インドの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2025年度の実質GDP成長率は7.7%となり、前年度7.1%を上回った。
  • 貿易赤字は拡大した一方、電子通信機器の輸出が大きく伸長。
  • 対内直接投資は前年度比17.7%増で、日本からの直接投資も51.1%増。
  • 対日輸出は前年度比3.3%減、輸入は13.3%増加し、対日貿易赤字は拡大。

公開日:2026年10月14日

マクロ経済

経済成長率は前年度を上回り、堅調な伸びを見せる

2025年度(2025年4月~2026年3月)のインドの実質GDP成長率は7.7%となり、前年度の7.1%を上回る伸びとなった。需要項目別に見ると、GDPの55.7%を占める民間最終消費支出は7.7%の伸びとなり、前年度(5.8%)を上回った。2025年9月にインドの消費税にあたる物品・サービス税(GST)の税率区分が簡素化され、多くの品目で税率が引き下げられた。こうした動きが国民の消費意欲を高めたと考えられる。また、GDPの32.3%を占める国内総固定資本形成(官民による投資)は8.2%増と全体を牽引した。財・サービスの輸出入に関しては、輸出が6.3%増と堅調で、輸入の伸び(5.6%増)を上回った。

表1 インドの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)〔注〕年度は4月~翌年3月、2022年度基準。四半期の伸び率は前年同期比。
項目 2023年度 2024年度 2025年度
年間 Q1 Q2 Q3 Q4
実質GDP成長率 7.2 7.1 7.7 6.8 8.3 8.0 7.8
民間最終消費支出 5.8 5.8 7.7 8.7 7.2 8.2 7.1
政府最終消費支出 0.6 6.5 5.5 5.8 6.6 4.6 4.9
国内総固定資本形成 7.3 6.4 8.2 4.9 8.4 8.2 10.8
財・サービスの輸出 0.7 6.6 6.3 6.6 9.7 5.8 3.7
財・サービスの輸入 △ 1.0 5.3 5.6 7.0 6.0 7.2 1.9

〔注〕年度は4月~翌年3月、2022年度基準。四半期の伸び率は前年同期比。

〔出所〕統計・計画実施省資料からジェトロ作成

産業部門別の粗付加価値(GVA)成長率を見ると、前年度に続き、全部門でプラス成長となった。部門別では、貿易・ホテル・運送・通信・放送関連サービス(前年度比11.0%増)、製造(10.7%増)、金融・保険、不動産・IT関連ビジネスサービス(10.4%増)の成長が目立った。

消費者物価指数(CPI)の上昇率(インフレ率)は、2025年度上半期にかけて低下傾向がみられ、10月には前年同月比0.25%となるなど、現行CPI系列(2012年基準)導入以降で最も低い水準を記録した。これを踏まえ、インド準備銀行(RBI、中央銀行)は12月に政策金利を5.25%に引き下げた。その後、インフレ率は上昇に転じ、2026年3月には3.4%に達して、RBIの定める目標値(4%±2%)の範囲内に回復するかたちとなった。

貿易

輸入額は7.7%増、前年度を上回る貿易赤字幅に

2025年度の貿易(通関ベース)は、輸出が前年度比0.9%増の4,420億3,200万ドル、輸入は7.7%増の7,756億7,800万ドルとなった。貿易収支は、3,336億4,600万ドルの赤字で、赤字幅は前年度から513億8,700万ドル拡大した。

輸出を品目別で見ると、前年度に引き続き電子通信機器の輸出額の拡大(構成比7.8%、前年度比30.9%増)が目立った。インド国内でのスマートフォンや通信機器の生産増が影響したとみられる。国別では、米国(構成比58.5%、82.7%増)、アラブ首長国連邦(UAE)(12.1%、45.6%増)の割合が高い。また、中国向けの輸出が前年度の約6倍と、大幅に増加した。

