米国ハワイ州の再生可能エネルギー普及への取り組みと課題
カーボン・ネガティブへの挑戦

2026年6月3日

米国ではトランプ政権下で環境規制の緩和、助成金・税額控除制度の撤回・停止など連邦政府による環境政策が後退する中で、脱炭素化・再生可能エネルギー(再エネ)普及に向けた取り組みに対しては強い逆風となっている。こうした状況下でも脱炭素化に向けて独自に環境政策に取り組む州・地域もみられるが、ハワイ州もその1つだ。 2008年、ハワイ州と米国エネルギー省は輸入化石燃料への過度な依存を低減するための協力に関する覚書を締結した。これを機に、同州は「ハワイ・クリーン・エネルギー・イニシアチブ」(HCEI)を発足した。その後、ハワイ州は2045年までに再エネ比率100%を達成するという基準を全米でいち早く法制化し、エネルギーに関する計画、予算、規制、組織体制の変革に取り組んできた。

本稿ではハワイ州におけるエネルギー事情、同州における取り組み・インセンティブ、日系企業の動向を概観した上で、有識者へのヒアリングを基に今後の課題・展望について考察する。

ハワイ州のエネルギー事情

米国エネルギー情報局(EIA)のデータによると、ハワイ州における再エネ比率は増加しており、中でも太陽光の割合が近年大きく増加している(図1参照)。特に屋根置き型太陽光発電が急速に普及しており、同州は米国における人口1人当たりの設備導入量で全米1位となっている。

ハワイ州の発表では2025年の電源構成に占める再エネ比率は36%まで上昇しており、再エネの発電比率は高い順に太陽光、風力、バイオマス、地熱、水力と続く。また、ハワイ州では2022年9月以後、石炭による発電がゼロとなっている。これは2020年にエネルギー生産のための石炭使用を禁止する法案(Act23)が可決し、2022年9月をもって唯一稼働していた火力発電施設に関する電力購入契約が終了し、同施設が廃止されたことによる。

他方で、特徴的なのは石油による発電の割合が高い点だ。2025年における全米の電源構成に占める再エネ比率が26%であることを踏まえると、ハワイ州は相対的に取り組みが進んでいると評価できる。しかし、電源としての石油使用に関しては、中長期的には使用割合が減少しているとはいえ、全米の石油利用割合が3%であるのに対して、ハワイ州では61%と石油依存度が非常に高く、特異な構造となっている(図2参照)。

図1:ハワイ州における電源構成割合の推移
2009年、2014年、2019年、2024年のハワイ州における電源構成割合を示す。太陽光発電の割合が徐々に大きくなるとともに、石炭による発電は2024年にはゼロとなっている。石油による発電もシェアは低下しているが、依然61%と高い割合を占めている。

出所:EIA(米国エネルギー情報局)のデータからジェトロ作成

図2:ハワイ州と米国の電源構成割合比較(2024年)
2024年におけるハワイ州と米国の電源構成割合を示している。米国全体に比べてハワイ州では太陽光発電の割合が高いといった特徴があるが、石油による発電については全米の3%に対してハワイ州は61%と非常に大きくなっている。

出所:EIA(米国エネルギー情報局)のデータからジェトロ作成

ハワイでは石油が産出されないため、同州で利用される石油は輸入に依存しており、燃料価格の動向が電気料金に直結する。その結果、ハワイ州の2024年の電気料金は小売り平均単価が38セント/キロワット時(kWh)であり、全米の約13セント/kWhと比べて約3倍もの開きが生じている。

ハワイ州における取り組みとインセンティブ

前述のとおり、ハワイ州はエネルギー需要を賄うために大部分を輸入化石燃料に依存してきたことにより、同州における電力供給や電気料金が化石燃料の供給・価格動向の影響を受けやすい構造となっていた。その一方で、発電に利用可能な風力、太陽光、地熱といった天然資源が豊富にあり、潜在的な再エネ転換余力が大きいとみられていた。こうした背景を踏まえ、同州では早い段階から順次、目標設定や取り組みが進められてきた(表参照)。

ハワイ州では2001年に初めて電力事業者に対して再エネ・ポートフォリオ基準(RPS)が法定された。当時の目標は2003年末までに電力販売量の7%、2005年末までに8%、2010年末までに9%を再エネで賄うという段階的かつ控えめなものだった。

その後、2008年にハワイ州と米国エネルギー省が輸入化石燃料への過度な依存を低減するための協力に関する覚書を締結した。これを機に、同州は「ハワイ・クリーン・エネルギー・イニシアチブ(HCEI)」を発足させた。HCEIは同州におけるエネルギーに関する計画、予算、規制、組織体制の変革を主導することとなった。

