韓米関税合意履行と戦略的対米投資に向け、特別法が成立
(韓国、米国)
ソウル発
2026年03月16日
韓国の産業通商部は3月12日、「大韓民国とアメリカ合衆国との間の戦略的投資の運営および管理のための特別法」(以下、韓米戦略的投資特別法)が国会本会議で成立したと発表した。
韓米戦略的投資特別法は、2025年11月14日に韓米間で締結された「韓米戦略的投資に関する覚書(MOU)」(以下、MOU)(2025年11月18日記事参照)の履行に向けた法的・制度的基盤だ。与野党の合意に基づき2月9日に設置された特別委員会で、迅速に審議が行われた(注1)。
同法の概要は次のとおり。
(1)用語の定義
- 「戦略的投資」:MOUに基づき韓国側が確約した戦略産業分野(注2)に対する2,000億ドル規模の投資(以下「対米投資」)および、造船分野における民間投資・保証・船舶金融などの米国側が承認した1,500億ドル規模の投資(以下「造船協力投資」)。
- 「商業的合理性」:投資期間を通じて、大統領令で定める元利金の返済に必要な収益(キャッシュフロー)を生み出せると判断されること。
(2)対米投資などの原則
- 対米投資は「商業的合理性の確保」を原則とし、韓国経済の発展や産業競争力強化などにつながる方向で進められなければならないと同法に明記。ただし、例外的措置として、商業的合理性が確保されない場合であっても、国家安全保障やサプライチェーンの安定化などの不可避な事由がある場合には、国会(注3)の事前同意を前提に進められるように規定。
(3)戦略的投資の推進体系
- 戦略的投資の意思決定は、新設予定の「韓米戦略投資公社」(以下、公社)(注4)内に設置する「運営委員会」(委員長:副首相兼財政経済部長官)と、産業通商部に設置される「事業管理委員会」(委員長:産業通商部長官)が行う。
(4)セーフガード(安全装置)の明記
- 対米投資は年間200億ドルを上限とする。また、事業の進捗状況を考慮した金額を執行しなければならない。
- 対米投資の執行により外国為替市場に懸念が生じる場合、投資金額や執行時期を調整するよう、米国側と協議しなければならない。
- 20年間の期限内に対米投資事業の元利金回収が困難であると判断される場合、キャッシュフローの分配比率の調整について、米国側と協議しなければならない。
(5)韓米戦略投資基金の設置
- 戦略的投資の財源を効率的に管理・運用するため、公社に「韓米戦略投資基金」を設置する。
- 政府は毎年、基金の管理状況、投資の経済・産業への影響評価などをまとめた年次報告書を国会に提出する。重大な損失が発生した場合は遅滞なく国会へ報告するよう規定。
(6)施行日
- 韓米戦略的投資特別法は、公布後3カ月が経過した日から施行される。
同法の成立について、財政経済部の具潤哲(ク・ユンチョル)長官は「中東情勢の緊迫化など、対外的な不確実性が高まる中で、今回の法案処理が企業側の不確実性を緩和することに寄与するだろう」と評価した。さらに、「今後は同法を基に造船、エネルギーなどの戦略的産業分野における両国の協力を強化する。これにより、韓国企業のグローバル・バリューチェーン進出と競争力確保を支援していく」と強調した。
(注1)2026年1月末に米国のドナルド・トランプ大統領が、MOU履行のための韓国の立法化が遅延しているとして、関税を合意締結以前の25%に戻すと発言。それを受け、特別委員会を組成し国会審議が迅速に行われていた。
(注2)造船、半導体、医薬品、重要鉱物、エネルギー、人工知能(AI)および量子コンピューティングなど。
(注3)財政経済企画委員会および産業通商中小ベンチャー企業委員会。
(注4)政府の出資により設立。法定資本金は2兆ウォン(約2,200億円、1ウォン=約0.11円)とし、20年以内の期限付きで運営された後、解散する予定。「韓米戦略投資基金」の組成・管理・運用が主な業務。
(橋爪直輝)
(韓国、米国)
ビジネス短信 115f00bec83197d4






閉じる