中長期的発展を描けるか
中国製ワクチンの海外展開を読み解く(2)

2022年7月4日

中国は、自国で開発した新型コロナウイルスワクチンについて、国内への供給に加え、外国にも積極的に提供していく意思を早くから表明。中国政府が提唱する「一帯一路」構想への参画国など途上国を中心に、輸出や現地生産などを通じて供給を進めてきた(「中国製ワクチンの海外展開を読み解く(1)「一帯一路」に積極供給」参照)。

本稿では、中国製ワクチンの供給量が急激に増加した2021年の動向を振り返る。あわせて、中国製ワクチンをめぐる足元の状況を整理。その上で、今後の中国製ワクチンの海外展開における注目点を洗い出してみたい。

2021年は20億回分の目標達成も、2022年には供給量が激減

中国が主導して2021年8月5日にオンラインで開催した第1回「ワクチン協力国際フォーラム」(注1)。習近平国家主席は、このフォーラムに書面でメッセージを寄せた。その中では「2021年中に20億回分のワクチンの国外への提供に努める」と表明(「央広網」2021年8月7日)。実際、習主席は2021年12月31日に発表した新年(2022年)を迎えるあいさつの中で「これまでに累計120の国と国際組織に向けて20億回分のワクチンを提供した」と述べた。

また、2022年1月19日の外交部の定例会見では、趙立堅報道官が「中国は海外へのワクチン提供数が最も多い国となった」と言及。「世界で使用されるワクチンの2本に1本は『中国製』」として、中国製ワクチンのプレゼンスを強調した。

2021年は中国製ワクチンにとってまさに「飛躍の年」となったといえる。

しかし、2022年に入ると、海外への供給量は大きく減少しているもようだ。2022年6月12日に開催されたWTOの閣僚会議で、商務部の王文涛部長は「これまでに120以上の国や国際組織に、22億回分を超えるワクチンを供給した」と表明した。既述のとおり、2021年末時点で20億回分は供給済みのはずだ。となると、2022年1月以降の約半年間の増加分は、約2億回分にとどまったことになる。

そこで、世界保健機関(WHO)のデータを参照してみる(2022年6月16日アクセス時点、注2)。世界各国・地域で調達量が最も多かったのは、ファイザー・ビオンテック製(米国・ドイツ、注3)で53億4,128万回分と全体の28.6%を占めた。2位にモデルナ製(米国)の32億2,974万回分(構成比17.3%)、3位アストラゼネガ製(英国)21億4,229万回分(11.5%)が続いた。これら上位3位の欧米メーカーによるワクチンで、全体の6割弱を占めた〔図1-(a)参照〕。

一方、中国メーカーのワクチンは、シノバック・バイオテック製が14億500万回分(7.5%)、シノファーム製が8億5,341万回分(4.6%)、カンシノ・バイオロジクス製が2,873万回分(0.2%)。3社を合計した「中国製ワクチン」の調達量は22億8,715万回分だった〔図1-(b)参照〕。中国政府が明らかにした提供数(22億回分超)とおおむね一致する。ただし、全体に占める構成比は12.2%にとどまる。

図1-(a):各国・地域の新型コロナワクチン調達状況(メーカー別内訳)
図1-(b):中国メーカー3社からの調達状況内訳

注:シノファームは、シノファーム北京生物研究所とシノファーム武漢生物製品研究所の合計。
出所:WHOウェブサイト「C-19 vaccine procurement」(2022年6月16日アクセス)からジェトロ作成

同データで世界の地域別(注4)の新型コロナウイルスワクチン調達状況をみると、東地中海地域とアフリカ地域では、シノファームのシェアがそれぞれ44.6%、40.6%。依然として最大になっている。また、南東アジア地域では、インド血清学研究所(55.3%)に次いで、シノバック・バイオテック製が20.2%で2位だ(表1参照)。

ただし、全世界の調達量に占めるこれら地域の構成比は、南東アジア地域が15.7%、東地中海地域が6.2%、アフリカ地域に至っては0.4%にとどまる。欧米の主要メーカーがシェアを握る米州地域(30.3%)や欧州地域(25.8%)などと比べ、調達の絶対量自体が少ない。

