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ASEANスタートアップに聞く(5)EC商品向けのパッキング・配送サービスで付加価値を(タイ)

2019年1月18日

シリーズの第5回は、タイの電子商取引(EC)商品向けのパッキング・配送サービス「マイクラウド・フルフィルメント(MY CLOUD FULFILLMENT)」を展開するイーエンパワーメントのニティ・サッジャティッパワンCEO(最高経営責任者)へのインタビュー(2018年9月12日)。同社は、ECに出店している小売店の在庫を自社倉庫に保管し、注文を受けた商品に独自のパッキングを施すことで付加価値を高め、最終消費者まで配送するサービスを展開する。多くのスタートアップイベントでの受賞歴を持つ。

EC商品向けに付加価値を高めたパッキングサービスを展開

質問:
起業の契機は。
答え:
起業前にジュエリーのオンライン販売を行っていたが、うまくいかなかった。その原因として、オンライン販売の受注から配送までのサービスが不十分であったため、中小小売店向けのパッキングや在庫管理、ロジスティクスにニーズがあると考え、2015年に起業した。家業で倉庫業を営んでいたため、現在の事業が実現した。現在は事務員50人、倉庫スタッフ100人の総勢150人の従業員がいる。

マイクラウド・フルフィルメントのロゴと、ニティ・サッジャティッパワンCEO(右)
(イーエンパワーメント提供)
質問:
アーリーアダプター(初期採用層)はどのようにみつけたか。
答え:
元々ECの出店者であったため、同じ業界に友人がいた。そのうちの何人かがアーリーアダプターとなった。また、タイ政府主催のスタートアップの支援イベント「スタートアップタイランド2017」で優勝し、活動資金が増えたほか、テレビなどメディアの露出が増えたことも大きな要因だ。また、獲得した活動資金により、海外での商談会に参加することで、海外への販路開拓だけでなく、多くの海外のスタートアップとのコネクションができた。そのほか、ピッチイベントを契機としたコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)からの出資も得られた。
質問:
パッキング・配送サービス「マイクラウド・フルフィルメント」とは。
答え:
まず、はじめに、EC出店者がわれわれの倉庫に商品の在庫を置いておく必要がある。消費者がラザダ(LAZADA)やショッピー(Shopee)、JD.comといったECサイトで商品を注文すると、当社のシステムを通してわれわれの元にオーダーが届く。その後、倉庫から商品を出し、パッキングを施して、配送するといったサービスである。当社は倉庫を2つ保有しており、それぞれ2,500平方メートル、5,000平方メートルの広さがある。
質問:
パッキングサービスとは。
答え:
パッキングサービスには、効率化と価値の付加という2つの側面がある。効率化というのは、例えば、ラザダとショッピーから同じ消費者宛てに注文があった場合は、別々ではなく、同時に梱包(こんぽう)して配送のロスをなくしている。価値の付加として、当社のパッキングには「スペシャル」「バリュー付加」「スタンダード」の3種類がある。「スペシャル」では、例えば貴金属のギフトを梱包する場合、箱や緩衝材を上質なものに変更し、製品のクリーニングも実施する。「バリュー付加」では、アイロンがけや箱へのテキスト印字、リボンやラベルの付与、製品の組み立てなど多岐にわたる。いずれのパッキングサービスも15バーツ(約51円、1バーツ=約3.4円)からで、サービスにより値段が異なる。
質問:
配送は自社で行うのか。
答え:
配送は自社配送、配送業者への委託、店舗受け取りの3つの方法がある。配送料金は、配送日数が短いほど料金が高くなり、長いほど安くなる。配送業者としては、DHLやヤマト運輸などがあり、消費者が好きな配送業者を選択できる。また、海外への配送も可能だ。

イーエンパワーメントの倉庫内作業の様子(同社提供)
質問:
その他のサービスは。
答え:
タイで、書籍・日用品実店舗を展開するB2Sやロフトなどでの店頭陳列、在庫管理サービス、ECサイト内での運営代行サービス、ブースの設置・管理サービスなどを提供している。ブースの設置・管理サービスは、期間限定製品ブースの依頼を受けて設置して、在庫管理を行い、期間終了時には撤収して依頼主へ返却する、といったサービスである。

自社のサービス分野での日本企業パートナーに期待

質問:
競合企業はあるか。
答え:
エーコマース(a Commerce)が競合相手だと考えている。ただ、当社は自社倉庫で先ほど言ったような細かなサービスを提供することで、差別化している。
質問:
日本市場についてどう考えるか。
答え:
現在のサービスでの、日本の市場への展開は考えていない。ただ、現地の日系企業に当社のサービスのパートナーになってほしい。
質問:
なぜ、ジェトロ主催のスタートアップイベントに参加したのか。
答え:
ジェトロの事業に参加したのは、日本市場を学びたいと考えていたからだ。また、当社のサービスに興味を持つパートナーを見つけることができればと思い、参加した。ピッチイベント後、1社パートナーを見つけることができた。また、タイにおける最大の顧客にも、日本で会うことができた。さらに喜ばしいことに、日本のラッキングシステムの会社から、われわれの倉庫で使えるリフト設備を見つけることができた。今回のイベントは非常に有益だった。
質問:
今後の事業展開について。
答え:
当社は倉庫を2つ所有しており、今後、このサービスを東南アジアで展開したい。現在、ベトナムの大手ロジスティクス企業と一緒に仕事をしている。次のステップとしては、インドネシア展開を検討している。
日本の技術と、クライアントは重要だと考えている。当社のサービス分野で、共に事業を展開していける日本のパートナーと投資家を探していきたい。

※本連載のスタートアップは、ジェトロが一般社団法人海外産業人材育成協会(AOTS)から「日ASEAN新産業創出事業」を受託し、デジタル、ヘルスケア、IoT(モノのインターネット)、サービスなどの新産業分野において、日本企業とASEAN企業の連携により、新産業創出に資する実証事業や連携促進を行う観点から招聘(しょうへい)しています。

執筆者紹介
ジェトロ海外調査部アジア大洋州課
南原 将志(なんばら しょうじ)
2014年、香川県庁入庁。2018年より現職。

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