中国、レアアース輸出管理の関連規制を強化
(中国)
北京発
2025年10月14日
中国商務部は10月9日、商務部公告2025年第61号で「海外における関連レアアース品目に対する輸出管理実施の決定」と、商務部公告2025年第62号
で「レアアース関連技術に対する輸出管理実施の決定」を公布した。
第61号公告では、中国国外の組織や個人が中国以外の国・地域へ中国原産などの一部レアアース品目(注1)を輸出する場合、中国商務部による両用品輸出許可証を取得する必要があるとした。半導体やメモリーチップなど(注2)の生産や研究開発に関する品目の輸出は個別審査を行うとし、医療や公衆衛生などの緊急時の輸出は事前の申請が免除され、輸出後10営業日以内に事後報告を行うこととしている。また、輸出管理コントロールリストと注視リストに掲載された輸入業者やエンドユーザー(注3)への輸出申請や、最終用途に軍事目的が含まれる場合は原則として許可しないとした。なお、税関での輸出申告時には最終仕向け地を申告することとしている。
第62号公告では、レアアースの採掘、製錬・分離、金属精錬、磁性材料製造、リサイクルに関する技術とそれらの媒体、生産設備に関する技術の輸出を行う場合、中国商務部による輸出許可を取得する必要があるとした(注4)。この公告は即日実施とし、公告に合わせて両用品目輸出管理リストの更新も行うとした。同公告で輸出とは、前述の規制対象技術を中国国内から国外へ移転すること、または中国国内もしくは国外で外国の組織や個人に提供することを指すとしている(注5)。公告では、輸出者は輸出許可申請時に「輸出管理対象技術の移転または提供に関する状況説明」を提出することとし、輸出技術の内容のほか、エンドユーザーの情報や輸出目的、最終用途などの説明を求めている。また、中国国内において中国国内所在の国外組織や個人に同公告で規制される技術を提供する場合は、「国内における輸出管理対象技術の提供に関する状況説明」を提出しなければならないとしている。なお、レアアース関連技術の一部は既に「輸出禁止・制限技術目録」に掲載されている(2023年12月28日、2025年7月22日記事参照)。
商務部の報道官は、レアアース関連物品は軍民両用属性を持つことからも、輸出規制は国際的な慣行と解説した。また、一時期から一部の海外組織や個人が中国原産のレアアース規制品目を直接、あるいは加工後に転移・提供し、直接・間接的に軍事など、敏感な分野に用いていると指摘した。
(注1)対象となる品目と施行日は次のとおり。
- 国外で製造されたレアアース永久磁石素材、レアアースターゲット材(商務部公告2025年第61号の付属書第2部分に記載されているもの)で、同付属書第1部分に記載の中国原産のレアアース関連品目を含有、集積、混合しており、その価値が付属書第2部分に記載の品目に占める割合が0.1%以上のもの。12月1日から実施。
- レアアース採掘、製錬・分離、金属精錬、磁性材料製造、リサイクルで中国産技術を用いて中国国外で生産された同付属書第1部分に記載のレアアース関連品目。12月1日から実施。
- 中国原産の同付属書第1部分に記載のレアアース関連品目。この公告公布から即日実施。
(注2)具体的には、最終用途が14ナノメートル以下のロジックチップ、または256層以上のメモリーチップの研究開発や生産、これら半導体の製造装置・試験装置と材料、または、潜在的軍事用途を有する人工知能(AI)の研究開発に係る品目の輸出を個別審査の対象としている。
(注3)輸出管理コントロールリストと注視リストに掲載されている企業による出資比率が50%以上の子会社や支店などを含むとしている。
(注4)「レアアース」「製錬・分離」「精錬」「リサイクル」の定義は、レアアース管理条例(2024年7月5日記事参照)に基づくとしている。「磁性材料製造」技術はサマリウムコバルト、ネオジム鉄ホウ素、セリウム磁石の製造技術を指すとしている。同公告の技術とそれらの媒体とは、技術関連資料などのデータ(設計図、技術仕様、技術データ、加工プロセス、シミュレーションデータなどを含む)を指すとしている。
(注5)知的財産権ライセンス、投資、交流、贈与、展覧・展示、検査、試験、援助、伝授、共同研究開発、雇用関係、コンサルティングなどのあらゆる方法を通じた移転や提供を含むとしている。
(亀山達也)
(中国)
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