表1:地域別の新型コロナウイルスワクチンのメーカー別調達状況
地域名
(注1)
全世界の調達量に占める地域別構成比(%) 各地域で調達量が多い新型コロナウイルスワクチン(上位3種類、メーカー別)とその構成比
1位 構成比
(%)
2位 構成比
(%)
3位 構成比
(%)
米州地域 30.3 モデルナ 31.7 ファイザー・ビオンテック 30.3 ヤンセン 12.4
欧州地域 25.8 ファイザー・ビオンテック 39.7 アストラゼネガ 20.3 モデルナ 19.8
西太平洋地域 21.6 ファイザー・ビオンテック 39.9 アストラゼネガ 19.4 ノババックス 14.0
南東アジア地域 15.7 インド血清学研究所 55.3 シノバック・バイオテック 20.2 バーラト 12.9
東地中海地域 6.2 シノファーム 44.6 シファ 30.1 アストラゼネガ 7.4
アフリカ地域 0.4 シノファーム 40.6 インド血清学研究所 20.3 アストラゼネガ 19.5

注1:WHOによる地域区分。
注2:シノファームは、シノファーム北京生物研究所とシノファーム武漢生物製品研究所の合計。
出所:WHOウェブサイト「C-19 vaccine procurement」(2022年6月16日アクセス)からジェトロ作成

中国の輸出額は、EU、米国より一足早くピークアウト

次に、中国と欧米の主要メーカーによる供給推移を追っていく。そのために、中国、EU(注5)、米国からの人用ワクチンの月別輸出額を参照する(注6、図2参照)。

中国からの輸出に増加傾向がみられたのは2020年12月だ。後述するEUや米国からの輸出に比べ、立ち上がりが早かったことが読み取れる。その後、中国からの輸出額は同年7月に25億ドル。単月ベースで過去最高を記録した。しかし、同月をピークに減少傾向が鮮明に。同年12月には12億ドルと、7月の2分の1以下まで減少した。

EUからの輸出額は2021年2月ごろから増加傾向がみられ、同年半ばから増加が加速。8月から年末にかけては45億ドル前後と高い水準で推移した。

また、米国からの輸出額は2021年5月ごろから増加が顕著だ。同年9月に29億ドルとピークを迎えた後、年末にかけては20億ドル前後で推移した。

2022年1月以降は、主要国で接種が進展したことに伴い、ワクチンの需要が落ち着きをみせる。これに並行して、中国、米国、EUいずれからも、人用ワクチンの輸出額に減少傾向がみられる。中でも中国からの減少が著しい。同年2月以降は1億ドルを切る水準にまで激減した。

図2:中国、米国、EUの人用ワクチンの輸出額の推移
中国、米国、EUからの人用ワクチン(注1)の輸出額の推移について。中国から対世界の月別輸出額(単位:万ドル)は、2020年1月600、2月600、3月660、4月405、5月431、6月761、7月1,530、8月1,032、9月1,664、10月574、11月454、12月19,100、2021年1月32,474、2月59,232、3月91,745、4月66,071、5月111,834、6月140,625、7月248,003、8月195,638、9月221,565、10月162,671、11月114,111、12月119,618、2022年1月47,233、2月9,118、3月9,112、4月2,115。米国から対世界の月別輸出額(単位:万ドル)は、2020年1月13,013、2月13,897、3月13,708、4月12,696、5月12,587、6月14,464、7月13,621、8月16,686、9月18,483、10月16,726、11月21,816、12月9,418、2021年1月15,880、2月12,181、3月22,435、4月18,935、5月85,995、6月155,488、7月135,336、8月155,387、9月289,733、10月165,106、11月184,941、12月239,528、2022年1月134,082、2月102,876、3月62,630、4月44,379。EUから対世界の月別輸出額(単位:万ドル)は、2020年1月100,551、2月115,181、3月136,696、4月121,215、5月125,831、6月135,847、7月124,850、8月106,549、9月158,116、10月149,608、11月125,162、12月157,092、2021年1月129,255、2月176,871、3月201,849、4月260,141、5月261,009、6月267,198、7月400,329、8月462,238、9月448,915、10月448,592、11月395,054、12月472,403、2022年1月334,642、2月432,940、3月392,191、4月275,287。また、EUから対世界の2021年1月から2022年4月までの対世界の月別輸出額について、2020年1月~12月における月平均の輸出額を差し引いた値を参考値として示す(単位:万ドル)。2021年1月-470、2月47,146、3月72,124、4月130,416、5月131,284、6月137,474、7月270,604、8月332,513、 9月319,190、10月318,867、11月265,329、12月342,678、2022年1月204,917、2月303,215、3月262,466、4月145,562 。

