ウズベキスタンのグリーン、中東・中国台頭下で探る日本企業の可能性
2026年3月18日
中央アジアの一国であるウズベキスタンは、近年、国内のエネルギー資源の逼迫や環境負荷の増大を背景として、再生可能エネルギー(再エネ)を中心としたグリーン・エネルギー転換を加速させている。同国のエネルギー戦略は、外国政府や外資企業の積極的な関与によって支えられており、外資企業の参入動向、制度・インフラが抱える構造的制約、政府によるローカライゼーション政策の推進、国際的なESG基準との整合性など、多層的な観点からの分析が求められる。
本稿では、同国の再エネ分野を支える中東企業および中国企業が市場を主導する状況下で、ウズベキスタンが直面する技術面・人材面・規制面における課題を明らかにし、日本企業がウズベキスタンのグリーン・エネルギー分野において果たし得る役割について展望する。
経済成長・脱炭素化を背景にグリーン技術・再エネ開発を推進
ウズベキスタンでは、気候変動による国内影響の深刻化に加え、2017年以降の経済改革により産業活動と人口が拡大し、新たな電力需要が急増している(2025年5月8日付地域・分析レポート参照)。近年は、化学品や繊維などの主な輸出先の1つである欧州市場の炭素国境調整メカニズム(CBAM)(注)への対応も避けられず、産業部門の低炭素化が課題となっている。
このような背景から政府は再エネ導入やエネルギー効率化を柱とする行動計画を定期的に更新しており、太陽光・風力を中心とした再エネ設備の導入を拡大する方針だ。これに伴い国外の公的機関や民間企業も同国への投融資を進めている。
将来は余剰電力を欧州に輸出し国内IT産業で利用
ウズベキスタンは中央アジアやユーラシア地域の地理的中心に位置し、二重内陸国で物の貿易面では弱みを抱える。一方、周辺国との電力インフラ接続においては一定の地理的優位性を有する。
同国では2030年にかけて太陽光・風力などの再エネの大規模導入が進められており(2025年12月17日付ビジネス短信参照)、政府は必要な送電インフラが整備されることを条件に、2030年以降に再エネ由来の余剰電力を欧州向けに輸出する計画を立てている。これを実現させる構想として、「カスピ海・グリーン・エネルギー・コリドー(以下、グリーン・コリドー)」(表1)がある。2025年7月には、ウズベキスタンはカザフスタンおよびアゼルバイジャンとともに、グリーン・コリドーの開発を推進する合弁事業をバクーに設立しており、欧州向け電力輸出構想の実現に向けた制度面・インフラ面の検討が進められている。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 構想名 | カスピ海・グリーン・エネルギー・コリドー(注1) |
| 目的 | 中央アジア、コーカサス地域で発電した再エネ電力をカスピ海経由で欧州へ送電する広域電力連系構想 |
| 発電側の主要参加国 | ウズベキスタン、カザフスタン、アゼルバイジャン(注2) |
| 再エネ源の役割 | ウズベキスタンは主に太陽光・風力。2030年から100億~150億kWhの余剰電力の欧州への送電を開始する計画 |
| 送電ルート | 中央アジア →カザフスタン→ カスピ海 →アゼルバイジャン→ ジョージア → 欧州(ルーマニア)に接続 |
| メリット(ウズベキスタン側) |
(1)余剰電力の輸出収入源の創出 (2)中央アジアの地域ハブとしての地位向上 (3)国際プロジェクトによる資金調達の拡大 |
| メリット(EU側) |
(1)脱ロシア依存後の新たなグリーン電力供給源 (2)脱炭素に貢献する電力の長期確保 |
| 主な課題 |
長距離、広域送電線の整備費用が膨大。試算では20億ドルを超える(注3) 送電ケーブルの容量とパートナー国への接続などの連携 国際基準(環境・社会基準など)への適合 |
| 主な動向(2024~2026年) |
|
注1:「グリーン・コリドー」「グリーン・エネルギー・コリドー」などと表記されるケースもある。
注2:ウズベキスタン、カザフスタン、アゼルバイジャンの3カ国が主導。
注3:CESIによる試算をウズベキスタンのウミド・ママダミノフ・エネルギー副相(当時)が発表(「Kun.uz」2024年12月30日)。
注4:CESIは第一段階のFSを受注し、インフラの技術的、経済、規制、環境要件の実現可能性を評価する。
