ウラジオストクとカリーニングラードに「オフショア特区」設立

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2018年08月09日

プーチン大統領は8月3日、ロシア極東ウラジオストクと北西連邦管区のカリーニングラードに金融分野での法的制限を緩和した「特別行政区(SAR)」を設立する諸法令に署名した。オフショア地域を創設し、両地域の経済振興を図るのが狙い。

署名したのは、連邦法第291号FZ(2018年8月3日付)「カリーニングラード州および沿海地方域内における特別行政区について」、第290号FZ(同)「国際企業について」など関連する5法令。ウラジオストクのルースキー島とカリーニングラード市中心部のオクチャブリ島地区をSARとして認定。両区で運営会社を設立し、運営会社は地区のインフラ管理や登録法人などへの便宜供与などを行う。SAR登録を希望する外国法人は、第290号FZで定める「国際企業」の要件(注)を満たした上で、運営会社と契約を締結する。金融機関、ノンバンク、決済システム(インフラ)オペレーターは登録対象外。

登録登記が認められた外国企業は、連邦法第173号FZ(2003年10月12日付)「通貨規制と通貨管理について」においてロシア国内での非居住者扱いとなり、銀行口座を新規に開設することなく非居住者間もしくは国外との外貨・ルーブルの送受金を制限なく行うことができる。登録企業を対象に、紛争処理の商事裁判の迅速化なども予定されている。

SARの設立は公布の即日に発効する。一方で、SAR内での行政機能の運営開始(政府機関の下部組織の創設など)は公布日から180日後と定めており、SARの実質的なスタートは2019年2月と想定される。2018年9月にルースキー島で開催され、プーチン大統領の出席も予定されている「第4回東方経済フォーラム」でも、「オフショア特区」がテーマの1つとして挙げられている(2018年6月29日記事参照)。

(注)被支配企業、支店、駐在員事務所などを通じて複数国で企業活動を行っていること、ロシアでの投資〔最低投資額5,000万ルーブル(約8,500万円、1ルーブル=約1.7円)〕に合意していること、「FATF(金融活動作業部会)」もしくは、「MONEYVAL(反資金洗浄・テロ金融への対応評価専門家委員会)」の加盟国かオブザーバー国で登記済みなこと、などが挙げられている。

(高橋淳)

(ロシア)

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