注1:2020~2021年はHSコード300220 に属する人用ワクチンのデータを抽出。2022年1月以降は2022年版のHSコード(HS2022)の運用開始に伴い、300241に属する人用ワクチンのデータを抽出。
注2:EU(※参考値)は、2020年1月~12月の月平均の輸出額を差し引いた値。EUからは、コロナ禍以前から人用ワクチンの輸出が相当量あった。そのため、当稿の目的に沿って中国と米国の人用ワクチンの輸出額を比較する上では、2020年の実績を差し引いた値を計上するのが便宜的に有益と考えられた。
出所:グローバル・トレード・アトラスからジェトロ作成

中国製ワクチンの有効性が相対的に低いとする調査結果も

中国製ワクチンの輸出が急速に減少した要因は何か。その1つは、既述の人用ワクチンの輸出額の推移から読み取れるとおり、2021年半ばから欧米など他の主要メーカーからの供給が徐々に増加してきたことだろう。このほか、中国製ワクチンの有効性が欧米製に比べて相対的に低いとする調査結果が公表されたことなども一定程度影響した可能性がある。

例えばチリでは、2021年8月に各種新型コロナワクチンの有効性に関する研究結果を発表。シノバック・バイオテック製のワクチンによる発症予防率は58.5%と、他のワクチン(ファイザー製87.7%、アストラゼネカ製68.7%)と比べて低いことを明らかにした(2021年8月11日付ビジネス短信参照)。チリでは同年10月にワクチンのブースター接種の有効性に関する調査結果も公表。追加接種者の発症予防率は、シノバック・バイオテック製の2回接種完了時は56%だが、アストラゼネカ製のブースター接種で93%、ファイザー製で90%、シノバック・バイオテック製で80%だった。シノバック・バイオテック製ワクチンは、同国で引き続き使用されてはいる(注7)。しかし、ブースター接種の対象としては、ファイザー製とアストラゼネカ製が大半を占める(2021年10月14日付2021年11月26日付ビジネス短信参照)。

マレーシアでも、ブースター接種に使用するワクチンは原則としてファイザー製だ。シノバック・バイオテック製ワクチンは対象から外れた。また、シノバック・バイオテック製ワクチンの2回接種者については、同国の「ワクチン接種完了」のステータスを維持する条件として、ブースター接種を受けることが必要とされた(2022年1月7日付ビジネス短信参照)。

このほか、中国製ワクチンの有効性に関する直近データとして、香港特別行政区政府が公表している統計に触れておきたい。香港では、シノバック・バイオテック製とファイザー・ビオンテック製の2種類が接種される。この統計では、両ワクチンの接種回数ごとの死亡率などを開示している。また、香港域内でオミクロン株の感染が拡大したとされる「感染拡大第5波」(2021年12月31日~)以降を集計対象にしていることから、実質的に両ワクチンのオミクロン株に対する有効性を示すものと理解できる。その結果、重症化リスクが比較的高いといわれる50歳以上の年齢層別の各ワクチン接種回数ごとの死亡率をみると、以下の特徴が挙げられる(表2参照)。

  • 両ワクチンとも、未接種の場合と比較し、接種回数が進むにつれて死亡率の低下は明らか。
  • しかし、ファイザー・ビオンテック製はシノバック・バイオテック製より、死亡を回避する有効性が高い傾向にある。中でも80歳以上で両ワクチン接種者間の死亡率の差が最も大きい。
  • もっとも、ブースター接種(3回接種)を受けた場合、両ワクチン接種者間の死亡率の差には縮小傾向がみられる。年齢層別でこの差が最大の「80歳以上」でも、16ポイントにとどまる(シノバック・バイオテック製が1.24%、ファイザー・ビオンテック製が1.08%)。
表2:香港における新型コロナウイルスワクチン接種状況と死亡率の関係(単位:%)(△はマイナス値)
接種回数 ワクチンメーカー 50~59歳 60~69歳 70~79歳 80歳以上
未接種 0.87 2.10 5.55 16.45
1回接種 (1)シノバック・バイオテック 0.21 0.51 1.61 7.17
(2)ファイザー・ビオンテック 0.09 0.43 1.08 5.72
差(1)- (2)(ポイント) 0.12 0.08 0.53 1.45
2回接種 (1)シノバック・バイオテック 0.07 0.18 0.69 4.36
(2)ファイザー・ビオンテック 0.04 0.10 0.40 1.97
差(1)- (2)(ポイント) 0.03 0.08 0.29 2.39
3回接種 (1)シノバック・バイオテック 0.01 0.04 0.21 1.24
(2)ファイザー・ビオンテック 0.00 0.05 0.09 1.08
差(1)- (2)(ポイント) 0.01 △ 0.01 0.12 0.16

