輸入不許可急増と違反構造の変化(世界編)
中国食品輸入規制分析(1)

2026年5月22日

中国は2022年1月に「中国輸入食品海外製造企業登録管理規定」(税関総署令第248号)を施行し、中国に食品を輸出する全ての海外製造企業に対して中国海関総署(GACC)への事前登録を義務付けた。2026年6月には新規定(税関総署令第280号)(注1)への移行による手続きの煩雑化が予想され、輸入通関の実態を定量的に把握する重要性が一層高まっている。

ジェトロは、海関総署が毎月公表する「輸入不許可食品リスト(未准入境食品化妝品信息)」を独自に集計・分析した。2019年1月から2025年12月までの7年間の非食品を除く131カ国・地域2万875件を対象に、米国農務省(USDA)経済調査局のGale(2021)による先行研究(ERR-286)(注2)の分析手法も参考としつつ、独自に分析を行った。

本稿では、絶対的な規模・トレンドの把握には件数を用いる一方、産地間・期間間の比較指標として輸入額当たりの不許可件数〔不許可強度(RI)〕(注3)を用い、輸入規模を考慮した上で審査厳格化の実態を把握する。

分析の結果は世界編と日本編に分けて報告する。世界編の本稿では、輸入通関不許可となる要因・品目・違反構成の実態、主要国・地域別のRI、主要税関別の動向、および280号施行を控え、輸出企業が取るべき対応策について報告する。

輸入不許可食品件数は7年で約2.7倍に拡大

中国の輸入不許可食品件数は、2019年(1,785件)から2025年(4,876件)へと約2.7倍に増加した(図参照)。特に、2024年から2025年までの2年間は、食品輸入総額が減少する中、不許可件数が急増しており、違反の絶対数増加だけでなく審査の厳格化が進んでいる可能性を示す。

中国の食品輸入規制の制度的変化を軸に、2019年~2025年の7年間 を3つのフェーズに区分する。フェーズ(1)(旧規定期:2019~2021年)は、248号施行前の規制下にある時期だ。フェーズ(2)(248号施行・定着期:2022~2023年)は、2022年1月の248号施行によりGACC登録義務が拡大し、書類・登録要件への対応が世界的に求められた時期だ。フェーズ(3)(審査強化・280号移行準備期:2024~2025年)は、全産地で不許可件数が急増した時期だ。

図:中国の輸入不許可食品件数の推移(2019~2025年)
2019年から2025年までの棒グラフと折れ線グラフの複合図:左軸は中国の食品輸入不許可件数(棒)と右軸は食品輸入額(折れ線)の年次推移を表示。背景帯で3フェーズを色分け。不許可件数は2019年1,785件、2020年1,985件、2021年2,883件、2022年2,818件、2023年2,339件、2024年4,189件、2025年4,876件と7年で約2.7倍に増加。食品輸入額じゃ2019年981億9,000万ドル、2022年1,524億7,000万ドル(ピーク)、2025年1,382億4,000万ドル。フェーズ1、旧規定期2019年から2021年までは件数・輸入額ともに増加基調。フェーズ2、248号施行期2022年から2023年までは輸入額がピークを形成する一方、件数は2022年に横ばい、2023年に一時減少。フェーズ3、審査強化・280号移行準備期2024年から2025年までは輸入額が減少に転じる中、件数が急増。

出所:中国海関総署「輸入不許可食品リスト(未准入境食品化妝品信息)」、S&P Global GTA(輸入額)を基にジェトロ作成

不許可件数の増加は複数の要因が複合的に作用していると考えられる。第1に、2022年1月施行の248号による登録義務化に伴う「書類・登録」違反の急増。第2に、248号施行後もコンプライアンス対応が遅れている輸出国・企業の存在。第3に、海関総署の検査能力の拡充と検査強化だ。

「書類・登録」違反が最多、2025年は「添加物・化学成分」が急増

7年間の累計不許可件数を違反分類別(注4)に見ると、「書類・登録」違反が6,971件と全体の33.4%を占め最多だ。次いで「添加物・化学成分」5,159件(24.7%)、「ラベル・表示」4,176件(20.0%)、「細菌・微生物」2,416件(11.6%)と続く(表1参照)。

