輸入不許可の60%が書類違反(日本編)
中国食品輸入規制分析(2)

2026年5月22日

本稿は「輸入不許可急増と違反構造の変化-中国食品輸入規制分析(世界編)」の続編として、日本産食品に特化した分析結果を報告する。

ポイントは次の3点だ。第1に、日本産食品の不許可強度(RI)(注1)は世界平均より高い(累積RI:2.91対0.22)。第2に、不許可の6割が「書類・登録」違反だ。第3に、「書類・登録」違反6割という構造は7年間・後述の4期間を通じて改善されていない。

分析対象は、中国海関総署(GACC)が毎月公表する「輸入不許可食品リスト(未准入境食品化妝品信息)」のうち2019年1月から2025年12月までの7年間(日本産2,338件、非食品を除く)とし、米国農務省(USDA)経済調査局のGale(2021)による先行研究(ERR-286)の手法も参考にしつつ、独自に分析を行った。また、直近動向として2026年2月までの4カ月(2025年11月~2026年2月)を追加分析対象として含める。

日本産食品、「書類・登録」違反が最多

世界編の全産地3フェーズ区分を踏まえ、日本産食品については水産物輸入停止・一部水産物の条件付輸入再開を軸とした4期間((1)旧規定期2019/01~2021/12、(2)248号期2022/01~2023/07、(3)水産物輸入停止期2023/08~2025/05、(4)一部水産物の条件付輸入再開後2025/06~2025/12)に区分して分析する。

中国の日本産食品輸入額は2022年の16億984万ドルをピークに減少に転じ、2025年には7億7,187万ドルとピーク比52%減の水準にとどまっている。日本産水産物の輸入停止が発表された2023年8月以降、不許可件数が増加した月がみられたほか、輸入額は低迷が続いた(図参照)。

図:日本産食品の輸入不許可件数と輸入額の推移(2019年1月~2025年12月)
2019年1月から2025年12月までの複合グラフ。左軸は日本産食品の輸入不許可件数(棒グラフ)と右軸は輸入額(折れ線)の月次推移を表示。背景帯で4フェーズを色分け。フェーズ1、旧規定期2019年1月から2021年12月まで。月平均件数23.4件、輸入額は月平均1億410万ドルで安定推移。フェーズ2、248号期2022年1月から2023年7月まで。件数・輸入額ともにほぼ横ばい。輸入額は2022年に年計16億980万ドルでピーク。フェーズ3、水産物輸入停止期2023年8月から2025年5月まで。2023年8月の中国による日本産水産物輸入停止措置後、輸入額が月平均5,740万ドルに急落する一方、件数は増加傾向に転じ2024年2月に月最大92件を記録、月平均は34.5件。フェーズ4、一部水産物の条件付輸入再開後2025年6月から2025年12月まで。輸入額は月平均6,830万ドルとやや回復するが、件数は月平均31.4件と高止まり。2022年ピーク比で2025年の輸入額は約52%減。

出所:中国海関総署「輸入不許可食品リスト(未准入境食品化妝品信息)」、S&P Global GTA(輸入額)を基にジェトロ作成

日本産食品のRI(件/1,000万ドル)は、2019〜2025年の累積で2.91となった(表1参照)(注2)。年次推移を見ると、日本産食品のRIは2024年に5.83件とピークに達しており、全期間を通じて世界平均を大幅に上回っている。

表1:日本産食品と世界平均との不許可強度比較(2019~2025年)注:世界平均不許可強度は世界(全産地合計)不許可件数÷中国の食品輸入総額(HS02~05+HS07~22章合計-大豆-天然ゴム)。
日本産
不許可件数
(件)
日本産輸入額
(1,000万ドル)
日本産
不許可強度
(件/1,000万ドル)
世界
不許可件数
(件)
中国の食品輸入総額
(1,000万ドル)
世界平均
不許可強度
(件/1,000万ドル)
日本/世界
比率(倍)
2019 270 110 2.46 1,785 9,819 0.18 13.5
2020 207 114 1.82 1,985 11,586 0.17 10.6
2021 364 151 2.41 2,883 14,627 0.20 12.2
2022 318 161 1.98 2,818 15,247 0.18 10.7
2023 423 124 3.42 2,339 15,250 0.15 22.3
2024 394 68 5.83 4,189 13,977 0.30 19.4
2025 362 77 4.69 4,876 13,824 0.35 13.3
累積
(2019-25)
2,338 804 2.91 20,875 94,330 0.22 13.1