注:統計対象期間は、2021年12月31日~2022年6月7日。
出所:香港特別行政区政府衛生署衛生防護中心の公表資料に基づきジェトロ作成

アフリカ地域などへ積極的に供給継続

それでは、中国製ワクチンの海外供給は今後縮小の一途をたどるのだろうか。

それを読み解く上での第1の注目点として、アフリカ諸国に向けた供給動向が挙げられる。中国政府は、当該諸国に積極的な提供意思を示し続けている。先述のとおり、アフリカ地域では、シノファームのシェアが40.6%を占め最大だ。一方、WHOの公表データ(2022年6月20日時点)によると、アフリカ地域の人口100人当たりの接種回数は31.2回。世界平均(152.8回)の5分の1程度にとどまる。裏返すと、依然として供給ニーズが高いとみることができる。

また、中国製ワクチンの主力、シノバック・バイオテックとシノファームのワクチンはいずれも「不活化ワクチン」だ。不活化ワクチンは一般的に、通常の冷蔵庫程度の温度で保存可能とされる。片や、「mRNAワクチン」(ファイザー・ビオンテック製、モデルナ製など)は、摂氏マイナス70度の超低温保存が必要だ。換言すると、中国製ワクチンは輸送や保管の面で扱いやすいことになる。コールドチェーンなどの整備が遅れるアフリカ諸国での展開に、より適している。

習近平国家主席は2021年11月29~30日にセネガルで開催された中国・アフリカ協力フォーラムの第8回閣僚級会議に寄せたビデオメッセージで「アフリカ連合(AU)は、2022年までにアフリカの人口の60%に新型コロナワクチンを接種するという目標を掲げている。その目標のために、10億回(うち6億回分が寄付、4億回が共同生産)分の新型コロナワクチンを提供する」と表明した(2021年12月7日付ビジネス短信参照)。また習国家主席は、2022年4月20~22日に海南省博鰲(ボアオ)で開催された「ボアオ・アジアフォーラム」の年次総会でも、ビデオ形式で基調演説。その開幕式で、「輸出であれ海外生産であれ、中国は必ず有言実行する。アフリカには6億回分、ASEANには1億5,000万回分の新型コロナウイルスワクチンを引き続き援助する。『免疫格差』の是正に向けて積極的に努力していく」と強調した(2022年4月21日「共産党員網」)。

中長期的な海外展開につながるか

第2の注目点は、中国ワクチンメーカーの中長期的な海外展開の行方だ。

国家国際発展合作署の鄧波清副署長は2022年4月20日、前述のボアオ・アジアフォーラム年次総会で「これまでに20カ国に向けてワクチンの生産技術を供与し、既に海外で10億回分の生産能力を構築した」と明らかにした。

ただし、海外での実際の生産量が足元でどれほど伸びているのか、不透明だ。ワクチン製造は、原液を製造する工程と、充填(じゅうてん)と包装を行う工程の大きく2段階に分かれる。発表されている中国のワクチンメーカーの海外生産では、目下のところ中国から原液を輸入し、現地では充填と包装工程が施されているとみられる。先述の人用ワクチンの輸出額には、ワクチンの最終製品と原液の両方が含まれる(最終製品と原液がHSコード上で分けられていない)。従って、海外での充填・包装の生産活動が活発になった場合、中国からの人用ワクチン(原液を含む)の輸出額も伸びるはずだ。しかし、同輸出額の減少傾向が続いているのが現実だ。

他方で、海外の生産拠点に関する足元の動きをみると、より中長期的視点で展開を模索する動きもみられる。

シノバック・バイオテックが2022年3月9日付で同社ウェブサイト上に公表した情報によると、同社の楊光首席商業官が3月7日にエジプトを訪問した。同社はエジプトで国営医薬品企業Vacseraと共同で2021年6月から新型コロナワクチンの生産に取り組んできた(2021年6月10日付ビジネス短信参照)。楊光首席商業官はエジプト衛生・人口省のKhaled Abdel Ghaffar代理衛生相、VacseraのHeba Wali首席執行官らとともに会談し、同国でのワクチン研究のさらなる協力の可能性について意見を交換。これまでの協力関係を土台としながら、ワクチン分野でさらなる協力プログラムを拡大していくとしている。