特に注目すべきは、2024年から2025年にかけての違反理由の構成の変化だ。2025年には「添加物・化学成分」が1,831件と前年比約2倍に急増し、「書類・登録」(1,283件)を上回った。GACCの輸入不許可食品リストを分析した結果、この急増は特定の国・品目に集中していた。2025年の「添加物・化学成分」違反1,831件のうち、米国産が623件(34.0%)・スペイン産が271件(14.8%)と突出しており、両国だけで全体の約半数を占める。品目別では肉類(740件)、肉・魚調製品(299件)、魚介類(225件)の動物性食品が中心であり、米国産肉類ではメレンゲストロール系ホルモン剤の中国基準不適合が254件と最多で、スペイン産肉類ではテストステロン系ホルモン剤の検出が253件と集中している。いずれも中国では使用禁止の畜産用薬剤であり、米国・欧州の食肉生産規範と中国基準との乖離が直接的な要因といえる。「添加物・化学成分」違反の2024年(921件)から2025年(1,831件)への約2倍の急増は、これら特定の薬剤残留問題を抱える産地に対する中国当局の検査強化を反映している可能性が高い。日本産は68件(3.7%)にとどまり、今回の急増との関連性は低い。

一方、「品質保証期間切れ」は2019年の113件から2025年はわずか1件へと激減した。248号以降の事前登録・審査の厳格化により、品質保証期限管理に問題のある製品が輸入申告段階で排除されている可能性を示唆する。

表1:中国の年別・違反分類別の輸入不許可食品件数(2019~2025年)(単位:件、カッコ内は構成比)
書類・
登録
添加物・
化学成分
ラベル・
表示
細菌・
微生物
劣化・
変質
品質保証
期限切れ
その他 合計
2019 604 425 280 173 190 113 0 1,785
2020 589 381 347 326 277 58 7 1,985
2021 1,018 658 439 441 261 58 8 2,883
2022 1,101 543 572 304 239 48 11 2,818
2023 856 400 571 228 177 101 6 2,339
2024 1,520 921 1,054 428 238 10 18 4,189
2025 1,283 1,831 913 516 269 1 63 4,876
合計 6,971
(33.4%)
5,159
(24.7%)
4,176
(20.0%)
2,416
(11.6%)
1,651
(7.9%)
389
(1.9%)
113
(0.5%)
20,875
(100.0%)

出所:中国海関総署「輸入不許可食品リスト(未准入境食品化妝品信息)」を基にジェトロ作成

2024年は肉類・魚介類・飲料が件数上位、2025年は肉類が最多

品目別では、魚介類(4,180件)が最多であり、次いで肉類(3,204件)、その他調製食品(2,898件)、飲料・酒類(2,812件)の順となっている(表2参照)。魚介類と肉類は「細菌・微生物」違反や「劣化・変質」が相対的に多く、その他調製食品と飲料・酒類は「書類・登録」や「ラベル・表示」違反が中心となっている。

2019年比で2021年は1,098件増加した。品目別では魚介類(410件増)、その他調製食品(247件増)、穀物調製品・パン・菓子類(215件増)が主因であり、コロナ禍における中国国内の食料需要変化と検査体制強化が背景にあると考えられる。

2023年比で2024年は1,850件急増した。主な寄与品目は肉類(554件増)、魚介類(488件増)、飲料・酒類(468件増)だ。肉類はオーストラリア・ブラジル・デンマークが中心で、違反要因は「書類・登録」違反(構成比51.8%)が主因。魚介類はエクアドル産が全体の44.8%(429件)を占め、「書類・登録」違反(38.6%)と「添加物・化学成分」違反(36.7%)が主因であり、近年続くエクアドルの中国への海産物輸出拡大傾向とGACC登録対応の遅れが重なったとみられる。飲料・酒類は「ラベル・表示」違反(52.2%)が主因で、米国・日本・韓国産が上位を占めた。

