の可能性を探っている。ペンシルベニア州では、2028年大統領選挙の民主党候補として注目される現職知事が再選を目指す。

CA州の民主党現職ギャビン・ニューサム知事は任期満了により立候補しない。同州では、党派に関係なく全員が同じ予備選に参加し、上位2人が本選に進む。

予備選を想定した各種世論調査では、民主党のエリック・スウォルウェル連邦下院議員、ケイティ・ポーター氏(元連邦下院議員)、トム・ステイヤー氏(資産家)、共和党のスティーブ・ヒルトン氏(保守系コメンテーター)、チャド・ビアンコ氏(同州リバーサイド郡保安官)が上位を占め、共和党のヒルトン氏とビアンコ氏が、民主党候補を抑え上位を占める世論調査結果(注5)もある(2026年3月23日付ビジネス短信参照)。

多数の民主党候補に票が分散し、予備選で敗退して本選に進めなくなる可能性が危惧されていた。4月にスウォルウェル氏が知事選からの撤退を表明し、その直後にエマーソン大学が実施した世論調査(注6)では、共和党ヒルトン氏が首位(17%)で、共和党ビアンコ氏、民主党ステイヤー氏が同率(14%)で続くという結果だった。

ヒルトン氏とビアンコ氏はともに、州の生活費高騰の要因として、民主党が支持する環境政策を激しく非難している。また両氏はトランプ氏の支持者だが、同州のトランプ氏の支持率は30%を下回るため、民主党が知事選挙をトランプ氏と結び付けていることを批判している。4月には、トランプ氏がヒルトン氏への支持を表明したことから、共和党支持層がヒルトン氏に傾き、結果として民主党候補の本選進出を後押しする可能性があるとみられる。

表2:2026年に選挙が行われる民主党現職知事州 注:勝敗予想格付けはカンザス州を除き、民主党にとっての優劣で、(当選)確実、かなり優勢、やや優勢、接戦の順となる。 (現職立候補なしは〇。大統領選挙激戦州は★)(ーは値なし)
州名 現職 現職立候補なし トランプ氏が支持する
共和党候補
CPRによる予想(2026年4月16日) 予備選
日程
大統領選挙激戦州
アリゾナ ケイティ・ホッブス氏 接戦 8月4日
カリフォルニア ギャビン・ニューサム氏 スティーブ・ヒルトン氏 確実 6月2日
コロラド ジェアド・ポリス氏 確実 6月30日
コネティカット ネド・ラモント氏 確実 8月11日
ハワイ ジョシュ・グリーン氏 確実 8月8日
イリノイ J.B. プリッツカー氏 確実 5月17日
カンザス ローラ・ケリー氏 (共和党にとって)やや優勢 8月4日
メーン ジャネット・ミルズ氏 かなり優勢 6月9日
メリーランド ウェス・ムーア氏 確実 6月23日
マサチューセッツ モーラ・ヒーリー氏 確実 9月1日
ミシガン グレッチェン・ウィットマー氏 接戦 8月4日
ミネソタ ティム・ウォルズ氏 確実 8月11日
ニューメキシコ ミシェル・ルーハン・グリシャム氏 かなり優勢 6月2日
ニューヨーク キャシー・ホークル氏 ブルース・ブレークマン氏 確実 6月23日
オレゴン ティナ・コテク氏 確実 5月19日
ペンシルベニア ジョシュ・シャピロ氏 ステーシー・ギャリッテイ氏 確実 5月19日
ロードアイランド ダニエル・マッキー氏 確実 9月8日
ウィスコンシン トニー・エバース氏 トム・ティファニー氏 接戦 8月11日

注:勝敗予想格付けはカンザス州を除き、民主党にとっての優劣で、(当選)確実、かなり優勢、やや優勢、接戦の順となる。

出所:各種報道、クック・ポリティカル・レポート(CPR)、バロットペディアを基にジェトロ作成

オハイオ州:医療制度の重要性を訴える民主党候補

オハイオ州では、共和党の現職マイク・デワイン知事が任期満了により立候補しない。

民主党候補のエイミー・アクトン氏(医師)と、共和党候補のビベク・ラマスワミ氏(実業家)が主要候補となっている。知事選を想定した世論調査(注7)では、両者の支持率がほぼ互角となり、アクトン氏が健闘している。トランプ氏はラマスワミ氏を支持している。

アクトン氏は、メディケイド(低所得者向け公的医療保険)とメディケア(高齢者や障害者向け公的医療保険)がオハイオ州民にとって不可欠だと主張し、ラマスワミ氏が両制度を間違いと語ったとして非難している。また、アクトン氏は、プライベート・ジェットで州内を飛び回るラマスワミ氏が、医療費に悩まされる州民の実情を十分に理解していないと主張する。

CPRは3月、勝敗予想を共和党にとって「かなり優勢」から「やや優勢」へと変更した。

ペンシルベニア州:2028年大統領選注目候補の現職シャピロ氏

ペンシルベニア州(PA)では、民主党の現職ジョシュ・シャピロ知事と、共和党からはトランプ氏が支持するステーシー・ギャリッティ氏(同州財務長官)が立候補している。州知事選を想定した2月の世論調査(注8)では、シャピロ氏の支持率が55%となり、ギャリッティ氏(37%)を大きく上回った。

シャピロ氏は、2028年大統領選挙の主要な民主党候補者とみられているが、その前に州知事選を勝ち抜く必要がある。「ワシントン・ポスト」紙(2月26日)は、CA州のニューサム知事と並び、同氏を大統領選の注目すべき民主党候補者として紹介した。シャピロ氏は、2024年大統領選挙の民主党候補カマラ・ハリス氏の副大統領候補に挙がったこともある。

CPRは3月に、勝敗予想を民主党にとって「かなり優勢」から「(当選)確実」へと変更した。


注1:
ボトムズ氏は、2020年大統領選挙でジョー・バイデン前大統領の副大統領候補として名前が挙がったこともある。バイデン政権では、2022年に大統領上級顧問(国民参画担当)に任命された。 本文に戻る
注2:
「米国を再び偉大に(Make America Great Again)」の略称で、もともとトランプ氏の選挙キャンペーンのスローガンだが、現在ではトランプ氏の支持者を指す言葉としても用いられる。 本文に戻る
注3:
カンタス・インサイツが2026年2月17~18日に実施した世論調査。対象はジョージア州の投票予定者1,337人。 本文に戻る
注4:
コエフィシエントが2026年3月12~13日に、SC州の投票予定者810人に対して実施した世論調査。 本文に戻る
注5:
CA大学バークレー校が2026年3月9~15日に、CA州の登録有権者5,019人を対象に実施した世論調査。 本文に戻る
注6:
実施時期は2026年4月14~15日、対象者はCA州の投票予定者1,000人。 本文に戻る
注7:
カンタス・インサイツが2026年3月13~14日に、オハイオ州の投票予定者809人を対象に実施した世論調査。知事選を想定した問いでは、アクトン氏の支持率46%、ラマスワミ氏45%。 本文に戻る
注8:
キニピアク大学が2026年2月19~23日に実施した世論調査。対象はPA州の登録有権者836人。 本文に戻る

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執筆者紹介
ジェトロ調査部米州課
松岡 智恵子(まつおか ちえこ)
展示事業部、海外調査部欧州課などを経て、生活文化関連産業部でファッション関連事業、ものづくり産業課で機械輸出支援事業を担当。2018年4月から現職。