また、同社は2022年5月12日、チリでワクチン工場の建設を開始した。2023年上半期の完工が予定されている。同工場では、新型コロナワクチンだけでなく、インフルエンザやA型肝炎などのワクチン製造も計画されている(2022年5月18日付ビジネス短信参照)。

このほか、シノファームは、アラブ首長国連邦(UAE)にも新型コロナウイルスワクチンの生産拠点を有する(2021年3月30日付ビジネス短信参照)。UAEのアリ・ダヘリ駐中国大使は「UAEと中国は新型コロナワクチン生産の協力だけでなく、医薬衛生分野で全方位の協力を進めている」と言及した(2022年6月10日「新民晩報」)。

中国政府も、ワクチン以外の分野を含め、中長期的にバイオ産業の海外展開を後押する方針を打ち出している。この方針は、例えば、「バイオ経済発展に関する第14次5カ年(2021~2025年)規画」からも読み取れる。当該規画は、国家発展改革委員会が2021年12月に公表したものだ。その中で、以下のとおり、バイオ産業の海外展開をめぐって発展の方向性が示された。

  • 新薬などの海外展開を推進し、バイオ企業が海外で研究開発拠点、生産拠点、販売・サービスネットワークなどを設置することで、国際市場への参入を加速することを奨励。
  • 世界の公共衛生ガバナンスに積極的に関与し、「一帯一路」国家とともにウィンウィンの関係の下、国際的な医薬品や医療器械などの研究開発の協力モデルの構築を模索。共同で「人類衛生健康共同体」を構築していく。

新型コロナウイルスワクチンの開発により、中国製ワクチンの海外供給は、2021年に一時的とはいえ爆発的に増加した。一方で、足元では、輸出減少が顕著だ。これまでの各国・地域への供給実績や、海外生産での現地政府や企業との提携関係を足掛かりとして、ポストコロナを見据えた中長期的な発展へとつなげられるのか。また、新型コロナウイルスワクチンが中国ワクチンの海外展開史で重大な転換点となり得るのか。引き続き注目していきたい。


注1:
同フォーラムには中国とアルゼンチン、ブラジル、チリ、コロンビア、ドミニカ共和国、エクアドル、エジプト、ハンガリー、インドネシア、ケニア、マレーシア、メキシコ、モロッコ、パキスタン、フィリピン、セルビア、南アフリカ共和国、スリランカ、タイ、トルコ、アラブ首長国連邦、ウズベキスタンの23カ国が参加。王毅・国務委員兼外交部長が議長を務めた。
注2:
WTOは、各国・地域におけるメーカー別の新型コロナウイルスワクチン調達に関し、ウェブサイト上で「C-19 vaccine procurement」を公開している。
そのウェブサイトによると、各国・地域のワクチン調達状況に関するデータは、WHO加盟各国・地域の担当省庁などからの報告に基づいて定期的に更新されている。
注3:
米国のファイザーとドイツのビオンテックの共同開発によるもの。
注4:
WHOによる地域区分に基づく。
注5:
EUのワクチン生産関連拠点の例としては、(1)ドイツに米ファイザーの拠点、(2)スペインに米モデルナワクチンの生産や充填(じゅうてん)工程の委託先、などがある。なお、モデルナの工程はスイスにも置かれている(2021年10月7日付地域・分析レポート参照)。
注6:
グローバル・トレード・アトラスのデータに基づく。
2020~2021年はHSコード300220 に属する人用ワクチンのデータを抽出。2022年1月以降は2022年版のHSコード(HS2022)の運用開始に伴い、300241に属する人用ワクチンのデータを抽出。
なお、このいずれの分類にも、新型コロナウイルスワクチン以外の人用ワクチンが含まれる。とくにEUからの輸出にはそうしたワクチンが相当量あると考えられ、注意が必要だ(図2の注2も参照)。
注7:
チリでは、3歳以上への接種について、シノバック・バイオテック製ワクチンの緊急使用が承認済み。

中国製ワクチンの海外展開を読み解く

  1. 「一帯一路」に積極供給
  2. 中長期的発展を描けるか
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部中国北アジア課
小林 伶(こばやし れい)
2010年4月、ジェトロ入構。海外調査部中国北アジア課、企画部企画課事業推進班(北東アジア)、ジェトロ名古屋などを経て2019年6月から現職。