2015年には2045年までに再エネ発電の割合を段階的に100%まで引き上げるという目標を掲げた法案を成立させた。完全再エネ化を立法化したのは同州が全米初となっている。また、2018年には2045年までにカーボン・ニュートラルを達成する方針を採択している。さらに、2022年には「実行可能な限り速やかに、かつ遅くとも2045年までには、州内で排出される量よりも多くの大気中の炭素および温室効果ガス(GHG)を吸収する」というカーボン・ネガティブ目標を打ち出した。

そして2025年1月、ハワイ島、カウアイ島、マウイ島においては2035年までに100%再エネ化を達成し、オアフ島においては2005年を基準として、2035年までに電力部門からの温室効果ガス排出量を70%削減するという目標を掲げた。

表:ハワイ州における主な気候変動目標設定・取り組みの推移
内容
2001年 再エネ・ポートフォリオ基準を初めて設定
2008年 ハワイ・クリーン・エネルギー・イニシアチブ(HCEI)発足
2015年 2045年までに電力会社による再エネ比率100%達成を立法化
2018年 2045年までにカーボン・ニュートラル達成目標を設定
2022年 カーボン・ネガティブ目標を設定
2025年 オアフ島以外の島の再エネ比率100%達成を2035年までに設定し、オアフ島については2035年までに温室効果ガス排出量を70%削減と設定

出所:ハワイ州エネルギー局のウェブサイトからジェトロ作成

この間、さまざまなインセンティブ・政策を推進してきた。例えば税制面では再生可能エネルギー技術所得税額控除制度(RETITC)が挙げられる。同制度は、太陽光や水力、風力などの設備の実費に対して一定割合もしくは上限額(注1)を所得・法人税額から控除できる制度となっている。また、再生可能燃料を生産・販売している企業に適用される再生可能燃料生産税額控除制度(RFPTC)もあり、バイオディーゼル、持続可能な航空燃料(SAF)、水素などを対象に年間350万ドルを上限に最長10年間、税額控除が可能だ。

気候変動対策に係る事業を実施する場合には、さまざまな許認可を把握する必要がある。HCEIを実行・運営する中核的機関であるハワイ州エネルギー局のウェブサイトでは、連邦、州、郡ごとに必要となる許認可リストを掲載するとともに、コンサルタントの情報を提供するなど、ソフト面での支援も積極的に実施している。さらに、同州全域で行われるエネルギー関連プロジェクトをマップにして可視化するなどの取り組みも行っている。

そのほか、2025年5月には全米初となる気候変動対策のグリーンフィー法を成立させた。宿泊税引き上げなどによって得た収入を気候変動対策に充てることとしている(2025年5月29日付ビジネス短信参照)。こうした取り組みなどから、全米でも先進的な政策を実施してきている。

日系企業の動向

ハワイ州で再エネ比率目標が掲げられて以降、日本企業の関わりも増えてきている。例えば、豊田通商が2017年にオアフ島で太陽光発電事業を開始した。また、2018年には東京電力とJTBが同州の太陽光発電・蓄電池事業者に出資し、同事業に取り組むなどの動きがある。さらに、2025年7月には三菱商事、ENEOSが再生可能燃料生産事業に参画し、SAFの生産などを実施することになっている(2025年7月28日付ビジネス短信参照)。

こうした中で、10月15日にはJERAがハワイ州政府との間で、同州の脱炭素化などに関する協業のための戦略的パートナーシップ協定を締結したことが発表された。JERAは石油から天然ガス、さらにアンモニア、水素といったより低炭素・ゼロカーボン燃料への移行支援や、電力グリッド(送配電網)の安定性維持、省エネルギーの促進などの取り組みを実施する。本協定に基づき、2026年3月には同州のエネルギー転換を支援する提案を行うとともに、約20億ドルを投じて電力グリッドの強靭(きょうじん)性を高めるため、老朽化した発電設備の更新や液化天然ガス(LNG)関連インフラへの投資を行う予定とされる(2026年3月27日付ビジネス短信参照)。

再エネ比率100%、カーボン・ネガティブに向けた課題と展望

前述のとおり、ハワイ州ではいち早く目標を掲げ、再生可能エネルギー普及に向けて積極的に取り組んできた。他方で依然、石油依存度が高いなどの構造的な事情もある。今後、ハワイ州が目標として設定している再エネ比率100%、カーボン・ネガティブを達成するための課題や展望について、ハワイ大学マノア校経済学部の樽井礼教授にヒアリングを行った(取材日:2026年5月14日)。

まずこれまでの評価として、樽井教授は全米に先駆けて再エネ100%目標を採り入れた点を強調した。「ハワイにとってもそうだが、他州が再エネ目標を導入することを誘発する意味でも大きかった。同州ではこれまでのところペースとしては目標を達成する水準となっている。分散型電源に関する取り組みが進んでおり、特に屋根置き型太陽光発電の普及率は全米の中でも特筆すべき」と樽井教授は述べる。

