未来志向の新たな日韓産業連携の可能性を探る韓国のコンテンツ輸出を牽引するゲーム産業と日韓協力の可能性
韓国系ファンドIMM Investment Japan今泉氏に聞く
2026年2月17日
ジェトロでは2025年度に、政治に左右されない新たな協力分野について探求し、議論する「未来志向の日韓ビジネス研究会」を立ち上げ、全5回の研究会を開催してきた(本特集「日韓経済関係は「一方通行」から「双方向」へ」参照)。本稿では、同研究会の中で取り上げたテーマの1つであるコンテンツ・エンターテインメント分野の日韓協力について、ゲーム産業に焦点を当てて日韓それぞれの作品の特徴や強みを比較しながら連携の可能性を探る。韓国大手ファンドのIMM Investmentの日本法人IMM Investment JapanのCIO今泉東生氏に投資家の視点から話を聞いた(インタビュー実施日:2026年1月28日)。

韓国コンテンツ産業の成長の牽引役へ、ゲームと音楽産業の発展に期待
- 質問:
- 貴社の主な投資領域とその中でのコンテンツ・エンターテインメント(以下、エンタメ)関連産業およびゲーム産業の位置付けや投資実績は。
- 答え:
- IMM Investmentは1999年に創業し、ソウルに本社を構える。2017年に初の海外進出先として日本法人を設置し、その後香港、シンガポール、インドにも拠点を展開してきた。
- シードステージ(アイデアの具体化と初期検証段階)およびアーリーステージ(製品・サービスの市場投入・初期顧客獲得段階)のスタートアップの支援に加え、売り上げが伸び、事業がスケールし始めるグロースステージにおいて、母国市場から海外市場へと展開を拡大していく際の支援に特に注力している。全産業を投資領域としてカバーするが、その中でもゲーム産業をはじめ、コンテンツ、エンタメ関連は、電子部品産業と並んで注力している領域。
- 上場後の株価および非上場時点での評価額もしくは被買収時の評価額が10億ドル以上の韓国のスタートアップは2023年時点で36社といわれている。そのうち当社はコンテンツ、エンタメ関連を含む19社を支援してきた。ゲーム産業では、2018年に韓国のゲーム開発会社クラフトンの海外展開に際して、中国の大手IT企業テンセントとともに約1億7,000万ドルを投資した。
- 質問:
- 投資ファンドの視点で、ゲーム産業に注目している理由は。
- 答え:
- ゲーム産業は韓国のコンテンツ産業の稼ぎ頭の1つであり、コンテンツ輸出における貢献も大きい。2024年の韓国のコンテンツ産業の各分野の売上高を比較すると、ゲームは24兆2,476億ウォン(約2兆6,672億円、1ウォン=約0.11円)と、知識情報、放送に次いで第3位に位置する。また、音楽の売上高はそのおよそ2分の1の規模にとどまるが、ゲームとともに増加傾向が続いている(図1参照)。次に、同年のコンテンツ産業の輸出額を見ると、ゲームは76億2,885万ドルと輸出額全体(135億7,330万ドル)の56.2%を占める(図2参照)。ゲームと音楽が今後の韓国コンテンツ産業における成長の牽引役となるとみている。
注1:1ウォン=0.11円。
注2:その他には、キャラクター、映画、漫画、アニメ、コンテンツソリューションを含む。
出所:韓国コンテンツ振興院「コンテンツ産業動向分析報告書」各年版
注:その他には知識情報、広告、コンテンツソリューション、キャラクター、アニメ、漫画を含む。
出所:韓国コンテンツ振興院「コンテンツ産業動向分析報告書」各年版から作成
- 質問:
- 韓国でゲーム産業が発展した背景は。
- 答え:
- 韓国政府による政策支援が大きく発展に貢献したとみられる。韓国では、1997~1998年のアジア通貨・経済危機を機に、IT産業振興のために韓国政府による大規模なITインフラ整備やベンチャー企業の育成政策が行われたことで、PCオンラインゲームができる高速インターネット環境が普及し、ゲーム制作会社を含む多数のITベンチャー企業が生まれた。2019年に国がオンラインゲームをeスポーツとして正式な競技に認定し(注1)、その後eスポーツのプロリーグやゲーム用スタジアムが設立されたことも、プロゲーマーの社会的認知向上につながったとみられる。
日本のIPと韓国のマーケティング・プロモーション力、強みを掛け合わせた連携に商機
- 質問:
- 韓国のゲーム産業の特徴や強みおよび日本のゲーム産業との違いは。
- 答え:
- 韓国のゲームは、PCでの100人以上など大人数でのオンライン同時接続によるMMORPG(Massively Multiplayer Online Role-Playing Game )に強みを持ち、キャラクタービジュアル重視のゲームデザインにもたけている。作品の代表例として、美しいグラフィックとスタイリッシュさが特徴とされる格闘ゲームの「ステラーブレイド」が挙げられる。同時アクセスしている多数のユーザーと戦うシューティングゲームの「PUBG」は新型コロナ禍で人気が上昇した。
- 他方、日本のゲームは、ストーリー性・世界観の深み、キャラクターの魅力を強みとする。小説のようにゲームが展開していき、ストーリーに合わせて続編を出すケースもみられる。ロールプレイングゲーム(RPG)は強いが、多人数の同時参加型かつオンライン(MMO)は、当時の通信環境の問題などから立ち上がりが遅れた。コンソール型と呼ばれる専用ハードウェアによって1人もしくは1つの場所で集まってプレーするゲームに強みを持つ。ストーリー性やキャラクターの魅力が光る例として、競走馬を擬人化したキャラクターを育成し、レースとライブを楽しむ育成シミュレーションゲームの「ウマ娘 プリティーダービー」が挙げられる。
