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ASEANスタートアップに聞く(1)越境送金や越境ECの利便性高める(マレーシア)

2018年12月11日

ジェトロは2018年9月11日から9月13日にかけて、日本企業とのビジネスマッチングを目的に、インドネシア、タイ、マレーシア出身のスタートアップ6社の招聘(しょうへい)を行った。本シリーズでは、6社のビジネスモデルや今後の展開などを聞いたインタビュー内容を紹介する。第1回は、越境してプリペイド携帯にチャージできるサービスや、越境送金システムを開発するマレーシアのスタートアップのトラングロ(Tranglo)。マレーシアに出稼ぎに来ている労働者に着目し、「本国の家族とコミュニケーションしたい」「安い手数料で家族に送金したい」といった希望を実現した。外国為替にかかる技術を生かし、日本では越境電子商取引(EC)における代金回収サービスに乗り出す。同社の謝慧勇CEO(最高経営責任者)へのインタビュー(2018年9月12日)。

各国の大手通信会社と連携

質問:
起業の契機、マレーシアのどこに課題を見つけたか。
答え:
当社は2008年にクアラルンプールで創業し、現在の従業員は150人。起業当初は、外国のプリペイド携帯電話に利用料金を越境チャージできる「トップアップ」ビジネスからスタートした。マレーシアには海外から出稼ぎに来ている外国人労働者が約230万人いる。家族と離れて暮らす出稼ぎ労働者の間では、「お金のない本国の家族と、不自由なく国際電話がしたい」というニーズが高かった。当社サービスを使えば、本国の家族が持つプリペイド携帯電話に、簡単な操作でチャージできる。

トラングロのロゴと謝慧勇CEO(同社提供)
質問:
現在取り組む新しいサービスは、どのような社会課題を解決するか。
答え:
当社は現在、海外送金サービス事業に新たに取り組んでいる。これは、外国人労働者が本国送金する際のハードルを解消する一助となる。一般的に、外国人労働者が本国送金する場合は、銀行に送金を依頼し、コルレス銀行が中継し、本国の被仕向け先銀行に着金するという流れになる。銀行は国際送金システムであるSWIFTなどを用いる。しかし、手数料が高額になる上、手続きが煩雑で、送金から着金までに時間がかかるのが不便であった。
質問:
海外送金サービスについて具体的に。
答え:
当社が開発しているのは、越境送金の際に利用される外国為替の中央処理システムだ。一般ユーザーではなく、金融業者や決済代行サービス業者が当社システムを利用しており、SWIFTなどより手数料は各段に安い。サービスの機能としては、日本の全国銀行協会が提供しているサービスに似ている。現在700社を超える銀行や送金業者が当社のシステムを利用している。2018年の取引総額は約16億ドル、取引回数は2,110万回の見込みだ。
質問:
アーリーアダプター(初期採用層)はどのようにみつけたか。
答え:
当社はトップアップ・ビジネスを手掛けていたため、各国の大手通信会社を顧客に持っていた。通信会社はネットバンキングや決済サービス会社、送金業者と取引関係があることが多く、既存顧客からアーリーアダプターの候補を紹介してもらった。
質問:
どういった国での取り扱いが多いのか。
答え:
現在の当社のシステムを利用しているユーザーは、送金元としてはマレーシア、シンガポール、タイ、香港、韓国、日本、台湾などに多い。送金先で多いのは、フィリピン、インドネシア、マレーシア、パキスタンなど。送金元によって、上位の送金先が異なる。例えば、日本からの送金であれば、フィリピンへの送金が多い。また、送金目的が海外労働者の本国送金か、ビジネス上の決済なのかによっても、送金先は異なってくる。

日本市場で期待するのは越境ECでの代金回収

質問:
今後のプランについて。
答え:
新規株式公開(IPO)を通じて資金調達をしたい。市場が変化するスピードは速く、今後、越境での金融取引がさらに拡大するはずだ。仮想通貨の越境取引も増えるだろう。資金を投じ、より多くの国に送金できるように各国とのネットワークを整備することで、大手銀行との差別化が図れるはずだ。現在、民泊アプリなども越境決済サービスを展開し始めている。より多くの参入者が現れるだろう。また、次のフェーズとして、収集したデータを用いてビッグデータ分析を行うことも検討している。ただし、個人データは顧客である決済サービス会社が保有しており、当社が利用するには契約上の課題がある。
質問:
日本での事業展開について見通しを。
答え:
日本市場で期待しているのは、送金サービスよりも、越境ECにおける代金回収の方だ。A国で支払いを受け、B国の会社に引き渡すサービス。そのために、非居住者が日本国内で仮想口座を持てるようにしたい。例えば、マレーシア企業が日本の消費者に越境ECを通じて販売した際、日本の買い手が仮想口座に振り込んで支払いするようになれば、越境ECの利便性は高まる。B2CやC2Cベースで、消費者が海外サイトから購入する場合は、当社サービスよりも、クレジットカード決済の方が便利だ。当社としては、手数料を低く抑えた上で、中堅・中小企業同士のB2BベースでのEC向けにサービス提供していきたい。
質問:
日本企業との提携についてはどうか。
答え:
日本でビジネスを開始するには、まず金融庁からのライセンスが必要だ。送金業者としての認可を早期に得たい。代金回収サービス、仮想口座サービスを展開する上でもパートナーが必要だが、既に日本の大手銀行は自前でサービス提供しているため、地方銀行と協力したいと考えている。

※本連載のスタートアップは、ジェトロが一般社団法人海外産業人材育成協会(AOTS)から「日ASEAN新産業創出事業」を受託し、デジタル、ヘルスケア、IoT(モノのインターネット)、サービスなどの新産業分野において、日本企業とASEAN企業の連携により、新産業創出に資する実証事業や連携促進を行う観点から招聘(しょうへい)しています。

執筆者紹介
ジェトロ海外調査部アジア大洋州課 リサーチ・マネージャー
北見 創(きたみ そう)
2009年、ジェトロ入構。海外調査部アジア大洋州課(2009~2012年)、ジェトロ大阪本部ビジネス情報サービス課(2012~2014年)、ジェトロ・カラチ事務所(2015~2017年)を経て現職。

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