外資に関する規制

最終更新日:2024年03月14日

規制業種・禁止業種

「2020年統合版FDI政策」に外資規制が集約されている。
外国直接投資が禁止される分野(Prohibited Sector)、出資比率上限等の条件付で許可される分野(Permitted Sector)が規定されている。
外国直接投資の認可制度は、政府当局の事前認可を必要としない「自動認可ルート」、事前に個別認可を必要とする「政府認可ルート」の2種類がある。

管轄官庁および関連法

  1. 商工省産業国内取引促進局(Department for Promotion of Industry and Internal Trade:DPIIT外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます , Ministry of Commerce and Industry)および行政局(ヒンディー語、英語)外国企業による対内直接投資(FDI)を所管
  2. 商工省商務局(Department of Commerce, Ministry of Commerce and Industry外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

    外国貿易政策2023(Foreign Trade Policy 2023外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

  3. インド準備銀行(Reserve Bank of India:RBI外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
外国為替管理(FEMA)規則

2019年10月17日のFEMA規則改正により、パキスタンや中国など、インドと国境を接する国からの投資は、政府の事前承認を要する。

2024年1月24日のNDI改正規則により、特定の要件に従うことを条件に、インド株式市場での上場・非上場を問わず、インドの公開会社による国際取引所への直接上場が認められることとなった(従来は非上場の公開会社のみに認められていた)。
同規則に基づく国際取引所は、現時点で「インド国際取引所」および「NSE国際取引所」の2カ所(同規則別添)である。
なお、インドと国境を接する国の個人や法人は、中央政府の許可がある場合に限り、国際取引所に上場された株式を所有できる(Foreign Exchange Management (Non‑debt Instruments) Amendment Rules, 2024PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(692KB))。

2020年統合版FDI政策(Consolidated FDI Policy 2020PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(768KB)

FDI政策が一本に集約された文書であり、唯一の政策判断の拠り所となるが、現時点での最新版は「2020年統合版FDI政策」であり、2020年10月15日から施行されている。

なお、FDI規則にかかる文書は2010年3月より一本化されたことにより、1991~2010年までに発表された177件のPress Noteはすべて無効となっている。
FDI規則の法的根拠は、インド準備銀行(RBI)が所管する外為管理法(FEMA1999)となる。

外国投資が禁止されている業種〔2020年統合版FDI政策、項目5.1〕

次の業種への外国直接投資は禁止されている(Prohibited Sector)。

  1. 宝くじ(民間・政府宝くじ、オンライン抽選などを含む)
  2. 賭博(カジノを含む)※いかなる形態での外国技術協力も禁止
  3. チット・ファンド(賭博事業)
  4. ニディ会社(互助金融会社)
  5. 譲渡可能開発権
  6. 不動産業またはファームハウスの建設
  7. タバコまたはその代替品から生成された葉巻、チェルート、たばこ、およびシガリロの製造
  8. 原子力および鉄道事業(認められている業務以外)

外国投資が条件付で許可される業種〔2020年統合版FDI政策、項目5.2〕

次の業種は「Permitted Sector」とされ、当該規制当局による規制、出資比率上限、許可される具体的な分類等の個別に定められた条件を満たせば、外国直接投資は認められる。
許可には「自動認可ルート」と「政府許可ルート」がある。自動認可ルートの対象となる業種は、投資に際し事前申請は必要なく、投資開始後30日以内にRBIへ届け出れば良い(事後報告)。政府許可ルート対象の業種への投資の申請は、National Single Window System(NSWS)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますポータルに提出し、当該分野管轄官庁により審査される。