一方、前年度に増加幅が大きかった輸送機器では、輸出額の減少がみられた(構成比6.9%、前年度比6.1%減)。輸出額の大きなUAE(構成比8.3%、33.9%減)や米国(8.1%、10.2%減)、サウジアラビア(5.5%、39.8%減)向けの輸出額の減少が影響したとみられる。また、石油製品(12.2%、15.1%減)や宝石・宝飾品(6.4%、5.5%減)は前年度に引き続き輸出額が減少した。

輸入を品目別に見ると、全体の17.3%を占め最大品目である原油の輸入額は前年度比6.0%減、石油製品は8.3%減となった。原油の主な輸入相手国を見ると、ロシア(構成比30.3%、前年度比19.0%減)、イラク(17.1%、15.9%減)、サウジアラビア(14.5%、2.9%減)となり、上位3カ国で減少がみられた。他方で、UAE(11.2%、8.9%増)、ナイジェリア(3.0%、30.5%増)などからは増加しており、米国によるロシア産原油の購入停止圧力などを受けて、原油の調達先が多角化したものとみられる。

石油関連以外では、石炭・コークス・ブリケットが前年度に引き続き減少(前年度比10.2%減)した。一方で、電子部品は20.3%増と大幅に伸びた。輸入相手国別にみると、中国(構成比32.7%、3.6%増)、香港(14.2%、9.1%増)、シンガポール(9.0%、27.2%増)、韓国(8.7%、16.4%増)、台湾(8.2%、3.4%減)と上位に東アジアを中心とした国・地域が並ぶ。「メーク・イン・インディア」政策や昨今の自動車、スマートフォンの需要の高まりによって携帯電話や電子機器の国内製造が進む一方、部品の国内調達率は依然として低く、そうした状況を反映した結果とみられる。

表2-1 インドの主要品目別輸出(FOB)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)〔注〕年度は4月~翌年3月
品目 2024年度 2025年度
金額 金額 構成比 伸び率
石油製品 63,295 53,721 12.2 △ 15.1
機械・器具 38,900 42,149 9.5 8.4
電子通信機器 26,201 34,289 7.8 30.9
医薬品・精製化学品 30,514 31,149 7.0 2.1
輸送機器 32,415 30,428 6.9 △ 6.1
宝石・宝飾品 29,854 28,219 6.4 △ 5.5
鉄・非鉄金属 22,115 24,654 5.6 11.5
織物用糸・布地 16,657 16,269 3.7 △ 2.3
無機・有機・農業化学品 16,309 16,204 3.7 △ 0.6
綿既製衣料・アクセサリー 9,400 9,494 2.1 1.0
合計(その他含む) 438,014 442,032 100.0 0.9

〔注〕年度は4月~翌年3月

〔出所〕商工省・通商情報統計局(DGCI&S)公表データから作成

表2-2 インドの主要品目別輸入(CIF)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)〔注〕年度は4月~翌年3月
品目 2024年度 2025年度
金額 金額 構成比 伸び率
原油 143,012 134,455 17.3 △ 6.0
金・銀 62,765 84,579 10.9 34.8
電子部品 36,841 44,306 5.7 20.3
一般機械 35,438 40,217 5.2 13.5
石油製品 42,704 39,180 5.1 △ 8.3
鉄・非鉄金属 30,461 35,223 4.5 15.6
石炭・コークス・ブリケット 31,055 27,891 3.6 △ 10.2
輸送機器 26,515 27,465 3.5 3.6
電子通信機器 22,395 25,877 3.3 15.5
人造樹脂・プラスチック材 20,817 20,776 2.7 △ 0.2
合計(その他含む) 720,273 775,678 100.0 7.7

〔注〕年度は4月~翌年3月

〔出所〕商工省・通商情報統計局(DGCI&S)公表データから作成

中国が米国を上回り最大の貿易相手国となる

2025年度にインド最大の貿易相手国となったのは中国(構成比12.4%、前年度比18.5%増)で、輸出入の総額は1,514億4,200万ドルと、前年度1位だった米国(11.5%、6.2%増)の1,401億5,300万ドルを上回った。

