関税の不当な回避の取り締まりなど通商法の執行を強化する方針、2027会計年度米国予算教書

(米国)

ニューヨーク発

2026年04月07日

米国のトランプ政権は4月3日、2027会計年度(2026年10月~2027年9月)の予算教書を発表した(2026年4月7日記事参照)。通商分野では、商務省傘下の国際貿易局(ITA)や産業安全保障局(BIS)への予算増を通じて、関税の不当な回避に対する取り締まり強化や輸出管理の厳格な運用など、執行面を強化する方針を示した。

商務省に対する予算は、全体では2026年度比12.2%減となる92億ドルを要求した。だが、ITAに対しては、貿易上の不正行為に対処するため、2026年度予算から1,000万ドルの増額を要求した。追加関税措置を多用するトランプ政権は、2025年8月に、関税の不当な回避の取り締まりなどを強化するため省庁横断の貿易詐欺対策タスクフォースを立ち上げたほか(2025年9月4日記事参照)、迂回輸入や「積み替え品」輸入などの取り締まりに力を入れている(注1)。また、対米投資の促進に向け、2025年3月に発表した「米国投資促進局の設立」に関する大統領令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに基づく取り組みを強化するため1億ドルを要求した。政治専門紙「ポリティコ」(4月3日)によれば、同局はハワード・ラトニック長官の肝いりプロジェクトであり、CHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法)に基づく1兆ドルを超える可能性のある支出や、日本や韓国などと合意した対米投資の監督を目的としている(注2)。

商務省の箇所ではそのほか、米国のイノベーションと国家安全保障を保護するため、輸出管理や1962年通商拡大法232条を所管している産業安全保障局(BIS)に対して、2億1,500万ドル増を要求した。予算教書では、「悪意ある主体による米国のイノベーションの盗用に対処するため、数百人の新たな特別捜査官の採用を後押しする歴史的な投資」だとして、輸出管理の執行を強化する方針を強調した。また、「重要分野における輸入が、国家安全保障に与えるリスクを評価するための232条に基づく調査を実施する能力も大幅に強化することになる」とも記載した(注3)。

労働省の箇所では、2026年度予算から25.9%減となる99億ドルを要求したが、強制労働への対処などは強化する方針を示した。特に国際労働局(ILAB)の予算額は4,600万ドル減とするものの、「強制労働や児童労働といった海外の不公正な競争慣行から米国の労働者を守ることを目指す」とし、通商協定で定めた労働基準の厳格な執行に注力すると記した。トランプ政権は、強制労働などによって生産された商品は、価格が人為的に低く抑制されるため、米国製品が不当に不利に扱われているなどとして問題視している(注4)。

また、米国税関・国境警備局(CBP)に対しては、電子通関システム(ACE)への投資として1億3,600万ドルを計上した。連邦最高裁が国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税を無効と判断して以降、CBPはIEEPA関税の還付手続きのためACEに「統合通関管理・処理システム(CAPE)」を導入すると明らかにしている(2026年4月1日記事参照)。

米国通商代表部(USTR)に対しては、予算教書の別添において、2026年度から46%増となる9,500万ドルを要求した。USTRの職員を70人以上増員する方針を示した。

(注1)2026年2月には、同タスクフォースのトップを務めている司法省の上級顧問が貿易詐欺への取り締まりを強化する方針を示している(2026年2月26日記事参照)。迂回輸入の取り締まりについては、2026年1月14日付地域・分析レポートも参照。

(注2)米国との合意に基づく日本からの投資は2026年3月23日記事参照、韓国からの投資は2026年3月16日記事参照

(注3)232条は、特定製品の輸入が米国の国家安全保障に脅威を及ぼすと商務長官が判断した場合に、追加関税などの措置を発動する権限を大統領に認めている。最近では232条に基づく鉄鋼、アルミニウム、銅に対する追加関税率の修正や(2026年4月3日記事参照)、医薬品に対する100%の追加関税賦課(2026年4月3日記事参照)を発表している。そのほか、ポリシリコン、風力タービン、産業機械など、現在調査中の案件も複数ある。詳細はジェトロのウェブサイトPDFファイル(381KB)参照。

(注4)例えばUSTRは3月に、主要貿易相手国・地域が強制労働を使用して生産された産品の輸入禁止措置を実施しているかについて、1974年通商法301条に基づく調査を開始した(2026年4月2日記事参照)。また米国は、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)が定める「事業所特定の迅速な労働問題対応メカニズム(RRM)」も活用している(2026年3月30日記事参照)。7月に行われるUSMCA見直しでは、RRMの強化が指摘されている。USMCA見直しの見通しについては、2026年2月20日付地域・分析レポート参照

(赤平大寿)

(米国)

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