外国投資が条件付で許可される業種
分野 FDI政策項目番号 業種
農業 5.2.1 農業・畜産
5.2.2 プランテーション
鉱業等 5.2.3 鉱業
5.2.4 石油・天然ガス
製造 5.2.5 一般製造(Manufacturing
5.2.6 防衛関連製造(Defence
サービス 5.2.7 放送
5.2.8 印刷出版
5.2.9 民間航空
5.2.10 建築・開発:タウンシップ、住宅、インフラ
5.2.11 工業団地
5.2.12 人工衛星設置・運営
5.2.13 民間セキュリティ会社
5.2.14 通信サービス
5.2.15 商業(Trading):卸売、小売、電子商取引、免税店
5.2.16 鉄道インフラ
金融サービス 5.2.17 資産管理会社
5.2.18 民間銀行
5.2.19 公的銀行
5.2.20 信用情報会社(CIC)
5.2.21 証券市場のインフラ会社
5.2.22 保険
5.2.23 年金
5.2.24 電力取引
5.2.25 ホワイトラベルATM
5.2.26 その他の金融サービス
製薬 5.2.27 製薬

主な産業の出資比率上限規制とガイドライン

主な業種の具体的な条件は以下のとおり。 その他の規制業種の情報を含む詳細な情報は、商工省産業国内取引促進局およびインド準備銀行のウェブサイトを参照。

銀行業〔2020年統合版FDI政策、項目 5.2.18、別表8〕

民間銀行に対して、外国直接投資は上限74%。49%以下の出資は自動認可ルートで、49%超74%以下の出資は政府認可ルートになる。

  1. 非居住インド人の場合には、個人が取得できる株式の上限は、従来と同様、本国送還可能ベース、不可能べースとも、それぞれ払込資本総額の5%で、両ベースの取得株式合計額の上限は10%。
    ただし、当該銀行会社の株主総会の特別決議で、本国送還可能および不可能の両べースでの取得株式合計額の上限を24%に引き上げることが可能。
  2. 外国銀行の100%子会社の場合を除き、払込資本の少なくとも26%は常時、居住者による保有が必要。
    外国銀行については、一定の要件を満たせば、100%出資の子会社の設立が可能。

なお、政府系銀行については、政府認可ルートで外資比率は上限20%だが、〔Banking Companies (Acquisition Transfer of Undertakings) Acts, 1970/80〕の条件を満たす必要がある〔2020年統合版FDI政策、項目5.2.19〕。

信用情報会社(CIC’s)〔2020年統合版FDI政策、項目5.2.20〕

CICへの外国投資は、100%自動認可ルートの下で許可されている。外国投資は、2005年信用情報会社(規制)法およびRBIからの規制上の認可を条件として許可されており、NDI規則に定められたその他の条件にも従う。

保険業〔2020年統合版FDI政策、項目5.2.22〕

保険規制開発庁(Insurance Regulatory & Development Authority:IRDA)からのライセンス取得および〔1938年保険法〕の遵守を条件に、規定された保険事業では74%(※)を上限に自動認可ルートで出資が可能。保険ブローカー、再保険ブローカー、保険コンサルタント、法人代理店、第三者管理人、調査員、損害査定員、またはIRDAが随時通知するその他の団体を含む、仲介業者または保険仲介業者による外国投資は、自動認可ルートで100%まで出資が許可されている。

また、インド生命保険公社(Life Insurance Corporation of India)に対する外国投資が、20%を上限に自動認可ルートで可能となった(2022年3月14日付Press Note No.1 of 2022外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。
Press Note No.2 of 2021および1938年保険法を改正する2021年保険(改正)法により、保険会社に対する外資出資比率の許容限度が49%から74%に引き上げられた。

年金分野〔2020年統合版FDI政策、項目5.2.23〕

FDI政策の条件を満たし、かつインドで年金基金資産運用管理活動の従事に関して、Pension Fund Regulatory and Development Authorityへの必要な登録を行う場合には、49%を上限に自動認可ルートで可能。

電力取引所〔2020年統合版FDI政策、項目5.2.24〕

Central Electricity Regulatory CommissionPower MarketRegulations, 2010への登録を条件として、電力取引所については、49%まで自動認可で外資出資可能。ただし、非居住投資家/事業体(共同保有者含む)による株式保有は5%を超えてはならない。