輸出では、米国(構成比19.7%、前年度比0.6%増)が13年連続で最大の仕向け地となった。主要品目としては、全体の2割以上を占める電子通信機器が、前年度に続き高い伸び率(82.7%増)を記録した。米国市場でiPhoneの販売が堅調に推移する中、米国のアップル(Apple)によるインドでの生産拡大が進んだことが背景にあるとみられる。また、対中輸出は36.9%増と上位10カ国の中でも高い伸びとなった。中国向けの主要品目としては、電気通信機器(構成比13.8%、6.0倍)のほか、石油製品(12.5%、93.3%増)や電気製品(16.7%、3.3倍)が高い伸びを示し、構成比の上位を占めている。

2025年度の輸入を国別に見ると、中国(構成比17.0%、前年度比16.2%増)が最大で22年連続の首位となった。電子部品や一般機械など高い需要のある分野で、中国依存が根強いことが読み取れる。中国の主要品目の内訳は、金額ベースで、一般機械(構成比13.6%、18.8%増)、電子部品(11.0%、3.6%増)、電子通信機器(10.5%、42.5%増)の順に多かった。また、その他の相手国としては、UAE(8.2%、0.4%増)、ロシア(7.1%、13.5%減)、サウジアラビア(4.0%、2.2%増)、イラク(3.2%、15.2%減)など石油産出国が上位に並んだ。

表3-1 インドの国・地域別輸出(FOB)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)〔注〕年度は4月~翌年3月
国・地域 2024年度 2025年度
金額 金額 構成比 伸び率
米国 86,690 87,225 19.7 0.6
アラブ首長国連邦(UAE) 36,671 37,332 8.4 1.8
中国 14,266 19,534 4.4 36.9
オランダ 22,723 17,418 3.9 △ 23.3
英国 14,554 13,451 3.0 △ 7.6
シンガポール 12,954 11,915 2.7 △ 8.0
ドイツ 10,641 11,542 2.6 8.5
バングラデシュ 11,501 10,584 2.4 △ 8.0
サウジアラビア 11,769 10,285 2.3 △ 12.6
香港 6,073 8,121 1.8 33.7
日本 6,258 6,051 1.4 △ 3.3
合計(その他含む) 438,014 442,032 100.0 0.9

〔注〕年度は4月~翌年3月

〔出所〕商工省・通商情報統計局(DGCI&S)公表データから作成

表3-2 インドの国・地域別輸入(CIF)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)〔注〕年度は4月~翌年3月
国・地域 2024年度 2025年度
金額 金額 構成比 伸び率
中国 113,512 131,908 17.0 16.2
アラブ首長国連邦(UAE) 63,514 63,789 8.2 0.4
ロシア 63,772 55,180 7.1 △ 13.5
米国 45,312 52,928 6.8 16.8
サウジアラビア 30,133 30,808 4.0 2.2
イラク 28,881 24,480 3.2 △ 15.2
スイス 21,700 24,368 3.1 12.3
香港 19,769 24,359 3.1 23.2
シンガポール 21,300 24,263 3.1 13.9
日本 18,919 21,441 2.8 13.3
合計(その他含む) 720,273 775,678 100.0 7.7

〔注〕年度は4月~翌年3月

〔出所〕商工省・通商情報統計局(DGCI&S)公表データから作成

通商政策

FTAを通じた市場開放、投資誘致と並行した保護主義的な政策

インド政府は近年、輸出拡大と製造業振興を軸とした通商政策を推進している。2023年に改定した外国貿易政策(Foreign Trade Policy、FTP 2023)では、2030年までに財・サービス合わせ輸出額2兆ドルの達成を目標に掲げ、貿易手続きのデジタル化や規制の簡素化、貿易円滑化を進めている。輸出促進のため貿易協定の締結・交渉を活発化させていたところ、最大の輸出相手国である米国から相互関税が発動され、この動きが一層加速した。

