中央アジアと中国間で自動車輸送インフラの整備進む

2023年8月22日

2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻で、中央アジア諸国は経済面でも大きな影響を受けている。外洋に面していない中央アジア地域の物流は、ロシアを経由して日本、欧州、米国などとつながっていたため、侵攻開始後、ロシアを経由する物流が機能不全となり、新ルートの整備・振興が急務となっている。中央アジア諸国首脳や政府幹部はトルコ、中東、南アジア諸国を積極的に訪問し、会談では物流ルート開拓が常に話題に上っている(2022年3月7日付2022年6月29日付ビジネス短信参照)。

また、ウクライナ侵攻はロシアと欧米、日本などの西側諸国との経済的分断を決定的なものとした(2023年2月13日付ビジネス短信参照)。しかし、ロシアは中央アジア諸国にとって伝統的に主要な貿易相手国で、自国の貿易収支赤字をロシアに滞在する自国の出稼ぎ労働者からの送金で補う経済構造が成り立っている。また、安全保障をはじめ、経済面以外での結び付きも強固だ。

一方、欧米からは国際金融機関を通じた援助(ウズベキスタン、タジキスタンなど)や資源メジャーなどによる大規模投資(カザフスタン)を受け入れており、欧米とロシアとの間のバランス維持を常に求められている。そのため、国内の高いインフレ率への対処、電力分野への外国資本の導入といった差し迫った経済課題を解決するパートナーとして、中央アジア諸国は中国やトルコ、湾岸諸国といった第3極の新興国を選ぶ傾向が強くなっている。

中国政府は2023年1月に新型コロナウイルスを徹底的に抑え込むゼロコロナ政策を正式に終了させた。2023年5月中旬に中国・西安で開催された中国・中央アジアサミット(2023年5月23日付ビジネス短信参照)を皮切りに、中央アジア諸国と中国との投資案件の組成や貿易など経済活動が特に活発化している。中国国境の自動車検問所が再開し、中央アジアを含む周辺国との物流が急速に回復している。中央アジア諸国政府も中国とつながる道路整備に積極的に動いている。

本稿では、中国と中央アジア諸国を結ぶ道路整備状況とその見通しについて報告する。

中央アジア・中国間国境の自動車検問所は全部で7カ所

中国と国境を接する中央アジアの国はカザフスタン、キルギス、タジキスタンの3カ国だ。カザフスタンは6カ所、キルギスは2カ所、タジキスタンは1カ所、中国との間で陸上の出入国管理所(検問所)を有している。カザフスタン6カ所のうち2カ所が鉄道検問所で、これを除くカザフスタン4カ所、キルギス(2)、タジキスタン(1)の7カ所が自動車検問所となっている(図1参照)。

図1:中央アジア諸国と中国間の自動車検問所
中国と国境を接するカザフスタン、キルギス、タジキスタン、パキスタンの国境地帯の地図で、右上の角から左下にかけて斜めに中国と4カ国の国境が走っており、対中国境上の8カ所の自動車検問所が図示されています。右上から順に、マイカプシャガイ検問所(カザフスタン・東カザフスタン州)、バフティ検問所(カザフスタン・アバイ州)、アラコリ検問所(カザフスタン・ジェティスー州)、ヌル=ジョリ検問所(カザフスタン・アルマトイ州)、トルガルト検問所(キルギス・ナリン州)、イルケシタム検問所(キルギス・オシ州)、クリマ検問所(タジキスタン・ゴルノ・バダフシャン自治州)、クンジュラブ検問所(パキスタン・ギルギット・バルティスタン自治州)です。

出所:www.openstreetmap.org外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの地図を基にジェトロ作成

カザフスタンは東カザフスタン州、アバイ州で、急ピッチに道路整備

カザフスタンのカシムジョマルト・トカエフ大統領は国内東部の経済発展を促進するため、自動車・鉄道の対中輸送網整備を積極的に実施することを発表した(2022年10月19日付ビジネス短信参照)。2023年5月の中国・中央アジアサミットと第2回ユーラシア経済フォーラム(モスクワ)でもトカエフ大統領が同計画について言及している。