White Labelled ATM(WLA)〔2020年統合版FDI政策、項目5.2.25〕

WLAの運用について、最新の監査済み財務諸表において10億ルピー以上の純資産を持つ海外のNBFC(Non Banking Financial Company)は、自動認可ルートで100%まで出資が可能。
なお、WLA運用への投資については、NDI規則ではまだ通知されておらず、2020年統合版FDI政策とNDI規則には矛盾が生じている。そのため、この分野への投資にはNDI規則も存在することになり、RBIからの明確化が必要となる。

その他の金融サービス〔2020年統合版FDI政策、項目5.2.26〕

次の機関で規制されている金融サービス活動について、FDIは出資比率に応じた最低資本金などの条件の下、自動認可ルートで100%まで可能。

  1. インド準備銀行(RBI)
  2. 証券取引管理局(Securities and Exchange Board of India:SEBI)
  3. 保険規制開発庁(Insurance Regulatory and Development Authority:IRDA)
  4. 年金基金規制開発庁(Pension Fund Regulatory and Development Authority:PFRDA)
  5. 全国住宅銀行(National Housing Bank:NHB)
  6. 政府が認めるその他の金融セクター

金融サービス活動が法律によって具体的に規制されている場合には、FDIの限度は当該法律によって制限される。少なくとも1つの金融セクター規制当局の規制を受ける必要がある。

金融サービス活動について、規制当局が[1]複数存在する、[2]一部の活動のみを規制している、[3]明確に定まっていない等の場合には、FDIは最低資本金などの条件の下、政府認可ルートで100%まで可能。
また、ダウンストリームインベストメントは、セクターごとの規制および(外国為替管理法(FEMA))の対象となる。

民間航空業〔2020年統合版FDI政策、項目5.2.9.2〕

定期航空運送サービス業(国内定期旅客航空・地方航空運送サービス)の場合、外資(外国の航空会社を含む)は、自動認可ルートで49%を上限に出資が可能。49%超の出資は政府の認可により認められる。ただし、民間航空省のガイドラインに従う必要がある。

Directorate General of Civil Aviationからの認可を必要とする不定期便またはヘリコプター便、水上機サービスの場合、100%まで自動認可ルートで出資可能。

定期航空運送サービス業(国内定期旅客航空事業、または地方航空運送サービス事業を含む)を経営するための航空事業者証明書は、次の条件を満たす会社または事業体に交付することができる。

  1. インドで登記されており国内に主たる営業所を有する
  2. 会長および取締役の少なくとも3分の2はインド国民である
  3. 実質的な所有権および支配権はインド国民に帰属する
空港〔2020年統合版FDI政策、項目5.2.9.1、項目5.2.9.3〕

空港地上業務、保守・修理機関、技術訓練機関の場合、外資は自動認可ルートで100%まで出資可能。
空港開発の場合、既存プロジェクト、新規プロジェクトのいずれも、自動認可ルートで100%の出資が可能。

エア・インディア社に対する外国投資は、以下の条件に従うものとする。

  1. エア・インディア社に対する外国からの投資(外国航空会社からの投資を含む)は、直接的、間接的いずれの場合にも49%を超えてはならない。ただし、非居住インド人については、自動認可ルートで100%まで外国投資が許可されている。
  2. エア・インディア社の実質的な所有権および支配権は、1937年航空機規則に定めるところにより、引き続きインド国民に帰属する。
通信サービス業〔2020年統合版FDI政策、項目5.2.14〕

固定電話、携帯電話、関連付加サービス等への外資出資は100%まで可能。ただし、49%以下の出資は自動認可とし、49%超の出資は政府による個別認可取得が条件。
また、自動認可ルートで100%まで外資出資が認められる「その他のサービス提供者」を除き、情報通信省(Department of Telecommunications:DoT)から随時通知されるライセンスおよびセキュリティ条件をライセンシーおよび投資家が遵守する必要がある。