通商協定分野では、引き続き自由貿易協定(FTA)など貿易協定の交渉・締結を積極的に推進している。2025年3月にはニュージーランドと10年ぶりにFTAに係る交渉を再開し、12月に交渉が妥結した。2025年7月には英国との包括的経済貿易協定(CETA)を、また同年12月にはオマーンとの包括的経済連携協定(CEPA)を、それぞれ締結した。2024年3月に署名されていた欧州自由貿易連合(EFTA)との貿易経済連携協定(TEPA)は2025年10月に発効した。さらに、EUとのFTA交渉についても2026年1月に妥結し、今後発効に向けた手続きが進められる予定だ。同協定は、EUとインドを合わせて世界のGDPの2割超を占める大型自由貿易圏の形成につながるものとなる。さらに、米国とも追加関税の交渉が進展し、2026年2月に2国間貿易協定(BTA)に向けた暫定協定の枠組み合意も発表された。これに伴い、米国はインドに課していた25%の追加関税を撤廃した。

貿易を促進する一方で、輸入品に対する非関税措置も講じている。その中心となるのがインド標準規格局(BIS、Bureau of Indian Standards)からのインド標準規格(IS)認証取得である。各省庁から発行される品質管理令(QCO、Quality Control Order)で指定された特定品目の輸入や国内流通にあたっては、BISが定めるIS認証取得が義務付けられている。認証取得には、BIS検査官のインドからの派遣による工場の監査などが必要となるため、特に対象品目を海外で製造している場合は、認証取得までの時間と費用を要する。近年、対象品目は増加傾向にあったが、2025年11月からQCOの取り消しや施行日延期が相次いで発表された。モディ首相直轄の政策提言機関であるインド改革委員会(NITI Aayog)が11月上旬に発表した政府内部向けのレポートで、QCOの見直しを求めたことが影響したとされる。加えて、2024年にインド重工業省が通達していた「設備・電気機器安全規則(包括的技術規制)2024(OTR、Omnibus Technical Regulation)」についても撤回された。本通達は、内容の不明確さなどを理由に各業界から施行延期が求められており、実際に施行が延期される中で大きな関心が集まっていた。QCO取り消しなどの動きはあったものの、制度自体に大きな変更は認められず、今後も継続的な注視が必要だ。

このように、インドの通商政策は、FTAを通じた輸出多角化などを進める一方で、BIS認証や品質管理令(QCO)などを活用した国内産業保護・育成を並行して推進する点が特徴となっている。

対内・対外直接投資

対内直接投資は増加、2020年度に次ぐ規模に

商工省産業国内取引促進局(DPIIT)の発表によると、2025年度のインドの対内直接投資額(実行ベース)は前年度比17.7%増の588億4,600万ドルとなり、2020年度に次ぐ過去2番目の規模となった。国別では、シンガポール(構成比33.7%、32.5%増)、米国(19.0%、倍増)、日本(6.4%、51.1%増)からの投資が拡大した一方、モーリシャス(11.2%、21.2%減)、オランダ(5.7%、27.0%減)、UAE(4.7%、37.0%減)からの投資は縮小した。なお、上位3カ国で投資額全体の6割以上を占めている。

表4-1 インドの国・地域別対内直接投資〔実行ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)〔注〕年度は4月~翌年3月
国・地域 2024年度 2025年度
金額 金額 構成比 伸び率
シンガポール 14,942 19,802 33.7 32.5
米国 5,457 11,171 19.0 104.7
モーリシャス 8,344 6,576 11.2 △ 21.2
日本 2,478 3,745 6.4 51.1
オランダ 4,620 3,374 5.7 △ 27.0
アラブ首長国連邦(UAE) 4,345 2,738 4.7 △ 37.0
ケイマン諸島 371 2,084 3.5 461.7
キプロス 1,203 1,412 2.4 17.3
英国 795 1,007 1.7 26.7
アイルランド 138 667 1.1 383.4
合計(その他含む) 50,018 58,846 100.0 17.7