カザフスタン政府は以前から、中国と欧州を結ぶ陸上輸送のメインルートとして、ヌル=ジョリ自動車検問所のあるカザフスタン東部のホルゴスから同国南部の経済都市アルマトイ、同じく第3の都市シムケント、トルケスタン、クズルオルダ、西部アクトベ、オラルを経由し、ロシアのオレンブルクもしくはサマラへ抜ける道路「西欧‐中国西部」を積極的に整備している。同ルートはアルマトイの迂回(うかい)道路と、クズルオルダ~対ロシア国境間の片道2車線化を残し、既に高品質な道路が整備されている(図2参照)。

図2:自動車輸送ルート「西欧-中国西部」
このルートは、ヌル=ジョリ自動車検問所のあるカザフスタン東部のホルゴスから西方に伸び、同国南部の経済都市アルマトイ、同じく第3の都市シムケントを通り、そこから北西方向に進路を変え、クズルオルダを通って西部のアクトベに至ります。その後、ロシアのオレンブルグに抜ける北寄りの道と、カザフスタンのオラルを経由しロシアのサマラに抜ける南寄りの道に分かれます。

出所:www.openstreetmap.org外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの地図を基にジェトロ作成


西欧‐中国西部道路(ヌル=ジョリ自動車検問所周辺、2023年5月、ジェトロ撮影)

西欧‐中国西部道路
(クズルオルダ州、2023年5月、ジェトロ撮影)

カザフスタン東部の対中国境マイカプシャガイ自動車検問所(東カザフスタン州)とバフティ自動車検問所(アバイ州)は、中国西部とロシアのウラル・シベリア部を結ぶ最短ルートにある。ロシアは欧州との間で物流が断絶され、中国との貿易が大幅に伸びていることから、代替輸送ルートとして大きな需要が見込まれる。また、ジェティスー州にはソ連時代から利用されている鉄道検問所ドスティク駅があり、並行してアラコリ自動車検問所がある。これら3つの自動車検問所と、カザフスタン最大の経済都市アルマトイ、東カザフスタン州都オスケメンをカザフスタン東部で南北につなぐ幹線道路A3号線では、急ピッチで大規模な道路改良工事が進んでいる(図3参照)。

図3:カザフスタン東部の対中国境自動車検問所と周辺道路整備状況
カザフスタンの対中国国境の3つの検問所、マイカプシャガイ、バフティ、アラコリの周辺とそこから北および北西に伸びる道路の整備状況が図示されています。 (1)マイカプシャガイ検問所に近いサイザンと中部のカルバタウを結ぶM38号線は片道1車線で、改良工事とう回道路の建設が行われています。(2)バフティ検問所からマカンチを通ってA3号線の分岐点まで伸びるA8号線とA356号線は、片道1車線で、道路の舗装状況は良好です。(3)アラコリ検問所とオクチャブルを結ぶA355号線は、片道1車線を想定した改良工事中です。(4)南部のウシャラルと中部のカルバタウを結ぶA3号線は改良工事中です。(5)カルバタウと北西部のセメイやパブロダルを結ぶM38号線は、片道1車線で、道路の舗装状況は良好です。

出所:www.openstreetmap.org外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの地図を基にジェトロ作成

3つの自動車検問所で最も北のマイカプシャガイ自動車検問所からは、国境近郊の町ザイサンまでの区間の迂回道路の建設と、ザイサンからA3号線までの区間の改良工事が実施されている。5月時点で輸送車両(コンテナトラック、トレーラー)による同ルートの利用はないが、ロシア向けのトランジット自走車両(トラックのヘッダー、ダンプトラック、建機車両など)が頻繁に走行している。


ザイサンと国境を結ぶ迂回路を建設中
(2023年5月、ジェトロ撮影)

西へ向かう自走車両(東カザフスタン州アクメクテプ
付近、2023年5月、ジェトロ撮影)