石油(精製以外)〔2020年統合版FDI政策、項目5.2.4.1〕

石油製品(ガソリン、ディーゼル、LPG、ケロシンなど)の販売業、小規模・中規模の石油発掘業、石油パイプライン、天然ガスおよびLNGパイプラインの分野に対して、自動認可ルートで100%の外資出資が可能。
ただし、いずれの分野でも、業種ごとに別途定められている条件、ガイドラインに従う必要がある。

石油精製および天然ガス〔2020年統合版FDI政策、項目5.2.4.2〕

石油精製については、国営企業への出資は上限49%を条件に、自動認可ルートで出資が可能。
一方、民間企業へ投資する場合には、100%まで自動認可で認められる。

建設開発:タウンシップ、ハウジング、インフラ整備建設〔2020年統合版FDI政策、項目5.2.10〕

建設開発プロジェクト(タウンシップの開発、住宅/商業施設の建設、道路または橋、ホテル、リゾート、病院、教育機関、レクリエーション施設、都市および地域レベルのインフラが含まれる)は、政府のガイドラインに従うことを条件に、自動認可で100%まで出資が可能。建設開発プロジェクトの各フェーズは、個別のプロジェクトとみなされる。
撤退は、プロジェクトあるいは道路、水道、街灯、下水・排水道等のインフラ主要開発業務を完了した後に可能。

なお、当該出資金をプロジェクトを完了せずに本国送金する場合、その出資金の拠出時期単位ごとに、それぞれの拠出時から3年後となる。ただし、非居住者から他の非居住者への株式譲渡には、ロックイン期間や政府の承認は必要ない。
しかし、SEZの開発、ホテルならびに観光施設、病院、老人ホーム、教育用施設、非居住インド人による投資に関しては、前述の3年間の譲渡禁止期間の条件は課せられない。

不動産事業、農家住宅の建設業、移転可能な開発権(TDRs)のトレーディング事業に従事している(または従事しようとしている)企業に、外資は認められていない。
不動産事業とは、土地等の固定資産の取り扱いにより利益を得ることで、タウンシップの開発、住居・商業施設、道路や橋、教育施設、娯楽施設、都市・地域等のインフラやタウンシップの建設を含まない。

不動産を譲渡ではなく、賃貸またはリースし、所得を得る場合、不動産事業とはみなされない。
なお、不動産仲介サービスは不動産業には該当せず、自動認可ルートにて100%の外国投資が認められている。

卸売業〔2020年統合版FDI政策、項目5.2.15.1〕

卸売業(中小企業からの調達を含む)およびキャッシュアンドキャリー(C&C)のビジネス形態については、自動認可ルートで100%まで出資が可能。
卸売業では、取引日報の記録、ライセンス・登録の取得義務などの条件のほか、同じグループ内の企業・業者への卸売も認められているが、当該卸売が卸売事業の総取引高の25%を超えてはならないと規定されている。

卸売業の企業は、小売業も可能なことから、小売業と卸売業の両方を行う企業への投資が認められる。
ただし、それぞれのFDI政策の要件を満たさなくてはならない。また、当該企業は、小売業および卸売業それぞれの会計帳簿を別々に作成し、法定監査を受ける必要がある。

電子商取引分野〔2020年統合版FDI政策、項目5.2.15.2〕

電子商取引分野は、在庫型モデル(Inventory based model)とマーケットプレイス型モデル(Marketplace based model)に分類され、それぞれに異なる外資規制が適用される。なお、消費者向け電子商取引(B2C)は認められていない。

在庫型モデルは、商品の在庫を自社が所有し、消費者に直接販売(B2C)する事業であり、原則として外国投資は認められない。ただし、実店舗を持つ単一ブランド小売業は、電子商取引での小売もできる。また、電子商取引での小売開始後2年以内に実店舗を開店することを条件に、実店舗開店前に先行して電子商取引を開始することも認められる。