〔注〕年度は4月~翌年3月

〔出所〕商工省 "FDI Newsletter"から作成

表4-2 インドの国・地域別対外直接投資〔届け出ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)〔注1〕年度は4月~翌年3月 〔注2〕IFSC・GIFTシティーは、インド西部グジャラート(GJ)州に設立されたインド初のオフショア型の国際金融サービスセンター(IFSC)。GIFTシティーはGujarat International Finance Tec-Cityの略称。なお、インド準備銀行(RBI)の対外直接投資統計では、2025年度からインド国内に所在するIFSC・GIFTシティーが独立した投資先区分として計上されている。
国・地域 2024年度 2025年度
金額 金額 構成比 伸び率
シンガポール 8,961 12,665 27.0 41.3
米国 4,889 5,736 12.2 17.3
モーリシャス 4,552 5,278 11.3 15.9
オランダ 4,769 4,494 9.6 △ 5.8
アラブ首長国連邦(UAE) 4,159 3,800 8.1 △ 8.6
英国 3,237 3,274 7.0 1.2
IFSC・GIFTシティー(注2) 811 3,092 6.6 281.1
スリランカ 639 1,154 2.5 80.6
ドイツ 257 798 1.7 210.5
フランス 62 721 1.5 1,067.4
ルクセンブルク 0 598 1.3 1,565,126.4
日本 749 100 0.2 △86.6
合計(その他含む) 41,622 46,864 100.0 12.6

〔注1〕年度は4月~翌年3月
〔注2〕IFSC・GIFTシティーは、インド西部グジャラート(GJ)州に設立されたインド初のオフショア型の国際金融サービスセンター(IFSC)。GIFTシティーはGujarat International Finance Tec-Cityの略称。なお、インド準備銀行(RBI)の対外直接投資統計では、2025年度からインド国内に所在するIFSC・GIFTシティーが独立した投資先区分として計上されている。

〔出所〕インド準備銀行(RBI)"Overseas Direct Investment" から作成

業種別では、コンピュータのソフトウエア・ハードウエア(構成比23.7%、前年度比78.5%増)、サービス(金融・BPOなど:17.0%、7.1%増)が拡大し、全体の4割以上を占めた。そのほか、貿易・卸売(6.8%、3.9%減)、非従来型エネルギー(5.1%、24.8%減)が縮小した一方、食品加工(5.1%、5.6倍)、海運輸送(3.4%、30.2倍)などが著増した。

表5-1 インドの業種別対内直接投資〔実行ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)〔注〕年度は4月~翌年3月
業種 2024年度 2025年度
金額 金額 構成比 伸び率
コンピュータのソフトウエア・ハードウエア 7,814 13,946 23.7 78.5
サービス(金融、BPOなど) 9,347 10,010 17.0 7.1
貿易・卸売 4,176 4,011 6.8 △ 3.9
非従来型エネルギー 4,012 3,019 5.1 △ 24.8
食品加工 541 3,010 5.1 456.6
建設(インフラ開発) 2,245 2,574 4.4 14.7
自動車産業 1,586 2,459 4.2 55.0
海運輸送 66 1,984 3.4 2,917.5
医薬品 891 1,912 3.2 114.4
教育 468 1,312 2.2 180.1
合計(その他含む) 50,018 58,846 100.0 17.7

〔注〕年度は4月~翌年3月

〔出所〕商工省 "FDI Newsletter"から作成

表5-2 インドの業種別対外直接投資〔届け出ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)〔注〕年度は4月~翌年3月
業種 2024年度 2025年度
金額 金額 構成比 伸び率
金融・保険・ビジネスサービス 16,464 19,919 42.5 21.0
製造業 10,058 7,010 15.0 △ 30.3
卸売・小売・貿易・レストラン・ホテル 7,947 6,688 14.3 △ 15.9
輸送機器・倉庫・通信サービス 2,263 4,254 9.1 88.0
農業・鉱業 2,874 3,188 6.8 10.9
社会サービス 919 2,680 5.7 191.8
電気・ガス・水 245 1,598 3.4 551.6
建設 764 1,223 2.6 60.0
その他 87 305 0.7 251.5
合計 41,622 46,864 100.0 12.6

