米USTR、日本の強制労働産品の輸入を禁止する法律の欠如を指摘、2026年外国貿易障壁報告書(日本編)

(米国、日本)

ニューヨーク発

2026年04月02日

米国通商代表部(USTR)は3月31日に公表した2026年版「外国貿易障壁報告書(NTE)」(2026年4月2日記事参照)で、日本に関して、前年から1ページ拡大して、12ページを充てた。

冒頭には、2025年7月の日米関税合意を挙げ(2025年7月28日記事参照)、日本による米国の基幹産業への5,500億ドルの投資、米国産コメ輸入の75%増、米国連邦自動車安全基準(FMVSS)に準拠する米国産自動車の追加試験なしでの輸入、トウモロコシ、大豆など80億ドル相当の米国製品の購入などで合意したとし、「引き続き、米国輸出に対する広範な障壁の撤廃に向け日本と協議を続けている」と記した。

日本の関税率は比較的低いと評価しながらも、化学製品、魚介類、木材製品、宝飾品、コメ・同製品、乳製品、飲料、チョコレート、生イチゴ、冷凍ブルーベリー、生かんきつ類、砂糖、ペットフードなど特定の品目では高関税であり、米国の輸出に影響を及ぼしていると指摘した。

非市場的政策および慣行(NMPPs)については、「十分な措置を講じていない」と断じた。その理由に、日本がNMPPsに対処する条項を含む相互貿易協定(ART)を締結していないことを挙げた(注1)。また、ロシアで漁獲され日本に輸出されるスケトウダラ、サケ、カニなどに対して、有意義な措置を講じていないとも批判した。ロシアの生産者は、国による造船補助や搾取的な労働慣行を利用しているとし、「米国が懸念を表明しているにもかかわらず、日本は不公正な競争を容認し続けており、ロシア産と米国産のスケトウダラすり身に同じ関税率を適用している」と批判した。

労働に関しては、日本に強制労働によって生産された商品の輸入を禁止する規定がないことを挙げ、これにより日本の商品やサービスの価格は人為的に低く抑制され、優位性が保たれている可能性があると指摘した(注2)。

また日本は、米国への迂回輸入を規制する協定を結んでいない、数少ない主要貿易相手国の1つだと批判した。協定の不在により、日本を経由して輸送される第三国メーカーからの高リスク貨物を選別する、両国政府の取り組みを妨げていると指摘した(注3)。

そのほか、米国産自動車の市場アクセスに「強い懸念」があると記載し、日本には、自動車に関する独自の基準や試験手順、短距離車載通信システムのための周波数帯域の割り当てなど、さまざまな非関税障壁があると指摘した。

なお、USTRは現在、1974年通商法301条に基づき、日本を含む各国・地域の過剰生産能力と(2026年3月12日記事参照)、強制労働産品の輸入禁止措置(2026年3月13日記事参照)について調査している。USTRは、過剰生産の301条調査において、日本は自動車・同部品、光学・写真・技術・医療機器などの分野で「構造的な過剰生産能力と過剰生産の兆候がある」と述べているが、今回のNTEでは直接的にそれを指摘する記載はなかった。一方で、強制労働産品の輸入禁止については、既述のとおり、NTEを通じて懸念を表明している。USTRは301条調査を、同法122条に基づく10%の課徴金の期限となる7月24日以前に終えるとみられており、その調査結果に今回のNTEを利用する可能性が指摘されている(注4)。

(注1)日本とは合意であって、協定は締結していない。米国はARTを通じて、米国が安全保障上の理由で特定国・地域からの輸入に関税を課した場合などに、相手国・地域にも米国と同様の措置を取るよう求めている。詳細は2026年2月6日付地域・分析レポート参照

(注2)なお、日本には法律はないものの、2022年9月にビジネスと人権に関するガイドラインを策定している。ビジネスと人権については、ジェトロの特集ページ「サプライチェーンと人権」参照。

(注3)追加関税措置を多用するトランプ政権は、関税回避の取り締まりにも力を入れている。詳細は、2026年1月14日付地域・分析レポート参照

(注4)301条に基づく調査は、通常、1カ国当たり12カ月程度の調査期間を要する。7月を期限とする場合、USTRは4カ月程度で調査を終える必要があるため、NTEでの調査結果を活用するのではないかとみられている。

(赤平大寿)

(米国、日本)

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