マーケットプレイス型モデルは、売り手と買い手の取引を媒介するためのオンラインプラットフォームを提供する事業であり、自動認可ルートで100%まで出資が可能。マーケットプレイス型事業者は以下の条件に従うものとする。

  1. 在庫(販売を予定している商品)の所有権および支配権を有さないこと。マーケットプレイス型事業者の購入額の25%超が当該事業者またはそのグループ会社からである場合、当該事業者はその在庫の支配権を有するとみなされる。
  2. マーケットプレイス型事業者またはそのグループ会社が資本参加する事業者、あるいは在庫を管理する事業者は、当該マーケットプレイス型事業者が運営するプラットフォームで自社の商品を販売しないこと。
  3. 商品等の価格に影響を及ぼさず、公平な競争の場を維持すること。
  4. 当該プラットフォーム上でのみ商品を販売するように売主に強制しないこと。
単一ブランドの小売業〔2020年統合版FDI政策、項目5.2.15.3〕

単一ブランドの小売業は100%まで自動認可ルートで出資が可能。
ただし、次の条件に適合する必要がある。

  1. 販売する製品は単一ブランドに限られる。
  2. 販売製品のブランド名は、製品に対して国際的に使用しているブランド名と同一でなければならない。
  3. 単一ブランドの小売業で扱う製品は、その製造過程でブランド名を付けられた製品のみとする。
  4. 投資を実行する者とブランド所有者が異なる場合には、ブランド所有者とのライセンス供与やフランチャイズなどの法的に有効な合意書の締結が必要。
  5. 出資比率51%超の場合、製品調達額の30%について、インド国内からの調達が求められる。
    その調達先は、国内の中小企業や小規模産業、農村産業、職人等が推奨される。
    当該国内調達義務は、最初に事業を開始した(1号店の開業)日の属する年の4月1日から起算して5年間の平均の製品の購買価格において満たされていなければならず、その後毎年達成する必要がある。
    先進技術に該当する製品で国内調達が不可能な製品を扱う単一ブランド小売業者の場合、事業開始時(1号店の開業もしくはオンラインストア開業のいずれか早い方)より3年間は、当該調達要求は適用されない。
  6. 現地調達要件を満たすために、単一ブランド小売業者によるインド国内の全ての調達は、調達された商品がインド国内で販売されるか輸出されるかに関係なく、現地調達としてカウントされる。また、グローバル事業のためのインド国内から商品を調達する場合についても、現地調達要件である30%の算定に加えることが認められている。
    「グローバル事業のためのインドからの商品の調達」とは、小売業者またはそのグループ会社(居住者もしくは非居住者)が直接的、もしくは法的拘束力のある契約に基づいて第三者を通して間接的に、特定の会計年度にその単一ブランドのグローバル事業のためにインドから調達された商品の価値を意味する。
  7. 実店舗での単一ブランド小売業者は、電子商取引での小売も可能。ただし、オンラインでの小売開始日から2年以内に企業が実店舗を開店するという条件の下で、電子商取引による小売取引を実店舗の開店前に行うことも可能。
  8. インドのブランドによる単一ブランドの小売企業に出資する場合、前項b.とd.の条件は適用されない。
  9. インドのブランドは、居住インド人/居住インド人により所有または支配されるインド内国会社により所有または支配されるものとする。
総合小売業(複数ブランド小売業)〔2020年統合版FDI政策、項目5.2.15.4〕