注:世界平均不許可強度は世界(全産地合計)不許可件数÷中国の食品輸入総額(HS02~05+HS07~22章合計-大豆-天然ゴム)。

出所:中国海関総署GACC「輸入不許可食品リスト(未准入境食品化妝品信息)」、S&P Global GTA(輸入額)を基にジェトロ作成

4期間の比較:RIが(3)期から高止まり

日本産食品の不許可動向を4期間で比較すると、月平均件数は(1)旧規定期23.36件→(2)248号期27.63件→(3)水産物輸入停止期34.18件→(4)一部水産物の条件付輸入再開後31.43件と推移している。RIで見ると、(1)旧規定期2.24→(2)248号期2.09・対(1)比0.93倍→(3)停止期5.76・対(1)比2.57倍→(4)再開後4.60・対(1)比2.05倍と推移し、(3)期に急上昇した後、(4)期でも高水準が続いている(表2参照)。

(3)期にRIが急上昇した主因は、水産物輸入停止による日本産食品輸入額の急減((2)期比48%減の13億549万ドル)だ。件数は34.18件/月と増加しているにもかかわらず輸入額の大幅縮小が分母を押し下げた結果、RIが急上昇した。(4)一部水産物の条件付輸入再開後(2025年6~12月)もRIは4.60と依然高水準を維持した。品目構成の変化も顕著であり、(1)期はその他調製食品と穀物調製品が上位を占めていたが、(4)期には飲料・酒類が全体の66.8%を占めた。

表2:日本産食品の輸入不許可件数と不許可強度(RI)の4期間比較注1:月平均は各期間の総件数÷月数。 注2:対(1)強度比は(1)期を基準とした強度倍率。
期間区分 対象期間 対象
月数
合計
件数(件)
月平均
件数(件)
不許可強度
(件/1,000万
ドル)
対(1)
強度比(倍)
上位品目
(輸入不許可件数順)
(1)旧規定期 2019年1月〜2021年12月 36 841 23.36 2.24 その他調製食品
穀物調製品・パン・菓子類
飲料・酒類
(2)248号期 2022年1月〜2023年7月 19 525 27.63 2.09 0.93 その他調製食品
飲料・酒類
穀物調製品・パン・菓子類
(3)水産物輸入停止期 2023年8月〜2025年5月 22 752 34.18 5.76 2.57 飲料・酒類
その他調製食品
穀物調製品・パン・菓子類
(4)一部水産物の条件付輸入再開後 2025年6月〜2025年12月 7 220 31.43 4.60 2.05 飲料・酒類
その他調製食品
穀物調製品・パン・菓子類

注1:月平均は各期間の総件数÷月数。
注2:対(1)強度比は(1)期を基準とした強度倍率。

出所:中国海関総署「輸入不許可食品リスト(未准入境食品化妝品信息)」、S&P Global GTA(輸入額)を基にジェトロ作成

2025年11月以降の動向:アモイでの書類違反集中と2023年停止との比較

2025年11月以降(注3)の4カ月(2025年11月~2026年2月)の不許可動向を分析すると、規制の影響と構造的な書類違反という2つの要因が複合していることが確認される(表3参照)。

表3:2025年11月以降4カ月の日本産食品不許可動向(2025年11月~2026年2月)(単位:件)注:水産物(魚介類)は全4カ月でゼロ継続。
件数 主な品目 主な違反 備考
2025年11月 19件 飲料・酒類10件 書類13件 深セン9件・上海8件
2025年12月 7件 調製食品3件・菓子3件 品質4件 上海5件
2026年1月 36件 飲料・酒類23件 書類27件 アモイに22件集中
2026年2月 14件 菓子類6件・でんぷん・小麦粉3件 品質9件 上海10件・深セン4件

注:水産物(魚介類)は全4カ月でゼロ継続。

出所:中国海関総署「輸入不許可食品リスト(未准入境食品化妝品信息)」を基にジェトロ作成

同期間の最大の特徴は、2026年1月の36件への急増だ。この急増の主因は、アモイ税関での飲料・酒類22件(全件「書類・登録」違反)の集中によるものだ。特定の税関・品目・時期への書類違反の集中という状況は、2023年の天津での冷菓類集中事案にも共通して確認されており、その原因の詳細はデータから特定できない。ちなみに、水産物(魚介類)の不許可件数は4カ月を通じてゼロが継続している(注4)

2月は品目が菓子類・でんぷん・小麦粉に分散し、違反も「品質」9件と構成が変化した。1月の集中事案が一巡した後の通常水準への回帰と解釈される。不許可強度(RI)は、2026年1~2月の累積で5.14件/1,000万ドルとなった(日本産2カ月計50件÷輸入額9,726万ドル)。なお、1月はアモイでの集中事案(22件)を含む特殊な月であり、2カ月・50件という小サンプルの数値として参考値にとどまる点に留意が必要だ。その上で、(4)期(2025年6~12月、RI:4.60)と比較しても高水準であることが確認でき、2025年11月以降も日本産食品の不許可強度の改善傾向はみられない。

