外国企業の会社設立手続き・必要書類

最終更新日:2024年01月12日

外国企業の会社設立手続き・必要書類

ロシアへの進出方法としては、現地法人の設立(通常、株式会社または有限会社)、駐在員事務所や支店の設立が考えられる。具体的な形態については、事業の内容、目的、目標を踏まえて、選択するのが適切である。現地法人の登記手続きには、会社設立書類(定款など)、出資者の書類(登記簿抄本)などの書類が必要であり、いずれもロシア語訳を添付しなければならない。

ロシアにおける法人登記(外資の現地法人を含む)は、2001年8月8日付連邦法第129-FZ号「法人および個人事業主の国家登記について」、2020年8月31日付連邦税務局規程ED-7-14/617@号「法人、個人事業主および農家の国家登記に際し登記機関に提出される文書の様式およびその文書の作成に関する要件事項の承認について」に基づいて行われる。

必要書類

会社設立にあたって、法人登記を行う機関である税務局(設立される法人の執行機関の所在地を管轄する税務署)に対し、次の書類を提出しなければならない。なお、モスクワ市とサンクトペテルブルク市では、それぞれ市内の1つの税務署が登記手続きを所管している。

  1. 設立事項(社名、資本金、経営陣等)が記載された設立文書が、当該法人形態に関する法令の要件に適合すること、記載内容が正確であること、法令に定めた設立手続き(資本金の払込手続きを含む)が遵守されたことを証明する申請書(申請書の添付書として、発起人の名前(名称)、納税者番号、出資の金額等の事項が記載された文書が添付され、申請書は、いずれかの発起人の代表者により公証人の面前で署名されなければならない)
  2. 当該法人の設立に関する決定書(発起人間の会議議事録)
  3. 設立文書(定款等)の原本(2部)(2019年6月24日より、有限会社設立の場合、2018年8月1日付ロシア経済発展省規程第411号により承認された有限会社の定款ひな型(36種類あり)を使用した場合、定款の提出が不要)
  4. 外国法人である発起人の法的資格を証明する外国登記簿抄本、またはそれに相当する文書
  5. 印紙税納付書

こうした書類で、ロシア語が原本でない書類については、ロシア語訳を必要とする。また、ロシア語訳の書類には、公証人による公証が必要。さらに外国登記簿抄本に関しては、領事認証またはアポスティーユ(apostille、付箋による証明)が必要となる。日本企業がロシアに現地法人を登記する場合、日ロ両国とも外国公文書の認証を不要とする条約(1961年10月5日のハーグ条約)の加盟国であるため、アポスティーユによる証明が可能である。アポスティーユにより証明された文書に関しても、公証人により公証されたロシア語訳の添付が求められる。

登記の手順

税務署側は、必要書類の提出を受けて、5営業日以内に登記を行うか否かの判断をしなければならない。必要書類が提出されない場合や書類が管轄外の機関に提出された場合、登記申請は拒否される。登記がなされた場合、法人に関する事項が統一国家登記簿に記載され、当該法人に対して登記証明書が交付される。

株式会社の場合

株式会社の設立に際しては、有価証券市場を監督するロシア中央銀行により制定される規程(2019年12月19日付ロシア中央銀行規則706-P号「有価証券の発行基準について」)に従い、株式発行の登記を行わなければならない。その場合、目論見書の作成が義務付けられる。なお、特定業種(銀行業務、保険業務など)の事業を営む外資企業の現地法人の設立には、特別の手続きが制定されている。

駐在員事務所、支店の場合

外国企業は、現地法人を設立せずに、駐在員事務所あるいは支店としてロシア国内で活動することも可能である。駐在員事務所・支店を開設するには、駐在員事務所・支店に関する各種登記手続きとしては、ロシア税務当局(モスクワ47番税務署)における認証手続き(アクレディテーション:accreditation)がある(金融機関の場合は、ロシア中央銀行)。同認証を受けた駐在員事務所・支店は、外国法人駐在員事務所・支店として登記され、当該記載内容についての証明書が交付される。また、各駐在員・支店員については、別途ロシア連邦商工会議所において雇用外国人数の認証を受けなければならない(1999年7月9日付連邦法第160-FZ号「ロシア連邦における外国投資について」第21条、2021年7月27日付連邦税務局規程ED-7-14/691@)。

ジェトロ調査レポート:ロシアにおける会社設立マニュアル(2018年3月改訂版)

外国企業の会社清算手続き・必要書類

外国企業の撤退方法については、「ロシア企業での持分譲渡、会社の解散・清算」、または「駐在員事務所・支店の閉鎖」という2つのパターンがある。
法人の解散登記(外資の現地法人を含む)については、1994年11月30日付連邦法51-FZ号「ロシア連邦民法第1部」、2001年8月8日付連邦法第129-FZ号「法人および個人事業主の国家登記について」、2020年8月31日付連邦税務局規程第 ED-7-14/617@号「法人、個人事業主および農家の国家登記に際し登記機関に提出される文書の様式およびその文書の作成に関する要件事項の承認について」で規定されている。

会社の解散清算手続きに関して、主な流れは次のとおりである。

株式会社の場合

株主は、有限会社の場合社員であるが、ここでは便宜上、株式会社の株主と有限会社の社員を、合わせて「株主」という。株主総会についても同様である。

まず、株主は、株主総会の決議(単独株主の場合、単独株主決定)をもって、会社の解散・清算に関する決議・決定を行う。
次に、清算委員会(清算人)を設置し、解散・清算の決定および清算委員会の設置について、登記当局(税務署)に通知する。税務署は当該通知を受け、当該会社の解散手続開始および清算委員会(清算人の就任)について登記を行う。