出資比率51%を上限に、複数ブランド小売業への投資が政府認可ルートで可能。具体的な投資要件は次のとおり。

  1. 果物、野菜、花、穀物、豆類、生鳥肉、水産品、その他肉製品を含む農水産品は、固有のブランド名がないものとする。
  2. 最低投資額は1億ドルとする。
  3. 1億ドルの投資のうち、最初に実施する外国直接投資額の少なくとも50%は、3年以内にバックエンドインフラストラクチャーに投資されなければならない。
    バックエンドインフラストラクチャーには、フロントエンドのユニット等に対する投資を除き、全活動に対する投資、例えば、加工、製造、流通、設計改良、品質管理、梱包、物流、保管、倉庫、農業市場生産インフラ等に対する投資を含む。土地の購入や賃貸費用は、バックエンドインフラストラクチャーのための投資には含まれない。
  4. 製品調達額の30%をインド国内の小規模産業(工場、設備への投資額が200万ドル以下)から調達する。
    当該要求は、最初に外国直接投資が行われた日の属する年の4月1日から、製品・加工品購入額の5年分の平均値において満たされていなければならない。その後毎年達成する必要がある。
  5. 前項b. c. d.の条件の遵守を保証するために事業者自身が行う自己認証は、当局によるチェックを受ける可能性があるため、法定監査人により正式に認証された会計書類を備置するものとする。
  6. 店舗は人口100万人以上(2011年国勢調査に基づく)の都市、あるいは、州政府に決められた都市とする。 店舗の立地は、当該都市の市街地の周囲10キロメートルの地域も対象とすることが可能。
  7. 農産物の調達は、政府が優先権を有する。
  8. 複数ブランド小売業の外資開放決定は、制度上それを可能にしたいという政策にすぎず、実際の施行については、各州や連邦直轄地の判断に任せられている。
    店舗の設立は、各州や連邦直轄地が定める各種法律や規制に則る必要がある。
    現時点で、複数ブランド小売業の参入に合意している州や連邦直轄地は次のとおり。
    アンドラ・プラデシュ州、テランガナ州、アッサム州、デリー準州、ハリヤナ州、ヒマーチャル・プラデシュ州、ジャンムー・カシミール州、カルナータカ州、マハーラーシュトラ州、マニプール州、ラジャスタン州、ウッタラカンド州、ダマン&ディウ連邦直轄地、ダードラ・ナガルハベリ連邦直轄地
  9. 複数ブランド小売業を営むFDI企業については、電子商取引による小売業はいかなる形態であっても認められない。
  10. 複数ブランド小売業への投資に際しては、各申請書について商工省による認可検討に先立って、産業国内取引促進局(DPIIT)の条件を満たす投資か否かを確認する。
防衛機器産業〔2020年統合版FDI政策、項目5.2.6〕

自動承認ルートで74%を上限に出資が可能。なお、当該投資実施により、防衛産業に最新式・先端の技術が導入されていることや、その他に規定される目的を達成することを条件に、政府承認ルートで74%超の投資も可能。
小型武器弾薬の生産を含む外国直接投資については、ライセンス取得と防衛省によるガイドライン遵守が条件。
新規産業許可を求める企業には、自動認可ルートで74%まで出資が認められる。

産業ライセンスを申請しない、または既に防衛産業の外国投資について政府の承認を得ている企業への49%を上限とする新たな外国投資は、当該外国投資を行うために出資/株式保有パターンの変更または既存投資家から新規外国投資家への持分譲渡をした場合、その変更から30日以内に防衛省への申告書の提出義務が生じる。当該企業から49%を超えるFDIを行う場合は政府承認が必要となる。

農業、畜産業、プランテーションセクター〔2020年統合版FDI政策、項目5.2.1、項目5.2.2〕

次の農業活動については、一定の条件を満たせば、自動認可ルートで100%出資が可能。
ただし、これら以外の農業・栽培分野・活動への直接投資は認められていない。

  1. 管理下での花卉、園芸、野菜、キノコの栽培
  2. 種子、植生基材の開発・生産
  3. 畜産、養魚、養殖、養蜂
  4. 農業および関連分野に関するサービス
  5. 茶園、コーヒー園、ゴム園、カルダモン園、ヤシの木、オリーブの木の農園(プランテーション)
印刷出版業〔2020年統合版FDI政策、項目5.2.8〕

ニュース・時事を扱う新聞、定期刊行物の印刷出版業、ニュース・時事を扱う外国雑誌のインド版発行については、一定の条件を満たせば、政府認可ルートで26%を上限に出資が可能。