3つの検問所の真ん中にあるバフティ自動車検問所は既に路面状況が良いため、現時点で改良工事は実施されていない。一方、カザフスタン政府はバフティと中国側の塔城市を結ぶ鉄道路線を2024~2025年に建設する計画を立てており、同路線が完成すれば、ドスティク駅(ジェティスー州)、アルティンコリ駅(アルマトイ州)に次ぐ第3の鉄道検問所となり、両国間とロシア・中国間の輸送量が大幅に増加することが期待される。


バフティ検問所付近で順番待ちのコンテナトラックと
トレーラー(2023年5月、ジェトロ撮影)

道路の法面(のりめん)施工の様子
(2023年5月、ジェトロ撮影)

ジェティスー州のアラコリ自動車検問所は上記3つの自動車検問所の中でも最も利用が進む。隣接して国境の町ドスティクがあり、ドスティクからA3号線へ西につながる道路も整備中だ。ドスティク近郊には中国・カザフスタン両国による風力発電設備などの事業も進んでおり、輸送以外の分野でも経済の結び付きが強くなっている。


風力発電機のタワー部分を積んだトレーラー
(2023年5月、ジェトロ撮影)

設置中の風力発電機
中国側で発電機、カザフスタン側で変電設備の
設置を担当 (2023年5月、ジェトロ撮影)

トカエフ大統領によるカザフスタン東部の経済振興に向けた強いコミットメントもあり、対中国境の自動車検問所からA3号線を結ぶ道路や、A3号線自体の改良工事は2~3年内に完成し、第3の鉄道路線・塔城市~バフティ~アヤゴスも2025年以降に立ち上がる可能性がある。輸送ルートの周辺地域では、カザフスタン、中国、ロシアの企業による投資事業を通じて、地域の経済発展が進むことも想定される。

キルギス:中国からの完成車輸送が活発化

キルギスの対中国境の自動車検問所は2カ所あり、首都ビシケク方面を結ぶトルガルト自動車検問所(ナリン州)と、第2の都市オシやウズベキスタン・フェルガナ盆地方面を結ぶイルケシタム自動車検問所(オシ州)だ。これら2つのルートの特徴は、基本的に道路舗装済みであることだ。両ルートともに複数の峠を越える必要があるが、村落を迂回するルートなども整備されている(図4参照)。

図4:キルギスの対中国境自動車検問所と周辺道路整備状況
トルガルト検問所からナリンを経由して首都のビシケクに北上する道路の舗装状況は良好です。イルケシタム検問所の西方、タルディク峠のあるサリタシまでの道路も良好です。サリタシから北上してグルチャ、その後北西に進路を変えてオシ、ウズベキスタンのアンディジャンを経由して首都のタシケントに至る道路も良好です。サリタシから西に、タジキスタンの首都ドゥシャンベまで伸びる道路も良好です。サリタシから南下してタジキスタンのムルガブに向かう道路は改修工事が必要です。

出所:www.openstreetmap.org外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの地図を基にジェトロ作成


難所のタルディク峠を通過する自動車運搬車
(2023年7月、ジェトロ撮影)

オシ近郊でウズベキスタン向けに自動車を積み替え(2023年7月、ジェトロ撮影)

中国のゼロコロナ政策が終了しため、両ルートともに自動車による物流が再開されている。特にイルケシタムを経由するルートは、経済が急成長するウズベキスタン市場向けに、比亜迪(BYD)などを中心とする中国ブランドの完成車が頻繁に輸送されている。キルギス・オシ市とウズベキスタン・アンディジャン州をつなぐキルギス・ドストゥク自動車検問所の輸送車両検査場・新建屋も2023年初から稼働を開始しており、物流増に寄与している。

カザフスタンやタジキスタン域内では中国ナンバーのトラックは走行せず、通常、両国のトラックが国境の保税地域に中国側の貨物を取りに行く。一方、キルギスでは中国ナンバーのトラックが国境から特定の保税場までキルギス国内を走行しているのが特徴だ。イルケシタムからオシ近郊の保税場までの区間約250キロで、キルギスナンバーと中国(新彊)ナンバーのトラックが輸送を実施している。


