トランプ政権2期目初の米中首脳会談、IEEPAフェンタニル関税半減などで合意
(米国、中国)
ニューヨーク発
2025年10月31日
米国のドナルド・トランプ大統領は10月30日、中国の習近平国家主席と韓国で会談した。第2次トランプ政権が発足して以降、両首脳は2度の電話会談を行ってきたが(2025年9月24日記事参照)、対面での会談は初めて。
トランプ氏は同日、SNSへ「習国家主席との会談は素晴らしいものだった」「われわれは多くの点で合意し、極めて重要な課題については解決が目前に迫っている」と投稿した。その上で中国が、米国から大豆やソルガムなどの農産物を大量に購入すると続けた。米国にとって大豆は最大の対中輸出品目で、2024年は126億ドルと対中輸出額の8.8%を占めた(注1)。だが、2025年の輸出額は現在までゼロとなっている。
トランプ氏はさらに、中国がレアアース、重要鉱物、磁石などの供給を、透明性をもって継続することで合意したと明らかにした。中国はトランプ政権発足以降、レアアースなどの輸出管理を強化してきた(2025年4月7日記事、2025年10月14日記事、2025年10月14日記事参照)。在米日系企業の間でも、中国から必要な原料を調達できないことで、米国内での生産への影響を懸念する声が出ていた(注2)。中国側の発表によれば、10月9日に公布した輸出管理措置を停止する(2025年10月31日記事参照、注3)。
一方、米国通商専門誌「インサイドUSトレード」(10月30日)によれば、トランプ氏はフェンタニルの流入阻止を目的に国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき、原則全ての中国原産品に課している20%の追加関税率を半減すると述べた(注4)。追加関税引き下げは即時実行するという。同誌は、トランプ氏が「(中国に対する相互関税率の適用停止期間の)1年間延長で合意した」「1年後にさらに延期するだろう」と述べたとも伝えた。米国は中国に対する相互関税率を34%に設定したが、一時的にベースライン関税と同じ10%に引き下げており、その期限が11月10日に迫っていた(2025年8月12日記事参照)。これら措置が実行されれば、米国の対中追加関税率は多くの品目で、IEEPAフェンタニル関税10%、相互関税(ベースライン関税)10%、1974年通商法301条に基づく25%(注5)の合計45%になるとみられる。
トランプ氏は、中国がアラスカ州で生産される石油とガスを購入する意向があるともSNSで明らかにした。現時点でエネルギー購入は決まっていないとしつつも、今後協議を重ねるという。
これらに加え、スコット・ベッセント財務長官は10月30日のFOXビジネスニュースで、米国は輸出管理規則(EAR)上のエンティティー・リストなどに掲載される事業体が50%以上所有する事業体も輸出管理の対象とする「関連事業体ルール」(2025年10月3日記事参照)と、米国へ入港する中国船に課している手数料の徴収(2025年10月14日記事参照)を、ともに1年間停止する予定だと述べた。
今回の合意が実行されれば、米中の通商関係はいったん、落ち着きを取り戻すことになりそうだ。ただし、現時点では詳細が不明な点も多い。10月30日時点で、米国政府から正式な発表は出ていないが、ベッセント氏は、米中の通商協定は来週、署名される予定だと述べている。
(注1)米国関税分類番号(HTS)120190ベース。2024年の対中輸出額2位は民間航空機で、116億ドル。
(注2)ジェトロによる2025年4月のインタビュー。
(注3)現時点では4月に発表されたレアアースなどの輸出管理措置の停止は発表されていない。
(注4)米国は、フェンタニルの流入阻止を目的に2月から10%、3月からは20%の追加関税を課している(2025年3月4日記事参照)。
(注5)301条に基づく追加関税はトランプ政権1期目に始まり、バイデン前政権下で強化され、トランプ政権2期目でも継続されている。現状の追加関税率は7.5~100%だが、その多くは25%となっている。なお、バイデン前政権下での決定により、一部品目では追加関税率が段階的に上がることになっており、2026年1月1日から電気自動車(EV)用以外のリチウムイオン電池や天然黒鉛などの追加関税率は25%に上昇する(2024年5月15日記事参照)。
(赤平大寿)
(米国、中国)
ビジネス短信 6a99b0e08f1f7cc8







 閉じる
閉じる
 米国の第2次トランプ政権が発表した関税措置により、賦課対象となった地域に展開する日本企業の事業運営にも影響が予想されます。
 米国の第2次トランプ政権が発表した関税措置により、賦課対象となった地域に展開する日本企業の事業運営にも影響が予想されます。



 X 公式アカウント
X 公式アカウント YouTube 公式アカウント
YouTube 公式アカウント