2025年は肉類(527件増)、肉・魚調製品(298件増)がさらに増加した。肉類では米国産が371件と最多となり、違反要因は「添加物・化学成分」違反が56.8%を占めた。肉・魚調製品では米国産が307件(全体の88.5%)を占め、「添加物・化学成分」違反が86.2%に達した(注5)。一方、魚介類(170件減)・飲料・酒類(187件減)は前年比で減少した。

表2:中国の品目別・年別の輸入不許可食品件数(2019~2025年)(単位:件、カッコ内は構成比)
品目(HS2桁) 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年 合計
[03] 魚介類 211 414 621 718 470 958 788 4,180
(20.0%)
[02] 肉類 158 285 223 237 222 776 1,303 3,204
(15.3%)
[21] その他調製食品 264 266 511 476 424 501 456 2,898
(13.9%)
[22] 飲料・酒類 191 211 251 399 337 805 618 2,812
(13.5%)
[19] 穀物調製品・パン・菓子類 255 170 470 282 387 358 324 2,246
(10.8%)
[20] 野菜・果物調製品・ジュース 157 67 153 109 113 184 222 1,005
(4.8%)
[16] 肉・魚調製品 45 35 60 225 68 49 347 829
(4.0%)
[04] 乳製品・卵・蜂蜜 81 58 95 61 40 88 188 611
(2.9%)
[17] 砂糖・菓子 84 46 117 70 67 91 110 585
(2.8%)
[09] コーヒー・茶・香辛料 131 122 102 19 33 87 67 561
(2.7%)
[08] 果物・ナッツ 47 65 67 75 82 61 91 488
(2.3%)
[18] ココア・チョコレート 21 62 59 72 51 105 96 466
(2.2%)
[15] 食用油脂 33 63 45 26 25 48 67 307
(1.5%)
[12] 油糧種子 18 56 61 11 6 28 12 192
(0.9%)
[11] 澱粉・小麦粉 13 2 10 5 3 29 114 176
(0.8%)
[07] 野菜 61 47 10 8 0 1 5 132
(0.6%)
[05] 動物性生産品 3 5 9 12 6 13 50 98
(0.5%)
[10] 穀物 8 11 19 13 5 7 18 81
(0.4%)
[13] 植物性エキス 4 0 0 0 0 0 0 4
(0.0%)
合計 1,785 1,985 2,883 2,818 2,339 4,189 4,876 20,875
(100.0%)

出所:中国海関総署「輸入不許可食品リスト(未准入境食品化妝品信息)」を基にジェトロ作成

主要輸出国・地域の違反構成:異なるリスク構造

対象期間(2019~2025年)の国・地域別不許可件数上位5カ国・地域は、米国(2,350件)、日本(2,338件)、ベトナム(1,501件)、台湾(1,241件)、エクアドル(1,133件)だ(表3参照)。

各国・地域の違反分類には顕著な差異がある。日本は「書類・登録」が60.2%を占めるのに対し、ベトナムは「細菌・微生物」が35.4%と相対的に高い。エクアドルは「細菌・微生物」が48.3%と特定違反への集中が著しく、同国の主力輸出品であるエビの品質管理問題を反映している。米国は「添加物・化学成分」(34.0%)と「ラベル・表示」(30.3%)が多く、規制基準の差異が主因と考えられる。台湾は「ラベル・表示」と「書類・登録」がともに34.2%を占め、「添加物・化学成分」(20.3%)がこれに続く。

表3:中国向け主要輸出国・地域の違反分類構成比(2019~2025年)(単位:件、カッコ内は構成比)
国・地域 書類・登録 添加物・化学成分 ラベル・表示 細菌・微生物 劣化・変質 品質保証期限切れ その他 合計
米国 441
(18.8%)
798
(34.0%)
712
(30.3%)
56
(2.4%)
276
(11.7%)
52
(2.2%)
15
(0.6%)
2,350
日本 1,407
(60.2%)
315
(13.5%)
440
(18.8%)
18
(0.8%)
30
(1.3%)
73
(3.1%)
55
(2.4%)
2,338
ベトナム 230
(15.3%)
417
(27.8%)
182
(12.1%)
531
(35.4%)
140
(9.3%)
1
(0.1%)
0
(0.0%)
1,501
台湾 424
(34.2%)
252
(20.3%)
424
(34.2%)
121
(9.8%)
14
(1.1%)
6
(0.5%)
0
(0.0%)
1,241
エクアドル 53
(4.7%)
467
(41.2%)
3
(0.3%)
547
(48.3%)
57
(5.0%)
0
(0.0%)
6
(0.5%)
1,133
合計(その他含む) 6,967 5,159 4,176 2,416 1,651 389 113 20,875