オシ近郊へ向けて走行する中国ナンバーのトラック(2023年7月、ジェトロ撮影)

トルガルト自動車検問所に向かう道
(アトバシ渓谷、2023年7月、ジェトロ撮影)

キルギスのサディル・ジャパロフ大統領は7月28日、イルケシタム自動車検問所を視察し、検問所の設備更新を実施して10月1日までに1日当たりの通過車両数を現状の300台から1,000台に引き上げることなどを指示した。また、トルガルト自動車検問所についても、キルギスが加盟するユーラシア経済連合(EAEU)加盟国の代表とユーラシア経済委員会の専門家による検問所インフラの検査が2023年7月中旬に実施され、検査体制・インフラ設備がEAEUの基準に適合していることが確認された。今後、トルガルト経由の物流も増加していくことが想定される。

タジキスタン:「中国~タジキスタン~北アフガニスタン」ルート完工は4~5年先の見通し

タジキスタンの対中国境の自動車検問所は1カ所で、東部パミール高原(ゴルノ・バダフシャン自治州)にあるクリマ自動車検問所だ。ゴルノ・バダフシャン自治州の州都ホログと首都ドゥシャンベを結ぶルートは元来、タジキスタン・アフガニスタン国境となる狭いパンジ渓谷の悪路と、複数の小規模集落を抜ける必要があり、大規模な国際物流ルートとしては機能していない。しかし、現在、中国の援助により、最難路とされるカライクム~ルシャン間92キロ(11村落)を対象に、2カ所計5.1キロ(1.9キロ+3.2キロ)の迂回道路、2カ所計5.2キロ(3.4キロ+1.8キロ)のトンネル、16カ所計706メートルの橋梁(きょうりょう)の建設工事が着手されており(タジキスタン~中国高速道路建設事業第2期)、パキスタンと中国を結ぶカラコルムハイウェイ(後述)などの建設・管理に経験を持つ中国路橋工程(CRBC)が工事を担当している。

図5:タジキスタンの対中国境自動車検問所と周辺道路整備状況
クリマ検問所から西方のムルガブに向かう道路は、超低速走行でないと通れません。ムルガブからカラクルに向かう道路は良好ですが、その先のキルギス国境までの道路は、超低速走行でないと通れません。ムルガブから西南西のホログへ向かう道路は、一部良好ですが、ほとんどの部分で低速走行です。この道路から途中で分岐して西南のイシコシムに向かう道路は低速走行で、一部輸送車両が通行できない区間があります。イシコシムから北に向かいホログ、ルシャンに至る道路は、低速走行です。その先、北西のカライクムまでの道路は超低速走行です。カライクムから南西のクリャブ、ダンガラ、ボフタル方面の道路は、舗装状態が良好です。ダンガラやボフタルから北の首都ドゥシャンベへの道路も良好です。北部のガルムからキルギス国境に向かう道路は良好です。ガルムから首都ドゥシャンベへ南西に伸びる道路は、概ね良好ですが、一部で超低速走行が必要です。

出所:www.openstreetmap.org外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの地図を基にジェトロ作成


ハンドル操作を誤ると事故を起こしかねない急峻な渓谷(2023年6月、ジェトロ撮影)

小さな村落を大型トラックが走行中
(2023年6月、ジェトロ撮影)

中国の援助によるトンネル工事現場
(2023年6月、ジェトロ撮影)

工事現場には「一帯一路」のスローガン
(2023年6月、ジェトロ撮影)

中国・中央アジアサミットに並行して行われたタジキスタン・中国首脳会談では、中国側からクリマ自動車検問所の施設整備と同検問所からホログまでの道路整備と、「中国~タジキスタン~北アフガニスタン」物流ルート(図5参照)の振興が提案されている。中国のゼロコロナ政策の終了によりクリマ自動車検問所は再開したが、同検問所からパミール高原の中心地ムルガプに至る60キロの道路の舗装状態は非常に悪く、改良工事が必須となっている。ムルガプからホログ間で舗装の痛みが激しい場所も多い。世界銀行の資金による道路補修事業(中央アジア地域連結事業第4フェーズ)が一部で開始されているものの、完工は2026年10月が予定されている。