〔注〕年度は4月~翌年3月

〔出所〕インド準備銀行(RBI)"Overseas Direct Investment"から作成

対外直接投資の拡大も継続

RBIの発表によると、2025年度のインドの対外直接投資額(届け出ベース)は、前年度比12.6%増の468億6,400万ドルとなった。投資先を国別にみると、前年度1位、2位のシンガポール(構成比27.0%、前年度比41.3%増)と米国(12.2%、17.3%増)でともに投資額が増加し、両国で全体のおよそ4割を占めた。

業種別では、金融・保険・ビジネスサービス(構成比42.5%、前年度比21.0%増)、輸送機器・倉庫・通信サービス(9.1%、88.0%増)、社会サービス(5.7%、2.9倍)、電気・ガス・水(3.4%、6.5倍)などが増加し、対外直接投資の伸長に寄与した。一方で、製造業(15.0%、30.3%減)、卸売・小売・貿易・レストラン・ホテル(14.3%、15.9%減)は縮小した。

投資環境・外資誘致政策

「メーク・イン・インディア」推進でサプライチェーンを強靭化

モディ政権は2014年の発足当初から製造業振興策「メーク・イン・インディア」の下、貿易赤字の削減や新規雇用の創出を目的として、国内製造業の振興を図っている。さらにコロナ禍のサプライチェーンの混乱を経て他国に頼らない産業構造「自立したインド」の実現を目指している。両者の実現に向けた代表的なインセンティブとしては、2020年から導入された生産連動型優遇策(PLI)(注)が挙げられる。PLIの仕組みは、政府の承認を得た新規投資の実行後、所定の要件を満たしていれば、新たに製造された製品の売り上げの増加額などに対して、複数年にわたり一定割合の補助金が製造者に支払われるというもので、対象として14の重点分野が指定されている。

〔注〕
PLIの対象14分野や主要分野の優遇措置、申請・認可・適用状況、該当市場動向、投資環境などは「インド主要産業別投資環境調査‐PLI主要分野‐」を参照。

インド政府は、サプライチェーンの強靭化や経済安全保障に関わる物資の国産化を重要課題としている。まず、半導体などのエレクトロニクス関連の投資誘致に注力しており、2021年から「セミコン・インディア・プログラム」を立ち上げ、半導体やディスプレー製造のエコシステムの創出を目指している。2026年度の予算案においても、後継となる「Semicon2.0」が提案された。

また、インドではスマートフォンをはじめとするエレクトロニクス関連産業の製造は「組み立て」が中心で、構成部品の輸入依存からの脱却が課題である。インド電子・情報技術省は、2025年3月に約4,000億円規模の電子部品製造優遇スキームを発表しており、2025年度は当該スキームにより、75件の投資計画が承認された。

加えて、米中貿易摩擦を背景として、中国政府が一部の中・重希土類関連品目に対する輸出管理を実施した影響で、レアアース磁石の多くを中国からの輸入に依存するインドにおいても電気自動車(EV)や再生可能エネルギー、電子機器などのサプライチェーンに混乱が生じた。そこで、インド政府は2025年11月、国内でのレアアース製造施設の設立促進を目的に、焼結レアアース磁石製造促進スキームを発表した。

対日関係

対日貿易では赤字幅が拡大

2025年度の日本向け輸出は、前年度比3.3%減の60億5,100万ドル、日本からの輸入は13.3%増の214億4,100万ドルとなった。インドの対日貿易収支は153億9,000万ドルのマイナスとなり、前年度から赤字幅が21.6%増加した。