- 質問:
- ビジネスモデルやマーケティングの面での日韓の違いは。
- 答え:
- 韓国のゲームのビジネスモデルはFree to Play(F2P)モデルが中心。一定のステージまでは課金なく利用でき、ゲームの進行にあわせて課金要素を組み込むことによって、持続的な収益化を実現するもの。例えば、課金によってユーザビリティーやビジュアルが飛躍的に向上するなどの仕掛けが多くみられる。他方、日本のゲームは買い切り型が中心とされる。
- マーケティングでは、韓国のゲームは世界でリリースのタイミングを揃えることが多く、グローバル同時接続を重視する傾向が強い。その実現のための積極的なローカライズを行うことも特徴。多言語対応、文化的タブーのチェックなどにも積極的に資金を投下することで、マーケティング効果の最大化を図っている。
- また、韓国のファンダムコミュニティ(注2)では、ファンを動かし、ファンがコミットすることで知的財産(IP)の認知拡大・普及を支えるような仕組み・プラットフォームが構築されている。例えば、SNS上でファンが自身の「推し」のグッズなどを投稿するアクションが数値化されており、「推し」への貢献度をコミュニティ内で共有することで、ファン同士が高め合いながらファンを育てていく仕組みが作られている。上述のとおり、韓国のほうが高速インターネットの普及が早かったことから、インターネット社会に適応したマーケティングやプロモーションのモデルも先行して発展してきたと考えられる。
- 質問:
- 韓国のゲーム産業の現状と課題は。また、日本との連携の可能性や、その有望分野についてどのようにみているか。
- 答え:
- 2010年代以降のスマートフォンの普及を受け、若年層を中心にPCを持たないユーザーが増える中で、モバイルゲームの伸びが著しい。2022年の韓国のゲーム産業の総収入額(164億5,500万ドル)のうち、モバイルゲームの構成比は約6割で、PCゲームの構成比(26%)の約2倍を占める。既存の大手ゲーム制作会社がモバイルゲームへの移行に苦しむ中、モバイルゲーム市場の拡大とともに新興企業が急速に成長し、ゲーム産業のプレーヤーが多様化している。
- 産業構造が変化する中で、韓国のゲーム産業は、MMORPGへの依存によるイノベーションの停滞が見られるほか、日本に比べてIP開発の面で弱みがある。
- 一方で、韓国は上述のとおり日本に先駆けて蓄積してきたオンラインゲームの技術や、海外市場へ展開していく上でのプロモーションのノウハウ・仕組み、活用できるプラットフォームなどの面で優位性を持つといえる。
- 日本の強みであるIPと、韓国企業が先行するインターネットマーケティング・プロモーションの仕組みを掛け合わせることで、双方の強みを活かした連携が可能となり、ビジネスの成長スピードの加速につながるとみている。また、こうした連携モデルは、ゲーム産業のみならず、音楽、ドラマ、アニメなどの他のコンテンツ・エンタメ関連産業でも展開できるだろう。
- このほか、VTuberなど新たな領域においても、日本の関連企業・IPと、韓国のプラットフォーマーなどとの連携可能性が高いとみている。具体的な事例として、VTuber事業を行うIPプロダクションなどを手掛けるBrave Group(本社:東京都港区)は、2025年11月に韓国の大手IT企業のKakao(カカオ)との資本業務提携を発表した。Brave groupが有するIP関連領域における事業開発力および運営ノウハウを、カカオの事業知見およびネットワークと融合させることで、グローバル展開を加速させることが目的なのではないか。
- 質問:
- 貴社として、日韓企業の連携にどのように関わっているのか。
- 答え:
- 当社は韓国のVCだが、日本法人のわれわれのミッションは、韓国企業の事業基盤を活用することで、日本のスタートアップの事業成長を加速させ、投資価値の最大化を図ることだ。当社の強みである韓国大手企業とのネットワークが活きる。
- 具体的な流れとしては、まずは、お話ししたような日韓で連携できる「絵姿」が描ける企業を見出す。投資候補先となる日本のスタートアップと結びつけられそうな韓国企業を模索し、日本のスタートアップ側へのアプローチから始め、韓国企業との連携や協業に関心があるか意思を確認する。関心が示された際には、韓国企業に紹介してマッチングを進める。双方の関心、連携意思が確認できた際に、当社として投資を検討するという流れで進めている。
- 質問:
- 日韓のビジネス連携が広がっていく上で、重要だと感じる点は。
- 答え:
- 当社ファンドの資金源のLP(リミテッドパートナー)には、韓国政府系の金融機関も参画している。そうした背景からか、日韓間での案件組成や出資の打診に対し、日本側から慎重な姿勢を取られるケースも少なからず経験した。日韓が真に連携できる環境の構築に向けて、まずは事例を作って、それらを積み重ねていくことが重要だと感じる。
- 執筆者紹介
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ジェトロ調査部中国北アジア課 課長代理
小林 伶(こばやし れい) - 2010年、ジェトロ入構。海外調査部中国北アジア課、企画部企画課事業推進班(北東アジア)、ジェトロ名古屋などを経て2019年6月から現職。






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