足下では、トランプ政権による気候変動対策に関する政策変更により、米国全体として後退が懸念されており、ハワイ州内でも税額控除制度の縮小・廃止が議論されている。このような状況下でも、第2次トランプ政権発足以後、ハワイ州は従来の再エネ目標を維持し、引き続き積極的に取り組む姿勢を示している。ただし、連邦レベルでの税額控除制度などのインセンティブが縮小・停止している中で、その負の影響は避けられないという見方を示している。

「実際に、(再エネ関連の)工場や施設の工事計画が立ち消えになったケースも出てきている。ハワイ州では家庭ベースでの太陽光発電が普及しているが、今後、残りの家庭でも太陽光発電を推進していくとなったときに、現在導入されていない場所は資産制約がある、導入に関心が低い家庭が多いといった可能性が高い。連邦からの助成がなくなることは目標達成に向けた課題となってくる」とコメントしている。石油価格高騰に伴い電気料金が上がり、相対的に太陽光発電を導入している家庭の方がフローとしての電気料金が低い中で、太陽光発電導入に係る投資回収期間は短くなってきている。したがって、こうしたメリットを未導入の家庭がどう捉えるかが重要と指摘する。

そして、今後再エネ比率を高めていく上での課題については、ハワイ州では利用できる土地に制約があるという問題がある中で、メガソーラーなどを導入する余地は十分あるということだ。ただし、「再エネ導入を目指す外部事業者が入札で選定されたものの、地元住民の理解や合意が十分得られず、計画が中止に至ったケースもある。こうした地域関係者との合意形成をいかに進めるかが大きな課題だ。また、土地利用規制も再エネ普及の障壁になっている。遊休農地を太陽光発電に転用すれば経済合理性が見込まれる場合でも、規制上容易に進まないケースがある。再エネ推進部門と土地利用規制を担当する部門との間で政策目的が必ずしも一致しておらず、いわゆる縦割り行政的な課題も存在する」と述べている。

さらに、電力事業に対する規制も課題という。

「ハワイ州では2021年に、従来型の公正報酬率規制(注2)に代わり、系統安定性や再エネ導入などの成果に応じて電力会社の収益を調整する成果連動型規制(Performance-based regulation, PBR)が導入された。これは米国の中でも比較的先進的な制度設計とされ、再エネ導入や分散型エネルギーの活用を促す狙いがあった。しかし、2023年のマウイ島山火事に関連する訴訟リスクの高まりによるハワイアン電力の資金調達コスト上昇に加え、大規模案件における許認可や土地利用調整の難しさ、関連設備コストの上昇、系統接続の制約などもあり、PBRだけでは再エネ導入を十分加速できていないのが現状だ。また、現在の制度下でも、自社保有設備への投資の方が収益につながりやすい構造が一定程度残っており、屋根置き太陽光や外部事業者からの電力購入を中心とした分散型再エネ導入との間で、制度的な整合性がなお課題として残っているとの指摘もある。一方で、PBR導入によって、従来型規制と比べれば再エネ導入や需要家側エネルギー活用へのインセンティブは一定程度強化されている。他方、マウイ島山火事以降は電力会社の財務状況や信用力にも影響が生じており、再エネ投資に必要な資金を良好な条件で調達しづらくなっている。結果として、再エネ推進と電力会社の財務安定性・系統安定性をどのように両立させるかが、現在の大きな政策課題となっている。こうした制度や規制のあり方も含め、電力事業者にとっても州経済にとっても持続可能なかたちを模索していく必要がある」とコメントしている。

今後の展望については、このペースで進めば、仮に連邦政府による税制優遇などのインセンティブが縮小しても、再エネ比率70~80%程度までは経済的にも無理なく到達可能との見通しを示した。ただし、「100%まで目指す段階では、最後の20~30%の実現が非常に難しい。特に長時間蓄電や再エネ大量導入下での系統安定化対策、土地利用規制の見直し、許認可をより円滑に進められる制度整備などが重要」という。

日本企業の関与も出てきている中で、今後、ハワイ州がこうした課題に向き合いながら、再エネ比率100%、カーボン・ネガティブ達成に向けてどのように取り組みを進めていくかが注目される。


注1:
例えば、一戸建て住宅用不動産の場合、太陽光であれば、実費の35%もしくは5,000ドルのいずれか低い額が適用される。 本文に戻る
注2:
事業者が保有する資産に対して適正な利益率を掛け合わせて料金を算定する手法。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ・ロサンゼルス事務所
堀永 卓弘(ほりなが たかひろ)
2011年財務省入省。財務省主計局調査課、理財局地方企画係、金融庁監督局銀行第二課、 個人情報保護委員会事務局、財務省大臣官房総合政策課などを経て、2023年7月からジェトロに出向、現職。