2023年8月と比較すると、2023年10月は54件(通常水準への回復)であったのに対し、2026年1月は36件と水準としては低めだ。ただし、2026年1月はアモイでの集中事案という特殊要因を含んでおり、その一巡後の2月(14件)が真の水準感に近い可能性がある。いずれにせよ、2つの時期に共通するのは「水産物はゼロ・飲料と調製食品の書類違反は継続」という状況だ。

書類・登録違反が主因:加工食品・飲料に集中する構造

品目別では、その他調製食品(614件・構成比26.3%)、飲料・酒類(574件・24.6%)、穀物調製品・パン・菓子類(486件・20.8%)の3品目で全体の71.7%を占める(表4参照)。いずれの品目でも「書類・登録」違反が最多であり、加工食品・飲料に集中する構造は7年間を通じて変わっていない。

飲料・酒類は2022年(74件)から急増し、2025年には184件と全品目中最多となり、全体の50.8%を占めた。違反の中心は「書類・登録」(133件)であり、日本酒を中心とした輸出拡大とGACC登録対応との間にタイムラグが生じている可能性が示唆される。また2025年には「その他」28件が突出しているが、全件が天津税関における輸入業者の自主回収に伴うものであった。その他調製食品(614件)は2023年に「ラベル・表示」違反が90件と急増した。不許可リストによれば冷菓・アイスクリーム類が主体であり、天津税関に集中(78件・86.7%)していた。複数の大手メーカーが同時に不許可を受けており、天津税関における冷菓類のラベル表示要件への集中的な審査強化が一時的に行われたと考えられる。野菜・果物調製品等(151件)は「書類・登録」が93.4%と極端に集中している一方、2019年(66件)から年々減少しており、対応が進んできていることを示唆する。

魚介類は2023年8月の水産物輸入停止後に件数がゼロとなっており、2025年6月の一部輸入再開後も不許可リストへの反映はない。輸入統計でも2025年6月以降の日本産食品全体の月平均輸入額は輸入停止前(2019年1月~2025年5月)の約7割にとどまっており、通関実態としての輸入回復は緩慢だ。

表4:日本産食品の品目別・年別の輸入不許可件数(2019~2025年)(単位:件、カッコ内は構成比)
品目(HS2桁) 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年 合計
(構成比%)
[21]その他調製食品 39 61 110 79 173 98 54 614
(26.3%)
[22]飲料・酒類 37 48 17 74 90 124 184 574
(24.6%)
[19]穀物調製品・パン・菓子類 58 25 127 73 57 93 53 486
(20.8%)
[17]砂糖・菓子 32 16 49 25 40 43 39 244
(10.4%)
[20]野菜・果物調製品等 66 13 19 21 24 5 3 151
(6.5%)
[18]ココア・チョコレート 0 8 20 8 18 27 16 97
(4.1%)
[03]魚介類 20 4 11 28 11 0 0 74
(3.2%)
[09]コーヒー・茶・香辛料 12 22 3 1 0 1 7 46
(2.0%)
[16]肉・魚調製品 0 6 4 6 8 0 0 24
(1.0%)
[11]でんぷん・小麦粉 2 0 0 0 1 0 5 8
(0.3%)
[08]果物・ナッツ 0 3 0 0 0 1 1 5
(0.2%)
[15]食用油脂 1 1 1 1 1 0 0 5
(0.2%)
[13]植物性エキス 3 0 0 0 0 0 0 3
(0.1%)
[07]野菜 0 0 0 0 0 2 0 2
(0.1%)
[12]油糧種子 0 0 2 0 0 0 0 2
(0.1%)
[04]乳製品・卵・蜂蜜 0 0 1 1 0 0 0 2
(0.1%)
[05]動物性生産品 0 0 0 1 0 0 0 1
(0.0%)
合計 270 207 364 318 423 394 362 2,338
(100.0%)

出所:中国海関総署「輸入不許可食品リスト(未准入境食品化妝品信息)」を基にジェトロ作成

主要税関に集中:上海・天津・寧波・深センで全体の6割

日本産食品の不許可が集中する税関は、上海(704件・30.1%)、天津(271件・11.6%)、寧波(253件・10.8%)、深セン(244件・10.4%)の順であり、上位4税関だけで全体の63.0%を占める(表5参照)。全税関を通じて「書類・登録」が主要な違反分類(60.2%)であるが、税関ごとに特徴的な動向がみられる。