出所:中国海関総署「輸入不許可食品リスト(未准入境食品化妝品信息)」を基にジェトロ作成

主要輸出国・地域別のRI(件/1,000万ドル)を見ると、日本は全期間を通じて他国・地域を大幅に上回り、2024年には5.83とピークに達している(表4参照)。台湾は2022年(248号施行時)に一時的に急上昇(4.81)したが、2023〜2025年には低下しており、248号への対応が進んだ可能性がある。韓国・ベトナム・エクアドル・米国はおおむね0.5前後で推移しており、日本との乖離が際立つ。日本のRIの詳細分析は日本編に譲る。

台湾の事例は、制度変化に対する迅速な対応がRIの低下につながることを示している。台湾のRIはフェーズ(1)の年別平均2.18からフェーズ(2)には4.15へと急上昇した。248号施行直後の2022年には4.81と日本の1.98を大幅に上回ったが、2023年には3.48、フェーズ(3)(2024〜2025年)には1.90へと急速に低下した。台湾の違反件数もフェーズ(1)の626件からフェーズ(3)の209件へと約3分の1に減少しており、「書類・登録」に対応する体制の整備と輸出企業のコンプライアンス対応が一定の成果を上げたと考えられる。ただし、RI低下には輸出品目構成や輸出額の変化も影響している可能性があり、制度対応のみを原因と断定することはできない。

これに対し、日本はフェーズ(1)が年別平均2.23、フェーズ(2)が2.70、フェーズ(3)が5.26と一貫して上昇しており、台湾との明暗が際立つ。日本の場合、2023年8月の水産物輸入停止措置による輸入額の急減がフェーズ(3)のRI押し上げに大きく寄与している可能性がある点は考慮が必要だが、「書類・登録」違反が全7年にわたって6割前後を占める構造は変わっておらず、制度対応の遅れが依然として課題として残っていることを示している。

表4:中国向け主要輸出国・地域別・年別の不許可強度(RI)(2019~2025年)(単位:件/1,000万ドル)
国・地域 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年 累計
(19-25年)
日本 2.46 1.82 2.41 1.98 3.42 5.83 4.69 2.91
台湾 1.78 2.21 2.55 4.81 3.48 1.74 2.06 2.49
香港 0.39 0.64 2.50 1.41 0.97 1.02 1.70 1.31
韓国 0.36 0.21 0.66 0.45 0.80 0.93 0.38 0.56
エクアドル 0.14 0.80 0.47 0.19 0.10 1.30 0.87 0.55
ベトナム 0.47 0.64 0.59 0.68 0.24 0.21 0.24 0.38
インド 0.19 0.47 0.66 0.20 0.17 0.24 0.38 0.33
マレーシア 0.17 0.20 0.32 0.27 0.23 0.26 0.54 0.29
米国 0.22 0.10 0.09 0.10 0.17 0.51 1.46 0.28
スペイン 0.17 0.07 0.07 0.04 0.09 0.37 1.46 0.25
世界平均 0.18 0.17 0.20 0.18 0.15 0.30 0.35 0.22

出所:中国海関総署「輸入不許可食品リスト(未准入境食品化妝品信息)」、S&P Global GTA(輸入額)を基にジェトロ作成

以上の分析から、2019~2025年の輸入不許可件数の増加は、制度変更、国・地域別、品目別の構造的要因、検査体制の強化が複合的に作用した結果であることが分かる。以下では、こうした傾向がどの税関に集中して現れているのかを検討する。

