1. サイトトップ
  2. 海外ビジネス情報
  3. 地域・分析レポート
  4. ASEANスタートアップに聞く(4)金融アクセスの改善で中小零細店の生産性向上へ(インドネシア)

ASEANスタートアップに聞く(4)金融アクセスの改善で中小零細店の生産性向上へ(インドネシア)

2019年1月18日

インドネシアは社会課題が無数にある。例えば、数多くの中小零細店が行う取引はすべて現金決済ゆえに、効率が悪く、これらの店舗の生産性は上がらず、結果的に経済成長が抑えられてしまう。そこに光を当てたのが、金融アクセス・サービスを提供するフィンテック分野のスタートアップのトコパンダイ(2017年設立)。シリーズ第4回は、同社のビジネス開発部のティモティウス・インドリアノ氏にインタビューした(2018年9月12日)。


トコパンダイビジネス開発部のティモティウス・インドリアノ氏(ジェトロ撮影)

現金管理からファイナンスまで多様なサービスを提供

質問:
起業の契機、どこにインドネシアの課題を見つけたか。
答え:
インドネシア経済成長のカギを握る家族経営の伝統的小売店が大きな課題を抱えていることに着目した。(1)取引先への支払いさえも現金商売、(2)在庫管理はマニュアル式、 (3)新たな販路開拓の必要性、(4)運転資金や保険の必要性などの課題を持ちながら、ハイパーマーケット、それよりも規模の劣るミニマーケットや電子商取引(EC)といったライバルたちと競争しなければならない。現状が続くと、伝統的小売店が競争に負けてしまうので、そうならないようなシステムを作り上げた。
質問:
具体的な製品・サービスについて。
答え:
サービスの核心は、伝統的小売店の機能と競争力を引き上げるために、アプリケーション(アプリ)を通して、これら店舗がオンラインでシームレスにディストリビューター、銀行など主要な関係者と接続できる点にある。 本接続を通じて、われわれは実際の現金のやり取りを伴わない現金管理、マイクロファイナンスやリースバックなどのサービス、店舗の効率性向上のために発注・在庫の電子化を進める店舗管理サービス、などを提供している。
例えば、伝統的小売店がディストリビューターから商品を仕入れる際の、具体的な現金管理の仕組みは以下のとおりだ。まず、小売店は銀行口座を所持している場合は銀行から、なければエージェントを通して、アプリにトップアップする。小売店が商品を購入すると、そのアプリ上で支払いを行う。一方、販売元のディストリビューターには、小売店からの受取額がトップアップされる。トップアップされた金額は、最終的にディストリビューターの銀行口座に着金される。
質問:
運営体制について。
答え:
チームは30人で構成される。うち、半分の15人がプログラマーを含むITに専門性を持つスタッフで構成されている。残りの15人は商品開発、人事、財務などを担当している。

平易な操作で中小零細企業が生産管理を実現-サービス利用画面-の様子(ジェトロ撮影)

中央銀行のレギュラトリー・サンドボックスを活用

質問:
どのように利益を上げているか。
答え:
ディストリビューター、小売店からは定額の利用料は徴収していないが、日用消費財メーカーからは利用料を受け取っている。また、取引額の一定割合を収益とするとともに、ファイナンスなどの金融サービスの提供で、仲介手数料などを得ている。収益は拡大傾向にあり、ビジネス地域もジャワだけでなく、地方部のスマトラ、カリマンタン、スラウェシなど、われわれの潜在ユーザーが多い地域に展開しているだけに、今後の収益上積みが期待できる。
質問:
アーリーアダプターはどのようにみつけたか。
答え:
元々は英・オランダ日用品大手のユニリーバからの課題に関する悩みを受けて、ビジネスモデルを開発した。それゆえに、最初のアーリーアダプターは、ユニリーバだ。同社を納得させる製品を開発して、伝統的小売店へ利用者は拡大していった。事業の開始に当たっては、インドネシアの中央銀行がフィンテック分野で実施している「レギュラトリー・サンドボックス」(規制を緩和した、より自由度の高い実験場)の認定事業に選ばれたことが大きい。これによって、われわれは規制に縛られることなく、自由にビジネスが展開できた。
質問:
日本企業との提携について。
答え:
日本企業との関係では、大手商社との提携を考えている。彼らの世界的な大規模ネットワークを使って、自身もスケールアップしていきたい。われわれは新規株式公開(IPO)を行う予定はなく、今は事業拡大の時期なので、日本の事業会社やベンチャーキャピタル(VC)含めた投資家からの資金提供に期待している。

※本連載のスタートアップは、ジェトロが一般社団法人海外産業人材育成協会 (AOTS)から「日ASEAN新産業創出事業」を受託し、デジタル、ヘルスケア、IoT(モノのインターネット)、サービスなどの新産業分野において、日本企業とASEAN企業の連携により、新産業創出に資する実証事業や連携促進を行う観点から招聘(しょうへい)しています。

執筆者紹介
ジェトロ海外調査部アジア大洋州課課長代理
新田 浩之(にった ひろゆき)
2001年、ジェトロ入構。海外調査部北米課(2008年~2011年)、同国際経済研究課(2011年~2013年)を経て、ジェトロ・クアラルンプール事務所(2013~2017年)勤務。その後、知的財産・イノベーション部イノベーション促進課(2017~2018年)を経て2018年7月より現職。

この情報はお役に立ちましたか?

役立った

役立たなかった

ご質問・お問い合わせ