クリマ検問所近くの貨物検査場。規模は小さい
(2023年6月、ジェトロ撮影)

世界銀行の資金による道路改良工事
(ゴルノ・バダフシャン自治州バルセム地区、
2023年6月、ジェトロ撮影)

カライクム~ルシャン間工事の進捗や、クリマ国境~ホログ間の道路状況などの現状を踏まえ、首都ドゥシャンベの自動車輸送業界団体であるタジキスタン国際道路運送業者協会(ABBAT)の幹部はジェトロのインタビュー(6月23日)に対し、「カライクム~対中国境に至る全線が整備されるまで最低4~5年かかるだろう」との見通しを示している。

パキスタン:経済合理性・ビジネス環境の重要性を考えさせる事例に

中央アジアから鉄道でパキスタンを経由して同国のカラチ港に至る南方ルートの構築も重視されている。3月にウズベキスタンのシャフカト・ミルジヨエフ大統領がパキスタンを公式訪問した際、両国は中央アジアと南アジアの接続性を強化する共同輸送事業の実施を加速させることで合意した。

自動車輸送では、中国政府が1962~1978年の間にパキスタンとの間で総距離1,300キロのカラコルム・ハイウェイを建設している。同ルート北部パキスタンのギルギット・バルティスタン州の山岳地域で一部改良工事が必要な個所があるものの、舗装状況は概して良いと言える。同ハイウェイはカラコルム山脈に端を発するフンザ川、ギルギット川、インダス川の渓谷に沿い、道路やトンネルが中国政府の支援により建設された。中国ナンバーのトラックは、国境を越えた最初の町であるパキスタン・ソストのドライポートで貨物の引き渡しや通関などを行う。

同ルート上でのコンテナやトレーラーの輸送・物流は活発とは言えない。ジェトロが地元ビジネス関係者にヒアリングしたところ(7月15日)、パキスタン北部地域と中国の間での企業取引でL/C(信用状)が利用しにくいといったビジネス環境上の問題点や、中国沿岸部とパキスタン南部カラチ港は海路で結ばれていることから、自動車輸送よりも海上輸送がコスト的に有利だとのコメントがあった。

中央アジア諸国は外洋に面していないため、陸上輸送と海上輸送がルートとして競合することはないが、銀行決済の円滑化などのビジネス環境の整備は、道路を含むインフラ整備と同様に重要なことを示唆する事例と言える。


クンジュラブ検問所付近。パキスタン・中国双方で
観光地になっている(2023年7月、ジェトロ撮影)

ソストの街。外れにドライポートがある
(2023年7月、ジェトロ撮影)

まとめ:中央アジアと中国は短・中期的に経済交流が強化される

中国とカザフスタン、キルギス、タジキスタンの中央アジア3カ国は7カ所で自動車検問所を共有している。カザフスタン、キルギスは積極的に中国との自動車輸送能力を強化し、タジキスタンでは中国による援助で輸送道路の整備を進めている。カザフスタンとキルギスは1~2年の短期的に、タジキスタンは4~5年の中期的に中国との自動車輸送能力を向上させるだろう。中央アジアでは伝統的に、中国企業による自国経済への影響力を警戒する声が多い。ロシアと中国との貿易が急増する中で、その間に挟まれた中央アジア地域は経済的恩恵を受けるが、同時に中国製品、ヒト、投資の流入増をいかに自国経済の成長に結びつけるか、今後の産業発展政策の重要なポイントになるだろう。

執筆者紹介
ジェトロ・タシケント事務所長
高橋 淳(たかはし じゅん)
1998年、ジェトロ入構。ロシア・タタルスタン共和国で語学研修、ジェトロ・モスクワ事務所、ジェトロ・サンクトペテルブルク事務所勤務。海外調査部でロシア極東・シベリア、コーカサス地域などを担当。2019年から現職。