科学技術関連誌およびニュース・海外時事を扱う新聞のFAX配信については、一定の条件を満たせば、政府認可ルートで100%までの出資が可能。ただし、情報放送省の定めるガイドラインに従うことを義務付け。すべて個別認可取得が必要。

放送業〔2020年統合版FDI政策、項目5.2.7〕

ニュース・時事を扱うTVチャンネルのアップリンキング事業については政府認可ルートで49%、それ以外のニュース・時事を扱わないTVチャンネルのアップリンキング事業およびテレビチャンネルのダウンリンキング事業については、自動認可ルートで100%まで出資が可能。
FMラジオは政府認可ルートで49%を上限に可能〔2020年統合版FDI政策、項目5.2.7.2〕。
デジタルメディアを介したニュースおよび時事問題のアップロード/ストリーミングについては政府承認ルートで26%まで可能。

次の事業を含む放送キャリッジサービスについては、自動認可ルートで100%まで外資が認められる〔2020年統合版FDI政策、項目5.2.7.1〕。

  1. 通信ネットワーク拠点(テレポート)(アップリンキングハブ・テレポートの設置)
  2. 家庭向け直接放送(DTH)
  3. ケーブル・ネットワーク(国、州または地方レベルで運営し、デジタル化に向けたネットワークおよびアドレス指定能力のアップグレードを請け負うマルチ・システム・オペレーター)
  4. モバイルテレビ
  5. ヘッドエンド・イン・ザ・スカイ放送事業(HITS)
  6. ケーブル・ネットワーク(デジタル化に向けたネットワークおよびアドレス指定能力のアップグレードを請け負わないマルチ・システム・オペレーターならびにローカル・ケーブル・オペレーター)

加えて、ライセンスまたは分野別の関連省の認可を得ていない企業は、49%以上の外国出資により株式所有形態に変更が生じる場合や、既存の株主から新しい外国投資家に株式が譲渡される場合には、政府の特別認可の取得が必要。

製薬業〔2020年統合版FDI政策、項目5.2.27〕

製薬業については、新規プロジェクト・会社(Greenfield Project)への外国投資は自動認可ルートで100%まで出資が可能。
既存プロジェクト・会社(Brownfield Project)では、74%以下の出資は自動認可ルートで、74%超の出資は〔2020年統合版FDI政策、項目5.2.27〕の条件付き政府認可ルートで、外資が認められる。
ただし、「競業避止」条項は、政府の承認がある特別な状況を除き、いずれのルートにおいても認められない。

なお、医療機器の製造については、自動認可ルートで100%出資が可能。これらの製薬業に属する条件は適用されない。

鉱業〔2020年統合版FDI政策、項目5.2.3〕

〔1957年鉱業および鉱物(開発・規制)法(Mines and Minerals (Development and regulation) Act, 1957)〕の規定を条件に、ダイヤモンド、金、銀、貴金鉱石を含む(チタン関係鉱石を除く)各種金属・非金属鉱石の探鉱・採鉱は100%まで自動認可。
しかし、チタン関係鉱石・鉱物の探鉱および鉱石の分離、加工については、同法の規定およびその他規定に従うことを条件に、政府認可により100%まで出資が可能。

石炭・褐炭〔2020年統合版FDI政策、項目5.2.3.2〕

自社の電力プロジェクト、鉄鋼製造ユニットやセメント製造ユニット用の石炭・褐炭採掘の場合、100%まで出資が可能。 洗炭場などの石炭加工事業については、石炭採掘をしないこと、洗炭・整粒状の石炭を市場に売却しないこと等の条件を満たせば、100%まで出資可能。さらに、石炭の販売、関連する処理インフラを含む石炭採掘活動については、自動認可で100%まで出資が可能。