日本向け輸出を品目別に見ると、輸送機器(構成比17.1%、前年度比1.2%増)、機械・器具(12.4%、23.2%増)、鉄・非鉄金属(8.7%、14.5%増)、水産物(7.5%、10.6%増)、化学残留物(5.2%、18.6%増)などが増加した一方、有機・無機農業化学品(7.6%、38.6%減)など一部品目で減少した。

輸入では、鉄・非鉄金属(構成比15.0%、前年度比21.1%増)、一般機械(12.1%、19.3%増)、輸送機器(8.5%、61.1%増)、電子部品(5.5%、21.5%増)をはじめ多くの品目で拡大したが、化学材料・製品(11.6%、11.8%減)、鉄・鋼鉄(7.6%、15.8%減)などは減少に転じた。

表6-1 インドの対日主要品目別輸出(FOB)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)〔注〕年度は4月~翌年3月
品目 2024年度 2025年度
金額 金額 構成比 伸び率
輸送機器 1,023 1,035 17.1 1.2
機械・器具 610 751 12.4 23.2
鉄・非鉄金属 460 527 8.7 14.5
有機・無機農業化学品 745 457 7.6 △ 38.6
水産物 408 452 7.5 10.6
化学残留物 264 313 5.2 18.6
医薬品・精製化学品 232 250 4.1 7.8
宝石・宝飾品 240 233 3.9 △ 2.8
鉄・鉄鋼 207 224 3.7 8.4
綿製既製服(アクセサリー含む) 158 189 3.1 20.1
合計(その他含む) 6,258 6,051 100.0 △ 3.3

〔注〕年度は4月~翌年3月

〔出所〕商工省・通商情報統計局(DGCI&S)公表データから作成

表6-2 インドの対日主要品目別輸入(CIF)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)〔注〕年度は4月~翌年3月
品目 2024年度 2025年度
金額 金額 構成比 伸び率
鉄・非鉄金属 2,661 3,222 15.0 21.1
一般機械 2,181 2,603 12.1 19.3
化学材料・製品 2,826 2,493 11.6 △ 11.8
輸送機器 1,130 1,820 8.5 61.1
鉄・鋼鉄 1,947 1,640 7.6 △ 15.8
電子部品 970 1,178 5.5 21.5
人造樹脂・プラスチック材 1,119 1,155 5.4 3.3
電気機器 833 957 4.5 14.9
機械工具類 732 864 4.0 18.0
電子機器 533 803 3.7 50.5
合計(その他含む) 18,919 21,441 100.0 13.3

〔注〕年度は4月~翌年3月

〔出所〕商工省・通商情報統計局(DGCI&S)公表データから作成

日本企業の投資拡大が続く一方、対日投資は減少

2025年度の日本からの直接投資(実行ベース)は前年度比51.1%増の37億4,520万ドルで、投資額全体の6.4%を占め、国・地域別では4位(前年度6位)となった。

製造業では、シスメックスが2025年4月に西部グジャラート州サナンドII工業団地で検査機器と試薬を製造する新工場を設立した。6月にニデックが南部カルナータカ州フブリで産業用モーター工場を開設した。8月には村田製作所が南部タミル・ナドゥ州のワンハブ・チェンナイ工業団地に、同社初のインド国内生産拠点となる積層セラミックコンデンサの包装・出荷施設を開設した。2026年2月には三菱電機がタミル・ナドゥ州マヒンドラ・オリジンズ工業団地にルームエアコンなどの製造工場を開所した。

非製造業では、2025年9月に三菱地所の100%子会社である三菱地所アジアが西部マハーラーシュトラ州のムンバイにインド支店を設立と発表した。12月には、化学品専門商社の加藤産商がグジャラート州に現地法人を設立し、ゴムや樹脂、化学品などを取り扱うと発表した。また総合物流企業のフジトランス コーポレーションは2026年1月に国内輸送および鉄道輸送事業を見据えて現地法人を設立し、4月から営業を開始した。スポーツ用品メーカーのミズノは2026年2月、ムンバイに現地法人を設立し、OEMでのスポーツ用品の製造と販売を行うことを発表した。

