中国、米国の集積回路・ICチップに対する調査開始
(中国、米国)
北京発
2025年09月18日
中国商務部は9月13日、米国の集積回路・ICチップ関連の産品および措置に対し、アンチダンピング(AD)調査と反差別調査を実施することを発表した。商務部による同日の発表内容は次のとおり。
(1)一部の米国産アナログAI(人工知能)チップに対するAD調査:商務部公告2025第27号で、米国を原産地とする一部のアナログAIチップ製品(注1)の輸入に対し、AD調査の開始を決定した。調査は即日開始し、2026年9月13日までに終了する予定で、特殊な事情があれば6カ月の延長を可能としている。ダンピング調査対象期間は2024年1月1日から12月31日、国内産業の損害調査対象期間は2022年1月1日から2024年12月31日としている。
(2)米国による対中集積回路分野の関連措置に対する反差別調査:商務部公告2025第50号で、米国による対中集積回路分野の関連措置についての反差別調査を実施すると発表した(注2)。調査は即日開始し、調査期間は通常3カ月とした上で、特殊な状況となった場合には延長を可能としている。
また、商務部は9月13日の報道官談話で、2件の調査について次のとおり説明した。
一部のアナログICチップに対するAD調査については、「中国国内産業による申請を受けて調査を開始したものであり、中国の関連法令とWTO関連ルールに合致している」と述べた。そのうえで、「法に基づいて調査を実施し、調査結果に基づいて客観的かつ公平な判断をする」とした。
集積回路分野の関連措置に対する反差別調査については、「米国の一連の禁止・制限措置は中国に対して差別的な疑いがあり、中国の利益を損なうだけでなく、世界の半導体の産業・サプライチェーンの安定を大きく損なうものだ」として、断固反対を表明した。
なお、中国半導体業界協会および中国自動車工業協会は、商務部の公告を受けて支持の声明を発表している。中国半導体業界協会は、半導体産業の健全な発展には、公平な環境が必要であるとした。加えて、企業が市場ルールに基づいた健全な競争を行い、半導体産業の進歩を共同で推進していくことを支持・奨励するとした。
中国自動車工業協会は、自動車産業の技術進歩と持続可能な発展には、開放的で公平、非差別的な国際市場環境が必要であるとした。
(注1)HSコード85423990の品目のうち、米国を原産地とする40ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)以上プロセスの汎用(はんよう)インターフェースチップとゲートドライバーチップが対象。商務部公告での中国語表記は相関模擬芯片(英語表記はCertain Analog IC Chip)。
(注2)調査の対象として次の例を挙げている。
(1)2018年以降、1974年通商法301条による集積回路を含む中国製品に対する追加関税を実施または実施を予定している。
(2)2022年以降、集積回路関連製品や製造装置などの中国への輸出を制限している。また、中国の半導体プロジェクトへの「米国人(米国籍者、米国永住者などを含む)」の参加を制限している。
(3)2022年以降、「CHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法)」で関連企業や個人による中国の関連分野の経済貿易、投資活動を制限している。
(4)2025年5月以降、華為技術(ファーウェイ)の「昇騰(Ascend)」チップを含む中国製の先端コンピューティング集積回路の使用、中国のAIモデルのトレーニングで米国製AIチップの使用を制限している。
(蔣春霞)
(中国、米国)
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