天津は2023年に83件と急増したが2024年に24件へ急減し、2025年には105件と再増するなど変動が大きい。2023年急増はその他調製食品の「ラベル・表示」違反(78件・94%)が主因であり、2024年急減は当該審査が一巡したことによると思われる。2025年の再増加は飲料・酒類(97件)が主因で、「書類・登録」(67件)と自主回収を含む「その他」(27件)が中心となっている。上海は2023年以降、2024年(194件)・2025年(147件)と高水準を維持している。上海の特徴として「品質保証期限切れ」の比率が9.8%と他税関より高く、消費財・菓子類の取り扱いが多いことが挙げられる。寧波は2021年に86件と急増(穀物調製品の「書類・登録」が主因)した後、2022年以降は減少に転じており、当時の問題が解消されたことを示す。内陸税関では鄭州(2025年17件)・成都(2024年9件)で近年不許可が発生しており、日本産食品などの中国内陸部への浸透に伴う検査体制の拡充が示唆される。

表5:日本産食品の主要税関別・年別の輸入不許可件数(2019~2025年)(単位:件)
税関 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年 合計
上海 69 56 37 64 137 194 147 704
天津 15 18 13 13 83 24 105 271
寧波 28 65 86 23 25 23 3 253
深セン 11 12 64 105 17 11 24 244
広州 1 9 31 24 21 66 11 163
黄埔 14 3 95 5 38 1 0 156
青島 81 0 9 15 16 17 7 145
大連 9 8 9 26 38 11 16 117
アモイ 19 3 2 16 2 13 7 62
南京 2 4 2 7 3 12 15 45
福州 1 3 1 1 24 3 0 33
北京 3 3 1 6 6 3 6 28
合計(その他含む) 270 207 364 318 423 394 362 2,338

出所:中国海関総署「輸入不許可食品リスト(未准入境食品化妝品信息)」を基にジェトロ作成

280号施行に向けた輸出企業の優先対応

2026年6月1日に施行予定の280号(注5)は248号を全面的に置き換える。「書類・登録」違反が60.2%を占める日本産食品にとって、この移行は特に重要なリスク要因となる。248号施行時(2022年フェーズ(2))には月平均不許可件数が上昇した経緯があり、280号移行時にも類似した混乱が生じるリスクがある。また、地政学的リスクが突発的に顕在化する可能性も念頭に置いた準備が求められる。

第1に、海関総署登録(CIFER)情報と農林水産省の輸出証明書・Invoice・ラベルとの「1文字単位」の表記完全一致を確認することだ。住所・社名・製品名の表記の揺れが書類違反につながる可能性がある。「書類・登録」違反が60.2%を占める日本産にとって、これが最も即効性のある対策だ。5年更新制のため有効期限管理も不可欠だ。

第2に、280号の細則・品目リストの公表状況を継続的にモニタリングすることだ。リスト方式への移行により、自社の輸出品目が新たに登録の対象となる可能性がある。現行の248号に基づく登録は280号施行後も引き続き有効とされているが、細則の内容次第では再登録が必要な品目が生じる可能性がある。

第3に、施行直後の2026年6~8月を「高リスク期間」と位置づけ、在庫の前倒し確保を検討することだ。通常の1~2カ月分の在庫を保税区などに積み込む選択肢も有効だ。飲料・酒類を輸出する企業は、2025年の天津税関での自主回収事案を踏まえ、輸入業者側の登録管理状況も含めたサプライチェーン全体の書類整合性確認が必要だ。

第4に、中国向け輸出の書類・登録コンプライアンス体制を強化しつつ、輸出先市場の多様化も中長期的な経営課題として視野に入れることが考えられる。日本産水産物の輸入停止・規制再強化の事例が示すように、こうした状況は短期間で食品輸出規制の大幅な変更をもたらし得る。中国向け食品輸出に携わる企業は、規制環境の変化を継続的にモニタリングすることが不可欠だ。


注1:
Gale, Fred. (2021). China's Refusals of Food Imports. ERR-286, USDA Economic Research Service. 本文に戻る
注2:
累積RI比(2.91÷0.22=約13倍)。年別倍率の算術平均(14.6倍)とは計算方式が異なる。なお、RIは不許可1件当たりのロット単価の高低によって数値にバイアスが生じ得る点に留意が必要である。 本文に戻る
注3:
2025年11月に外交部記者会見で日本産水産物に関する言及がなされた。 本文に戻る
注4:
不許可リストは輸入申告後に拒否された件数のみを計上する。申告自体がなされなかった件数は含まれない。2023年8月以降の日本産魚介類不許可件数がゼロであるのはこの制度的制約によるとみられる。 本文に戻る
注5:
2025年10月23日付ビジネス短信「輸入食品海外製造企業登録管理規定を公布、2026年6月から施行」参照。 本文に戻る

中国食品輸入規制分析

執筆者紹介
ジェトロ・青島事務所長
皆川 幸夫(みながわ ゆきお)
1992年、ジェトロ入構。ジェトロ・北京事務所、海外開発協会(出向)、海外展開支援部主幹、日本台湾交流協会(出向)などを経て、2024年8月から現職。