出所:各種報道からジェトロ作成
将来的な余剰電力の活用先としては、データセンターや人工知能(AI)関連産業など、大規模かつ安定した電力を必要とする分野への供給が検討されている。ウズベキスタン政府はIT産業育成を国家戦略と位置付けており、2030年までのデジタル戦略の達成目標を掲げ、国を挙げてITを活用した産業振興に取り組みを進めている(2025年10月6日付ビジネス短信参照)。こうした高付加価値産業の誘致は、再エネによって生み出される電力の安定した消費先を確保するとともに、産業構造の高度化を後押しするものとなる。
再エネ導入の拡大は、欧州向け越境電力輸出の可能性と、国内産業の育成という二つの方向で同国の成長を後押しするものであり、ウズベキスタンの経済戦略における新たな柱として位置付けられつつある。
主役となり外国資本を集める中東企業
ウズベキスタンの再エネ分野において、大きな存在感を示しているのがUAEのマスダールやサウジアラビアのACWAパワーだ。これらの企業は2010年代後半から本格的に同国市場へ参入し、太陽光・風力を中心とする複数の大規模プロジェクトを短期間で立ち上げてきた。
その背景には、(1)本国政府とウズベキスタン政府との良好な外交関係、(2)国際金融機関や中東・欧州・中国の商業銀行、日本の国際協力銀行(JBIC)や国際協力機構(JICA)、銀行・商社からの資金調達に加え、自社によるグリーンボンド発行など、多層的な外国資本を組み合わせて資金を調達できる能力、(3)プロジェクト形成から建設・運転開始までのスピードの速さがある。
とりわけ、ウズベキスタン政府は再エネを含むグリーン技術の推進には多額の投資や事前調査を必要としており、中東企業の資金調達力と調査・実行力は、この需要に合致している。結果として、同国のエネルギー政策を支える中核的パートナーとしての地位を確立しつつある。
中国企業の存在感とコスト・物流面での優位性
中国企業は太陽光パネルや風力タービンの供給を中心に現地での存在感を着実に高めている。その背景には製品の高いコスト競争力と地理的近接性を活かした物流面での優位性がある。欧州や中東企業が部材を輸送する場合、ロシアによるウクライナ侵攻の影響で、紛争地付近を避けるため迂回ルートを経由せざるを得ない。一方、中国企業は既存の中央アジア向け自動車輸送インフラ(2023年8月22日付地域・分析レポート参照)を活用している。
他方で、中東企業がウズベキスタンで中国企業の部材を採用するケースも報じられており、プロジェクトにおける部分的な協力関係が形成されている。
中国と中央アジア5カ国の政府は、今後の協力分野として、再エネやインフラ分野での協力強化、国際的な輸送ルート整備の強化を掲げており、同地域における中国企業のビジネス展開が一層進展していく様子が伺える。

次世代燃料への取り組み
バイオ燃料、グリーン水素、持続可能な航空燃料(SAF)などの次世代燃料の分野では外資企業や国際機関と協力した動きがみられる。
SAF分野では、UAEに本社を置くアライド・バイオヒューエルズがホレズム州政府と土地・用水契約を締結し、中央アジア初となるゼロカーボン航空燃料の製造施設の建設に向けて始動した。投資規模は59億ドルで、年間約38万トンのバイオ由来SAFと15万トン超のe-SAF(再エネ電力で生成した水素とCO2を合成して製造)を生産予定であり、2030年のカーボンニュートラル目標達成と地域経済の活性化に寄与する(「タイムズ・セントラルアジア」2025年10月3日)。
バイオ燃料分野では、生ごみや農業残渣(ざんさ)を原料としたバイオメタン生産のパイロットプロジェクトの検討を進めている。例えば、2025年6月に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の補助金を得た日本企業がウズベキスタン生態・環境保護・気候変動省と生物廃棄物からバイオメタンを製造するパイロット施設の建設についてプロジェクトを進めている。
グリーン水素分野では、ACWAパワーがウズベキスタン・エネルギー省および国営化学企業ウズキミヨサノアトなどが手掛けるグリーン水素生産プロジェクトが進んでいる(2025年5月14日付地域・分析レポート参照)。2025年9月には同国初のグリーン水素の生産が開始され、2026年1月にはウズベキスタン投資産業貿易省がプロジェクトの第一段階が完了したと発表した。次の段階ではこの水素を原料とするグリーンアンモニア製造へ拡大する計画を示している。まだ小規模ではあるものの、同国における新エネルギーの実現可能性を探る試みとして注目される。