免税品店〔2020年統合版FDI政策、項目5.2.15.5〕

保税地域で営業する免税品店については、1962年関税法の規定を満たすことを条件に、自動認可ルートで100%まで出資可能。

製造〔2020年統合版FDI政策、項目5.2.5〕

セクターごとのキャップまたは条件等が設定されている場合を除き、自動認可ルートにて100%まで可能。
また、製造業者は、インド国内で製造した自社の製品について、政府認可なしに、電子商取引を含む小売・卸売のいずれの方法でも販売できる。

小売業に関するFDI政策の規定にかかわりなく、インド国内で製造/生産された食品を電子商取引の方法で販売する場合には、政府認可ルートで100%まで外資が認められる。
製造活動は、投資先企業による自己製造、または、当事者同士、当事者およびエージェント間の法的拘束力のある契約によるインドでの製造委託のいずれかが想定される。

出資比率

外国直接投資はネガティブ・リストや禁止リストに該当しなければ、出資比率100%までの直接投資が自動認可される(「規制業種・禁止業種」参照)。

外国企業の土地所有の可否

外国企業のインド法人、支店およびプロジェクト・オフィスによる不動産の購入は可能。駐在員事務所については不可。

資本金に関する規制

〔会社改正法2015〕に基づき、会社形態による最低資本金規制はなくなったが、企業省は最低資本の金額を規定できる。現物出資に関する規制:機械などの設備、ならびに会社設立・登記にかかる前払い費用を、資本金に繰入れることは可能。

  1. 会社法に基づく最低資本金規制

    〔会社改正法2015〕により、最低資本金の規制はなくなったが、企業省(Ministry of corporate affairs:MCA)は、最低資本の金額を規定することができる。
    一方、証券取引所に上場する場合は、公募による資本金が3,000万ルピー以上で、かつ総資本金の25%以上を公募する必要がある。ただし、ボンベイ証券取引所の場合は、総資本金額は1億ルピー以上。

    なお、インドでは公開会社を、株主が発起人や経営者のみに限定されている非上場公開会社(closely-held public company)、証券取引所に上場した上場公開会社(widely-held public company)の2つに分類している。

  2. 現物出資に関する規制〔2020年統合版FDI政策〕
    1. 機械、設備などの輸入資本財を資本金に繰入れできる。輸入資本財に中古機械・設備は含まない。

      政府認可が必要なセクターの場合、当該繰入れは産業国内取引促進局(DPIIT)の許可を条件とし、申請は当該資本財の船積み後、180日以内に行わなければならない。
      自動認可が認められているセクターの場合、機械、設備、資本財(中古機械含まず)の輸入に対する普通株の発行は自動認可ルートが認められる。

    2. 海外投資家による、会社の設立準備ならびに登記にかかる前払い費用(家賃も含む)を資本金に繰入れできる。

      政府認可が必要なセクターの場合、繰入れはDPIITの許可を条件とし、申請は会社登記後、180日以内に行わなければならない。
      自動認可が認められているセクターの場合、会社の操業および設立準備にかかる前払い費用に対する普通株の発行は自動認可ルートが認められる。

その他規制

インドの外国投資認可制度には、「自動認可制」と「個別認可制」の2種類がある。

インドの外国投資認可制度は次の2種類。

  1. 自動認可制(自動認可ルート)
    インドへの外国投資を行うための当局からの事前承認を必要とせず、自動的に投資が認可される。
  2. 個別認可制(政府認可ルート)
    2020年統合版外国直接投資政策(2020 Consolidated FDI Policy)の通達(2019年外国為替管理(Non-debt Instruments)規則も参照)、外国為替管理通達(2020年4月22日付No. S.O.1278(E))PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(1.35MB)およびプレスノート3シリーズ(2020年)に記載されている業種への投資案件の場合、事前に商工省産業国内取引促進局(DPIIT)から個別認可を取得する必要がある。パキスタンや中国など、インドと国境を接する国からの投資においては、業種に関わらず個別認可制となっている〔2020年外国為替管理改正規則(Foreign Exchange Management (Non-debt Instruments) Amendment Rules, 2020外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(1,356KB))〕。