主要税関に集中する不許可:上海・天津・深セン・広州で全体の約56%

税関別に見ると、上海4,037件、天津2,968件、深セン2,778件、広州1,992件の順に多く、上位4税関だけで全体の56.4%を占める(表5参照)。中国の主要輸入港に審査が集中している構造を示している。

2024~2025年の急増局面では、この集中がさらに顕著となった。上海は2023年の404件から2024年に994件(2.5倍)、2025年に1,346件へと2年連続で急増した。天津も2024年に862件と前年比3倍超に跳ね上がったが、2025年は769件と落ち着いた。深センは2025年に946件と前年比2倍超となり、広州は400件台で横ばいが続く。

輸出実務の観点から見ると、仕向け税関は輸入業者の倉庫所在地によって決まるため輸出者側が自由に選択できる場合は限られるが、仕向け先の設定を検討できる場合には、特定の税関での審査強化動向を把握することが参考になり得る。

表5:中国の主要税関別の輸入不許可食品件数(2019~2025年)(単位:件)
税関 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年 合計
上海 359 297 347 290 404 994 1,346 4,037
天津 151 259 341 305 281 862 769 2,968
深セン 210 141 466 357 214 444 946 2,778
広州 66 111 283 346 348 433 405 1,992
青島 185 196 224 257 187 178 221 1,448
アモイ 141 176 167 194 212 176 173 1,239
寧波 94 121 296 133 89 107 90 930
湛江 12 36 68 169 70 254 154 763
福州 56 69 113 170 83 115 43 649
南寧 98 120 84 126 42 51 120 641
黄埔 68 78 198 60 68 47 74 593
大連 43 91 33 66 62 54 50 399
北京 22 37 30 140 24 30 56 339
ウルムチ 19 46 19 5 51 98 98 336
拱北 64 17 22 34 20 109 55 321
合計(その他含む) 1,785 1,985 2,883 2,818 2,339 4,189 4,876 20,875

出所:中国海関総署「輸入不許可食品リスト(未准入境食品化妝品信息)」を基にジェトロ作成

248号施行時の混乱が示す「移行期リスク」の構造

全産地のRI(件/1,000万ドル)でフェーズを比較すると、フェーズ(1)(0.18件/1,000万ドル)→フェーズ(2)(0.17件、対(1)比0.92倍)→フェーズ(3)(0.33件、対(1)比1.77倍)と推移している(表6参照)。フェーズ(2)で全産地RIが低下(件数増・輸入額増の結果)しているのに対し、日本産RIはフェーズ(2)で2.60件(対(1)比1.16倍)、フェーズ(3)で5.22件(対(1)比2.33倍)と一貫して上昇しており、日本産の全産地との乖離が拡大していることが示される。

248号が施行された2022年のフェーズ(2)では、登録番号の表示形式の微細な差異や住所表記の揺れ(「1丁目2番3号」vs「1-2-3」など)が不一致と判定され、数カ月にわたる書類違反の急増を招いた。「書類・登録」違反は2021年(1,018件)から2022年(1,101件)に約8%増加し、月平均では61件(フェーズ(1))から82件(フェーズ(2))へ上昇した。この混乱は、制度自体の変化が比較的小さい場合でも、書類の整合性がとれているかの確認漏れが実害に直結することを示している。

表6:中国の3フェーズ区分の輸入不許可食品件数(ーは値なし)注:月平均件数は各期間の総件数を対象月数で除した値。対(1)比は(1)期を基準とした倍率。
フェーズ区分 対象期間 対象月数 合計件数
(件)
月平均件数
(件)
不許可強度
(件/1,000万ドル)
対(1)強度比
(倍)
上位品目
(件数順)
(1)旧規定期 2019年1月〜2021年12月 36 6,653 184.80 0.18 魚介類
その他調製食品
穀物調製品・パン・菓子類
(2)248号
施行・定着期
2022年1月〜2023年12月 24 5,157 214.90 0.17 0.92 魚介類
その他調製食品
飲料・酒類
(3)審査強化・
280号移行準備期
2024年1月〜2025年12月 24 9,065 377.70 0.33 1.77 肉類
魚介類
飲料・酒類