清算委員会は、会社の解散ならびに会社の債権者による債権の申告手続およびその期間について、国家登記官報(Vestnik Gosudarstvennoi Registratsii)に掲載して公告する。その期間は、公告の時から2カ月以上としなければならない。
同期間が経過した後、清算委員会は、会社の財産および債権の金額を特定した上で中間清算貸借対照表を作成する。中間清算貸借対照表は、株主総会での承認を経て、所定の通知および当該株主総会決議書とともに税務署に提出する。
債務超過が発生した場合は、原則として破産手続を開始する必要がある。
債務超過がない場合、清算委員会は債務を返済し、その結果を反映した清算貸借対照表を作成する。同清算貸借対照表は、株主総会での承認を経て、株主総会決議書、所定の申請書、印紙税納付証明書、年金基金への通知の証明書とともに税務署に提出する。

税務署は、これらの書類の提出を受けてから5営業日以内に解散登録を行い、国家登記簿に解散の記載を行う。記載の時点から当該法人の法人格は消滅し、会社としての解散手続きが完了する。

なお、これらの書類でロシア語が原本でない場合は、ロシア語訳の添付が必要となる。またロシア語訳の書類には、公証人による公証が必要である。

駐在員事務所・支店の場合

駐在員事務所・支店の閉鎖にあたり、当該駐在員事務所・支店を設置した本社は、認証機関であるモスクワ47番税務署に対し、次の書類を提出する必要がある。

  1. ロシア国内での活動終了に関する通知書
  2. 当該駐在員事務所・支店の閉鎖に関する本社の経営機関による決議書(例:取締役会決議書)の公証済みのコピー
  3. 国家登録上の駐在員事務所の記載/支店の認可および記載に関する証明書の原本
  4. 外国人駐在員およびその家族のアクレディテーション・カード(駐在員登録証)
  5. 閉鎖手続を行う代理人の委任状
  6. (駐在員事務所の場合)駐在員事務所開設許可書の原本

金融機関および航空会社の駐在員事務所・支店の場合は、こうした閉鎖手続に加えて、2021年8月16日付連邦税務局規程第ED7-14/748@号「税務当局における外国組織の登記に際して採用される書類の様式、フォーマット並びにその記入について」に従い、税務当局に対する閉鎖の通知が必要であり、年金基金にも閉鎖の通知を行わなければならない。

非友好国に属する株主による持分譲渡について

2022年3月5日付連邦政府指示430-r号に記載された非友好国に属する株主による持分譲渡について、2022年9月8日付大統領令618号に規定された特別な許可が必要とされるため、以下の手続きが適用される。
持分譲渡を行うためには、外国投資管理政府委員会の許可を得る必要がある。当該許可申請の手続きは、2022年3月6日付連邦政府決定第295号に定められている。当該申請は、申請者が直接ロシア財務省、または、当該企業の事業分野を担当する省庁(例:産業商務省、運輸省等)経由で行い、申請書、申請者の定款、譲渡の対象となる持分の評価に関する鑑定書等を提出する。審査の際、追加の書類提出が要請されることもある。許可の可否の判断の際、譲渡の対価が鑑定人による評価額(市場価格)の50%以下であること、譲渡先による生産量、売上高、従業員、納税額に関するコミットメントがあること等が必要であり、また当該持分の鑑定人による評価額の15%以上をロシア連邦財政に納付することが必要である(同委員会小委員会2022年12月22日付会合議事録第118/1号抜粋、同2023年7月7日付議事録第171/5号抜粋)。また、一部の金融機関・燃料エネルギー関連企業については大統領の許可を得る必要がある。

さらに、前記の非友好国に属する企業の子会社の解散・清算の際、株主に支払うべき剰余金が発生した場合、一月当たり1,000万ルーブルを超える額を非友好国に送金するため同委員会の許可が必要となる(2022年3月3日付大統領令第95号、2022年10月15日付大統領令第737号)。

その他

現地での資金調達制度に関連する詳細について。

リファイナンス・レート

ロシア中央銀行のリファイナンス・レートは、課税上あるいは罰金金額の表示上の参考基準として使用されており、金融政策上の手段としてはキー・レート(中銀が商業銀行を対象に行う1週間物の入札レポ・レート)が使用されている。
2016年1月1日より、リファイナンス・レートはキー・レートと同値とされ(2015年12月11日付ロシア中央銀行通達3894-U)、2024年1月12日時点で16%である(2023年12月15日付ロシア中央銀行発表)。

ローン金利の損金算入

ロシアにおける企業利潤税(法人税)課税において、2002年1月1日より、ローン資金の使途に拘わらず、ローン金利の損金算入が可能になった。ロシア国内における資金調達コストは依然として高いことから、多くの外国企業は、ロシアではなく本国で資金調達をする場合が多い。

新株発行等への増資

現地法人の場合、株式会社法上の新株発行による増資、あるいは社債発行、もしくは有限会社法上の増資を行うことが認められている。株式の発行に際しては、有価証券関連法令に定める各種情報開示・発行登記の手続きを行う必要がある。ロシア国内で株式を発行する場合、外資企業に関する特段の制限はない。ただし、外資による保有規制が適用される株式会社を除く。

撤退に際しての国庫納付金

ウクライナ侵攻に関連してロシアに対して制裁を発動したいわゆる「非友好国」に属する企業等がロシアを撤退する際、ロシア法人の持分を売却等処分する場合、当該売却等に必要な外国投資管理政府委員会小委員会の許可を得るためには、原則、当該持分の鑑定人による評価額(市場価格)の15%以上を国庫に納付しなければならない(同委員会分科会2023年9月26日付会合議事録第193/4号抜粋、2023年10月4日付ロシア財務省書簡第05-06-10/VN-47134号)。