再エネ導入から見える制度・現場の課題
ウズベキスタンの再エネ市場は活況を呈している一方で、制度・人材、インフラ、国際基準への対応など多方面に課題がみられる。
制度面では、政府が再エネ分野における外資企業の参入のために電力購入契約(PPA)を含む収入保証メカニズムの整備を進めているものの、電力料金は依然として発電原価を下回る水準だ。外資の独立系発電事業者(IPP)は、為替変動や国内のオフテイカーが将来もウズベキスタン政府の支援を受け続けることができるか、などのリスクを指摘する。
加えて、(1)プロジェクトに係る設備・人材・保険などの現地調達要件が実態に見合わず地場化が進みにくい、(2)老朽化した送電網で損失が大きく系統接続の遅延が生じている、(3) 国際金融機関からの資金調達に必要なESGなどの基準と国内制度のギャップが外資・現地企業の負担となる、(4)法令・制度変更が頻繁で事業継続性に影響するなど、複数の課題が指摘されている(表2)。
| 分類 | 課題の概要 | 課題の理由・背景 | 懸念点 |
|---|---|---|---|
| 制度(PPA・料金) | 電力料金が原価を下回る | 政府補助に依存。国営電力会社の財務が脆弱(ぜいじゃく) | PPA支払い保証の実効性・長期採算性への不安 |
| ローカライゼーション | 現地調達・地場企業の活用要件 | 現地調達のコストの高さ。人材の不足 | 短期地場化は困難。育成した人材の流出も懸念 |
| インフラ(送電網) | 老朽化・送電損失 | 旧ソ連期設備の劣化、系統接続容量不足 | 再エネ案件の接続遅延・プロジェクトリスク |
| ESG基準 | 国際基準と国内制度の乖離 | 用地補償・労働基準など追加コスト発生 | 事業コスト増・国際金融機関調達の負担 |
| 政策変更リスク | 法改正が頻繁 | エネルギー制度改革が進行中 | G to G / G to B 関係構築による情報収集が不可欠 |
現地に聞く日本企業への期待
制度・人材・インフラの不足に日本企業が貢献し得る余地はある。ウズベキスタン政府関係者からは、送電などの効率性の改善、次世代燃料に関する技術、ローカライゼーション強化による地場の技術者育成や地場企業の能力向上が課題であり、日本企業の人材育成、品質管理の知見に高度なキャパシティービルディングへの期待が寄せられた。
老朽化した送電網や高い送電損失率、系統接続の遅延といった課題から、送配電の高度制御、蓄電池制御、周波数調整など日本企業の強みは現地ニーズに合致する。また、国際金融機関からの資金調達にはESG対応が必要であり、日本企業が得意とする環境社会配慮やサプライチェーン管理のノウハウ提供が期待される(表3)。
| 分野 | 現地の課題 | 日本企業の貢献可能性 |
|---|---|---|
| 人材・ローカライゼーション | 技術者不足、能力ギャップ、人材流出懸念などにより地場化が進みにくい | 人材育成プログラム、品質管理手法、地場企業の技術力強化支援 |
| 技術(電力・次世代燃料) | 送電損失の高さ、系統容量不足、老朽化による再エネ接続遅延、次世代燃料の開発 | 送電ロス低減技術、系統制御、蓄電池制御、周波数調整技術、次世代燃料技術 |
| 制度・国際基準対応(ESG) | ESG要求と国内制度・地場企業の能力ギャップ、国際金融機関調達時の順守負担 | 環境社会配慮プロセス構築、監査・品質保証、サプライチェーン管理の高度化 |
出所:各種報道およびヒアリング情報からジェトロ作成
- 注:
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CBAMの詳細はジェトロ調査レポート「EU炭素国境調整メカニズム(CBAM)の解説(基礎編)」(2024年2月)を参照。
- 執筆者紹介
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ジェトロ調査部欧州課ロシアCIS班 課長代理
小野塚 信(おのづか まこと) - 2021年、民間企業勤務を経て、ジェトロ入構。






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