注:月平均件数は各期間の総件数を対象月数で除した値。対(1)比は(1)期を基準とした倍率。

出所:中国海関総署「輸入不許可食品リスト(未准入境食品化妝品信息)」、S&P Global GTA(輸入額)を基にジェトロ作成

2026年6月の280号施行に向けた輸出企業の対応

2025年10月14日に公布された280号(2026年6月1日施行予定)(注1)は、248号を全面的に置き換える。主な変更点は3つだ。第1に、所在国・地域政府による税関総署への登録の推薦が必要な品目を従来の18品目からリストによる管理へ移行(リスクベース管理への転換)。第2に、登録有効期限満了後の自動延長制度の導入(ただし違反企業などは対象外)。第3に、食品の内外包装への登録番号記載義務の明確化だ。現行の248号に基づく登録は280号施行後も引き続き有効とされているが、リストなどの細則は別途公表予定であり、品目によっては再登録が必要となる可能性がある。

この移行は、248号施行時と構造的に類似した混乱を再び生じさせるリスクがある。248号から280号への移行期には登録手続きに通常より長い時間を要することが見込まれており、輸出スケジュールへの影響に備えた準備が必要だ。

こうした状況を踏まえ、輸出企業は以下の対応を早急に講じることが求められる。

第1に、現行の248号登録情報(CIFER)と日本側の各種書類(輸出証明書・Invoice・ラベル)との表記の完全一致を今すぐ確認することだ。住所・社名・製品名のわずかな表記の揺れが、通関審査での不一致と判定され、書類違反につながり得る。2022年の混乱はその実例であり、280号移行時にも同様のリスクが生じると考えられる。

第2に、280号の細則・品目リストの公表状況を継続的にモニタリングすることだ。リスト方式への移行により、自社の輸出品目が新たに登録の対象となる可能性がある。細則の内容次第では、追加の登録手続きが必要となる品目が生じる点に留意が必要だ。

第3に、施行直後の2026年6月~8月を「高リスク期間」と位置付け、在庫を前倒しで確保することを検討することだ。248号施行時の事例が示すように、移行期には書類処理の遅延や不許可リスクが集中しやすい。5月中に通常の1~2カ月分の在庫を保税区などに積み込む選択肢も有効だ。

第4に、自社の産地・品目に応じた違反リスクを把握した上で対応することだ。特に動物性食品(肉類・水産物)を扱う企業は、使用している動物用薬剤の中国基準適合を確認すること。2025年の「添加物・化学成分」違反の急増が示すように、中国基準と輸出国基準の乖離は実際に大量の不許可として現れており、日本産は68件(3.7%)にとどまるものの、中国基準の動向把握は継続して必要だ。

第5に、248号/280号の登録有効期限(5年)の管理と、製品・製造ライン変更時の再申請手続きを社内で整備することだ。登録企業であっても書類不備による不許可は発生し得る。登録情報の定期的な棚卸しが不可欠だ。

続く日本編では、日本産食品に特化して詳細分析するとともに、世界平均RIとの比較結果などを報告する。


注1:
2025年10月23日付ビジネス短信「輸入食品海外製造企業登録管理規定を公布、2026年6月から施行」参照。名称は旧規定と同様。 本文に戻る
注2:
Gale, Fred. (2021). China's Refusals of Food Imports. ERR-286, USDA Economic Research Service. 本文に戻る
注3:
不許可強度(Refusal Intensity: RI)は不許可件数を輸入額(1,000万ドル)で除した値。 本文に戻る
注4:
違反分類は中国海関総署「輸入不許可食品リスト(未准入境食品化妝品信息)」の先頭記載違反理由による代表分類。 本文に戻る
注5:
2026年2月16日付ビジネス短信「海関(税関)データを集計分析、2025年の食品輸入不許可事案は4,884件」はこの動向を肉類の品質問題として報告している。 本文に戻る

中国食品輸入規制分析

執筆者紹介
ジェトロ・青島事務所長
皆川 幸夫(みながわ ゆきお)
1992年、ジェトロ入構。ジェトロ・北京事務所、海外開発協会(出向)、海外展開支援部主幹、日本台湾交流協会(出向)などを経て、2024年8月から現職。