加えてインドでは、各国企業が研究開発拠点やグローバル・ケイパビリティー・センター(GCC)の設立を通じて、インドの高度人材や技術力を取り込む動きが広がりつつある。GCCとは、多国籍企業がITサービス、エンジニアリングや研究開発(R&D)などの機能を集約する拠点を指す。人件費や賃料などが低く、かつ優秀な人材が豊富であることを背景に、インドは主要な設置先となっている。例えば、第一生命保険は2025年6月にフランスのグローバルコンサルティング・IT企業であるキャップジェミニ(Capgemini)と複数年契約を結び、日本の生命保険会社として初めてインドでGCCを開所することを発表した。設立場所は南部テランガナ州ハイデラバードとなる。武蔵精密工業のインド子会社は7月、カルナータカ州ベンガルールのアトリア大学内にムサシ・テクノロジー・エクセレンスセンターを開設し、新技術の試験・検証に取り組むことを発表した。また、エーザイは2026年3月に南部アンドラ・プラデシュ州でGCCを設立し、グローバルIT戦略の中核拠点と位置付けた。

インドから日本への直接投資(届け出ベース)は前年度比86.6%減の1億49万ドル、国別では25位となった。2025年8月にはインドの大手自動車部品メーカーであるマザーサン・グループ(Motherson Group)が、自動車部品メーカーのユタカ技研を子会社化することを目的に、株式を取得すると発表した。また、自動車部品などの設計製造・販売などを手掛けるTBKは11月、インドのブレーキメーカーであるブレーキス・インディア(Brakes India)と購買・製造面での協業や次世代研究開発を目指す資本業務提携契約を締結すると発表した。その結果、ブレーキス・インディアを割当予定先とする第三者割当増資が行われた。

基礎的経済指標

(△はマイナス値) 〔注〕 年度は4月~翌年3月。ただし、1人当たりGDP、外貨準備高(グロス)、 為替レートは暦年。 実質GDP成長率、経常収支、対外債務残高(グロス):2025年度は暫定値 貿易収支:国際収支ベース(財のみ、BPM6フォーマット)、BPM6はIMF国際収支マニュアル第6版を指す。 経常収支:国際収支ベース(BPM6フォーマット)
項目 単位 2023年度 2024年度 2025年度
実質GDP成長率 (%) 7.2 7.1 7.7
1人当たりGDP (米ドル) 2,434 2,592 2,675
消費者物価上昇率 (%) 5.4 4.6 2.1
失業率 (%) 8.1 8.1 6.9
貿易収支 (100万米ドル) △ 242,065 △ 282,259 △ 333,646
経常収支 (100万米ドル) △ 23,209 △ 23,256 △ 25,240
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 574,509 569,544 576,449
対外債務残高(グロス) (億ドル) 6,239 6,689 7,364
為替レート (1米ドルにつき、インド・ルピー、期中平均) 82.6 83.7 87.2

〔注〕
年度は4月~翌年3月。ただし、1人当たりGDP、外貨準備高(グロス)、 為替レートは暦年。
実質GDP成長率、経常収支、対外債務残高(グロス):2025年度は暫定値
貿易収支:国際収支ベース(財のみ、BPM6フォーマット)、BPM6はIMF国際収支マニュアル第6版を指す。
経常収支:国際収支ベース(BPM6フォーマット)

〔出所〕
実質GDP成長率:インド統計・計画実施省、インド準備銀行(RBI)
1人当たりGDP、外貨準備高(グロス)、為替レート:IMF
消費者物価上昇率、失業率:インド経済監視センター(CMIE)
貿易収支、経常収支、対外債務残高(グロス):インド準備銀行(RBI)